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【洋書多読】Frindle(再読)

アンドリュー・クレメンツによる名作児童文学『Frindle』を読了しました。

物語は、5年生の少年ニック・アレンが、新しい単語を作り出すという大胆なアイデアを実行する過程を描いています。

ニックは好奇心旺盛で、ユニークなアイデアを持つ少年で、ある日、英語の授業で言葉の起源について学んだ後、「ペン」を「フリンドル」と呼ぶことを思いつきます。

最初はクラスメートたちも面白がり、やがて「フリンドル」という言葉が学校中に広まります。しかし、厳格な英語教師であるグレンジャー先生は、ニックの行動を無視できず、彼と対立するようになります。グレンジャー先生は「フリンドル」という言葉の使用を禁止しようとしますが…。

言葉の生成と変化の可能性について考えさせられる作品、それが『Frindle』です。

ちょっと時代考証はちょっと古いけど。

本書が出版されたのは1996年。画期的だった「Windows95」が発売された翌年とはいえ、インフラと呼べる程にはインターネット環境は整っていなかった時代です。

ですので、本書ではまだまだ新聞やテレビといったマスメディアが主流ですし、いろんな部分で微妙な時代の古さみたいなものがあったりします。ま、僕たち40代以降人間にとっては懐かしいものでもありますけれど。

加えて、『Frindle』に流れている言語観は、「言葉はものの名前である」という、旧態依然とした「名称カタログ的言語観」」に依拠しています。20世紀以降のソシュール言語学的な「意味は差異のうちに住まう」という、構造主義的言語観に馴染んでいる私たちにとって、この点も若干「古さ」を感じるところでしょう。劇画タッチのカバーも、そんな本書の旧時代的な時代考証を反映しているんでしょうか?

しかしながら、本書を読み進めることの楽しさは、そんなことではほとんど減殺されることはありません。一つはこの『Frindle』が、健康的な児童書らしい、勧善懲悪のストレートアヘッドなストーリーラインで構成されているのが理由であると思います。

加えて、とても端正で整った英語表現に載せて語られる個性的な登場人物たち、師弟関係の複雑さと豊穣さといった、大人にとってもまた十分にリーダブルになりうるトピックを伏線としてきちんと仕込んであることもまた、一見すると単純で深みがないように思われる本書の物語にある種の奥行きを与えていると思います。

小学校低学年レベルの児童書の多読に慣れてきた中級者の方が、ピクチャーブックを卒業して次のステップに進んでいかれるための足がかりとして最適な一冊なのではないか?そんなふうに思いました。お話もまさに「ボキャブラリー」をめぐる話ですし。

ぜひ手にとってください

そんなわけで「Frindle」でした。

賛否両論あるようですが、これだけ広く読まれている一冊です。やはりそれにはそれなりの理由がある、ということは一度本書を手にとって開いてみられるとよくおわかりいただけると思います。

英語学習を続けていく中で、本書を手に取れるようなレベル感になってくると、ついついもっとレベルの高い、ちょっと小難しい系の本なんかを読みたくなってくるものです。

が、そういう人にこそ手にとっていただきたいのがこの『Frindle』です。

比較的平易な英語で書かれているにもかかわらず、それなりにしっかりとした読書感を抱かせてくれる骨のある一冊。ぜひ、食わず嫌いせずに読んでいただきたいと思います。

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