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良い店には良いお客が集まる

良いお店には、良いお客が集まります。そして、お客にしか出来ない方法で、店を守ってくれます。

倒れた看板を直す客

先日、風の強い日に行きつけの喫茶店に行ったら、外のメニュー看板が倒れていました。僕は淡々とそれを直して、ドアを開けて店に入り、珈琲を注文しました。

店員でもないのに、倒れている看板を黙って直すなんて、なんて素敵な人…という感じで自画自賛したいところですが、じつのところ、素敵なのは僕ではなくお店の方なのです。

先に結論だけを書くと、良いお店というのは、お客の善良な部分を引き出す力を持っているからです。

15年間カフェをやりました

僕が代表をしているれんげ舎というNPOでは、15年間に渡ってカフェをやりました。金魚玉珈琲という小さなお店で、瓶詰めプリンが名物でした。僕はそのお店で、多くの大切なことを学びました。

在りし日の「金魚玉珈琲」店内

満席の時間帯に、新規のお客様がドアを開けました。カランとドアベルが鳴ります。「すみません、じつはいま満席で…」と言いかけたところで、背中から声が飛んできました。

「もう帰るところだから、空きますよ」

常連のお客様の言葉です。でもね、まだ帰るタイミングじゃないんです。もうちょっとゆっくりしていかれるはずなんです。それなのに、新規のお客を帰らせないように、もう帰るところだからと理由をつけて、自然に席を譲ってくださったのです。

いまでも涙が出そうになる

ありのままを言うと、この話をしていると、涙が出そうになります。ゆっくりしようと思って来てくれたのに、店を気遣って新しいお客に席を譲ってくれるなんて…。

「もう帰るところ」と言っている以上、こちらもその場では何も言えません。「ありがとうございます」とおろおろしながら言ったら、「だいじょうぶ」とアイコンタクト。忘れられません。

それからというものの、多くのお客様が本当に色々な形で店を助けてくれました。不手際を小さな声で叱ってくれる、ちょっとした改善アイデアをくれる、挙げていけば切りがありません。

すごく大変なこともあったけど、最後には惜しまれて、惜しみつつ、カフェ事業を卒業することが出来たのは、こうしてお客様が守ってくれたお陰でした。

場が人に与える影響

場は、その場をつくる人々の内面と関係性を反映しています。これはひとつの宿命であり、そこにあるものがそのまま出てしまいます。

良いお店というのは、お店のつくり手の人たちと、その関係性が良いのです。とはいえ、人には様々な面があります。清濁を併せ呑むなどと言いますが、僕も本当に自分って濁っているな〜と思います。

でも、自分の中の善良な部分を発揮して場をつくると、その場は、その場を訪れた人々の善良さを刺激し、引き出します。冒頭で、倒れた看板を黙ってお客が直すのは、お客ではなくお店が良いからと書いたのは、そういう理由です。

これはお店に限らず、家庭でも職場でもどんな場でも同じ。自分の在り方が場と相手の在り方に影響し、それがまた自分にも影響します。良い円環にするのか、悪い円環にするのか、それは自分が選択出来ます。

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