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健康豆知識 驚くべき腸内細菌の世界(8)肥満と腸内細菌の謎 一般財団法人辨野腸内フローラ研究所理事長・理化学研究所名誉研究員 辨野義己〜すべてがNになる〜

                     2022年12月21日【くらし】
 培養を介さない手法による腸内細菌解析の進展は、宿主が持つ腸内細菌の役割、特に生体防御機能の解明に大きな貢献をしています。
 腸内細菌がいかに生体防御機能をコントロールしているか、まず「肥満」を腸内細菌という視点からみてみましょう。
 肥満は、脂肪組織での異常・過剰な脂肪の蓄積と定義され、慢性の炎症疾患と考えられています。また高血圧や脂質異常症、糖尿病などのリスク因子とされています。
 肥満と腸内細菌を関連づけた研究の先駆けとしては、体に細菌がいない無菌マウスと体に細菌がいる通常マウスの双方に高カロリー食を与えた実験があります。すると通常マウスが肥満し、腸内細菌のうち、「ファーミキューテス類」が増え、「バクテロイデーテス類」が減っていました。
 こうして肥満型には特徴的な腸内細菌バランスがあるとわかりました。
 さらに無菌マウスに、肥満型マウスの腸内容を与えると、体脂肪が47%も増加しました。肥満を促進する腸内細菌がいるというわけです。
 近年、肥満、やせの双子のヒト腸内容物を無菌マウスに移植することで同じように太ったり、やせたりすることが明らかにされています。肥満型に少ない「バクテロイデーテス類」の数菌種が肥満進行を防ぐのに大きく貢献しているらしいのですが、一致しない報告もあり、今後の検討が待たれます。
 肥満の原因は過食と運動不足とされてきました。しかし、本来あるべき恒常性が崩れ出す要因が腸内細菌の変動と連結していることがわかり、腸内細菌のコントロールで肥満防止も可能となりました。(水曜掲載)

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