アプリで出会った私の好きな人

私には今好きな人がいる。
普通の恋人になれるわけでもなく
彼に他に女がいようとも何も言える立場でもなく
そんな私は今日夢を見た。

彼とはこの令和の時代では特別な珍しさもない
とあるアプリで出会った。
彼からのメッセージで会うことになった。

それがたしか9ヶ月ほど前。
暇つぶしのつもりだったし好きになる予定なんて
なかった。でもそんなのはいつも予定でしかない。
初めて会ったあの日のことは忘れない
お互いに何か通じるものがあったように
時が一瞬だけほんの一瞬止まったのを私達は逃さなかった

その日に私を抱こうとした彼の誘いを断った。
簡単に抱ける女になりたくないという
私なりのちっぽけな足掻き。
本当はそんなことどうでもいいのに。
少しだけ背伸びして大人なふりをして
いい女ぶってみるけどなりきれない自分が憎たらしい。

会えば会うほど好きになった
下手なセックスをする男が嫌いなはずだった
なのに優しすぎるあなたが好きだと言ってくれる
そんなあなたを好きだと思ってしまった
そもそもそれが全ての間違いだった
こんなはずじゃなかった
ただ欲の満たし合いをする関係でよかった
あなたが最低な男なら心底嫌いになれたのに
他の女を抱いてるくらいのあなたじゃ到底
嫌いになんてなれない
結婚してるという事実だけを突きつけられても
そんなの嫌いになる理由になんてならない

誰かに好意を抱くたびに思う
あなたを嫌いになれる理由が欲しかった
最低だと思わせてくれる行動が欲しかった
ちゃんと傷つけて欲しかった
中途半端な優しさが一番傷付く
嫌いになれないという事実が一番辛いということ

夢の中で出会った彼もアプリの中にいた
一言
「中出しさせてくれる人」
ぼんやり映るその文字が現れたのは一瞬だった
たまたまアプリにログインをしていた彼
一言メッセージを何度か書き換えていた様だ
その文字はすぐに消えた

私は完璧なくらいにタイミングがいい
そして同じくらい絶妙にタイミングが悪い

目を疑ったが紛れもなく彼のプロフィールには
私が嫌いな文字が並んでいた
目から涙が溢れた

夢と現実の境目が分からなくなった
毎日アプリにログインをしている彼を
必死にストーカーする様に見守る私
これは紛れもない現実だった

あの時私にかけた言葉をきっと
今はどこか知らない女に同じようにかけている

少しの間だけでも好きって言ってくれて嬉しかったよ
ありがとう。
さようならはまだ言えそうにないけどね。

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