コロナ禍・格差拡大 住宅困窮者増 支援の現場から宅地建物取引士 柿本志信さんに聞く “手間はかかりますが方法はあります”

                      2022年4月30日【くらし】

 格差の拡大や新型コロナ感染が住居困窮に拍車をかけています。東京23区の西部をエリアに、家探しに従事する柿本志信(しのぶ)さん(51)。高齢の単身者、障害者、低所得者など住居探しに苦労している人に寄り添っています。現状と対策を聞きました。(青野圭)

 コロナが始まった2年前あたりから、家賃が払えなくて家を失う人の増加が顕著になりました。高齢者に限らず、非正規や年金生活の人、自営業者も家業廃業と同時に住む所を失っています。DV被害の方もめだちますね。皮肉なことに、私の仕事は増えていきました。昨年末あたりから、住宅困窮の質が一層悪化したように感じます。

懸念を取り除く見守りサービス

 それでも、“ある一定以上の年齢になると家を借りるのはムリか”というと、結論からいえば、そうでもありません。ただ、手間はメチャクチャかかりますが。

 オーナーさん(貸主)が懸念している要素を排除していけばいいのです。例えば、高齢で独居なら、生存確認ができる“見守りサービス”を導入することで、貸主の拒否感がやわらぐかもしれません。

 単身高齢者の入居を困難にしている理由の一つに“事故物件の告知”があります。昨年10月、国土交通省が「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました。ここでは、事故物件として告知しなくてもいいケースを列挙しています。

 “緊急連絡先になってくれる親族がいないと、借りられないか”という質問もあります。これも結論からいうと、方法はあります。

 貸主の立場で考えると、借主が亡くなった場合、円滑に部屋を片づけて、次の方に貸せる状態にしたいのです。しかし、残された家財を勝手に処分すれば、違法行為になります。賃貸借契約の打ち切りすら簡単にはできません。借主が単身だと、相続権のある方と連絡がとれるようにしておかないと、葬儀すらままならないのです。

 でも、貸主の心配に応える方法はあるのです。死後事務委任契約というものがあり、公証役場にいけば手続きできます。ただ、費用がかかることもあり、ほとんど知られていないのです。

赤字のケースも仲介への助成を

 高齢者の孤独死の心配もあります。ところが、日本少額短期保険協会の統計によると、60歳以上で亡くなる方は約半分で、残りの半分は60歳未満。年齢で線引きするというのは、実はあまり意味がないのです。

 不動産業者は、業者間専用の物件流通サイトを使って、希望の家賃や広さなどを入力・検索。該当する物件について、一件一件管理する不動産業者に電話します。しかし、住宅困窮者は断られることが多く、手間がかかるので、嫌がる業者もいます。めぐり合わせですね。

 民間支援団体などに「どこの不動産屋がいい」と聞いてみるのも一つの方法です。(別項「留意点」参照)

 建物自体のスペック(仕様)よりも、自分自身のライフスタイル上、欠かせないものを中心に選んでもらった方が間違いないかと思います。

 仲介手数料は難易度に関係なく、最大で“1カ月の賃料+消費税”です。非常に手間がかかると、時給換算で500円にもならす、赤字になるケースもあります。これでは、住宅困窮者の依頼が敬遠されてしまいます。仲介業務に何らかの補助や助成があれば、引き受ける業者も増え、もっと時間をかけることもできると思います。

入居支援ふまえた留意点

(1)内見はなるべく多く行く。内見したら評価は○×ではなく、「第1希望、第2希望…」で。さらに、違う物件を内見したら、順位の“入れ替え”を。物件の知識が蓄えられ、自分が気にいる物件がどういうものか、誰でも頭のなかで絵を描けるようになる。

(2)マンションを内見する際、空き部屋があれば全部見るべき。同じ家は二つとない。同じマンションでも、日当たりや配管の具合などで全部違う。

(3)足腰が悪いので、駅から遠い・階段で3階以上はムリなど、どうしようもない条件は必ず伝える。

(4)勤め先までの交通アクセスは要チェック。かかりつけ医を変えたくないのであれば通院先も同様。

【柿本さんへの問い合わせ】

 ファクスで 03(6685)8237


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