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漫才の《型》

今回は漫才の型についてお話しようかと.

漫才とコント

これはもう明確な区別が難しくなってきています.
サンパチ一本で出来たら漫才, 小道具を使ったらコントなんて分け方は最早正しいのか?って感じで.


漫才の型

しかし, 漫才は大まかに《しゃべくり漫才》と《漫才コント》に分けられます.

① しゃべくり漫才
会話形式で進む漫才です.
昔から漫才の王道と言えばこの形式で, 多くの師匠方がやっています.

会話形式で進むため,『練習してる感』が出たら違和感があります.
会話なんて普段練習しませんからね.
何度やったネタでも『初見の体で聞く』のが大事です.
また, あくまで日常の延長といった感じであるため, アクシデントが起きてもアドリブで対応が可能です.
(アドリブも技術なので簡単ではありませんが……)

② 漫才コント
「じゃあ俺××やるからお前××やって」を皮切りに, 役に入って展開していく漫才です.
今や漫才と言ったらこちらが主流かという程, 多くの方がやっていますね.

こちらは別に『練習してる感』が出ていても問題ありません.
役に入るなんて練習してないとダメですし, 逆に『練習してる感』がないと怒られます.
また, 流れを重視するためアクシデントに弱いです.

個人的にはしゃべくり漫才がカッコよくて好きなんですよね.


漫才コントが急増した訳

《漫才コント》は, 基本的に『こんな××は嫌だ』大喜利を自分達で演じる型です.
自分でありながら自分ではない演技をする訳です.

対して,《しゃべくり漫才》も同様に大喜利に基づく部分はありますが, あくまで会話で笑いを取る型です.
ネタであるため演じてはいるのですが,《漫才コント》とは決定的に違う点があります.
自分で自分を演じる訳です.

《漫才コント》
自分が自分ではない役を演じる.
→ 役に縛りがない.
《しゃべくり漫才》
自分が自分という役を演じる.
→ 役に『自分』という縛りがある.

何となく分かった方もいると思います.

《漫才コント》は,「誰でも演じられる」かつ「台本が書きやすい」んです.

大喜利のシチュエーションさえ浮かべば, あとはボケを出しまくってブラッシュアップして流れを作るだけ(この流れを作るのもまた技術ですが...)であるため, ネタを量産出来ます.
また, 会話でボケる《しゃべくり漫才》よりもポンポンとテンポ良くボケることが出来ます.

実際に漫才のネタを売っている作家さんがストックしているネタも殆どが《漫才コント》です.
演じる側のことが見えていなくても書けますからね.


漫才コントに深みを出すために

要は『誰でも出来る』から浅くなる訳ですから, そこに『自分』というオリジナリティを追加する訳です.

① NONSTYLE
NONSTYLEさんは典型的な漫才コントです.
ただ, そこに深みを出しているのが井上さんの『ナルシスト』キャラです.
大喜利一辺倒ではなく,『ナルシストキャラによる笑い』や『石田さんが井上さんをイジる笑い』が追加されることにより, ネタが深みが出て立体的になります.
② サンドウィッチマン
サンドウィッチマンさんには, 2人とも『コワモテ』という強力なキャラがあります.
『コワモテ』な富澤さんがおかしなことを言うだけでも面白いのに,『コワモテ』な伊達さんがそれにキツくツッコむ.
ただし, それだけでは伊達さんがただ怖い人になってしまいますが, 可愛い柄のネクタイを着けていたり,『焼き立てのメロンパンが売り切れんだろ』といった小ボケとなるツッコミを入れたりと上手く緩衝しています.

ちなみに,《笑けずり》という番組内でサンドウィッチマンさんが「ここをどんなパンにするかで2ヶ月悩んだ」と仰っていました.
たった一言のツッコミでもここまで考え抜いています.

③ アンタッチャブル
この2人も強烈です.
『べらんめぇ口調で強くツッコむ』柴田さんと『ウザい』山崎さん, コントに入ってもずっと普段の2人のままです.
《漫才コント》の体ではありますが, 《しゃべくり漫才》のように感じます.


しゃべくり漫才の復権

第1期M-1グランプリ(2001年〜2010年)を見て分かるように, 段々と漫才の流行は《しゃべくり漫才》から《漫才コント》へとシフトしていきました.

しかし, ここ最近になってきて《しゃべくり漫才》の流れがまた来ているように感じます.

① 金属バット
ここ数年で一気に注目されてきています.
ビジュアルに目がいきますが, 彼等も立派な《しゃべくり漫才》師です.
小林さんが素っ頓狂なボケをしますが, 何故か『こいつ本当に言っているんじゃないか……?』と思わせられます.
友保さんも『初見で聞く体』をするのが上手いんですよね.
② 宮下草薙
バラエティでの露出が多いですが, 漫才に定評があります.
草薙さんのネガティブに基づいたネガティブ漫才ですが, ワードにセンスがあるんですよね.
また,《しゃべくり漫才》でありながらネタに共通した流れ(フォーマット)があります.
これのおかげで, 笑いどころが分かりやすくなっています. ← 非常に重要
宮下さんも色々と面白い方で, これからテレビで掘られていくのが楽しみです.
③ EXIT
この記事を書いてて気付いたんですが, EXITも《しゃべくり漫才》だよなぁと.
基本的にはコントに入らずに『チャラ男同士の会話』で笑いを取る方式です.

ライブシーンで活躍する芸人さんも, これは大分前から感じている流れかと思います.
お客さん自身ももう《漫才コント》に飽きた感じなのかな.

閑話休題
ここ数年の《漫才コント》の実力者と言えば, 和牛さんです.
『細かい』水田さんと『河内弁で優しい』川西さんによる《漫才コント》は, 上述したような深みのある《漫才コント》です.
しかし, この間の《ENGEIグランドスラム》でかけたネタは完全な《しゃべくり漫才》でした.
全国ツアーでも《しゃべくり漫才》試してるんですかね?
今年のM-1ではどんなネタをするのか楽しみです.


終わりに

今回は《しゃべくり漫才》と《漫才コント》についてお話しました.
本来なら漫才ネタのパターンまで言及するつもりでしたが, 冗長になりそうだったため別の記事でまとめます.
《ニン》にも触れようかと思いましたが面倒なのでやめました.
今度気が向いたら書くので許してください.


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