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負ける建築

 「負ける建築」建築家の隈研吾さんの言葉である。20年前くらいにNHKのプロフェッショナルという番組で見て以来、この言葉が気になっている。一際目立ち、個性を主張する建造物は数多くあるが、それとは対照的に、隈研吾さんは周囲の環境に溶け込むような建築をすると語っている。自己の主張を押しつけるのではなく、環境条件や、クライアントの要望など外的な「制約」を一旦受け入れた上で、その中から独創性を生み出すのだ。

私はこれまで、インテリア関連の仕事を色々としてきた。インテリアのコーディネート会社、建築事務所、カーテンメーカー。下っ端ではありながら、建築家の方と関わる機会があった。建築家の中には「先生」と呼ばれている方もいて、建築家の意見が絶対的で、お客様の意見がなかなか反映されないケースも多々ある。お客様がどうしても赤いキッチンがいいとおっしゃっても、建築家のイメージと違うと阻止するように指示が入ったこともあった。私としては、お客様の住む家なのだから、お客様の意見を優先した方がいいと思っていた。お客様と建築家の間に入るのはすごく葛藤がある。

今は専業主婦ではあるが、この言葉は子育てにも通ずるような気がする。例えば、子供が絵を描いているとき、突拍子もない色味を選んだとしても否定したり、先回りしてああしなさい、こうしなさいと指示をしたりするのはよくない気がする。私が手伝えるとするなら、その突拍子もない色味からアイデアをふくらませるように励ますことであると思っている。他のアイデアを受け入れることで独創性や新たな発想が生まれると思う。

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