日米2+2独立した指揮系統 明確な担保なし〜すべてがNになる〜

2024年7月29日【2面】

 「日米同盟が始まって以来、最も重要なアップグレード(更新)だ」。4月10日の日米首脳会談での共同声明に「(日米の)作戦および能力のシームレス(切れ目のない)な統合を可能に」するため、2国間でそれぞれの指揮統制の枠組みを向上させると明記されたことを指して、バイデン米大統領はこう力説しました。その第一歩となったのが、今回の日米2プラス2です。

文書で5点列挙

 共同発表文書は、日米指揮統制の具体化の原則として、(1)日米それぞれの指揮・統制の枠組みを向上(2)日米の相互運用性の強化(3)日米の指揮・統制構造の関係を明確に定義(4)既存の同盟調整メカニズム(ACM)を引き続き活用(5)情報保全を強化―の5点を列挙。重大なのは、指揮統制をめぐって岸田文雄首相が国会で繰り返し答弁した「日米は独立した指揮系統」であることが、どこにも明確な文言で担保されていないことです。

 米軍は欧州の北大西洋条約機構(NATO)や米韓同盟など、主要な軍事同盟で、米軍司令官による単一の指揮権を確立してきました。米側は日本でも、旧安保条約締結時の1952年、「有事」における米軍司令官の指揮権を盛り込もうとしましたが、日本側が国内の政治情勢や「憲法上」の理由から抵抗。米側は断念しました。

 憲法9条は戦力不保持を明記しています。このため政府は、自衛隊は「自衛のための必要最小限度」の実力であり、「戦力ではない」としてきました。こうした立場に立てば、「必要最小限度」を超える他国の武力行使への参加や他国軍の指揮下に入ることはできません。しかも、米軍は集団的自衛権の行使に加え、国際法違反の先制攻撃まで選択肢に入れています。

「一つの軍」狙う

 ところが両政府は「有事」に自衛隊が米軍の指揮下に入るという密約をかわしました。その後、憲法との矛盾を抱えたまま、日米の軍事一体化が進み、実態的に米側が指揮権を握る構造が強まってきました。今回の2プラス2で名実ともに自衛隊が米軍の指揮権に組み込まれる危険が強まっています。

 その先にあるものは何か。日本共産党の志位和夫議長が4月22日の衆院予算委員会で、米軍は先制攻撃を前提にした「統合防空ミサイル防衛」(IAMD)に自衛隊を組み込み、「シームレスな統合」で、完全に「一つの軍」にする狙いを示し、そのために「主権を切り離す」ことまで公然と要求していると告発しました。もはや後戻りできないところまで、米軍の戦争体制に組み込まれる危険が迫っています。日米両政府だけで一方的に具体化を進めることは許されません。(竹下岳)


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