そして世界は終わりました
どうやら世界の終わりが近づいているらしい。大地震がおこったわけでも隕石が落ちてくるわけでもないが、多分何もかも終わるのだ。よくわからないけどきっとそう。だから私の冴えない人生もこれにて終了。
もっとくわしく説明しろと言われても困る。何せ私にわかるのは、黒いなにかが次々と物や人が飲み込んでいるということだけなのだから。
そうこうしている間にもどんどん飲み込まれていく。その様子を映していたテレビさえ今途切れた。ここもじき飲み込まれるはずだ。いっそ抵抗せず静かにそのときを待とうか。半ばあきらめながら町を眺めていると不思議な気持ちになった。
この光景はあるものに似ている。思い出した。小さい頃によくみたアニメだ。最後には黒字にくりぬかれた小窓から顔を覗かせた主人公が「もうこりごりだ~」というようなせりふを残して終わる。いちどそう思うとそうとしか見えなくなってくる。
枠はどんどん狭くなる。もしやこの中に主役がいるということなのだろうか。どうせあと数分の命、これで暇をつぶすのも悪くない。
うんうんと考えているうちに枠の中には数人と一匹しかいなくなった。女子高生、みるからに暗そうな青年、小さな子供、初老の男性、動物園から逃げ出した虎、私。一体誰が主人公なのだろう。
青春系はなにかと絵になるから女子高生か。それとも未来ある小さな子供か。いやいや鬱展開には暗そうな青年か。哀愁ただようおじさんものなら初老の男性かも。まさかのまさかで私だったり。虎?
青春系か、未来を託すのか、鬱展開、おじさんもの、まさかね、虎?青春系、未来、鬱展開、おじさん、まさかの、虎?青春、未来、鬱、おじさん、まさかー、虎?
最初に初老の男性が飲み込まれた。だめだったか。次に青年が飲み込まれた。さてどうなる。女子高生も飲み込まれた。
…
選ばれたのは虎でした。小窓から覗く虎がこちらを見て「ゴロロ」とのどをならす。
なーんだ少しだけ期待してたのに。虎にも負けるんだね私の人生って。そう思って目を閉じた。
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