ASローマ 選手採点 2023-24


ゴールキーパー

レギュラー交代のGK。大ブレイクのスヴィラルを、パトリシオがサポートした

ルイ・パトリシオ
24試合 6CS【5.5】
昨季から散見されたセービングの粗が目立つようになり、ポジションを失った。スヴィラルに比べると、被得点期待値に対して実失点が多く、セーブ率は低い。少なくとも2失点は自身のミスによるもので、それ以外にも原因の一端として賛否を生むことも。ペナルティエリア外でのアクションの少なさ、ロングキックの選択率の高さも相変わらずで、モウリーニョ監督は問題視しなかったようだが、デ・ロッシ監督のやり方には合いそうになかった。詳しいことは分からないが、サブ降格後もスヴィラルとの関係が良好に見える点は好印象だ。

ミレ・スヴィラル
30試合 10CS【7.5】
監督交代を機に出場機会を与えられた、シーズン後半戦のMVP。積極的かつ冷静な飛び出し、正確なディフレクティングなどで一気に評価を高め、とりわけ大会ベスト11に選出されたELでの好プレーが印象深い。セリエAでの活躍ぶりも数字に残されており、セーブ率、クリーンシート率、クロス阻止率、被得点期待値に対する実際の失点回避と、さまざまな数字がリーグのトップクラスだ。足元のスキルも悪くなく、パスのうちロングキックの比率は国内で最も低く、デ・ロッシの戦法をピッチ上で表現するように努めた。

ディフェンダー

CBは選手層も含めて充実。一方、SBはとくに右サイドに不安を抱えた

ジャンルカ・マンチーニ
49試合 7得点 1アシスト【7.0】
加入から5シーズン目となった今季も、これまでに続いて出足の速いパワフルなプレーで守備を固め、副主将としてもチームを支えた。以前から右サイドを駆け上がるオーバーラップが魅力だったが、ELのミラン戦ではピッチの左寄りで攻撃参加を繰り返すなど、器用な一面も。そのミラン戦とローマダービーでは3試合連続ゴールを記録しており、CBとしては指折りの得点力も発揮。モウリーニョ政権下を含めても全体的におおむね好調を維持した選手の一人で、なおかつ何回かの見せ場もつくるという充実のシーズンだった。

クリス・スモーリング
12試合 -得点 -アシスト【5.0】
デ・ロッシ監督就任以降はレギュラー待遇ではなくなったが、空中戦では昨季と変わらない異次元の勝率を誇るなど、一定レベルの価値を示した。ELのミラン戦ではフル出場で連勝に導き、守備固めで投入された試合ではほぼ確実にシャットアウトに貢献している。ほかのCB陣と比較すればボールスキルの欠陥はみられるものの、前監督時代から時を止めたわけではなく、プレーの変化がいくらか見受けられた点も好材料だ。ただ、4カ月の離脱は大きな減点材料であり、むしろそのイメージが強いシーズンとなった感は否めない。

ディエゴ・ジョレンテ
41試合 1得点 2アシスト【6.0】
およそ92%という高いパス成功率を記録。技術的な安定性は高いレベルにあり、パスコースを見つけ、中盤または前線の選手にボールを預けることを苦にしなかった。ただ、デ・ロッシ監督就任後(あるいはCBが5人体制になったあと)には序列が下がり、ベスト16以降、ELではまとまったプレー時間を与えられていない。タックルやインターセプト、ブロックといった守備スタッツもまずまずの水準で、ターンオーバーを成立させるための信頼に足る選手ではあったが、ビッグマッチでは先発できないことも少なくなかった。

エヴァン・エンディカ
34試合 -得点 3アシスト【6.0】
しばらくローマに欠けていた左利きのセンターバック。アフリカネーションズ杯などの離脱期間を除いて基本的には先発出場を続けており、同ポジションのライバルは多かったが、確かな地位を保ったままシーズンを終えた。相手FWの先手を取ることよりも、リスクを抑えた守備を選ぶことが多く、マンチーニやジョレンテよりも相手にドリブル突破を許した回数が少ないというデータが残っている。そのほか、敵陣方向にボールを運んだ距離が長いという特徴も数字に表れた。

ディーン・ハイセン
14試合 2得点 -アシスト【5.5】
CB陣の負傷、出場停止、国際大会参戦といった事情が重なって加入当初はそれなりの出番を与えられ、確かな個性をもつ選手として評価されながら、おまけにスーパーゴールで話題を呼んだ。ピンチにつながるミスを度々起こした半面、横パスやバックパスに逃げず、やり過ぎなくらい積極的に縦パスを狙う姿勢は強烈なキャラクターを示した。半年契約であることも影響したのか、難敵との対戦が続いた終盤の10試合ほどは出場チャンスがなかったが、18歳としては胸を張れる戦いをみせたといえる。

リック・カルスドルプ
28試合 -得点 2アシスト【5.0】
出場時の平均獲得勝ち点はチーム内で最高値だが、そこに必然性は認められない。右サイドバックの中では先発出場が最も多く、モウリーニョ監督からは2カ月間、デ・ロッシ監督からは1ケ月間という連続スタメン起用の期間が与えられたものの、それを有効活用できず、ベンチに座る時間が長くなった。調子の良いときは右サイドバックの立ち位置に縛られない攻撃参加に努力を感じられたが、ファイナルサードではクオリティ不足を露呈。レバークーゼン戦でのミスは可哀想だが、擁護の声が少ない理由が分からないということはない。

ゼキ・チェリク
29試合 -得点 2アシスト【5.5】
カルスドルプやクリステンセンよりもポジティブなシーズンを送ったが、五十歩百歩だろう。三者間の比較において、得点関与数は先の二人と変わらず、先発回数は最少、出場時間は最短。ELのミラン戦での退場に関しても、チームが勝ったから許されているに過ぎないはずだ。とはいえ、スタッツを見るとたしかに優位性がある。90分あたりのタックル成功数、インターセプト数、シュートブロック数、運ぶドリブルの距離、ドリブル突破数、パス成功率など、空中戦以外の重要項目では軒並みライトバックのトップに立っている。

ラスムス・クリステンセン
31試合 1得点 1アシスト【5.0】
クオリティ不足が叫ばれたローマの右サイドバックの中で、とくに不足感が顕著だった。サイドバックにしては長身で、その体格を活かした相手ペナルティエリア付近でのエアバトルが効いた試合もあったが、そこに復調の活路は見出せず。ボールを運んだ距離やパス成功率といった技術面のスタッツは低数値で、ボールリカバリーやタックル成功、インターセプトといった守備アクションの回数でも、チェリクやカルスドルプに劣っている。本職のほかにセンターバックや左サイドバックを務めるなど、選手起用の面ではチームを助けた。

レオナルド・スピナッツォーラ
36試合 1得点 3アシスト【6.0】
最も輝いた20-21を比較対象にすると物足りないが、貢献度は低くない。相手ゴールに近づく平均ドリブル距離はリーグの全選手中で最長、ペナルティエリア内の味方に通した平均パス数も最多。さらに、チームのシュートにつながったドリブル突破はローマで最多、DFながらもファイナルサードでのタッチ数はディバラに次ぐ二番目と、全盛期を過ぎていたとしてもストロングポイントは一級品のままだ。ただ、ドリブル突破の約半数はラスト2カ月半で記録しているなど、負傷や戦術による好不調の波は感じられた。

アンヘリーニョ
20試合 -得点 1アシスト【6.5】
コラロフ退団以降のローマに欠けていたクロッサー型のサイドバックで、スピナッツォーラとはまったく異なる方法で左サイドを組織した。試合を見ていれば分かることだが、クロス成功率はサイドプレーヤーの中ではチーム最高となっている。自陣深くからのプレス回避も苦手とせず、守備面でも穴らしい穴はない。セリエAでは初めての出場から全試合を戦い、一方のELではかなり出番が限られたものの、レバークーゼン戦では奮闘した。今季のアタリ補強の一つであることは間違いないだろう。

ミッドフィールダー

監督交代に伴う好不調の変化が生じた。パレデスは新監督の下で向上

レアンドロ・パレデス
49試合 5得点 7アシスト【7.0】
守備時の不用意なポジション取りとチャレンジが悪目立ちしたり、ポゼッションを捨てた総攻撃では長所が活きにくかったりと、モウリーニョ体制下では苦しんだが、デ・ロッシ政権で息を吹き返した。モウリーニョ時代はセンターバックの選手が最もボールに触れていたが、デ・ロッシ監督の下ではパレデスが基点となってチーム最多のボールタッチを記録。また、縦パスを入れる意識が強く、ファイナルサードの味方に通した平均パス数はリーグの全選手中で二番目の数値を叩き出している。PKで発揮した強心臓ぶりも頼もしかった。

ロレンツォ・ペッレグリーニ
41試合 10得点 4アシスト【7.0】
監督交代を機に復調したが、新体制が始動した最初の2~3カ月で強烈なインパクトを残した一方、最後の2カ月では決定的な仕事を果たしていない。万能ゆえにそれなりの貢献度はあるが、チームプレーヤーに徹した印象は昨季とさほど変わらず、特別な輝きを放った期間は短かった。ディバラの存在が大きいのか、やはりアタッキングサードでフィニッシュに絡む働きはそれほど多くはないままで、それは新監督の下でも変わらない。ただ、時期的な偏りがあるといえ個人成績は十分で、オープンプレーでの得点関与数はディバラと同スコアだ。

ブライアン・クリスタンテ
52試合 4得点 5アシスト【7.0】
ファンの間でも起用法についてよく論じられる中、シーズン序盤の時点で相手ボックス内に侵入するスタイルがハマり、これまで以上の活躍を予感させた。しかし、インサイドハーフを軸として活躍しながらも、スタメンのどこかに不足が生じるとそれを埋めるのはまずクリスタンテであり、結局CBやアンカーを務めるなど、今季も役回りが固定されずに終わりを迎えている。それでも個人のパフォーマンスは一定の水準を保ち続け、累積警告による出場停止を除く全試合でピッチに立った。その大半でフル出場を果たす鉄人っぷりは見事だ。

エドアルド・ボーヴェ
45試合 1得点 2アシスト【6.0】
監督交代によって状況が難しくなった、数少ない選手の一人。デ・ロッシ監督の下ではよりテクニカルな要求が増し、クリスタンテやペッレグリーニ、パレデスの代わりに出場させる上での不安があった感は否定できない。前方向にパスを送る、自らでボールを運ぶといった部分でスタッツが伸びず、チャンスにつながるプレーは多くなかった。一方、苦境にあってもストロングポイントのボール奪取能力は健在で、没個性に陥らない魅力はあるのは確かだ。ミドルサードでのタックル数はリーグでトップ3に入る数字を残し、成功率も高い。

フセム・アワール
25試合 4得点 -アシスト【5.0】
随所でうまさを感じさせ、短い時間で4得点をあげたことも褒められるべきではあるが、全体的には物足りないパフォーマンスが続いた。とくに11月~2月の間は負傷やアフリカネーションズ杯による離脱でほとんど出番がなく、3~4月の一定期間ではボーヴェを上回る出場時間を得たが、地位の向上には至らなかった。プレーに多く絡むことよりも敵陣でのチャンスメイクに重きを置くが、ボールタッチやシュート、キーパス、相手ペナルティエリア内へのパスはそれほど頻度が高くなく、いずれもペッレグリーニの同スタッツには劣っている。

レナト・サンチェス
12試合 1得点 -アシスト【4.0】
短い時間でいくつかの好プレーを見せた序盤中の序盤は悪くなかったが、結果的にはそこがピークであり、あとは落ちるだけ。負傷が多かったのは自明のことだが、それでも全体の半分以上はメンバー入りを果たしていた。その状況下で約270分しかプレーしておらず、練習でもアワールやボーヴェを超えるアピールに失敗していたことが窺える。シーズン前から長期離脱が分かっていたエイブラハムとは事情が異なるため今回取り上げているが、これ以上に語ることは難しい。

アタッカー

ディバラ、ルカクはやはり別格。エル・シャーラウィも好調だった

パウロ・ディバラ
39試合 16得点 10アシスト【7.5】
出場時間あたりの得点頻度はリーグで5位、アシスト頻度は1位と、安定したハイペースで得点関与を続けた。小さな怪我は複数回あったが、ピッチに立てば確実に軸となれる存在であり、ローマの中では異次元なテクニックをもつ選手であることは明らかだった。ただし、“7強”+ボローニャとのリーグ戦の試合では、セットプレーを除くと一度も得点に絡めていない。インテル戦、窮地を救ったフェイエノールト戦、EL決勝戦、リーグ最終節など、随所で劇的な一発を決めてきた昨シーズンに比べると、特別感は若干薄らいだか。

トンマーゾ・バルダンツィ
18試合 -得点 -アシスト【5.5】
エンポリで昨季から注目を浴びてきた有望株だが、ローマの半年間では“うまさ”を披露するにとどまった印象だ。ディバラの後継者と目されているようなところはあるが、現状はより独力での状況打開を図る傾向にある。さすがにディバラに比べると大半のスタッツでは劣るものの、ドリブル突破数やドリブル距離はディバラと同程度だ(ただし、成功率はかなり低い)。得点、アシストともにゼロだったために高く評価することは難しいが、来シーズンの活躍が楽しみな選手だ。

ステファン・エル・シャーラウィ
48試合 3得点 9アシスト【7.0】
守備的な能力を含めたあらゆる技術が備わっており、ピッチのどこにいても、どんな役割でもこなすことができる。ボールを運ぶ、パス回しに参加するといった、敵陣に進んでいくための貢献度が高く、さらには上下動を繰り返しつつ、守備時の対応にも不備がない。そのうえでアシストも量産しており、与えられた役割はパーフェクトに成し遂げたといっても過言ではないだろう。ただ、ゴールという形でプラスアルファをもたらせなかった点は、これまでのエル・シャーラウィと決定的に異なる。唯一、物足りないポイントだった。

ニコラ・ザレフスキ
33試合 -得点 2アシスト【5.0】
やや不調だった昨季は起用法が不適切とする向きもあったが、監督交代によってポジションが変わっても、パフォーマンスが劇的に改善されることはなかった。問題視されていた対人守備は相変わらずで、ごまかしは利かない。正当なディフェンスを諦めてファウルを犯すシーンが散見され、レバークーゼン戦ではポジションを変えざるを得ない事態にも陥った。ドリブルで前進する、敵陣ペナルティエリアに侵入するといった部分ではチーム屈指の記録となっているが、試合結果を左右するような働きは少なかった。

ロメル・ルカク
47試合 21得点 4アシスト【7.0】
圧倒的な身体的アドバンテージを活かした強引な反転やドリブルで得点を生み、公式戦通算で21ゴールを記録した。セリエAでの13得点という記録にインパクトはないが、PKを除くとリーグ3位であり、好成績といえるだろう。また、以前はエイブラハムやベロッティが苦心していたポストプレーヤーとしての任務についても、無敵とはいえなかったが多くの試合で効いており、センターフォワードのキープ力に依存するケースが多い現チームにおいては不可欠だった。ほとんど怪我をせずに戦い続けたことも高い評価に値する。

サルダル・アズムン
29試合 3得点 1アシスト【5.5】
スタメン起用のチャンスが限定的であったため、短時間でのアピールが強いられるシーズンだった。その状況下において、試合に出ればプレーに絡むことにはあまり苦労せず、ルカクとの同時起用も多い中で、自らの役割をピッチ上で探すことができた。3ゴールに不足感はあるが、PK獲得が3回といった活躍もあり、最低限を超える貢献があったと捉えてもいいだろう。ただし、モウリーニョ監督にしてもデ・ロッシ監督にしても、あまり出場させていないことは事実。出場数は少なくないが、出場時間はチーム内でも際立って短い。

※セリエAのデータを用いるとき(とくにスタッツ別の順位に触れる場合)、90分換算で最低13試合出ていることを条件としています。

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