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【洋書多読】Matilda(再読)

ロアルド・ダールの名作児童書『Matilda』を再読・読了しました。

「Matilda」は、特別な才能を持つ少女マチルダ・ワームウッドの物語です。

マチルダは非常に知能が高く、3歳の頃には既に読み書きができるようになっていました。しかし、彼女の両親は無知で彼女の才能を認めず、冷たく扱います。
父ハリーは詐欺まがいの中古車販売業者で、母ゼイニアは昼間のテレビ番組を見ることに夢中な怠け者です。

4歳半のマチルダは、すでに村の図書館の全ての子供向けの本を読み終え、大人向けの本にも手を伸ばします。彼女はチャールズ・ディケンズ、ジェーン・オースティン、トーマス・ハーディ、アーネスト・ヘミングウェイ(!)などの作品を次々に読み進め、その知識と理解力はますます深まっていきます。

しかし、家庭ではその知識を活かす場がなく、両親からは軽蔑され、罰を受けることもしばしばです。

マチルダは学校に通い始めますが、そこでも新たな試練が待ち受けています。彼女の通う小学校の校長、ミス・トランチブルは、非常に厳しく暴力的な人物で、生徒たちに恐怖を与えます。

しかし、マチルダは優しい担任のミス・ハニーに出会い、初めて自分を理解し、支えてくれる大人に巡り会います。ミス・ハニーはマチルダの才能を見抜き、彼女の教育に熱心に取り組みます。

ある日、学校の授業でミス・トランチブルから抑圧的な仕打ちを受けたマチルダは、自分がある特殊な能力を持っていることに気づき、その能力を使ってトランチブル校長に立ち向かうのですが…。

「マチルダ」は、逆境に立ち向かう勇気と知恵、そして真の家族の愛と支えを描いた物語です。マチルダの知性と超能力、そして彼女を取り巻く人々の変化と成長は、読者に希望と信念の重要性を教えてくれます。

洋書の児童書を読むことの面白さをおしえてくれた、ダールの作品

洋書の児童書の多読を始めておよそ6年が経つ僕ですが、真にこの「洋書多読」の面白さをおしえてくれたのは本書の作者である「ロアルド・ダール」でした。

『Matilda』は名著の呼び声の高いダールの代表作ですが、多読を始めた頃の僕は彼の作品を楽しんで読むことができませんでした。

難解と言われる『Matilda』に関しては英検一級一発合格後も読むことができず、随分後回しにしていたものです。

ダールの作品はその奇抜なストーリーテリングと造語の多さ、持って回ったような言い回しが、多読を通じて自然な英語に多量に触れたいタドキストの間で評価が分かれ、微妙な立場に置かれているようです。

しかしながら、多読に慣れて英語にある程度習熟してきて英文の表現の微妙なひだに徐々に気づき始め楽しめるようになるにつれて、ダールの作品はその存在感を増してきます。

ダールらしいぶっ飛んだストーリーテリングも、児童書の世界観に食傷気味になってきていた僕にはとても新鮮でした。勧善懲悪のシンプルなわかりやすい物語をここまで面白く読ませてくれるのは古今東西ダールをおいて他にはないと思います。

『Holes』を始めとする名作児童書の著者ルイス・サッカーを西の横綱とするならば、『Matilda』『Charlie and the Chocolate Factory』のダールは東の横綱といった感じです(英米の地理的な位置関係によります。優劣をつけているわけではありません)。

両者を辞書なしで楽しみながら読めるようになる頃には、読者の英語力は実用に十分足りうる、ネイティブレベルと言っても過言ではないものになっていることでしょう。

英語は難しいですが、その難しさは「難解さ」とはちょっと違います

『Matilda』に限らずダールの紡ぎ出す英語は結構難しいと評判です。

まず「イギリス英語である」ということ。それから「独特の造語が多い」という点。これらは日本人英語学習者が「ハリーポッターシリーズ」を難しいと感じるのと同じ理由です。

それに加えてダールの作品をハリポタよりさらに一段読みにくくしているのが、ダールが英語の「音」を大事にしているからだと言えるかもしれません。

ダールの英語は、英語のリズムやイントネーション(抑揚)、リンキングやリダクションといった各種の音声変化に慣れていない英語学習者が読むと読みにくくって仕方がないんです。僕がまさにそうでした。

音感やリズムを優先しているがため、僕たちには馴染みの薄い単語や耳慣れない慣用表現が多用されています。全体を通して長編の詩を読んでいるような感覚に陥ってしまうこともあります。

つまり英語をお勉強で学習してきた人には読みにくくって仕方ない文章ということです。でも英語の音に慣れている身としてはこのリズムが心地よくって仕方ないんです。

音やリズムを大切にした著作を多く残しアメリカの識字率向上に多大な貢献をしたと言われる超人気絵本作家「Dr.スース」の小学校高学年バージョンといった趣です。

そこにダールの奇想天外なぶっ飛んだストーリーテリングが乗っかってきます。主人公が空を飛んだり魔法を使ったり超能力で物を動かしたりする類のお話を嫌う人も多いと思いますが、僕はこれこそがダールの天才性だと思っているのでもう大歓迎です。

誰にだって子供の頃があって、こんな奇想天外なお話しが好きだった時がある(はず)。

そんなことを思いながらダールの世界観に没入していけることの喜び。もはや自分が「学習目的で」多読をしていることを忘れてしまいます。苦しいだけの英語から僕たちの目を覚まさせてくれる。それが多読を愛するタドキストとしての、ロアルドダールというイギリスの天才作家の魅力である。今回の『Matilda』の再読で、そんなことを思いました。

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