岸田首相の国連一般演説 核禁条約に触れず〜すべてがNになる〜

2023年9月21日【2面】

 岸田文雄首相は19日夜(日本時間20日午前)、国連総会で一般討論演説を行いました。「核兵器のない世界」という理想に向け核軍縮の流れを確実に進めると述べながら、国連加盟国が次々と参加し始めている核兵器禁止条約には一言も触れないなど、被爆国として恥ずべき姿勢を示しました。

空席の目立つ岸田首相の一般討論演説

 首相は、「核軍縮は被爆地広島出身の私のライフワークだ」などと言及した上で、「核兵器のない世界」の実現に向け、核不拡散条約(NPT)体制を維持・強化していくと訴えましたが、被爆者が政府に参加を求める核兵器禁止条約には一言も触れませんでした。

 また、「核兵器のない世界」を「被爆者の方々とともに希求してきた」などと強調。しかし、5月の主要7カ国(G7)広島サミットで首相は、核廃絶への具体策を示さないどころか、核兵器の存在を肯定する「広島ビジョン」を被爆地広島で発出し、被爆者から落胆と怒りの声が沸き起こりました。

 「『抑止か軍縮か』との二項対立的な議論を乗り越えるため」として、海外の研究機関に「核兵器のない世界に向けたジャパン・チェア」を設置するため、30億円を拠出すると発表。また、核兵器の原料となる高濃縮ウランなどの生産を禁止する核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の交渉開始を呼びかけるハイレベル行事をフィリピンとオーストラリアと共催したと述べました。

 さらに、ロシアが昨年2月の安保理で、ウクライナ侵略への非難決議案に拒否権を行使したことなどを踏まえ、拒否権行使の抑制や常任・非常任理事国の拡大を主張しました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?