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【麻雀小言Vol.12】勝利へ導く「何やる」思考

「何切る」という学習法があります。読んで字のごとく、明示された手牌から何を切るべきかと考えるものですね。皆さんの大好きなあれです。
実は私はこの「何切る」という勉強法にあまり触れて来ませんでした。自分で言うのもなんですが、割と勘の良い方なのでそこまで必要とせずにここまで来てしまったのかもしれません。

とはいえ当然この「何切る」に関しては基礎牌理の理解に非常に役立つので大切です。決して軽視はできません。ですが私個人としてはそれよりも大切に考えてきた思考法があります。

それが今回のタイトルにもある「何やる」という思考です。こちらも読んで字のごとく、『この局は、この場面は一体何をすべきなのか』と考えて打つことですね。ちなみに私が勝手に使っているだけの言葉です。
私はこの「何やる」に基づいて手牌を組むことがほとんどです。
千変万化する対局の中で都度都度、「何やる」を考え自身の判断に反映させていく訳です。
では実戦中にどのように思考し、どのように活用しているのか具体的にお話していきます。

実戦は「立体何切る」の連続

「何切る」の中でも、限られた情報(手牌と持ち点程度)の中で条件に左右されない牌理的な正解を求めるものを「平面何切る」というのに対し、更に局数や相手の捨て牌・副露・リーチの有無などの情報が与えられ、実戦的な解答を求めるものを「立体何切る」といったりします。
そう実戦とは謂わば「立体何切る」の連続なのです。そしてその解を導きだすための私なりの思考が「何やる」ということです。

「何やる」思考の良いところは、逆算して解を導き出しやすいところです。一例を挙げると、断ラスで残り局数も少なければ兎に角高い手をアガらなければ着順が上がらないのですから、手牌のバランスや和了率など考えず打点に寄せた手作りをせざるをえない、なのでドラや手役をギリギリまで見切らない。
あるいは、オーラスのアガリトップの場面であれば、なんでもいいので役をこさえてスピードを最重視する、なので役牌や鳴いてもアガれる役に必要な牌を重要視する。といった具合です。

前回の記事でも出したこの牌姿

図1・オーラス僅差(ラス目と800点差)3着、北家の配牌

改めてどう「何やる」を考え、実際どのような判断をしていくか説明すると

・ラス目が近すぎるので和了に向かわなければならない
・打点は全く必要ない
・瞬間着順が下がるリーチ棒は極力出したくない
・当然スピードのための仕掛けも厭わないので、仕掛けで使える役を見たい
 →この手からは「タンヤオ」と「役牌」が見える!その2つを見る中で最も   不要なのは『1s』だ!

という思考チャートです。瞬間2sが浮きますが併せて切る訳ではありません。2~4sを引いた時はタンヤオのターツとして使うのです。(別に役牌重なった後でも使えますしねその辺のツモは)
こういった選択は今流行りのNAGAやmortalといったAIには受けが悪いかもしれません。ですがキチンとした「何やる」思考に基づいた選択であれば負けに繋がることはありません。トラストミー。

目前の手牌の形に固執しない

「何やる」というのはいくらでも変化する局の状況の中で、都度都度思考し、精査し、そしてどういった判断をしていくかという手法だとお話しました。どういったことか、牌図と照らし合わせて見ていきましょう。

図2-1

東1局につきなるべく大きな加点を目指せばよいでしょう。そしてそんな思惑におあつらえ向きの好配牌が来ました。ドラ受けもありマンガン・ハネ満が見える手です。こんな手で序盤からチーをして2000点や3900点にしてしまうのは、最終的な目標である「一番点数を持って半荘を終える」を目指すにあたって非常にもったいない行為です。相当鳴くことはないな、ですが赤5pだけはマンガンが確定するので鳴いてもいいなと、そんなふうに考えまずは局を進めます。

図2-2(色反転は鳴かれた牌)

さして手が進まず迎えた8巡目。ダブ東をポンしている親がドラを切ってきました。そして合わせるように上家も打ドラ。これはチーをして3900点を受け入れることを許容されている範囲に入っているでしょう。もはや自分のアガリだけをMAXに考えられる状況では無くなっているのです。
配牌時と違うのは当然ですが巡目と親の仕掛け、そして捨て牌ですがこういった状況を精査して何をするべきか考え、取るべき手法を検討していくのです。

図2-3先ほどとは別展開(色反転は鳴かれた牌)

先程の続きではありません。別の展開です。ここまで相手の攻めが明確で残り巡目も少ないと、今出た7sをチーして2000点のテンパイを組むことすら許されます。下家の仕掛け、親のリーチを受けて最早アガって失点しないだけでも儲けものぐらいまで手牌の価値を見直さなければならなくなっているのです。

図2-2,2-3いずれにせよ、局の頭には相当鳴かずに進める予定だった手を、状況に合わせて落とし所を作りにいっているわけです。
「この手はメンゼンで仕上げるんだ!」と形や当初の予定に固執せず、状況が変化する中で常に何をするべきか、そのためにどういった手法をとるのかと考え、判断していくことが「何やる」の本懐なのです。

「何をやるべきか」とは「何をやってはいけないか」にも繋がる

「何やる」思考は自分がやるべきことだけではなく、やってはいけないこと・相手にさせてはいけないことを考える能力を身につけるのにも役立ちます。

図4

オーラス3着目の親番という非常に難しい立場です。ひとまず手牌・捨牌を無視して状況を整理し、何をすべきか・何をしてはいけないかを考えていきましょう。

・ラス目の北家とは3500点差なので、一人ノーテンや北家の一人テンパイは許されない
・北家のアガリは大概捲り条件が満たされるので許容されない
 →ある程度自分の手を組む必要がある(テンパイや和了に向かわなくてはならない)
・3900点以上放銃してはいけない
・この1局でトップを捲くるのはほぼ不可能なので、アガって連チャンした場合は条件を少しでも軽くしたい

といったところでしょうか。して肝心の局面です。ラス目からの早いリーチが入ったところで自身もテンパイしました。
上記の条件と少し変わったところは、リーチ棒を出してくれたことで点差が4500点になり、ノーテンが許されるようになったことです。
さあどうしますか?

結論私は4pを切って追っかけリーチします。この判断に抵抗がある人もいるでしょう。折角ノーテンが許されるのに何故退路を断つのか?と

一つ一つ説明していきます。まずは終局まで巡目がありすぎることです。単純にツモを10回以上残しており、お祈りするには余りにも抽選機会が多いです。また今局は上2人が離れすぎており、ラス落ちどころか3着落ちすらほぼ無いためトップを目指してラフに押してくることもあり、北家の和了率は自身が前に出ないことで相当上がってしまいます。
次に降りきれる保証がないことです。現物は7sのみで相当都合よく安牌が開拓されない限り、次巡以降はノーリターンプッシュを強いられます。また今から切る4p自体の放銃率もこれだけ通っている筋が少なければ2筋牌とはいえ相当低いです。

ではテンパイだけ取っておいて、終局したら伏せるというオプションを残しては駄目なのか?という意見もあるでしょう。はっきり言ってダメです。
まずこの手は役無しなのでツモ専になる訳ですが、そうすることで結局北家の和了率が上がってしまいます。両面待ちなのでめくり合いになっても不利とは言えません。
またリーチを打たずそのままツモった場合、巡目が浅ければアガるのでしょうが、そうした時はまだマンツモ条件の残る苦しいオーラスを再度やらなければいけないのです。

リーチと一声発してそれがアガリに繋がった場合、裏がなくともツモや直撃ならマンツモ条件を消してある程度気楽に次局に臨めます。裏や偶発役次第では絶望的な点差に出来たり、そのまま飛ばし終了だってあるのです。

結局こういった点を「何やる思考」で精査して検討していくと、ダマ伏せのオプションやお祈り降りよりも、リーチで目一杯アガリ抽選を受ける方に利があるなとなるわけです。

当然ながらリーチが入ったのが15巡目と深く、北家の和了率がさして高くなかったり、捨て牌状況で切りたい4pの放銃率が余りにも高すぎるといった場合は判断が変わってきます。

何度も言いますが大切なのは「何やる思考」で要素を抽出し、それに応じて判断をすることであり、何をやって何をやってはいけないかを決めること。どんな状況でも鉄オリでも鉄リーでもないのです。

考えることが最初の一歩

図5

ここまでの話、こんないろんな要素考えきれなくて難しい、出来ないよと思った方もいるでしょう。大丈夫最初はみんなそうなんです。抽出できる要素が2つ3つ4つと徐々に増えていき、最終的によい結論が出せるようになっていけばよいのですから。考えるようになったこと、それこそが最初の一歩なのです。

図5はかなりリードして迎えた南2局の親番、5巡目にあっさりとテンパイしました。ダマでもタンピンドラ1出て5800点、ツモって2600点オールの手牌です。さあリーチしますか?しませんか?

まずリーチの利点としては出アガリでマンガン(11600点があるルールでも)なので対面と上家の飛ばし抽選が生まれます。ダマだとこの局で終わらないですからね(下家がリー棒出した後の直撃だけある)。
ツモった場合でも偶発役でハネ満になれば下家を飛ばせます。雀魂のように素点の概念があるのならかっぱぐ事に意味が無いわけじゃあないです。

勿論リーチを打つことで無防備になり、要らぬ放銃をしてしまうこともあります。和了率も下がりますし、ダマで上がったときの点数だって安いわけじゃありません。
ただ今回は待ちが強すぎて下がる和了率もしれてるやろってのだったり、目下のライバル目が親の残ってない上家で意外と事故っても耐えられたりするのでどうしたもんかなといったところ。

正直この局面は私もどっちがいいかわかりません。どっち選んでもトータルで麻雀で勝つというゴールにはさほど影響は無いと思っています。いい加減な話で申し訳無いですが(笑)

ですが、これを「マンガンになるんだからリーチだろ」あるいは「トップ目で曲げる必要なんてないだろ」と一視点だけで判断していた方。
いろんな要素を抽出するとこれって意外と迷っていいやつなんです。それを知り、今後似たような展開で考えるようになっただけであなたの雀力は成長を始めています。

結局『点数計算』からは逃れられない

ここまで見てもらってわかると思うのですが、「何やる」を考えるためにはやはり点数計算の理解は必須です。
自身の手組だけでも例えば安い手で妥協する時、どれくらい差がありそれは許容されるのか?といった思考だったり
相手の手の値踏み、流石にリーチはわかりませんが仕掛けはMAX打点が見えるケースが多々有りそれに応じて「何やる」、そして導き出される結論も変わってくるのです。
私の過去記事の中で圧倒的不人気記事があるのですが、それがこの点数計算に関わるものです。

でも大切なことなんです。勝つためには。だからみんなも目を背けないでね。

最後に

図6

図6は本当に適当に考えた牌図です。一応若干の思惑はありますが一つの解を出してほしいというわけではないです。

上家からドラ表示牌の4sが打たれたところでさあどうするか。
まあ提示盤面がここからスタートなのでまずはチーするかしないか。私の判断は一応決まっているのですが、ここでは敢えて書きません。

見てくださった皆さんでこの局どうするべきなのか?和了時の想定打点は?次局の想定点棒状況は?諸々考えて判断してみてください。

それでは

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※当記事内で使用した牌姿並びに全体牌図は「牌画作成くんbyその研」様及び「全体牌図作成くんbyその研」様を用いて作成しました。

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