拝啓、雑貨屋で見かけた少年よ。♯3
こんにちは。佐藤です。
先日、雑貨屋で買い物をしていたときの話。
一人の少年(恐らく小学校低学年くらい)が、
おもちゃコーナーの前に立ち、大声で叫んでいた。
「ママ!!見てー!!ママ!ねえ!これ!ほら!」
フロアに響き渡るほどの大きな声。
肝心の"ママ"さんは、その子から少し離れた通路で、恐らくママ友と思われる女性と世間話をして笑っている様子。腕の中にはまだ小さいお子さんを抱いていた。
「ママ!ねえってば!ほら!見てよこれ!これー!」
私は、そのおもちゃがそんなに欲しいんだな、と微笑ましくなって。大声には驚いたけれど、買ってもらえるといいなあ、なんて心のなかで願いながら、商品を物色していた。
「ほら行くよ」
耳に入ってきたのは、その子の母親の声だった。
なんとも冷たい声のように感じて、思わずその母親の方を見た。
その母親が、その子の方を見たのかすら分からない。
私が目を向けたときには、その子の母親はもう別のママ友と共に笑いながら遠のいていて、おもちゃコーナーにはそのおもちゃを手にした男の子が一人ぽつんと取り残されていた。
私は即座に思った。
あ、きっと大声で駄々をこね出すぞ、と。
あんなに嬉しそうに手に取っていたんだから、相当欲しかったに違いない。ほら、大声が来る!
「ママ待って〜…」
男の子はおもちゃを置いて、
へらっと笑って、母親の元へ駆けていった。
きゅっと、
心の臓を掴まれたような、そんな気がして苦しくなった。
あれは、おもちゃが欲しかったんじゃない。
愛しい母に、こちらを向いてほしかったんだ。
同じ思いを共有したかっただけなんだ、と。
私もそうだった。
幼かったあの頃。何かを見つけたとき、「欲しい!」「買って!」そんな、単純な物欲じゃなくて。
「何を見つけたの?」とそばへ来て「いいもの見つけたね」と頭を撫で笑いかけてくれる両親を待っていたのだ。
物なんかより、ずっとずっと嬉しいから。
決して、その子の母親を責めたくて
この文章を書いているのではない。
子育ての大変さは少しだけど理解できる。
彼女の対応が悪だなんて微塵も思ってもいない。
ただ勝手ながら、重ねてしまった。
いくら呼んでも振り向いてもらえない切なさを知った 幼少期の私と、あの少年の弱々しく笑った様を。
ものは簡単に買えるけれど、
愛情を手に入れるのは難しいな。
ままならないよな、少年。
でもきっと届くから、たくさん大声出していいんだぜ。
私は、少年が少しだけ乱暴に置いたおもちゃを、スッと元あったように置き直して、目当てのものを手に取ってレジへ向かった。
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子どもって、案外大人なんですよね。
大人が思うよりずっと
複雑で、繊細で、優しくて、頭が良い。
大人と子どもってなんだろ。
定義って難しいですよね。
よかったら教えてください。
ではまた、お目にかかる日まで。
あなたの生活が滞りなく続くことを願って。
佐藤。
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