ほんの一角

我が家のリビングは二重サッシになっていて、
外からの音がかなり抑えられている。

窓際に立って、蝉の鳴き声が聞こえてくるのは
それだけ外が賑やかと言うことだ。

窓の外に広がる景色を眺めていたら、
ちょうど私の視界の真ん中で
木から飛び立った蝉が見えた。

ちょうど風も吹いており、
枝も葉も揺らぐ中で
翻弄されながらも飛んでいる。

しかしどこに止まればいいのか
考えあぐねているようで、
なかなか木に止まれないでいる。

どうするのか観察していれば、
先ほど飛び立った場所と
ほぼ変わらないところに
再び止まっていた。
結局のところそこが一番落ち着くようだ。

昆虫も悩み迷うものなのだなと、
わずかな親近感を抱きほんの少し笑う。

別に何てことの無い風景の中の
ほんの一角を切り取っただけの場面だが、
いいものを見たような特別な気分になる。

ちょっとした幸せ。