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日々是着物

昔、嫌で嫌で仕方がなかったのは、実家の祖父の記憶。

祖父とは、僕が中学に入るくらいまでは大変仲が良く、
小学校高学年くらいまでは、毎年夏の甲子園予選を観に、
自転車に乗って市民球場まで毎日のように通ったものだ。

中学に入って吹奏楽部に所属する事になるが、
僕の通っていた中学校は地方大会で金賞常連の強豪校だったので、
ほとんど毎日、早朝から下校時間を超えるくらいまで練習漬け。

必然的に祖父と面と向かって話をする時間もなくなっていった。

高校に入ってからは、僕が酷くやさぐれてしまい、
祖父とも反りが合わなくなったまま、大阪の大学へと進学してしまった。
祖父は、僕が大学三回生の時に肺ガンで亡くなってしまった為に、
残念ながら、ちゃんとした形での関係修復とはならなかった。

今、思い返すと、祖父はなかなかお洒落な人で、
オーダーメイドのジャケットを大事に着ていたし、
いくつかの帽子をその時の気分で被りわけていたようだ。

そして、そんな祖父が洋服よりも好んできていたのが着物だった。

日常の中で、いつも変わらない着こなしで、盆栽の世話をしたり、
競馬に行ったり、煙草をふかしたり、何より僕といつも遊んでくれていた。


今、僕の日常は、お昼の仕事に行っている時以外は、
だいたい着物で過ごしている。もしくは裸。
急に宅急便が届いたりすると、裸に浴衣だけを羽織って、
帯留めクリップで簡単に止めて出たりするくらいに日常。

おじいの形見となった黒の薄羽織は、僕があまりに着過ぎて、
すでに痛んでしまったのだけれど、同じような黒の薄羽織を見つけてきて、
またもや馬鹿みたいにずっと観に纏っている。

こんな僕の姿を、祖父が生きていたら、どう思ったのだろうか。
喜んでくれていたのだろうか。

着れば着るたびに、着物を纏って日々を過ごすことが、自然になっていく。

そういえば、祖母が僕に仕立てるつもりで用意してくれていた、
「正絹の大島」が押し入れの奥で眠っているのを思い出した。

そのうちに、仕立てに出さなければいけないなぁ・・

私の為に注いでくださった想いは、より良い創作活動への源泉とさせていただきます。こうご期待!!