2020/5/14-15 夢

(それぞれの夢に出てくる私以外の人間は全員、
現実において面識も見覚えもない人間達であった)


1・2

夢のなかでも私は私自身であったが、それは10歳未満のときの私だった。
子供の頃からお家に遊びにいけるような関係の、
実在しない知り合いがいたことになっていた。
子供用の光る玩具を家にたくさん置いているおじさん。
身なりも、おそらくは心もきれいな人ではあった。

たまに貸切でイベントを開催しているクラブに、
他にお呼ばれしていた子供達共々連れて行ってくれた。
といったようにその素行はアウト寄りではあったが、
ただその動機は、子供達に未だ見たことのないような光を見せたい!の一本でしかなかった。
(夢から醒めて思い出していて、
夢の中で感じられていたこの人にはかなわないな、
といった心境になった。)
この他にも同様の動機で、これとは別の沢山の場所に連れて行ってくれて、
それぞれの場所にあるそれぞれの光を見せてくれた。

(きれいな夢でもあったはずなのに、
メモを取り切れないまま次の眠気にさらわれてしまった。
もったいないことをした)

この家に呼ばれていた子供のひとりに、ある男の子がいた。
この子の存在は夢の2部にも引き継がれ、クローズアップされる。

18歳くらいのとき、純粋なままで育ちきった姿の彼と再会した。
見た目が綺麗なのでよけいに、よくこんなにもきれいな人間に育ったものだなあと感心してしまった。
(この私の偏見の強さが夢を見ている私自身のそれに等しいあたりから、夢の限界を感じた)

自然と仲良くなり、恋人の関係となって彼のお家にお呼ばれするようになった。
家族編成は父母姉がひとりずつ。
どなたも私との接し方に迷いが見られてはいたが(特にお姉さん)、
できる限りでよく接してくれていたのはわかっていた。
実際の窓の外やテレビを介して見える街の、知らない人々の様子をみて、
その人々について好きなように、穏やかに話す時間がいちばん楽しかった。
またその時間を両者ともに大切に感じていたのだと、
(あくまで私視点の夢ではあるが)そんな確信めいた空気があった。

彼の住む集合住宅は総じて経済的に恵まれている世帯で占められているように見え、
彼の家庭に関しても例外ではないようであった。
ある時、彼のお家に向かうまでのエレベーター内で、
そこに居合わせた同い年くらいの女の子と親密に話すイベントが発生した。
(落とし物を拾った、程度のきっかけだったと思う)

彼女が偶然にも彼の隣の部屋に住んでいたために、
その部屋のドアを開け、閉ざされる前に聞こえてきた『ただいま』の一言までのすべてを見届けた。
それまでは心から楽しく話せていたはずだったのに、途端に心が冷えていった。

自分は通っているだけのこの住宅に住んでいる彼女と、
体感をともにしたといえるような瞬間は、本当にあったのだろうか。
そしてそれは、これから私が開けるドアの先にいるであろう彼についても言えなくはないことではないだろうか。
夢1部の体験といった共通の古い思い出はあるものの、
隣人の女の子との違いといったら、それだけに過ぎない。


3

(もしかしたら夢2部の続きなのかもしれない)

私はテレビ番組の視聴者であった。
ある街なかを歩く女学生達に、警官のような服装をした番組スタッフ一行が突撃インタビューをかます、といった内容。
(警官のコスプレしてこういうことするのはアウトだったはず、夢から醒めてから気がついたけど夢の中ではそこに違和を感じなかった。
ただ夢の中でもあまりに目立つ声掛けをしてしまったがために、
インタビュー中ずっと本物のおまわりさんが遠巻きにそちらを伺っている、といった事案が発生した回もあった、
ただそこも笑うポイントとして用意されたカットであり、
やはり少しだけ、ただ根本的に都合の良い世界設定ではあったようだ)

やり方の強引さの割に、インタビューの目的は街の女の子達の素朴さ、ありのままさを推し出すもので、
無理に何らかの感情を引き出すものではなかったため、
インタビュイーとなったの女の子達もはじめは警戒心をもつものの、次第に笑顔で質問に応じるようになっていた。
またその様子は、視聴者である私にも適度なスリルと、
そのぶんが加算された沢山のあたたかみをもたらしてきた。
楽しく視聴できていた。

"できていた"としたのは、11人目と12人目が話したありのままの生活が少々異様に感じられるものであったため。

11人目は詳細を覚えていないが、その半年前にも同様の企画でインタビューされた子であったとのことで、
その前回から進展した日々について語っていた。
しかし、彼女を取り巻くこの環境が変わっていてほしい、と感じていた箇所(番組がそう促してきたわけではなく、視聴者である私の感じたことであったのは、少なくとも夢の中の私にとっては確かなことだった)、
それについては、別段変わりないようであった。
(住宅展示場の付近でのインタビューであったことが印象的であったため、家庭環境に関することなのかもしれない、
というのは夢から醒めたあとの浅い見立てでしかないが)
彼女は笑顔で手を振り、立ち去る。

12人目は学校の前でインタビューに応じていた。
『学校でどのように過ごしていますか』との質問に、
この子はありのままの生活行事、何らかの思想に沿っているのであろうそれらを、
何の疑いもない表情と弾む口調で、紹介し続けていた。
具体的なケースを覚えてはいないが、
ある生徒が体験した個人的な悲しみを、より多くの皆と共有させていき、
校内に広がりきったところでそこからの脱却を皆で検討し、
導き出された解決策がどのようなものであっても実行する。
(とにかく悲しみを体験した生徒の悲しみが払拭されることが目的であるようだった。
つまり、その解決策の線上で学外の人間にどのような不幸が起ころうともそれを厭わない)
これは毎日新しく行われる行事であり、おかげさまでとても張りのある日々を送れている、
といった旨の回答を返していた。
また、彼女自身の悲しみが共有されたことはまだ無いとのことであった。
(これが最も印象的な行事であった、他の行事を思い出せない)

テレビ番組は12人目のインタビューの終了とともに終わった。
つまり、最後ふたりのインタビューを含むそれらの内容をもとにして、
番組側が視聴者へ特定の倫理観を示唆させるような動きは一切なかった。
それだけに異様さばかりが、番組の終わったあとも残り続けた。

(その後目が覚めるまでの間に(少なくとも覚えていられるような)夢はなく、
ただこの最後の心境だけは残り続けていた)

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