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【洋書多読】I'm Glad My Mom Died(205冊目)

『I'm Glad My Mom Died』を読了しました。

本書はJennette McCurdyさんというアメリカの子役の女優さんの手記・エッセイ本です。

本書のことは、僕がいつも洋書多読用の本を選ぶときの参考にさせていただいている渡辺由佳里さんのブログ「洋書ファンクラブ」で知りました。渡辺さんがTwitterで紹介されていて、僕のTLに流れてきた瞬間に「これは買いだな」と思ってとりあえず即購入して積んでいたのですが、ようやく読み終えることができました。

渡辺さんのブログでは「引退した子役の回想録が浮き彫りにする、子供を心身ともに虐待して搾取する業界と毒親の致命的なマッチング」とあります。なかなかショッキングでキャッチーなタイトルです。

本書の著者であるJennette McCurdyさんが母親との関係の中で精神的に病んでいくプロセスを本人が独白しています。本書はお母さん生前と死後の2部構成になっていますが、個人的には著者が各種の神経症症状を呈し始める母の死後の記述がとても刺さりました。

摂食障害、アルコール依存、関係嗜癖など、虐待を受けて成長した個人が呈すると思われる精神科症状のオンパレードに、ページを捲る手が止まらない日々を過ごしてしまいました。

英語レベルは中級の中ーパス単一級の熟語のオンパレード

英語は比較的読みやすく、渡辺さんも先のブログで書かれているとおり、高校までの英文法をきちんと押さえていればそんなに読みすすめるのは苦にはなりません。

表現は比較的シンプルですし、単語もそんなにファンシーなものは登場しません。もちろん精神疾患に関する医学用語などは読みづらいと思いますが、それ以外はそうでもないです。

あと、シンプルな単語で多彩な意味を表現する「熟語・句動詞」がたくさん出てくるんですが「これは英検一級の長文読解問題の演習か?」と思うくらい、旺文社の『でる順パス単英検一級』という単語帳の「熟語編」に掲載されている熟語が出現しました。

個人的には英検一級レベルの熟語の復習になってよかったと思っています。が、難しい単語はわかるけど、熟語や句動詞は苦手…という方は結構読みすすめるのに苦労するかも知れません。

句動詞は、本体である動詞よりも、それに続く前置詞・副詞のイメージが掴めていれば細かい意味はわからなくても文意はある程度取れるので、いわゆる「多読的読み方」(辞書は引かない/わからなければ投げる・飛ばす)で十分楽しめるんじゃないかと思っています。

いわゆる「心理的虐待」に読んでいて胸が痛くなります

渡辺さんは洋書ファンクラブで「毒親とTV業界による搾取」と表現されていますが、決してどこか遠い世界のお話、というわけではないと思います。多かれ少なかれ「大人の都合」によって振り回される子供が被る「精神的な不調和」と言う病理が、被害者本人の視点で克明に描かれているからです。

客観的に見れば1000%不合理でしかない母からの支配に対しても、子供は常に無力であり「親の期待に応えたい」と思うものです。

そんな「子」の気持ちを知ってか知らずか、この手の依存的な親というのは巧妙に子供を親自身の精神的な不調和に対する処方箋として利用しようとします。そんなふうにして心を病んでいった結果過食嘔吐したり、セックスや覚せい剤などへの依存に陥っていたクライエントさんを精神科病院勤務時代、何百と観てきました。

Jennette McCurdyさんがここでありありと描いている自身の体験は、まるで精神科の臨床カウンセリングの教科書にそのまま採用したいと思うくらいの典型的な神経症症状の叙述になっています。

おそらく本書を読んで心が傷まない人はいないと思いますが、それがアメリカの有名な子役の女優さんの手記であるという点において、僕には想像もできないくらいセンセーショナルな一冊なんではないかと思います。

ただ、本書の最後はそんな地獄のような彼女の半生に「回復」という希望の光を感じさせてくれるような、ポジティブな含みのある終わり方だったんじゃないかと感じました。それは、こちらのYouTubeでの彼女のお話を聞いていても感じることが出来ます。

精神疾患、特に心理的虐待を受けた方にとって最も苦しいのは「自分を客観的に見つめ直し、受け入れていくこと」です。でも、そこからしか回復への真の道のりは始まりません。

「書く」という行為は、そんな内省を可能にする、非常に強力なヒーリング効果があると言われています。

依存症から徐々に自分自身を取り戻しつつあるJennette McCurdyさん。その回復の大きな一助になったのが、間違いなく本書だったんじゃないかと想像したりしています。

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