恥ずかしい呪文

A：旅に出るのか
B：はい……
　　私の魔術がどれだけ人のお役に立てるのか、試してみたいのです
　　そして、この時代に合った新しい魔術の在り方を探したい……
A：そうか……
B：師匠、15年間ありがとうございました。では
A：まあ待て、実はな。
　　私がまだ教えていない呪文が、ひとつだけある。
B：教えていない、呪文……？
A：ありとあらゆる病や傷を治す究極の癒しの呪文。
B：そんなものが……？
A：お前が魔術を私利私欲のために使わぬ善良な魔術師に
　　なれるかどうかを見極めておったのだよ。
　　しかし、今のお前の言葉に、お前の決意を感じた。
　　旅立ちの餞別だと思って、受け取ってくれ。
B：あ、ありがとうございます！！
A：では行くぞ。よく見るがよい……
B：はい！
A：『きゅるるん　ぷりりん　ふる～ちゅぱふぇ♪
　　　ふりふり　きゅんきゅん　ふるりれろ～～～♪』

B：…………
A：…………
B：師匠
A：なんだ
B：ふざけてるんですか？
A：違う
B：何かの冗談ですよね？
A：本当だ！本当に実在する呪文なのだ！！
B：今まで習った呪文は全部古代ケルト語だったのに
A：これもこういうケルト語なのだ！！
B：じゃあもう1回言ってください
A：えっ
B：正しい呪文なんですよね？ならもう1回お願いします
A：あー……ごほんごほん
　『きゅるるん　ぷりりん　ふる～ちゅぱふぇ♪
　　ふりふり　きゅんきゅん　ふるりれろ～～～♪』
B：わ～……パチパチパチ
A：お前茶化してるだろ
B：アキバのメイド喫茶って
　　追加料金払うとこういう魔法かけてくれますよね？
A：そういうやつじゃない！
B：ある意味「究極癒しの魔法」ですよね
A：違う、本当の魔法なのだ！！
B：師匠、私は師匠のそういうところ嫌いじゃないです
A：遠い目をするな！遠い目を！
B：じゃ旅に出ますね
A：待て待て、待ってくれ
B：15年間ありがとうございやしたー
A：頼む、信じて！本当なんだって！！

これも昔、こえ部で投稿したものです。ブログ閉鎖に伴いこちらに移しました。

★　初回投稿：2011-07-03（牡鹿戸スコップスアヲル名義。）

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