今の彼女との出会いから今現在に至るまでの話

僕は2017年の春に今の会社に入社しました。

入社前、大学4回生の時に内定者懇親会と内定式がありました。どこの会社でも同じようなものだと思いますが、内定者懇親会が8月にあって、内定式が10月にありました。

内定者懇親会は就活生にとって、自分が入社する会社の同期と初めて顔をあわせる場になります。

僕は5月末に内々定を貰って、内定者懇親会の出席しましたが、その人は内定者懇親会の時にはいませんでした。そして内定式で初対面。でしたが、この時は何も思っていませんでした。一人女性が増えたなと思うだけ。顔も覚えていなかったし、興味もありませんでした。 


その後大学を卒業して、入社式を迎え、社会人になりました。最初は事業部や高卒、大卒関係ない新入社員研修で、名刺の渡し方とか、会社の概要とか、社会人の基礎とかいろいろなことを叩き込まれました。

約1ヶ月の新入社員研修後、ゴールデンウィーク前に配属式というものがあって、研修のあとにひとりずつ名前を呼ばれて配属を言い渡されます。僕は学生時代に簿記をやっていたし、数学は苦手ですが電卓を叩くのは好きだったという理由で経理を希望していました。

しかし、僕が偉い役員さんに言い渡されたのは営業でも経理でもなく、聞いたこともない部署でした。同期はみんな、何そんな部署あるのみたいな顔をしていました。

そんな中、僕と同じ配属先の部署を言い渡された人が一人だけいました。内定式に来ていた女性です。

ここで初めて彼女の名前を覚えましたが、かわいいなとかいいなとかそんなことは全く思っていませんでした。ただ僕と同じく、よくわからない部署に配属される予定の同期であって、それ以上でもそれ以下でもありませんでした。

集合研修のあとは事業部に分かれて研修をすることになるので、彼女とは部が一緒だから研修も一緒に研修を受けることになります。必然的に話すことも増えました。

こんなこと書くことは憚れるのですが、彼女よりもかわいい人、きれいな人はいくらでもいます。それでも何か惹かれるところがあって、次第にいいなと思う気持ちは自分自身で自覚できるほどの大きさになっていきました。なんだかかわいいなって。

一方で、前の彼女との出来事がいつまでも尾を引いていたので、恋愛に対する態度は消極的でした。ですので、僕の中で彼女の存在は非常に厄介な存在でした。なんだか余計に気になって仕方ないのです。


そして約半年が経過しました。ある日、何気ない会話をしていると、九州出身の彼女がちょっと変わったところに行くのが好きだと言うので西成にでも行ってみるかと提案したら乗ってきて、一緒に出かけようという話になりました。

よく3回目のデートで告白するのがマナー的なことが言われますが、僕は彼女と3回目のデートにこぎつける自信がなかったし、彼女も少しは僕のことを意識してくれてはいる。少なくとも一緒に出かけようといういうくらいだからマイナスには捉えられていないと、この時は”勝手に”思っていました。蓋を開けてみるとこれも僕の自惚れだったわけですが、だから僕はこの日に彼女に、彼女になってほしいという意思を明確に伝えようと思っていました。

天王寺動物園とか飛田新地周辺とか三角公園をぶらぶらして、最後はあべのハルカスで大阪の夜景を二人で見ながら告白をするなんて意味不明ことを企んでいたものの、思い通りになることはなく午後3時ぐらいにあべのハルカスに着いてしまい、夜景どころか真っ昼間じゃねーかと、どうしたらいいかわからなくなりました。

こんな真っ昼間にファミリーと中国人観光客の前で醜態を晒すわけにもいかず、完全にタイミングを見失ったのですが、それ以上に今日中になんとかしないといけないという危機感がありました。今日を逃すともう無理だと思っていました。

どうしようどうしようと僕が勝手にモジモジしているうちに、結局夕食を食べて解散という流れになっていまい、JR天王寺の環状線外回りのホームに来ていた電車に乗り込みました。あれほど味のない食事は久しぶり、というか何を食べたかも覚えていません。

彼女は京橋で乗り換えで、僕は大阪で乗り換えなのですが、この時電車がホームに滑り込んだばかりで先頭車両には僕と彼女以外に人はおらず、僕にはこのタイミングしかないと思いました。

自分から女性に好意を伝えることはこの時が初めてだったし、このタイミングしかないというものの、少なくとも環状線の電車の中というのはいいタイミングではなかったと思います。他の人だともっと上手くやれたに違いない。

僕は他に誰もいない車両の中で、隣の彼女に「好きです、付き合ってください」と伝えました。彼女の表情からは何を思ったのかよくわかりませんでしたが、とりあえず電車を降りてホームで少し話をしました。この時彼女はあまり話しませんでしたが、しばらくして彼女は「よろしく」と言って僕と握手をしました。

僕は自分の告白が受け入れられた、彼女も僕のことを好きだったんと勘違いをしていたのですが、実際のところこの時点でも彼女が僕のことを好いていてくれるということはなく、むしろ一度よろしくと言ってしまったがためにどうしようかどうしようかと悩んでいたようです。

結局この後しばらくは、どうしたら僕と別れられるかを考えて、ツイッターにやり場のない感情をぶちまけていたということを聞いたのは、これから半年ほど後のことです。


短い社会人の夏休み、僕は彼女の地元に行くことにしました。彼女と付き合い始めてから1ヶ月も経っていませんでした。彼女の地元は九州で、新幹線で先に行っている彼女に会うべく、僕は青春18きっぷを購入し、大阪から在来線を乗り継いで博多駅に向かいました。彼女の地元に行くというものの、彼女に会いたいというもの以外に目的はなく、ご両親に会おうとか、チューしようとか、そんなことはまったく頭にありませんでした。

博多駅で彼女と合流し、福岡を案内してほしいと言いました。電車に乗って水族館に行き、キャナルシティの無印良品で買い物をしました。この時初めて手を繋ぎました。天神に戻って帰り道、「もう用事はすんだから帰る」と言って、別れ話をした後のように彼女は呆気なく帰っていきました。

 

僕はその夜博多から新山口まで移動し、駅のベンチで一夜を過ごしました。翌日、山陰本線で出雲に向かい、出雲大社にお参りをした後、出雲から特急やくもに乗って岡山に向かいました。

乗客も少なく、ひどく乗り心地の悪い特急やくもの中で、涙を堪えることができませんでした。彼女が発した言葉の裏に僕を傷つけたいという明確な意思を感じ、もうこれで終わりなんだと思うと自然に涙が出ました。どれだけ泣いても車内はうるさいから聞こえないだろうとなんて考えると次から次に涙が出て、通路を挟んで反対の席にいるおっさんが不審者を見るような目で僕を見ても気にならず、とにかく声を殺すこともやめて盛大に泣きました。

ここまで読むとまるで僕ばかりがなにか悩んでいるような印象を受けるかもしれませんが、彼女は彼女なりに悩んでいたことも知ったし、むしろ僕以上に悩んでいたのかもしれません。

彼女は明確に僕のことを好きではなかったし、自分が好きではない男に好きだと言われ、自分はどうしたらいいものかと悩んでいました。どうしたら別れられるかを考えていました。


しばらくして、旅行に行こうという話になりました。行き先は鳥取。大阪駅から特急スーパーはくとに乗り乗り込みました。滅多にない3連休でしたが、大型の台風が近づいていました。

初日は雨。鳥取砂丘を見るために鳥取駅前からバスに乗り、風と雨が打ち付ける中、二人でだだっ広い砂丘を登りました。人は少なかったです。メルカリで買ったるるぶに海鮮丼がおすすめだと書いてあり、鳥取砂丘の近くにあったお目当てのお店に行くと本日は満席と言われ、近くにあったよくわからないお店で海鮮丼を食べました。彼女はサーモン丼を食べていました。

翌朝、その日予定していた帰りのスーパーはくとが台風で運休になることを知りました。朝から大雨で観光どころではなかったので、そこら辺の観光地を散策して、とりあえずカラオケに避難。

夜になると雨がさらに強くなりで、傘をさしても横殴りの雨でびしゃびしゃになりました。人もほとんど見当たらず、洪水状態の駅前の商店街を2人で走りました。

コンビニでお弁当を買って、適当に予約した狭いビジネスホテルでお弁当を食べました。彼女はこの土砂降りの日以降、僕のことを好きになった言っていました。

台風が通過し、すっかり晴れた3連休の最終日。僕たちは倉吉の街を散策し、なしっこ館という梨の博物館のようなところでこれでもかと梨を頬張り、梨狩りをしました。

なしっこ館から倉吉駅までのバスが発車する停留所がなかなか見つからず、やっとの思いで停留所を見つけるとバスは発車したばかりで、帰りのスーパーはくとに間に合わないことがわかりました。僕は激しくテンパったものの、彼女は冷静にタクシーを呼びました。本当に素敵な人です。


以降、いろいろなところに行きました。北海道とか、愛媛とか、フィンランドとか、台湾とか。そして、いろんなことを話しました。

それと、初期に比べるとだいぶトゲがなくなりました。相変わらず何を考えているのかわかりませんが、それ以上に彼女は僕のことを何を考えているのかわからないと思っているでしょう。 

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