私には聞こえない、君は泣いている。

青い夜の
君の
築11年ワンルームの
テーブル代わりの段ボールの
飲みかけの
カルピスサワーは
私ので
開いているグミの袋は
君の
思う通りの味

青い部屋の
君の
体育座り
リモコンを手に
泣いている
その
ヘッドホンした横顔と
透き通る指の
細さと
君の
レンタルしてきた映画を
見させられてる
私は

君は
君の
好きなシーンだけ見ていて
嫌いなシーンは
早送りで
飛ばされている

いいよね

音楽も
好きな曲だけ
プレイリスト入れて

いいよね

好きな言葉を吐く人だけ
フォローしてて
他は切って

現実世界の煩雑さに
立ち向かわない君は
きっと長く生きる

君は
お化け屋敷の世界を
指の隙間から見るみたいに
理解出来ないものごとを
怖がってる

君は
予測できないことを怖がってる
退屈を怖がってる

私は
君に怖がられない

君は
世界で一番怖くないところに
体育座りして
手を繋いで
ヘッドホンをして

君にだけ
聞こえていれば
いいんだよね
その
映像は
君が
自在にシーンを動かし
君の思うままに
進められる

私には聞こえない

君は泣いている

いいよね
君は


#詩