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軍事企業“ミサイル特需”血税に群がる“死の商人”〜すべてがNになる〜

2023年11月28日【2面】

 岸田政権が進める大軍拡で、巨大軍事企業が受注を急激に伸ばしています。昨年末の安保3文書で、5年間の軍事費を43兆円に増額する方針が決定されたのを受け、“特需”にわく軍需産業は、10月に施行された軍需産業支援法による援護も受けながら、人員や設備投資を増強。軍需への依存を高め、血税に群がる“死の商人”化を強めています。(齋藤和紀)

 「事業規模は2倍以上の1兆円になると想定」「(安保3文書の一つ)防衛力整備計画の拡充で、中長期の防衛産業は活況の見通し」―。国内軍需最大手の三菱重工が22日に開いた防衛事業説明会で配られた資料には、“特需”を歓迎する言葉が並びました。

 同社は、軍事事業の年間売上高を2026年度ごろに現状の2倍である「1兆円規模」に増加させ、27~29年度には「1兆円以上」に伸ばす事業計画を公表。事業を拡大するため、設備投資を倍増させ、現状6000~7000人規模の人員を2~3割増やす方針を示しました。

受注高5倍に

 岸田政権の大軍拡は直近の企業業績にも影響が出ています。三菱重工は上半期の軍事部門(防衛・宇宙セグメント)の受注高は前年比で約5倍の9994億円と過去最高になりました。最大の要因は、敵基地攻撃能力に使われる長射程の「スタンド・オフ・ミサイル」に関する大型契約です。同社は12式地対艦誘導弾能力向上型など4種類の長射程ミサイルの開発・生産を一手に引き受けています。

 木原稔防衛相は、長射程ミサイルの配備前倒しを指示。防衛省の2024年度概算要求では、9種類の長射程ミサイルを同時並行で配備する計画を示しています。

 14、15両日、都内で開かれた防衛装備庁の「技術シンポジウム」で講演した木村栄秀装備開発官(統合装備担当)は、現在、短射程のものを含めて9~10種類のミサイルを同時開発していると説明。これは前例のないことであるとし、「数多くの事業が立ち上がる過酷な環境だが、企業からの支援を受け、開発を着実に進める」と強調しました。

 管制システムなどを手掛けるNECは、防衛・航空・宇宙事業の上半期の受注は前年比で約4割増加。軍事向けの大型案件が受注を押し上げました。三菱電機も、防衛関連の大型案件の増加で、同事業の上半期の受注高が増加。事業拡大をにらんで、5月には軍事部門に1000人規模の増員や約700億円規模の設備投資計画を発表しました。

企業参入促す

 政府は、安保3文書で「防衛産業は防衛力そのもの」と位置づけ、軍需産業の全面的な支援を狙っています。

 「技術シンポジウム」に集まった企業関係者を前に、松本尚防衛政務官は開会あいさつで「民生の先端技術の幅広い取り込みは防衛力強化に直結する」と強調。防衛装備庁の深沢雅貴長官も「スタートアップ企業など新たな企業の参入機会を増やす」と軍需分野への参入を促す発言が相次ぎました。

 また、10月に施行された軍需産業支援法の手続き方法を指南する講演も行われました。同法は、製造設備の効率化やサプライチェーン(供給網)の強化、武器輸出など広範な支援メニューを盛り込んでいます。装備庁の担当者は事業計画の作成方法や添付書類の注意点、事前相談の窓口などを細かくレクチャーし、「装備品の安定調達は重要な課題。皆さまが事業を出すのをお待ちしている」と呼びかけました。

 会場には、防衛装備庁が進める研究成果を説明するブースとともに、同庁職員と企業関係者が懇談するブースを設置。軍需産業支援法の手続きなどについて相談が行われていました。

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