母の背中
母曰く
「叔父が突入すると共に1人で押し入れの中に逃げた」
らしい。
私は
(押し入れの中は物でパンパンなのにどうやって入ったのかな)
などと考えていました。
そこに兄がやってきました。
⚫︎お母さんはすごかった
⚫︎鼻先に刃物を突きつけられても子供部屋の前から動かなかった
⚫︎この部屋には絶対入れないと言っていた
⚫︎「刺すんなら刺してみぃ!その変わりあんたまた刑務所入んねやで!」と叫んでいた
⚫︎母を刺せなかった叔父が暴れてテレビなどを壊していった
⚫︎お母さんはすごかった!
⚫︎お父さんは最低や!
と興奮気味に喋っていました。
11歳上の兄は玄関横に1人部屋をもらっていたので
その部屋のふすまの隙間から見ていたそうです。
もし自分が戦わないといけなくなったら
飛び出そうと木刀を握りしめていたそう。
「情けない。あんた、自分の弟でしょうが!
嫁子供置いて逃げるなんて父親のすることなん!」
下を向いて黙る父に
「早よ部屋片付けて」
と先程とは違い冷静に命令する母。
私は何がなんだかわからないまま
立ち尽くすしかなく
部屋の絨毯の上に散らばる
観葉植物の土を眺めていた記憶があります。
そして翌日、団地14軒のおうち一軒ずつ
頭を下げて謝る母の背中を見ていました。
なんとも言えない気持ちで見たその背中と
よそ様の興味津々な半笑いの表情は
今でも脳裏に焼き付いています。
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