「グリーンブック」は洋画に疎い人ほど 鑑賞すべき映画だった！

今作「グリーンブック」は、第91回のアカデミー賞を受賞した作品。黒人天才ピアニストであるドン・シャーリーと、その演奏旅行に運転手としてお供することになった白人トニー・リップとの交流を描いた作品です。

生々しい黒人差別の実情に関して、当時の様子を色濃く描いたこの映画は、なんと実話を元にしたもの。シャーリーにもリップにもそれぞれ実在したモデルがいます。

私自身、物語をゼロから楽しみたい気持ちから、一切の事前知識を排して鑑賞しましたが、洋画に疎い私でも充分に楽しめる作品、そして考えを深めるにいたった物語でした。

【あらすじ】
時は1962年、ニューヨークの一流ナイトクラブ、コパカバーナで用心棒を務めるトニー・リップは、ガサツで無学だが、腕っぷしとハッタリで家族や周囲に頼りにされていた。ある日、トニーは、黒人ピアニストの運転手としてスカウトされる。彼の名前はドクター・シャーリー、カーネギーホールを住処とし、ホワイトハウスでも演奏したほどの天才は、なぜか差別の色濃い南部での演奏ツアーを目論んでいた。二人は、〈黒人用旅行ガイド＝グリーンブック〉を頼りに、出発するのだが─。
オフィシャルサイトより引用

白人・黒人が初めて心を通わせた一幕、共に食したチキン

物語序盤は黒人差別意識をつよくもっていた主人公、トニー・リップ。自宅に訪れた黒人作業員の使用済コップをこっそりゴミ箱に捨てるなど、その様子は顕著にあらわれています。
そんなトニーが、黒人天才ピアニストのお抱え運転手となり、朝から晩まで行動を共にする旅に。そんな道中、2人が共にケンタッキーフライドチキンを食べるシーンがあります。

運転をしながら器用にフライドチキンを食べるトニー。後部座席で静かにしている黒人天才ピアニスト、ドクター・シャーリーに対して「食べるか？」と一言勧めます。
「ナイフやフォークもないのに食べられない」と、素手で食事をすることに抵抗感を示すシャーリーに対し、トニーは「いいから食べてみろよ、美味いぞ」と譲りません。
根負けしたシャーリーは、恐る恐るフライドチキンに手を伸ばし、そっと一口齧ります。

美味しさに魅せられたシャーリーは、手が汚れるのも構わずに次々とフライドチキンを食し、骨にしていく。その様子を見て思わず笑顔がこぼれるトニー、つられて笑うシャーリー、気づいたら白人と黒人である2人は共に、同じ物を食べてゲラゲラと笑い合っていました。

この「グリーンブック」は、実話を元にした物語。
この一連の流れが当時、どれだけ衝撃的な出来事であったかは想像することしかできません。映画の1シーンとしては些細なものですが、初めて2人が心を通わせた一幕として、心に残った映像でした。

現代日本ではとても考えられないことが次々と起こる物語

天才ピアニストゆえに、黒人の中でも特別扱いされてしまい、居場所が見つけられずにいたドクター・シャーリー。「白人でも黒人でも、人間でもない私は、いったい何なんだ」とシャーリーが叫ぶシーンがありますが、ぐっと胸が詰まる一言です。

中には、黒人専用のホテル・レストラン・トイレの描写が出てきます。演奏をするために招待された本人であるのに、「黒人」であるというだけで泊まれない。食事ができない。お手洗いが使えない。日本ではおよそ考えられないことが、次々と起こります。

創作だと信じたくなる、ありとあらゆる物事が当たり前のように通り過ぎていく。白人とは何だ、黒人とは何だ、人種とは何だ、国籍とは何だ？

日本人として日本に住む私たちには、よほどのことがない限り考えるきっかけが訪れない「人種差別問題」。
幻冬舎社長・見城氏の書籍「読書という荒野」内には、「差別からこそ感動が生まれる」という言葉がありますが、それはエンターテイメントの中での話。

この映画をきっかけに、私たちはもう一度、差別に向き合うべきだと感じました。

「グリーンブック」は、こんな人にオススメ!!

これまで洋画にあまり触れたことがない方、人種差別問題について知見のない方にこそおすすめです。
反対に、少々衝撃的なシーンも何点か含まれていますので、苦手な方はご注意を。

いつの時代も人の視野を広げてくれるのは、「自分が体験したことのない世界」です。
手っ取り早いのは異国に旅に出ることですが、ますます忙しくなりはじめている現代人にはなかなか難しいこともあるでしょう。

読書や映画鑑賞は、手軽に自分の世界を拡張してくれます。
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