南極ゴジラ『ホネホネ山の大動物』感情備忘録

始まりは映画みたい。
1幕、登場人物たちはずっと怒鳴ってるんだけど見てて全然嫌にならなくて、愛おしくてちょっと可哀想で一生懸命で。
拡声器を通した声、プロジェクター、ライブカメラ、生演奏、生歌、みんなで作り上げるんだという絆が見えて、どこにとどまるでもなく自分で居場所を作るでもなくふらふらと、宙ぶらりんのままの自分が少し嫌になった。いいなぁって、いいなぁー!って思った。こんな夜には誰かとお酒でも飲みながらお芝居のことについてぐだぐだと語り合いたい。
雲の流れが速い。曇った色だけどところどころ日の光を浴びて金色に輝いている。まだ明るい少し薄暗いくらいの空に街灯が灯っていくちぐはぐさ。でもここから夜になるのは一瞬で。
この短いちぐはぐ時間を見逃さないように窓の外をじっと眺める。この道を通ると思い出す。あの人に言われた厳しい言葉。なんで私はお芝居を続けているんだろう、考えれば考えるだけ無駄だし答えが見つかっても見つからなくてもきっとわたしはお芝居の切れ端を絶対に離すことなく手の中にぎゅっとしまって生きていくのだろう。言葉ことば言葉を上手く使えない使えるようになりたい。この一瞬の複雑な感情を言葉に残して好きな時に読み返せるように、成長したな変わってないなこんなこともあったなと笑えるように自分のことがわかるように愛おしいと思えるように、言葉を使いたい。

2幕、メアリーの存在意義?この子いる?って思っちゃったけど孤独な微熱にはゆうれいがついてでもしないと可哀想かもと思った。美羽太郎さん、変わり者で破天荒なキャラクターかと思ったけど恐竜に関する知識や考察は至って真面目で本物でこの人の人生をもっと覗いてみたいと思った。メアリーにどこの時点で恋したのか、なぜ好きになったのか知りたい。ギター弾くの??え??好き?????しおりちゃんが歌ってる…好き…くるくるの髪とヘルメットに埋もれたキラキラの黒目は紛うことなき11歳の少年の目だった。ツンとした鼻と唇も可愛い。懐かしい仲間との再会、新たな人生を見つけてキラキラ生きている。死んだ人物の息子、それがきっかけで再び外に出ることになった星干男。全てが予定調和な気がする2幕の中盤くらいまで、「あぁ、1幕で頂点まで突き動かされた情熱が冷めちゃったな」と思いながら見ていた。いい意味でのクールダウンには自分の中ではならなかった。1幕のドキドキワクワクを求めてる自分がいた。ので、バードマンとトンカチのシーンでキタキタキタキタどテンションがぶち上がった。これが欲しかったのよ、このハラハラ感を求めてたのよ。トンカチの目がまじだった。バードマンの弱さも本物だった。干男がブロントサウルスと対峙する、微熱、九龍九作、重なる面影楽しかった思い出、後悔、ただ一緒に楽しく河原で化石を探していただけなのに。干男が探していた化石は恐竜じゃない、九作だったのかもしれない。上がる体温。燃えるように熱く、ガソリンをかぶり体を鉄砲で貫かれ恐竜の骨と共に燃えてしまった九作のように、九作を思いながら死んだのだろう。
なんて楽しくて悲しくて愛おしくて羨ましくて愛に溢れた物語だろう。愛をください、ZOO。
史劇、だったけど根本にあるのは2人の友情。
トンカチは11年経ったあとも心から九作を尊敬していて、九作がいない自分は自分じゃないと自分を殺してしまった強火九作担。あんなにこき使われてお前は使えないと口汚くなじられても彼だけは九龍を心から尊敬していて、心から彼の誕生日を祝おうとしていた。歯車が上手く噛み合わなくて、ファスナーが上手く噛み合わなくて、ボタンをかけ違えて、あのタイミング。あのタイミングだけは上手くいかなくて、自分のせいだと思い続けて。とにかく可哀想。バードマンと干男を殺した彼は救われたのだろうか。あの後彼も直ぐに、本当の意味で死んでしまったのではないか。
新種の化石を見つけても言い出せずに九龍の指示に黙って従う姿がいじらしい。
モグラ、名脇役。
点々、名前が可愛い。木馬が似合う。強くてわがままな女は良い。九作とどうやって出会ってどう恋に落ちたのだろう。点々にも結婚していいと思えるくらい九作を愛した瞬間があったのかなぁ。微熱の親問題、そこはこんにち博士さん自体も決めてないのかなぁ。



微熱。とにかくずるい
初めて会ったのは彼女が高校生の時。とあるワークショップ。私はスタッフで参加していた。オンラインでの開催だったのもあり、彼女のお芝居や人柄もよく分からないまま本番を終えた。次に同じ舞台の稽古で再開した時には南極ゴジラに入団しどんどん活躍の場を広げているときだった。稽古場で再開したしおりちゃんは化け物だった。上手すぎる、可愛すぎる、歌も歌えるの?凄いな、これは売れる、売れるぞ…!と近所のお姉さんみたいな気持ちで見守っている。
本当に紛うことなき訳ありプリティーボーイだった。こんなにヘルメットが似合う少年はいない。
最後のシーン、悪魔を汚せのラストを思い出した。
しおりちゃんが最後に叫ぶ舞台はいい。良くなるに決まってる。2人をブロントサウルスが繋いだ。九龍微熱が2人を仲直りさせた。そんな気がする。これは化石が、恐ろしい竜、恐竜の骨が大好きな2人の男、星干男と九龍九作の友情喧嘩仲直り物語だ。

胸がいっぱい、いっぱいすぎて言葉にならないので今のこの感情を今この瞬間にコールドスリープして何年もかけて紐解きたい。素敵なものを見たらあらゆるものに対して感情が湧き出てくる。凄い楽しい愛おしい悔しいずるい綺麗羨ましい。
何が言いたいかって言うと本当に見に行けてよかった!



観劇から数カ月がたち、この下書きを見つけた。
多分、推敲してから投稿しようとしていたのだと思うけど、いまさら言葉を変えてしまうともったいない気がするのでそのまま投稿することにしました。

今読み返すと本当に殴り書きの感情の暴力みたいな文章だな、と思う。
所々でとってもめちゃくちゃなこと言ってる、本当にごめんなさい…。


でも、本当に本当に大好きな物語だったな、と、読み返して改めて感じました。
素敵な物語をありがとう南極ゴジラ。
これからも、どきどき、わくわく、ちょっとこわい物語をたくさん見せてください!


おわり

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