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原田マハのあしあと〜ゴッホのあしあと・モネのあしあとを読んだ〜

原田マハという作家を知っていますか。
私は彼女の作品がとても大好きです。

彼女に初めて出会ったのはたしか高校生のとき。
地元の本屋さんで何気なく手に取った『ナンバーナイン』という小説が本当に良くて……
それ以来、私は彼女がうみだす物語をなるべく読み、拾い集めしていきてきました。

頭の写真は2017年の初夏に原田マハの『暗幕のゲルニカ』が発売された直後、ポーラ美術館で丁度『ピカソとシャガール展』をやっていて、その際彼女が公演をするというので券を押え単身箱根に行った時に頂いたサインです。
どんな人がこんなすごい物語を作り上げるんだろうとずっと思っていたので、彼女のお話をきき、実際にゲルニカと向き合う姿をみせていただくという貴重な機会でした。
ひとりでいって寂しかったので近くのひとりできていたおじさんに話しかけ、ベラベラお話して、ホクホクしながら帰ろうとしたら、外は雨が降っていて、「帰りは電車?時間決まっていたら車で駅まで送るよ?」と言って下さり、まだ帰りの電車をおさえていないのでテキトーに鈍行で帰ろうと思うと言ったらそのまま東京まで車に載せていただくという、本当は女子大生がしちゃいけないような経験をしつつ、美術館や本が好きな知らない人とお話すると世界が広がるなと改めて感じたりしたのでした。
そうして彼女は、いろんな方法で私の知見をひろげてくれていました。

私の積読リストの中で、最も数が多いのが彼女の本です。
本屋さんにいき、まだ買っていない彼女の本に出会ったら必ずレジに持っていくのですが、なかなか読むタイミングがありません。
圧倒的に多趣味なので、こればかりは時間のさきかたを考えなければならないのですが、言い訳ばかり並べて先延ばししてしまうのが読書です。

今年こそ、月1冊は本を読みたい、と目標に掲げ、久しぶりに手に取った本は『ゴッホのあしあと』でした。
彼女の本の中では比較的内容も厚くなく、エッセイ形式で、美術と歴史に関すること。
私の好きなことなので、手に取りました。

ゴッホのあしあとを読んでいたら、彼女が作家としてのスタンスをどうとっているのか、どうありたいのか伝わってくる内容でした。
画家と対話し、絵から聞こえる声を聞き、こうあって欲しい、こうだったらいい、という思いを書き上げる。
そんなやわらかくあたたかく素敵な彼女のあり方に、だから私は彼女の本が好きなんだと改めて思いました。
ゴッホの孤独感・喪失感、そしてそれを受け止められなかった「狂気の人」としての印象が強いことを覆すような、彼の兄弟まで含めてすくい上げるような、やさしくあたたかい本でした。
まだ『たゆたえども沈まず』を読んでいないので、これから読みたいと思いました。

同じような本で『モネのあしあと』もあることを知っていたので、これもあわせて読むことにしました。
モネについても同じように、声を聞き、どうありたかったのか、向き合って書かれたあたたかを感じました。
彼の懐の広さのようなものや優しさや覚悟まで読み取れるような文章で、いいなぁと思いました。
この本の中で言及されている『ジヴェルニーの朝食』については読んだことがあったのですが、改めて読みたいなって思ったので今度読み返そうと思います。

この本2冊から、原田マハという人の人生までみえてくるようでした。
彼女のキュレーターとして美術館で働いていた経歴が、彼女の本を生き生きとさせているんだなと思います。
私は美術が好きです。
絵を描いた人の人生や、歴史や、時代背景から絵をみることも好きです。
でも自分ひとりじゃ解釈しきれないことも多く、そういうとき、もっと自分に学があれば、自分の視座が広ければ、もっと豊かな発想があれば、と思わずにはいられません。
芸術について、文章だけで温度や質感、気持ちを伝えることってすごく難しいです。
難しいから絵や音楽や、いろいろな表現をしているのに、それを言葉で伝え切るってすごく至難の業です。
それをやり遂げる、原田マハという人の懐の深さ、あたたかさ。
美術に関する小説だけじゃなく、一般の生活をえがいた物語からも、彼女のあたたかさを感じられます。
わたしはこれからも彼女のあしあとをたどって、追いかけて、私の心を豊かにさせていきたいなと思います。

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