カイロと脳代謝

カイロプラクティックと自律神経

カイロプラクターとして仕事をしていると以下のような言葉をクライアントさんから聞くことがよくあります。

「何年かぶりに良く眠ることができました」「イライラが落ち着き、前よりリラックスできるようになりました」「便通が良くなりました」など

カイロプラクティックが自律神経に何かしらの影響を与えているというのは、カイロプラクティックを提供している人・受けたことがある人はなんとなく感じていることではないでしょうか?

カイロプラクティックと自律神経の関係は?

「カイロプラクティック」と「自律神経」というワードで検索するといろいろなものが見つかると思います。

自律神経失調症、うつ、不眠、動機、ストレス・イライラなどなど

腰痛や肩こりにというイメージがあるカイロプラクティックですが、自分がアメリカで働いていていた時は”うつ”や不眠をどうにかしたいという理由でカイロプラクティックを受けにくる方は珍しくありませんでした。

カイロプラクティックがどうやって自律神経に影響するのかという部分を調べてみると、神経や身体のバランスが整うことで良くなるといったように、なんとなく説明されていることが多い印象です。

考えられるメカニズムや理由は何かあるのでしょうか。

★首の痛みに対するカイロプラクティックマニピュレーション後の脳代謝の変化

小倉毅, DCが東北大で行った研究です。2011年、Alternative Therapies in Health and Medicineで発表されたものです。

導入:脊椎サブラクセーションと自律神経の関係に関してはまだはっきりしたものがない。カイロプラクティックの神経生理学的な効果は近年いろいろと研究されてきている。PETスキャンを使いマニピュレーション前後で脳の部位ごとにおける代謝が、どのように変化するかを調べることで自律神経への影響を確かめる。
仮説:カイロプラクティックマニピュレーションが自律神経の機能に関連する脳の部位においてactivationまたはdeactivationを引き起こしているかを調べる。
方法:首の痛みや肩こりをもつ男性12人が研究に参加。クロスオーバー試験による研究。マニピュレーションはアクティベーターを使用。PETスキャンによる脳代謝の変化以外にも、①ストレス、②QOL、③首の痛み、④首の筋肉の張り・かたさ、⑤唾液アミラーゼに関する変化も調べる。
結果・考察:自律神経のはたらきに関連している脳の部位においてマニピュレーション後で代謝の変化がみられた。その他の要素に関しても、痛み・ストレスの軽減など、交感神経の落ちつきと解釈できるような変化がみられた。

この研究から思うこと

カイロプラクティックと自律神経の反応を説明する上で、漠然と神経のバランス・身体のバランスということが言われていますが、アジャストメント⇒脳への影響⇒自律神経のはたらきに関連する部分への影響⇒自律神経への影響と言ったようにもう少し大きな像としての説明や理解を(可能性としてという前提はありますが)してみても良いのかなと思います。

背骨のこの部分をアジャストすると交感神経に影響する、副交感神経に影響するといった説明もカイロプラクティック界ではよく使われます。これに関してもそんな単純なものではなく、身体全体が反応し影響しているということが認識として広まるといいなと。

自律神経の問題でカイロプラクティックを受けたいなと思っている方へ

「カイロプラクティックが~に効く!」「カイロプラクティックで~が治る!」という宣伝や謳い文句が世間ではあふれていますが、カイロプラクティックでは症状や痛みだけをみているのではなく、人のからだ全体をみてケアをしています。

その結果が最初に挙げたような自律神経への影響につながることがあるので、カイロプラクティックを受ける際は、その辺をしっかりと理解して、説明してくれる場所・カイロプラクターを見つけることが大切です。

そして、自分のからだに対する健康意識・健康感覚をもうちょっと高いものにしていけると良いです。

からだケアの選択肢の1つとして、カイロプラクティックが正しい理解のもと広まってくれると良いなと思います。

近江顕一, DC

研究についてもうちょっとだけ

カイロプラクティックに関する多くの研究の中で、カイロプラクティックアジャストメントではなく(脊柱)マニピュレーションという言葉を使っていることに気づき、違和感を覚える方もいらっしゃるかと思います。その理由に関しては↓をご参照ください。

変化がみられたエリアとしては、下前頭前野、中側頭回、前帯状皮質、小脳虫部、視覚連合野。もっとも大きな変化がみられたのは小脳虫部。小脳虫部の不活性⇒交感神経・筋の緊張・痛みの減少。
研究の制限としては、サンプルの人数が小さい・コントロールグループがない・いくつかの項目が主観によるもの・アジャストメントを行う人が1人だけ・放射線を浴びる、とあります。

この研究で使用されたFDG-PETに関して、わかりやすく説明してくれているサイトがありました。カイロプラクティックとは離れますが、わかりやすかったのでシェアしておきます。

*この記事は自分が興味のある論文をもとに可能性や思いをつづったものななので、「カイロプラクティックで~が治せる」などの効果を保証するものではありません。

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