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「お前のせいで私の人生、めちゃくちゃだ」

昨晩、若い女の子が泣きながらそう訴えているのを呆然と遠くから見ていた。
好きな人がしているバーのカウンター席で、突然知らないカップルの喧嘩がはじまり、その場にいた全員が巻き込まれたからだった。
昨日は年に一度の夏祭りの日。夜が深くなるにつれて賑わいも落ち着いて、やっと静かになった頃のこと。
それまでは好きな人がお祭りにちなんだ話を楽しそうにしてくれるのが嬉しくて「俺、金魚すくいめっちゃ上手なのよ!!8匹はいけるから!!」って話に頷きながら、ニコニコしていたところだったのに。

話を聞けば、その女の子は福岡から鹿児島まで 身寄りもない中全てを捨てて、好きな人と同棲するために こちらに引っ越してきたらしい。
それなのに、飲みすぎるとよく彼氏がそのまま行方不明になり他の女と電話をしている、他の女の家に泊まったりもしてるかもしれない、浮気だ!!!と大泣きしていた。
男の子は男の子で頭に血がのぼり、彼女の首を絞めかけて、常連の人やマスターである私の好きな人に止められていた。

私はというと、その若いカップルから1番離れた席に座っていて、そのまま虚無になっていた。
そしてそのうち「あ、なんか昔の自分たちにそっくりかも」って思った瞬間、一気に血の気が引いた。

私は福岡どころではなく北海道から、鹿児島まで同じ理由で引っ越してきてしまった人間だ。
同居した彼はとにかく気に入らないことがあれば大量に酒を飲んでは家中の物にあたりつつ行方不明になったし、私を壁に押し付けながら首を絞めたし、知らない女と毎日何時間も電話をしてたし、隠れて旅行にも行ってた。
それでもどうしても独りにしたくなくて、でも貴方がいい、大好きだって思ってたんだけど。

もうすっかり消化しきっているものだと思っていたし、私の場合は離れる決意をしてからの 今の自分の方が好きだと思って生きているけれど、
こんなにも簡単に血の気が引いて手が震えるのだから、人間そんなに簡単には変わらないし忘れられないのかもしれない。

ただひとつ思ったのは
「お前のせいで私の人生めちゃくちゃだ」と思ったことは、現在も含めて本当に一度もないということ。
私が自分でこの人、と選んで一緒にいたのだし、
住む場所も仕事も関わる人間も全部自分で決めたことだから。自分の人生だから。
今となっては正直「当時の自分は一体何をしてたんだろう?」と思うことはあるし、
まあ多分第三者から見れば随分人生はめちゃくちゃだけど、自分の選択にはいつだって納得してる。

もちろん首を絞めるのは悪いのだろうけれど、
手放しで全責任を相手に押し付けているのも また悪いのだろうなと思った。


お祭りは皆浮き足立つのか、昨日は本当にいろいろなことがあって
この喧嘩の前には、常連であろう別のカップルが結婚報告をして場が華やいだり、
絶賛お祝いムードの中、ひとりが発した心ない言葉に瞬時に空気が凍り、初めて好きな人が本気で怒った顔を見て 私も腹が立ったり、
口裏合わせの電話の依頼が行き違ってしまったらしく、何も悪く無いのに好きな人が謝る様子を眺めて悲しくなったりした。
「いろいろ考えたいからひとりで帰る」って初めて言われたから、初めて私もひとりで帰ってきたんだけど
そりゃそんな気持ちにもなるよねって、ただそう思った。

なんというか、めちゃくちゃにされる方もする方も簡単に入れ替わりうることを忘れずにいたい。
「お前のせいで」と怒った彼女もまた、昨日 私の好きな人のお店に流れる空気をめちゃくちゃにした訳で。

帰った後は「これ食べちゃうもんねー!」という言葉と高級アイスの写真が好きな人から届き、
「ご褒美アイスだ!!10個食べるべき!!!今度食べ放題できるくらい買ってあげる!!!」って約束した。「ひとつでいい」って言われたけどいっぱい買って渡す。

大泣きして喚いて 大勢に迷惑を掛ける前に
自分の人生くらい自分で守れよ。

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