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向こう側 こちら側

久々に追われるこのない
ひとりの時間を過ごすことができた。
夏休みに入って自分以外のことだけに
時間を割く日が続いていて、
これがかなりのストレスだった。

スタバでコールドブリューを飲み、
ベリーヨーグルト&ベリーグラノーラを食べる。
時間にしたら30分にも満たない時間だったが、
このほっとできる時間はとても貴重だ。

私の座ったカウンター席は
目の前いっぱいにガラス窓が広がっていて、
歩き、横切っていく人たちがよく見える。

無音で動く人々は、日陰のためもあるかもしれないが、
皆一様に笑顔で、暑さに顔をゆがめている人はいなかった。
そのためか、向こう側が灼熱の世界だということを
私はすっかり忘れてしまうほどだった。

こちら側は雑多な音が耳に入ってくるが、
それすらも心地がいい。
働く音、話す音、めくる音、書く音。
ここには自分の時間を過ごしている人が多いのだろう。
だからこんなにも安心して過ごすことができる。

特別なことなどなにひとつしなかった。
ぼんやりと外を眺め、スマホをいじっていただけだ。
隣に座っていた若い女性は、
テキストを解いて日本語の勉強をしていた。
私もそんな風に前向きな時間を過ごしてみたいものだが、
カフェに入るとどうしてもくつろいでしまう。

しばらくして私は店を後にし、向こう側へと戻った。
あぁ、暑い。
きちんと暑い。

一端外へ出てしまうと、店の中はもう別の世界だ。
向こう側とこちら側が逆転し、
向こう側の涼しい世界はオアシスに見える。

ずっとあそこにいることは叶わない。
でも、それでいいと思う。
私は日傘を広げ、歩き出す。

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