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OR逆転裁判 第二話「難航逆転不落」3日目法廷前編

【アワテル】
(依頼人がこない控え室。
1人きりだと、こんなに空気が重いのか‥‥)
【ユカイ】
「弁護士どの! ケーサツはいつでも、
病院にふみこむ用意ができてますぞ!」
【アワテル】
「おはようございます、ユカイ刑事。
分田クリニックに‥‥捜査令状でも出したんですか?」
【ユカイ】
「や、それはムリでした。
なので《協力者》のコネを使います」
【アワテル】
(‥‥たしかにセンセイなら、病院をだまして
入る方法も知ってそうだな‥‥)
【ユカイ】
「ただし‥‥カンキン場所には“プロ”がいます。
“プロ”をおびき出せるかは弁護士どの次第です」
【アワテル】
「千間 美鈴を呼べば、“プロ”は総出で応援にくる。
‥‥それが“合図”になりますね」
【ユカイ】
「ワレワレは手を抜きませんぞ。
人質の救出も、《有罪》の立証も‥‥」
【アワテル】
「それでかまいません。裁判まで
協力してもらおうとは、考えてませんから」
【ユカイ】
「ま、喚問にシッパイする前提で
上層部にかけ合ってますから。ご心配なく」
【アワテル】
「水冬検事を心配したほうがいいですよ。
今日の相手は手ごわいですから」
【ユカイ】
「‥‥ワレワレは、ワレワレのシゴトをするまで。
おたがいの“立場”に徹するとしましょうか」
【アワテル】
「検察側は、全力で《有罪》を取りにくる。
‥‥“天才”のボウヤを、とことんふり回してやろう‥‥!」
カタカタ
【サイバンチョ】
「‥‥審理をはじめる前に‥‥。
弁護人が、交代すると聞いたのですが‥‥」
【アワテル】
「この席にだれが立とうと、
真実は変わりませんからね」
【サイバンチョ】
「それと、弁護人がひとり減りましたな。
なんというか‥‥大丈夫なのですか?」
【アワテル】
「アタマさえのこってれば、
ベンゴはできます」
【ミトウ】
「そのアタマに、ミソが詰まっていればの
ハナシだけれどね」
【アワテル】
「‥‥このアワテルのミソは
そうアマくはありませんぜ、検事」
【ミトウ】
「それはよかった。
さあ、どう料理してくれようか」
【サイバンチョ】
「‥‥気にはなりますが、仕方ありません。
‥‥火継利 優里の審理を開廷します」
【アワテル】
「弁護側、準備完了しております」
【ミトウ】
「‥‥検察側、星のようにまたたき、
雲のようにつかめぬ《真実》を‥‥ここに」
【サイバンチョ】
「‥‥つかんでもらわなくては困ります。
水冬検事。《冒頭弁論》を」
【ミトウ】
「《冒頭弁論》は、“冒頭”に行われるもの‥‥。
‥‥その“常識”が今日、くつがえりました」
【サイバンチョ】
「‥‥いまは《冒頭》ではないのですか?」
【ミトウ】
「‥‥この宴は、すでに終わりを告げた。
主役の少年が、舞台から降りたのです」
【サイバンチョ】
「‥‥主役の‥‥。まさか被告人が、
《自白》をしたというのですか!!」
【ミトウ】
「‥‥今日の宴は、幕をあけるのも
閉じるのも‥‥被告人自身‥‥」
【ミトウ】
「さあ、最後の花火をお見せしよう。
音もなく散りゆく、あわれな“花火”を‥‥」
【アワテル】
(さあ、果たしてそれは“花火”かな。
それとも‥‥反撃の“着火材”か‥‥)
【アワテル】
「アレ。どうしてユカイ刑事が
出てくるんですか」
【ミトウ】
「まずは、きのうの目撃者の
ムジュンを説明するのが先だ」
【ユカイ】
「そうですとも! 約1メートルの穴は、
どのタイミングで掘られたのか‥‥?」
【アワテル】
(被害者を殺した後では、通報に間に合わない。
被害者を殺す前では、《落とし穴》になる)
【サイバンチョ】
「どちらでもムジュンするこの状況‥‥。
まずは、検察側のコタエを聞きましょうか」
証言開始🔴🔴🔴🔴🔴
【ユカイ】
「殺害からケーサツの到着まで、最大30分。
この時間で約1メートルの穴は掘れません」
【ユカイ】
「つまり、穴はあらかじめ掘っていた。
しかし、被告人はそこに“橋”をかけたのです」
【ユカイ】
「このモニターは、ガンジョーで幅もひろい。
上を被告人が通っても、モンダイはない」
【ユカイ】
「その後、屋上から被害者を投げ下ろし、
土を埋める。‥‥これは10分あれば可能です」
【ユカイ】
「《落とし穴》で被害者を殺害するのは、
あまりに現実的ではないのですよ‥‥」
🔴🔴🔴🔴🔴
【サイバンチョ】
「穴はあらかじめ掘っていた。
だが同時に、“橋”もかけていた‥‥」
【ミトウ】
「いかがかな? 弁護人の細い橋は
もう深い穴の底に消えてしまったのさ」
【アワテル】
「そんなもの、最初からありませんよ。
あの穴に落ちたのは、死ぬ前の被害者だけです」
【ミトウ】
「この法廷で、あの《落とし穴》から
抜け出せていないのは‥‥キミだけさ」
【アワテル】
(きのう指摘した主張の穴は
“橋”によってふさがれてしまった‥‥)
【アワテル】
(審理に風穴を開けるには、あの《落とし穴》は
まだ‥‥底が浅すぎる‥‥)
──《検察の主張》のデータを
  証拠品ファイル上で更新した──
【サイバンチョ】
「それでは、弁護側にも
穴のない《尋問》を期待するとしましょうか」
🔴🔴🔴🔴🔴
尋問1@ユカイ
【ユカイ】          【●◯◯◯◯】
「通報からケーサツの到着まで、最大30分。
この時間で約1メートルの穴は掘れません」
【アワテル】
「きのうの《目撃証言》どおりなら、10分。
それがウソだとしても、最大30分‥‥」
【ユカイ】
「この時間で約1メートルの穴は掘れません。
ユカイが実証済みですからな」
【アワテル】
「‥‥え」
【ユカイ】
「ユカイのベストタイムは2時間0分4秒。
たゆまぬ訓練の結果です!!」
【アワテル】
(やはり”2時間切り”は果たせなかったか‥‥)
【ユカイ】
「しかし、ワレワレの主張は成立するのです。
なぜなら‥‥」
【ユカイ】          【◯●◯◯◯】
「穴はあらかじめ掘っていた。
しかし、ハンニンはそこに“橋”をかけたのです」
【アワテル】
「‥‥これが“橋”ですか。
本当にこれで《穴》をふさげるんですか?」
【ユカイ】
「ええ、このサイズならじゅうぶん可能です。
ユカイが実証済みですからな」
【アワテル】
「‥‥え」
【ユカイ】
「1メートルの穴を掘るには、
下層より上層を広く掘る必要がある」
【ミトウ】
「必要な広さはじゅうぶん満たしてる。
土が荒れてたハンイも、カバーしている」
【アワテル】
(つまり、ジッサイに掘られたであろう
穴の広さも、じゅうぶんにふさげるワケか‥‥)
【アワテル】
「でも‥‥検察側の主張の《穴》は、
まだふさがってないようですね」
【ミトウ】
「‥‥おや、屋上からの転落は不可能で
なくなったハズだが‥‥まだ何か不満でも?」
【アワテル】
「屋上に行くまえに、わざわざ通り道に
アナを掘る。アキラカに不自然です」
【ミトウ】
「だが、キミの主張とちがって、
“不可能”ではない」
【アワテル】
「!」
【サイバンチョ】
「“あり得ないことをすべて消去していけば、
最後に残るのは、たった1つの”真実”」
【サイバンチョ】
「どんなに“不自然”でも、他のコタエが“不可能”なら
それが《真実》なのです」
【アワテル】
(‥‥やはり、《不可能》と《不自然》では
こっちの分がわるいか‥‥)
【ユカイ】
「少なくとも、ワレワレの主張は
“橋”が支えてくれます。なぜなら‥‥」
【ユカイ】          【◯◯●◯◯】
「このモニターは、ガンジョーで幅もひろい。
上を被害者が通っても、モンダイありません」
【アワテル】
「‥‥ケイジ用のモニターですよね。
ヒトなんか乗って、本当に大丈夫なんですか?」
【ユカイ】
「ええ、モニターにあるまじきガンジョーさです。
ユカイが実証済みですからな」
【アワテル】
「‥‥え」
【ユカイ】
「ユカイのはげしいダンスにも、ステップにも、
舞踏にも、ミゴトに耐えきりましたからな!」
【アワテル】
「舞い上がってますね。
現場の捜査‥‥」
【ユカイ】
「だって署では、上の指示に
おどらされるだけの身分ですから!」
【アワテル】
「いやその、モニターをコワしたら
どうするつもりだったんですか?」
【ユカイ】
「‥‥だって署では、上の指示に
おどらされるだけの身分ですから!!」
【アワテル】
(このヒトとだけは
ゼッタイ、はたらきたくないな‥‥)
【ミトウ】
「コワしたら、弁償用のおひねりを求めて
路上でおどるつもりだったそうだ」
【アワテル】
(モニターより安いのか、ユカイ刑事の給料‥‥)
【ユカイ】
「しかし、ユカイのシゴトは安くないですぞ。
少なくとも、モニターよりは!!」
【アワテル】
(今日の天気を表示するだけだぞ、
あのモニター‥‥)
【ユカイ】          【◯◯◯●◯】
「その後、屋上から被害者を投げ下ろし、
土を埋める。‥‥これは10分あれば可能です」
【アワテル】
「‥‥10分で被害者を埋めるなんて、
本当に可能なんですか?」
【ユカイ】
「ええ、5分あればカンタンに埋まります。
ユカイが実証済みですからな」
【アワテル】
「‥‥え」
【ユカイ】
「署のみんなでユカイを埋めたのです。
警察署新キロクは3分44秒72です!」
【アワテル】
「いや別に、
ユカイ刑事を埋める必要はないのでは‥‥?」
【ユカイ】
「だって、署のみんなが
アナの中のユカイに気づかないから‥‥」
【サイバンチョ】
「そもそも、埋めるためのアナを掘るのに
1時間かかるハズでは‥‥?」
【ユカイ】
「あの谷のように深いアナは、
ユカイが山のように掘ってますから‥‥」
【アワテル】
「‥‥あの、ユカイ刑事。
ツラいことがあったら、相談にのりますよ‥‥?」
【ユカイ】
「いやいやいや! ユカイをいじめてくれるのは、
弁護士どのだけですからッ!!」
【アワテル】
(‥‥いじめて“くれる”‥‥?)
【ミトウ】
「フッ‥‥ココロにあいた《穴》は、
何時間かけても埋まらないのさ」
【アワテル】
(ああ、こっちも
トモダチがいないのか‥‥)
【ユカイ】
「で‥‥そんな孤独なワレワレは、校庭に
ぽっかりあいたアナを見つめるワケですが‥‥」
【ユカイ】          【◯◯◯◯●】
「《落とし穴》で被害者を殺害するのは、
あまりに現実的ではないのですよ‥‥」
【アワテル】
「‥‥1メートルですよ?
落ちたらけっこう、アブない気がしますが」
【ユカイ】
「や、それでもあの穴でヒトは殺せません。
ユカイが実証済みですからな」
【アワテル】
「‥‥え」
【ユカイ】
「署のみんながユカイをつき落としましたが、
今もユカイはこのとおり!!」
【アワテル】
「あの、殺人事件の捜査で
新たに殺人事件を起こさないでください‥‥」
【ユカイ】
「でも、ユカイは
坊っちゃんの主張を信じてますから!!」
【アワテル】
(そんな、イノチがけで信頼しなくても‥‥)
🔴🔴🔴🔴🔴
【アワテル】
(ユカイ刑事は、きのう“実験”をくり返していた。
《証言》の内容は実証済みだろう)
【アワテル】
(物理的なムジュンよりも、
心理的なムジュンを探したほうがいいかもな)
🔴🔴🔴🔴🔴「検察の主張」
【アワテル】
「‥‥穴はあらかじめ掘っていた。
マチガイありませんか?」
【ユカイ】
「なんともジュンビのいいことですな。
まるで、証言する前のユカイのようです」
【アワテル】
「被告人は、被害者を“死んだ”とカンちがいし、
“処理”してしまった。これもマチガイないですか?」
【ユカイ】
「なんともそそっかしいコトですな。
まるで、証言後のユカイのようです」
【アワテル】
「突発的に殺したのに、なぜ遺体を埋める穴を
“あらかじめ”用意できたのでしょうか?」
【ユカイ】
「!! む、ムジュンしてますな‥‥。
まるで、証言中のユカイのようです‥‥」
【アワテル】
「‥‥ユカイ刑事。
墓穴をほりましたね」
♪異議ありアワテル
【サイバンチョ】
「静粛に! 静粛に!
‥‥弁護側のいうとおりです!」
【サイバンチョ】
「あらかじめ遺体を埋める穴を掘っていたなら
それは、“計画殺人”にほかならない!」
【ミトウ】
「おやおや‥‥ボクがいつこの事件を、
ショードー殺人だと言ったのかな?」
【アワテル】
「まさか‥‥屋上にいた被害者を“処理”したという
主張は、テッカイするおつもりでしょうか?」
【ミトウ】
「被害者が《転落死》したのは、予定外だった。
しかし被害者の死そのものは、計画どおりだった」
【ミトウ】
「ショードー殺人だとは言っていない。
これは、計画殺人の中の“アクシデント”なのさ!」
【サイバンチョ】
「殺害の手順は狂ったが、殺意そのものは
最初からあった‥‥というコトですな」
【アワテル】
「‥‥残念ながら、“計画殺人”を
否定する証拠は、まだあるのです!」
🔴🔴🔴🔴🔴くらえ!!
【アワテル】
「こんな証拠はいかがでしょうか!!!」
【サイバンチョ】
「いや、私に聞かれましても‥‥。
はやく“計画性”のヒテイをしてください」
【アワテル】
「“計画”なんて、知りません!!!!
自由に生きてこその人生です!」
【サイバンチョ】
「‥‥被告人の計画性のハナシをするまえに、
まず‥‥あなたが計画的になるべきですな」
【ミトウ】
「この事件のハンニンに
突発的に殺されてみることをオススメする」
【サイバンチョ】
「突発的に生きる者は、突発的に死ぬ。
覚えておくといいでしょう」
【アワテル】
(ううう‥‥計画的に殺すなら、
いちばん映っちゃいけないモノがあるだろう!)
🔴🔴🔴🔴🔴くらえ!!
【アワテル】
「‥‥アタリマエですが、監視カメラに
好んで映る殺人者はいません」
【ミトウ】
「なら、被告人は‥‥」
【アワテル】
「“最初から自白するつもりだった”は通りませんよ。
それなら、遺体をかくす穴は掘りません」
【ミトウ】
「監視カメラの存在を忘れていたのさ。
‥‥日ごろ、カメラを意識することなどあるまい!」
【アワテル】
「ザンネンながら、それもとおりません。
今の発言は、ある証拠品とムジュンしている!」
🔴🔴🔴🔴🔴くらえ!
【アワテル】
「水冬検事の発言は、ムジュンしてたら
いいと思います!!」
ペナルティ
【サイバンチョ】
「ペナルティを与えました。
審理にもどりましょう」
【アワテル】
「‥‥あの、ペナルティならもう少し
手の込んだやり取りとかないんですか‥‥?」
【サイバンチョ】
「最近、私におもしろい返しをさせようと
ヘンな証拠をつきつける弁護士が増えてまして」
【アワテル】
(第一法廷の《風物詩》になってしまったか‥‥。
ペナルティ‥‥)
🔴🔴🔴🔴🔴
(検事の主張をつきつける)
【アワテル】
「“カメラに映らないように、遺体を“転落”させた。”
カメラの存在を、カンゼンにイシキしています!」
【ミトウ】
「カメラの存在を“知らなかった”とは言ってない。
“忘れていた”と言ったハズだ!」
【アワテル】
「計画時には忘れてて、殺害時に思い出した?
そんなツゴウのいい言い分はとおらない!!」
【ミトウ】
「カメラは、日付をまたげばデータが消える。
被告人にとって重要じゃなかったのさ!」
【アワテル】
「日付をまたぐ前に殺人がバレない保証など
どこにもないのに‥‥重要でないハズがない!」
【ミトウ】
「どうやって、土に埋まった被害者の“死”に
1日足らずで気づけるというんだ!」
【アワテル】
「被害者が学校をやすんだら、
家に連絡がいくでしょう!!」
【ミトウ】
「しかし、被害者に親はいなかった」
【アワテル】
「!!」
【ミトウ】
「さらに、被害者は学校をやすみがちだった。
1日、学校を欠席しても‥‥ダレも死に気づかない!」
【アワテル】
「しかしジッサイには、
殺人は目撃されているじゃないですか!」
【ミトウ】
「朝の5時に、同級生が学校のまわりを
気まぐれに散歩してるなど、ふつう想像しない!」
【アワテル】
「だとしても、ほんとうに計画殺人をするなら
学校なんて舞台はえらばない!」
【ミトウ】
「被害者は地元を知らない“転校生”だった。
学校いがいに、呼び出せる場所がなかったのさ!」
【アワテル】
「しかし、遺体を埋める穴を
わざわざ校舎の入口に掘るのはオカシイ!」
【ミトウ】
「むしろ遺体をかついで、遠くに埋めにいくほうが
だれかに見つかるリスクは高いハズだ!」
【アワテル】
「でも、わざわざ屋上への通り道に
《穴》を掘るなんて、あまりに不自然です!」
【ミトウ】
「それでも、本人がそう《証言》しているんだ!
‥‥いや、《自白》だったかな?」
【アワテル】
「!!」(しまった‥‥!)
【サイバンチョ】
「これ以上、《計画性》のあるなしを
“本人”抜きで論じても、ギロンのイミがありません」
【ミトウ】
「最初に言ったはずだよ。
今宵の宴は、主役の少年が幕をひくのだと」
【アワテル】
(やはり‥‥《自白》がある限り
状況は動かないか‥‥)
【サイバンチョ】
「計画性のハナシには、いくらでも
別のセツメイがつけられる」
【サイバンチョ】
「今のように、終わらぬギロンになるだけです。
‥‥係官、被告人を証言台へ」
【サイバンチョ】
「では‥‥被告人。名前と職業を」
【ユーリ】
「‥‥火継利 優里。
被告人をやってます」
【アワテル】
「“被告人”は“シゴト”じゃないですよ」
【ミトウ】
「そしてもちろん、“遊び”でもないよ」
【アワテル】
「被告人のトツゼンの自白‥‥。
冗談にしか聞こえない状況ですけどね」
【ミトウ】
「なら、笑えばいいじゃないか。
‥‥もしキミが笑える状況なら、ね」
【アワテル】
「いいでしょう。
最後に笑うのは、ワレワレです」
【サイバンチョ】
「では異例の事態ですが、
まずは被告人のコトバを聞きましょうか」
🔴🔴🔴🔴🔴
❌【ユーリ】
「先に遺体を埋めるための穴を掘って、
掲示板を“橋”にして、カレが校舎に入れるようにした」
尋問2@ユーリ
【ユーリ】
「前日のケンカで、ケイを
ちょっとスコップで‥‥なぐりたおしたんだ」
【ユーリ】
「そして事件の日、メールを送り
校庭の穴を掘って、ジュンビを進めたんだ」
【ユーリ】
「屋上でカレを待つつもりだったんですけど‥‥。
ジッサイには、キゼツしたカレがすでに屋上にいた」
【ユーリ】
「あせってカレを屋上から投げおろして‥‥。
穴に埋めおわったら、すぐにケーサツが来たんだ」
🔴🔴🔴🔴🔴
【サイバンチョ】
「殺意も、計画性もあった‥‥。
やはり、検察側の主張どおりでしたか」
【アワテル】
「計画性があるなら、裁判が進んだ今になって
《自白》なんてしないハズですが」
【ミトウ】
「計画をたてるアタマがあるからこそ、
きのうの審理で‥‥“逃げられない”ことを察したのさ」
【アワテル】
「‥‥いずれにせよ、被告人のトツゼンの《自白》。
不自然な状況だと言わざるを得ません!」
【サイバンチョ】
「困りましたな‥‥被告人。あなたの《自白》を、
弁護側は受け入れないようです」
【ユーリ】
「‥‥。ボクは、
《証言》をしただけですから‥‥」
【アワテル】
「!!」(‥‥《自白》じゃなくて《証言》か‥‥!)
【アワテル】
「裁判長!! 被告人の《証言》に、
弁護側は《尋問》するケンリがある!!」
【サイバンチョ】
「被告人はすでにツミをみとめています。
これ以上の審理は、不要ではありませんか?」
【アワテル】
「しかし、被告人はまだ
ワレワレの弁護をキョヒしていない!」
【ミトウ】
「‥‥今宵の宴は、幕を開けるも閉じるも
被告人しだい。運命は、キミの手の中にある」
【ユーリ】
「あ、ええと‥‥。
いやその、なんというかその‥‥」
【アワテル】
「被告人がベンゴをキョヒしない限り、
弁護側は《尋問》をさせてもらいますよ!」
【ユーリ】
「あ、ええとその。
いやその、なんというかアレ‥‥」
【アワテル】
(ユーリくん、“人質”がいる手前
なんにも言えなくなってるな‥‥)
【ミトウ】
「‥‥弁護側の《挑戦状》を受けるとしようか。
被告人のハメツの歌に、おどらされるがいい」
【サイバンチョ】
「‥‥まあ、そこまで言うならいいでしょう。
弁護人の要請をみとめます」
【サイバンチョ】
「ただし、被告人が弁護をキョヒした時点で、
判決はくだされます‥‥よろしいですね?」
【アワテル】
「トツゼンの不自然な《自白》‥‥。
かならず、ウラに《黒幕》がいるハズです」
【サイバンチョ】
「わかりました。《尋問》で
シロクロ、ハッキリさせてもらいましょう」
🔴🔴🔴🔴🔴
❌【ユーリ】          【◯◯●◯◯】
「先に穴を掘って、掲示板を“橋”にして、
カレが校舎に入れるようにした」
尋問2@ユーリ
【ユーリ】          【●◯◯◯】
「前日のケンカで、ケイを
ちょっとスコップで、なぐりたおしたんだ」
【アワテル】
「スコップでなぐりたおすのを、
“ちょっと”とは言いません」
【ユーリ】
「だって! アイツ、
ミレイちゃんを追い回してたんだぞ!」
【サイバンチョ】
「最近の学生は、“ミレイちゃん”を追い回すと、
スコップでなぐられるのですか‥‥!」
【ミトウ】
「それだけでなく、屋上から転落させられて、
遺体を校庭に埋められるようだ」
【アワテル】
(うう‥‥ケンカに使ったスコップが、
どんどんユーリくんの墓穴を掘ってくる‥‥)
【サイバンチョ】
「‥‥ところで被告人。
“ミレイちゃん”というのは、いったい‥‥?」
【ユーリ】
「ミレイちゃんは“天使”さ!
学園に舞いおりた、女神の使いなのさ!」
【サイバンチョ】
「はぁ‥‥ナルホド、天使ですか。
そのために殺人など、神もホトケもないですな‥‥」
【ミトウ】
「この世には、神もホトケも天使もいないさ。
ただし、“悪魔”はいるようだけどね」
【ユーリ】          【◯●◯◯】
「そして事件の日、メールを送り
校庭の穴を掘って、ジュンビを進めたんだ」
【アワテル】
「タイヘンですね、殺人犯のジュンビって‥‥」
【ユーリ】
「そのうえ、《自白》まで検証されて‥‥。
殺人犯だってラクじゃないんです!」
【アワテル】
(《自白》に食らいつかないといけない
弁護士だって、ラクじゃないんだけど‥‥)
【サイバンチョ】
「裁判長だってラクじゃないですぞ。
《有罪》か《無罪》か、いつも迷いますからな」
【アワテル】
(迷う《振れ幅》があまりに広すぎでは‥‥)
【サイバンチョ】
「この事件でラクになったのは、
被害者だけというコトですな」
【ミトウ】
「そろそろ、弁護人と被告人も
ラクになる時間だけどね」
【ユーリ】
「‥‥まあ、被害者はたしかに
ラクに死んだとは思いますよ。なぜなら‥‥」
【ユーリ】          【◯◯●◯】
「屋上でカレを待つつもりでしたが‥‥。
ジッサイは、キゼツしたカレが屋上にいた」
【アワテル】
「前日のケンカでなぐったとき、
被害者がキゼツしたのは見ましたか?」
【ユーリ】
「いや、見てないですね‥‥。
‥‥あ、いや、見ました! 見ましたとも!」
【アワテル】
「“見てない”ということは、
キゼツしたかどうかは分からない‥‥?」
【ユーリ】
「や。アタマをおさえてましたけど、
キゼツはしてなかったですね‥‥」
【ユーリ】
「‥‥あ、いや、見ました!
見たしキゼツもしてました!」
【アワテル】
(《自白》と《証言》の“板ばさみ”だな‥‥。
もう少し上手く演技してくれないかな‥‥)
【ユーリ】
「まさか、アイツが前日からずっと
キゼツしてたなんて、思わなかったんだ‥‥」
【ユーリ】          【◯◯◯●】
「あせってカレを屋上から投げおろして。
穴に埋めおわったら、すぐにケーサツが来た」
【アワテル】
「被害者はそのとき、生きてました。
体温や呼吸をみれば‥‥わかったハズでは‥‥?」
【ユーリ】
「‥‥や、だって‥‥わからなかったし‥‥」
【アワテル】
「いやいやいや!
体温や呼吸をみれば、わかったハズです!」
【ユーリ】
「いやいやいや!
だって、わからなかったし!」
【サイバンチョ】
「コラコラコラ!
被告人とは呼吸を合わせなさい、弁護人!」
【アワテル】
(‥‥《自白》した被告人と、
“あうんの呼吸”で行けるワケないだろう!)
【ユーリ】
「だってホラ、殴ったのは半日前だし。
半日もキゼツするワケないと思うじゃん‥‥」
【ミトウ】
「たおれてる被害者を見たシュンカン、
その目に《死》以外の何者も、映らなかった」
【ミトウ】
「そこで被告人の行動は決定された。
呼吸も体温も、付け入るスキはなかったのさ」
【アワテル】
(‥‥“キゼツ”から“スイミン”に移ったなんて、
ふつう考えないから‥‥ムジュンはしてないな)
【アワテル】
(ただ、《不自然》ではある。
カン違いでも、“遺体”を即決で投げ下ろせるか‥‥?)
🔴🔴🔴🔴🔴
【アワテル】
(水冬検事の主張は、インパクトはあっても
どこかムリがある)
【アワテル】
(半日キゼツして、一度も起きなかった被害者。
その被害者の“生”に気づかず《遺体処理》‥‥)
【アワテル】
(ひとつ“ほころび”が生まれれば‥‥
検事の主張は、音を立ててくずれ落ちるハズだ)
❌→②にメール「自作自演」→「ありえなくはないだろ」
→④「パスワードの紙」→「この紙をケイが取ってた=校舎入口を通った」
 →「前日に紙が貼られてたんだ!」→「パスワード」毎日変わる!
 →ミトウ、「高さが足りない」ムジュンに気づきながら次の尋問うながす
  「ザンネンながら、それはありえない」
🔴🔴🔴🔴🔴
異議あり!
【アワテル】
「被害者は、屋上で日付をまたいだ。
‥‥きのう何度も聞かされたセリフです」
【アワテル】
「しかし‥‥水冬検事。あなたの“日付”は、
きのうから変わってないようだ」
【ユーリ】
「パスワードの紙‥‥。死んだケイが持ってた‥‥」
【アワテル】
「この紙を手にしていたというコトは。
被害者は、校舎のウラ口を通ったことになる」
【ユーリ】
「あっ‥‥!!」
【アワテル】
「屋上で日付をまたいだのなら、
この紙を手にすることはできないのです!!」
♪異議あり泡照
【ミトウ】
「そんな紙、事件の前日から
手に入れてたと考えればいいハナシだろう!」
【アワテル】
「‥‥このパスワードの紙は、事件の日にしか
手にすることはできなかったのです!」
【アワテル】
「‥‥このパスワードの紙は、事件の日にしか
手にすることはできなかったのです!」
🔴🔴🔴🔴🔴
くらえ!
【アワテル】
「‥‥このパスワードの紙は、事件のあった日にしか
手にすることはできなかったのです!」
【サイバンチョ】
「そんなに希少なモノなのですか!!
その紙キレは!」
【アワテル】
「たぶん、最高級のインクとかが
使われてますから!!」
【サイバンチョ】
「では、シツレイして。
‥‥‥‥‥とくにニオいません‥‥」
【アワテル】
「いや、ニオイで
価値がきまるワケじゃないですから‥‥」
【サイバンチョ】
「そうでもありませんよ。
私はこう見えて、ハナがきくほうです」
【アワテル】
「‥‥え」
【サイバンチョ】
「このニオイはテキトーな証拠品です。
あなたの目を見れば、一発でわかります」
【アワテル】
(‥‥今のくだり、裁判長のハナは
どこでカツヤクしたんだ‥‥?)
【サイバンチョ】
「‥‥それで、屋上で日付をまたいだのなら
紙を手にできなかったというのは‥‥」
🔴🔴🔴🔴🔴
【サイバンチョ】
「これは‥‥なんですか‥‥?
フシギな呪文がならんでますな‥‥」
【アワテル】
「そのフシギな呪文が、“呪い”を解くカギなのです。
‥‥毎日、変わるワケですからね」
【ミトウ】
「‥‥!!」
【アワテル】
「事件の日のパスワードが書かれた紙は、
事件の日にしか、入手できないのです!」
【ミトウ】
「ぐ‥‥!!!」
【サイバンチョ】
「静粛に! この紙を被害者が手にとった以上、
検察の主張は成立しません!」
【アワテル】
「被害者はカメラに映ってない。つまり、
1晩じゅう《屋上》か《校舎外》にいたことになる」
【アワテル】
「屋上で日をまたげば、この紙は手にできない。
これで‥‥《屋上》にいた可能性は消えるのです!」
【ミトウ】
「‥‥紙は“手にとった”とは限らない。
手元に“舞いおりた”だけかもしれない」
【アワテル】
「そんな都合よく風が吹くなんて、
どう考えても不自然です!」
【ミトウ】
「それが“不自然”かどうかは、
被告人に聞けばわかるハズだ!!」
【アワテル】
「!!!」(しまった、また‥‥)
【サイバンチョ】
「被告人、紙がアナに落ちたのなら、
あなたはその様子を見ていたハズです」
【ユーリ】
「え!! ええと、たしかに‥‥。
風に吹かれて落ちたに‥‥ちがいありません!」
【アワテル】
(うう‥‥自分があの紙になって、
アナの底に落とされたキブンだ‥‥)
【ミトウ】
「大自然の気ままな風を“不自然”とはね。
審理の“風向き”は、なにも変わらないというのに」
【アワテル】
(‥‥法廷の“向かい風”は、
まだ‥‥水冬検事の“ミカタ”というワケか‥‥)
【サイバンチョ】
「大自然の風をヒテイするには、
もう少し検察の主張に、“不自然”が必要です」
【ユーリ】
「うう‥‥次は不自然な“風”と“紙”について、
《証言》すればいいんですか?」
【サイバンチョ】
「検察側が起こした“風”は、少々強引ですからな。
“風まかせ”に判決をくだすワケには‥‥いきません」
【アワテル】
(嵐を巻き起こしてみせるさ。
水冬検事の主張はすでにほころび始めている!)

尋問3
【ユーリ】
「ケイは死ぬ前日から、ずっと屋上にいた。
だからパスワードの紙を見るのはムリだった」
【ユーリ】
「たぶん、パスワードの紙は
風に吹かれてグーゼン、ケイの手元に落ちたんだ」
【ユーリ】
「ケイの体を穴に投げ込んだとき、
たしかに‥‥風が吹いてたと思う」
【ユーリ】
「パスワードの紙はボクの手で貼ったから。
ノリづけがアマいし、風ではがれたのかも‥‥」
🔴🔴🔴🔴🔴
【サイバンチョ】
「なんというか、ずいぶん
“他人ごと”みたいな《証言》でしたねぇ‥‥」
【アワテル】
(そりゃまあ、ジッサイに
“他人ごと”だからな‥‥)
【サイバンチョ】
「“風”に身をまかせるだけではダメですぞ。
私も若いころは、“台風の目”と呼ばれたものです」
【アワテル】
(裁判長の判決、
台風のようにコロコロ変わるからな‥‥)
【ミトウ】
「今宵の“台風の目”は、被告人自身。
雨がふっても、その罪は流れ落ちないさ」
【アワテル】
「ええ、おかげでトンでもない“ぬれぎぬ”を、
被告人はかぶせられましたからね」
【サイバンチョ】
「風が吹いても、雨がふっても、ヤリが降っても
《尋問》はやっていただきますぞ」
【アワテル】
「ええ、モチロン。検察側の嵐のような主張を、
かならずや晴らしてみせましょう」
【アワテル】
「雨が降っても、ヤリが降っても、
被害者は屋上からは降ってきません」
🔴🔴🔴🔴🔴
尋問3
【ユーリ】          【●◯◯◯】
「ケイは死ぬ前日から、ずっと屋上にいた。
だからパスワードの紙を見るのはムリだった」
【アワテル】
「あの、水冬検事の主張を
そのまま“再放送”してませんか‥‥?」
【ユーリ】
「いやいやいや! ボクはボクの足で!
ボクの人生を! ボクなりに歩んでますから」
【アワテル】
(はやく打ち切ってやらないとな、
こんなボロボロの《再放送》‥‥)
【ミトウ】
「この証言はいわば《コマーシャル》。
《視聴率》が上がるのは、次の《証言》さ」
【アワテル】
(《ジッサイに、紙が落ちたのを見たか?》
まあそれすらも《再放送》なんだけど‥‥)
【ユーリ】
「ええとその、水冬検事の言うとおりで、
紙は風に吹かれて落ちたんですよね‥‥」
【アワテル】
(《被告人の自白》から《真犯人の追及》に
はやくチャンネルを変えてあげないとな‥‥)
【ユーリ】          【◯●◯◯】
「たぶん、パスワードの紙は
風に吹かれてグーゼン、ケイの手元に落ちたんだ」
【アワテル】
「たぶん‥‥?」
【ユーリ】
「なんというかその、ヒトを殺すと
アタマの中がマッシロになるんです!!」
【アワテル】
「つまり、この紙がジッサイに
穴に落ちたかどうかは、わからない‥‥?」
【ユーリ】
「そう。なぜならボクのアタマは、
マッシロだったのだから!!」
【サイバンチョ】
「長年このシゴトをしてますが、
アタマがマッシロになる犯人は、よく見ます」
【ユーリ】
「そう。サツジンハンはすべからく、
マッシロになるモノなのです!」
【サイバンチョ】
「しかし、それをここまで
ホコらしげに叫ぶ犯人は、はじめてです」
【アワテル】
(ユーリくんのアタマの中に、そろそろ
《色》をつけてやらないと、アブないな‥‥)
【ユーリ】
「それでマッシロなボクは、色メガネをかけずに、
事件を思い出してるんだけど‥‥」
【ユーリ】          【◯◯●◯】
「ケイの体を穴に投げ込んだとき、
たしかに‥‥風が吹いてたと思う」
【アワテル】
「風が吹いてたと、“思う”‥‥?」
【ユーリ】
「うん。あのとき風は吹いてたか、
もしくは吹いてなかったんだ」
【アワテル】
「ナニひとつとして結論が出てませんね‥‥」
【ユーリ】
「だってホラ、確証がないものを
《シロ》というワケにはいかないし‥‥」
【サイバンチョ】
「なんというか、その。
マッシロな《証言》ですねぇ‥‥」
【ユーリ】
「そりゃまあ《自白》ですからッ!」
【アワテル】
「たぶんいまのは、
《中身のない証言ですね》ってイミなのでは‥‥」
【ユーリ】
「ええええええッ!!
こんなに《色》のない証言なのにッ!」
【アワテル】
(だんだん、この裁判を
《白紙》にもどしたくなってきたな‥‥)
【ユーリ】
「でも、この紙だけはマッシロじゃないよ!
パスワードが書いてあって、それで‥‥」
【ユーリ】          【◯◯◯●】
「パスワードの紙はボクの手で貼ったから。
ノリづけがアマいし、風ではがれたのかも‥‥」
【アワテル】
「パスワードの紙を、自分の手で‥‥?」
【ユーリ】
「ネコの手も借りたいくらい忙しかったケド、
現場にネコはいなかったので!」
【ミトウ】
「ちなみに、この死の舞踏への招待状は、
キミがコンピューターで打ち込んだのかな?」
【ユーリ】
「そ、そうです! “端末”を拾って、
パスワードの電波をも拾って、キーを踊らせて!」
【アワテル】
(水冬検事、なんというか‥‥。
“死の舞踏”が大好きだな‥‥)
【ミトウ】
「キーが踊り、ツミビトが踊り、運命も踊った。
‥‥死の舞踏で命はおどり、生はくだけ散る‥‥」
【アワテル】
(ホラ、また言ってる‥‥)
🔴🔴🔴🔴🔴
【アワテル】
(《不可能》まで行かなくていいから、
《不自然》をテッテイ的に追いかけよう)
【アワテル】
(少しでもアヤシイところがあれば、
エンリョなく攻めてしまっていい‥‥!)
【アワテル】
(論点は、《紙》と《アナ》だ。
この2つを穴のあくほど、見つめてやろう‥‥)
🔴🔴🔴🔴🔴
ルート0
【アワテル】
「証人。この紙は
テープで貼られていたんですよ!」
♪異議ありアワテル
【ユーリ】
「え! ‥‥そ、そういえば!
たしかにテープで貼った気がします」
【アワテル】
「‥‥‥‥。
あれ、もう終わりですか‥‥?」
【ユーリ】
「はい、テープのノリづけが
アマかったのでしょう‥‥」
【サイバンチョ】
「はあ、なんというかその‥‥。
ずいぶんと《ノリ》の悪い《異議》でしたねぇ‥‥」
【ミトウ】
「弁護人も、ムダな《勇み足》を踏まないよう
クツ底をノリづけしておくといい」
【サイバンチョ】
「そして、そのボロボロの主張をキチンと
テープでつないでから、異議をとなえるように」
↑条件分岐
【アワテル】
(うぐ‥‥テープごときじゃ
”復元”できないムジュンを、見つけないとな‥‥)
🔴ルート1
【アワテル】
「‥‥ユーリくん。きみの身長は
どのくらいだったかな?」
【ユーリ】
「だいたい2メートルですね」
【アワテル】
「‥‥背伸びしたいトシゴロなのはわかりますが、
そんなキミでも‥‥この紙には手が届かない」
【ユーリ】
「そ、そんなコトないですッ!!
だいたい2メートルだし!!」
【アワテル】
「ちなみに‥‥この紙が貼ってあった高さは、
だいたい3メートルです」
【ユーリ】
「‥‥さ、さんめえとる‥‥。
お姉ちゃんがふたりいても足りないよ!!」
【アワテル】
「そう。“背伸び”どころか、
“逆立ち”したって、この紙に手は届かないのです!」
【サイバンチョ】
「静粛に! ‥‥ええと、被告人。
手を伸ばすと、身長はどのくらいになりますか?」
【ユーリ】
「だいたい2メートルです!!」
【アワテル】
「身長が150センチだとして、
ウデをのばせば、ちょうど2メートルほど‥‥」
【ユーリ】
「つまり、どっちにしろ
《だいたい2メートル》です!!」
【アワテル】
「《四捨五入》が大ざっぱすぎませんか、証人‥‥」
【ユーリ】
「でも‥‥どんなに大ざっぱに《四捨五入》しても
3メートルは届かないよ!」
【ミトウ】
「4を捨てる必要も、5を拾う必要もない。
ハンニンは、“別の方法”を使ったのさ」
【サイバンチョ】
「‥‥別の方法‥‥? ふつうに紙を貼る以外に
いったいどんな方法が?」
【ミトウ】
「校舎に入ればいいのさ。
ウラ口背景表示
校内にはいって、マドから紙を貼るんだ!」
【アワテル】
「そんなバカな! 校舎に入ったら、
監視カメラに映ってしまいます!」
【ミトウ】
「そう。だからジッサイ、
被告人がカメラに映ってるじゃないか」
【アワテル】
「あ‥‥ッ!!!」
【ミトウ】
「監視カメラに映ったのは、被告人だけ。
この紙を貼れたのは、被告人しかいないのさ!」
【アワテル】
「ぐ、ぐあああああああッ!!
‥‥なーんて、おどろくと思いましたか、検事」
【ミトウ】
「‥‥赤い方の弁護士さんなら
おどろいてただろうね」
【アワテル】
「残念ながら、このアワテルは
あの赤い弁護士ほど青くない‥‥」
【サイバンチョ】
「‥‥では弁護人!!
いまの検事の主張に、反論があるのですか!」
【アワテル】
「ここで“できない”と答えるヤツは
この席には立ちません!!」
【サイバンチョ】
「~ッ!! なんと‥‥
なんと! 勇ましいコトバなのでしょう!!」
【アワテル】
(‥‥‥‥。
さあ‥‥今からがんばって考えるぞ!!)
【サイバンチョ】
「“被告人が校舎に入り、マドからこの紙を貼った”。
この主張のどこが、ムジュンしているのですか!」
【サイバンチョ】
「被告人が校舎に入り、マドからこの紙を貼った”。
この主張のどこが、ムジュンしているのですか!」
🔴🔴🔴🔴🔴
【アワテル】
「ここで“できない”と答えるヤツは
この席には立ちません!!」
【サイバンチョ】
「なんと勇ましいコトバなのでしょう!!
それで、水冬検事の主張のムジュンとは!」
【アワテル】
「‥‥だから、ここで“できない”と答えるヤツは‥‥
この席には立ちません!!」
【ミトウ】
「立場上、“できない”とは言えない空気を読んで
退廷でユルしてほしいそうだ」
【サイバンチョ】
「‥‥立場上、ユルすわけにはいきません。
この星からも《退廷》してもらいましょう」
【アワテル】
(‥‥宇宙人にされてしまった‥‥)
【サイバンチョ】
「宇宙なら読むべき《空気》もありません。
自由にのびのびやれるコトでしょう」
【アワテル】
(‥‥被告人がマドから、パスワードの紙を貼った。
監視カメラに映った出入りのタイミングで‥‥)
【アワテル】
(‥‥アタマがこんがらがってきた。
時系列を一度、整理したほうがいいな‥‥)
【サイバンチョ】
「コラ、弁護人!! 空気を読まずに
のびのびと長考しないでください!」
【アワテル】
(うう‥‥じっくり考えゴトをするには
地球の《重力》は重たすぎるな‥‥)
🔴🔴🔴🔴🔴
【アワテル】
「被告人に手が届かないなら、
被害者にも手が届かないハズです!」
【ミトウ】
「どうやら、《真相》に手が届いてないのは
そこの弁護人も同じのようだね」
【アワテル】
「‥‥え?」
【ミトウ】
「パスワードの紙を“手に取る”必要はない。
“見える”だけでよかったハズさ」
【アワテル】
「現場は暗かったのだから、手に取ったほうが
なんかその、見やすいじゃないですか!!」
【ミトウ】
「3メートルの高さは“手に取る”ことも“貼る”ことも
できないが、“見る”ことはできたハズだ」
【アワテル】
「いやでも、現場は暗かったから‥‥」
【ミトウ】
「なんのための《蛍光色》だッ!!!」
【アワテル】
「うおおおおおおッ!!!」
ペナルティ
【サイバンチョ】
「どうやら、弁護人は少々
《背伸び》をしすぎたようですな」
【ミトウ】
「いっそ、《逆立ち》でもした方がいいだろう。
手が届かないなら、足で試してみるといいさ」
↑条件分岐
【アワテル】
(まさに“手も足も出ない”状況に
なりそうだな‥‥)
🔴🔴🔴🔴🔴
ルート1続き
【アワテル】
「被害者は4時45分に屋上に呼び出された。
“ウラ口にパスワードを書いた紙を貼ります”‥‥」
【ミトウ】
「そうだ。そのために被告人は、
校舎のマドからパスワードの紙を貼ったんだ!」
【アワテル】
「朝の5時に‥‥ですか?」
【ミトウ】
「‥‥? ‥‥そうだ。カメラに映ったのは
5時なのだから、その時に校舎に入ったんだ」
【アワテル】
「4時45分に屋上に来いと言いながら、
5時にパスワードの紙を貼ったワケですか」
【ミトウ】
「‥‥あ‥‥ッ!!!」
【アワテル】
「これじゃあ、被害者は現場にすら着けない。
計画的犯行なら、ゼッタイにあり得ない!!」
【サイバンチョ】
「静粛に! 静粛に!!
たしかに、計画犯ならあり得ないミスです」
【アワテル】
「この紙に書いたパスワードがなければ、
被害者は校舎にはいれません」
【アワテル】
「紙は4時45分より前に貼られたハズです。
つまり、校舎から貼られたハズがないのです!」
【ミトウ】
「しかし、ほかに紙を貼れる方法はない!
被告人がチコクして、紙を貼りおくれたのさ!」
【アワテル】
「被告人はたしか、事件の2時間前から
校庭にアナを掘ってたハズですが」
【ミトウ】
「ぐ‥‥ッ!!!」
【アワテル】
「事件の2時間前から校庭にいて、被害者を
呼び出した時刻に‥‥チコクできるハズがない!」
【ミトウ】
「アナを掘ったのは《2時間“以上”前》だ。
前日にあらかじめ掘って、一度帰ったのさ!」
【アワテル】
「《一度帰る》必要がどこにもありませんね。
いっそ、あなたが帰ったらどうですか?」
【ミトウ】
「しかし校舎に入らないと、紙は貼れない!
どんなに《不自然》だろうと、これが真実だ!」
【アワテル】
「‥‥水冬検事。あなたの主張はいま、
いくつの《不自然》に支えられていますか?」
🔴ルート3
【アワテル】
「風に吹かれて、穴の底に紙が落ちた。
大自然の風は、ずいぶん不自然な動きをしますね」
【ミトウ】
「どんなに不自然でも、ほかに可能性がない以上‥‥」
【アワテル】
「‥‥水冬検事の主張も、あり得ないのですよ。
だって、穴には“橋”がかかってたんでしょう?」
【ミトウ】
「‥‥あ‥‥あッ‥‥!!!」
【アワテル】
「穴の底に紙が落ちるには、“橋”がジャマになる。
現場の風は弁護側に吹いていたようですね!」
♪異議あり泡照
【サイバンチョ】
「静粛に、静粛に、静粛にィィィ!!
‥‥水冬検事! どうなのですか!!」
【ミトウ】
「“橋”をかける前に《紙》が落ちれば、
なんのモンダイもないッ!!」
検察側の主張出す
【アワテル】
「“橋”をかける前は、穴を掘ってる“最中”です!
しかしこの紙は、遺体の“手元”に落ちていた」
【サイバンチョ】
「穴を掘ってる途中で紙が落ちたら、
さすがに気づいて、地上にもどしますからな」
【ミトウ】
「なら紙は、“橋”をはずした《後》に落ちたんだ!」
【アワテル】
「“橋”をはずすのは、遺体を穴に投げ込む時です。
その直後、穴を埋めはじめます」
【サイバンチョ】
「埋めはじめた《後》でアナに落ちたら、
土がジャマで、“手元”には落ちません!!」
【ミトウ】
「ぐッ!!!」
【アワテル】
「紙は“遺体の手元”に落ちていた。
つまり、遺体とおなじ深さ‥‥《底》に落ちていた」
【サイバンチョ】
「つまり穴を掘り終わって、埋めはじめるまでの
わずかな間に、紙は《穴》に落ちたことになる‥‥」
【アワテル】
「しかしそのわずかな間は、橋が穴をふさぐ。
この紙が穴に落ちるタイミングは、1つしかない」
【ミトウ】
「ひ、ひとつ‥‥?」
【アワテル】
「もちろん、《遺体が穴に落ちた時》です。
この紙は、遺体と同時に穴に落ちるしかない!」
【ミトウ】
「しかし、“橋”が穴をカンゼンに
ふさいでいたとは限らない!!」
【アワテル】
「たしか“橋”は、アナをふさぐのに
じゅうぶんな広さがあったと聞きましたが?」
【ミトウ】
「だが、アナのすべてをふさいでた
ワケじゃあるまい!!」
【アワテル】
「つまり、“橋”とアナのスキマはわずかだった。
‥‥そのわずかなスキマに、紙が落ちたと?」
【ミトウ】
「つまり、不可能ではなかったハズだ!」
【ミトウ】
「そもそも、遺体を投げ込んだタイミングで
ちょうど風が吹いたと考えれば‥‥」
【アワテル】
「水冬検事。あなたの主張はいま、
いくつの《不自然》に支えられていますか?」
🔴フラグ未達
【ミトウ】
「しかし、屋上からの転落しか
殺害が不可能な以上、そう考えるしかない!!」
【サイバンチョ】
「《不自然》は《不可能》には勝ります。
しかし‥‥このまま判決は下せません」
【サイバンチョ】
「《不自然》が2つもあったら、
それはもう‥‥《大自然》です!!」
【アワテル】
「‥‥では、さらにひとつ《不自然》があれば
検事の主張はどうなるでしょうか?」
【ミトウ】
「な、なんだって‥‥」
【サイバンチョ】
「弁護側の指摘は、まだ検察の主張を
ヒテイできるほどのモノではない」
【サイバンチョ】
「《尋問》にもどっていただきましょう。
弁護側にはなにか、考えがあるようですから」
【アワテル】
(さあ、水冬検事の主張に
トドメをさしてやるか‥‥!)
🔴フラグ済
【ミトウ】
「ぐ‥‥ッ!!!」
【アワテル】
「わざわざ通り道に《穴》を掘り、
計画的犯行なのに監視カメラの存在を忘れる」
【アワテル】
「紙は《橋》のわずかなスキマに落ちたか、
あるいは‥‥遺体と同時に吹いた風で落ちた」
【アワテル】
「しかも被告人は、被害者を呼び出した時刻から
15分おくれて、呼び出しに必要な紙を貼っている」
【サイバンチョ】
「《不自然》が3つもあったら、
それはもう‥‥《大自然》です!!」
【アワテル】
(さっきと変わってないじゃないか!)
【サイバンチョ】
「とにかく、現時点で判決は下せません!
検察側の主張は、《大自然》そのものですから!」
【ミトウ】
「ぐ‥‥‥‥‥‥。
ぐああああああああああああッ!!!」
【アワテル】
(《大自然そのもの》だと、
“ものすごく自然”というイミになるのでは‥‥)
【サイバンチョ】
「しかし弁護人。あなたの主張だって、
まだ《不可能》のままですぞ‥‥?」
【アワテル】
「あ。‥‥まあ、それはイイじゃないですか」
【ミトウ】
「いいワケあるかッ! キミの主張だって
ムジュンしてるじゃないか!」
【サイバンチョ】
「そう、3メートルの高さに貼られた紙。
これを校舎のマド以外から貼るのは、不可能です」
【アワテル】
「しかしパスワードの紙は、被害者を呼び出した
4:45より前に貼らないと‥‥イミがない」
【ミトウ】
「‥‥いいだろう。被害者がずっと屋上に
いたという主張は、もはや成立しない」
【アワテル】
「!!」
【ミトウ】
「被害者はカメラに映ってない以上、
一晩中‥‥《屋上》か《屋外》にいたことになる」
【ミトウ】
「《屋外》にいたまま《転落》する方法。
《落とし穴》の主張を成立させてもらおうか」
【サイバンチョ】
「検察側は主張のムジュンをみとめましたが‥‥。
被告人、あなたの《自白》はどうなのですか?」
【ユーリ】
「えっ!! ええとその、ヤッパリ‥‥
ボクがハンニンだと思いますけど‥‥」
【サイバンチョ】
「‥‥この紙のムジュンについて、
あなたが真犯人なら、セツメイできるのでは?」
【ユーリ】
「えええええッ! 
それはその、ええと‥‥」
【アワテル】
「《証言》してもらいましょうか。
この紙を貼るまでの《経緯》を‥‥」
【ユーリ】
「あわてるさん!!
‥‥だ、だいじょうぶなんですか‥‥?」
【アワテル】
「‥‥すぐに、《真犯人》までたどり着いてみせる」
(だから安心して、《自白》を続けてほしい)
【サイバンチョ】
「この紙をいつ作り、どう貼ったのか。
おしえていただけますか、被告人」
【ユーリ】
「わ、わかりました。
ボクなりに一生ケンメイ‥‥がんばります!!」
【アワテル】
(《真犯人》がのこした手がかりは2つ。
この紙を作り、このメールを送った)
【アワテル】
(さぁ‥‥そろそろ“天使”なレディを、
法廷に引きずりおろす時だ‥‥!)
🔴🔴🔴🔴🔴
尋問4(尋問アレグロ)
【ユーリ】
「事件の日、被害者に呼び出しメールを送った。
アイツなら応じるだろうと思って‥‥」
【ユーリ】
「パスワードは“端末”で知ることができた。
それをその、紙に印刷してなんか貼って‥‥」
【ユーリ】
「でも、カレは屋上でキゼツしていた。
‥‥それで、ボクが殺したとカンちがいしたんだ」
【ユーリ】
「まだ死んでないカレの“遺体”を、屋上から
投げおろして“処理”してしまった」
【ユーリ】
「遺体を埋めるための穴は掘ってあったから、
掲示板をどかして、そこにカレを埋めた」
【ユーリ】
「急いで土をもとどおりに埋めおわったら、
ケーサツが来て‥‥タイホされたんだ」
🔴🔴🔴🔴🔴
【サイバンチョ】
「なんというか、ゼンゼン代わり映えが
しませんな。被告人の《証言》‥‥」
【アワテル】
「むしろ、コロコロ変わるほうが
モンダイだと思いますけど‥‥」
【サイバンチョ】
「まあ、きのうの証人よりはマシですな。
ちょっとスリルとサスペンスに欠けますが」
【アワテル】
「裁判長。スリルとサスペンスなら、
今からお見せできるかも知れませんよ」
【ミトウ】
「弁護人‥‥キミはさっきこう言ったね。
《この《自白》は、ウラに《黒幕》がいる》‥‥」
【アワテル】
「シロをウラ返せば、クロになる。
メールとこの紙が、真犯人への手がかりです」
【ミトウ】
「そのコトバをわすれないことだ。
さあ‥‥《真犯人》にたどり着いてもらおう!」
🔴🔴🔴🔴🔴
尋問4
【ユーリ】        【●◯◯◯◯◯】
「事件の日、被害者に呼び出しメールを送った。
アイツなら応じるだろうと思って‥‥」
【アワテル】
「被害者なら応じる‥‥?
そのコンキョは、どこから‥‥?」
【ユーリ】
「ココロですね」
【アワテル】
「‥‥はい? ココロ‥‥?」
【ユーリ】
「アイツは逃げない。きっとオトコらしく
立ち向かってくるハズだ! ‥‥と」
【アワテル】
(‥‥‥‥。ここまでゴーカイに
ウソをつかれると、逆に清々しいな‥‥)
【サイバンチョ】
「わかりますなぁ。ワタシも若いころ、
拳を交わしあって、ボコボコにされたものです」
【アワテル】
(ユーリくんはわざとムジュンを強調した。
‥‥大丈夫なのかな、こんなことして‥‥)
【ユーリ】
「それでまあ‥‥メールを送ったら、
つぎのジュンビに取りかかったんだ」
【ユーリ】        【◯●◯◯◯◯】
「パスワードは“端末”で知ることができた。
それをその、紙でまあアレして‥‥」
【アワテル】
「あの、なんですか? 《アレ》って‥‥」
【ユーリ】
「《アレ》とは、指事語代名詞のひとつで
話し手・聞き手から遠い物事を指すコトバです」
【アワテル】
(逃げかたが《確信犯》すぎる‥‥)
【サイバンチョ】
「おぼえたての国語の知識で逃げないように。
この紙を貼る方法は、ないのですか?」
【ユーリ】
「‥‥し、《四捨五入》すれば、
ボクの身長もだいたい紙に届いてますから‥‥」
【サイバンチョ】
「‥‥今度は、おぼえたての算数の知識で
逃げられました」
【ミトウ】
「じゃあ、次は社会科のお勉強だ。
《偽証罪》というコトバを知っているかな?」
【ユーリ】
「うううう! だってその、ボク。
ヒトジチがアレでその、ソレなんだもん‥‥」
【アワテル】
(《自白》と《人質》が“化学反応”をおこして、
どんどんメチャクチャになっていくな‥‥)
【ユーリ】        【◯◯●◯◯◯】
「でも、カレは屋上でキゼツしていた。
‥‥それで、ボクが殺したんだとカンちがいしたんだ」
【アワテル】
「‥‥‥‥」(どうせ全部ウソなのに、
ゆさぶるイミはあるのか‥‥?)
【サイバンチョ】
「どうしましたか、弁護人。
急に奇声をあげたかと思えば、ダマりこんで」
【アワテル】
「ちょっと、人生にムナしさを感じただけです」
(《待った!》って奇声あつかいなのか‥‥?)
【ユーリ】
「まあ、あわてるさん。
生きてればイイコトもありますよ」
【アワテル】
(ムナしさの《種》は、ほとんど
キミのムナしい《証言》なんだけれど‥‥)
【サイバンチョ】
「ツラいときは、この木槌で
目を覚まさせてあげますぞ!」
【ミトウ】
「人生のイミは、みずから作り出すものだ。
オリの中で与えられるエサとはちがうのさ」
【アワテル】
(この《証言》をゆさぶるイミは、
どうやっても作れなさそうだな‥‥)
【ユーリ】        【◯◯◯●◯◯】
「まだ死んでないカレの“遺体”を、屋上から
投げおろして“処理”してしまった」
【アワテル】
「‥‥‥‥」(ゆさぶりすぎると、
《人質》の件がちょっとマズイのでは‥‥?)
【サイバンチョ】
「どうしましたか、弁護人。
急に奇声をあげたかと思えば、ダマりこんで」
【アワテル】
(人質がいる手前、ユーリくんの《証言》を
やっつけると、ひつぐりさんの身がアブない)
【サイバンチョ】
「あの、弁護人。ダマっているだけでは
なにも伝わりませんよ‥‥?」
【アワテル】
(そもそもユーリくんは、人質のせいで
ムリヤリ《自白》させられてるに過ぎない)
【サイバンチョ】
「弁護人! 弁護人!!
どうしましたか! 弁護人!」
【アワテル】
(そんなユーリくんの《証言》をゆさぶったら
《自白》がボロボロになるに決まっている)
【サイバンチョ】
「弁護人ンンンンンンンン
ンンンンンンンンンンンンンンンン!!」
【アワテル】
(ケッテイ的な証拠で、一気にケリをつける。
今やることは、細かいアラさがしじゃない!)
【サイバンチョ】
「‥‥弁護人の耳は、このワタシよりも
遠くなってしまったようです‥‥」
【ユーリ】
「わ、わかりました。さっきよりも
大きな声で、《証言》をつづけます!」
【ユーリ】        【◯◯◯◯●◯】
「遺体を埋めるための穴は掘ってあったから、
掲示板をどかして、そこにカレを埋めた」
【アワテル】
「‥‥‥‥」(なにをゆさぶるんだ?
ムリヤリ《自白》させられてるだけのコに‥‥)
【サイバンチョ】
「どうしましたか、弁護人。
急に奇声をあげたかと思えば、ダマりこんで」
【アワテル】
「ええと、被告人。
穴を埋めたときは、どんなキモチでしたか?」
【ユーリ】
「‥‥ええと、その‥‥。
《穴があったら入りたい》キモチでした‥‥」
【アワテル】
「奇遇ですね、自分もです‥‥」
【サイバンチョ】
「‥‥あの、弁護人。
ここはインタビューの場ではありませんよ‥‥?」
【アワテル】
(ここは《自白》の場でもありませんけどね‥‥)
【サイバンチョ】
「さあ、インタビューはオシマイです。
はやく《証言》にもどりなさい」
【ユーリ】        【◯◯◯◯◯●】
「急いで土をもとどおりに埋めおわったら、
ケーサツが来て‥‥タイホされたんだ」
【アワテル】
「‥‥‥‥」(全部ウソなのに、
ゆさぶってナニを引き出すんだ‥‥?)
【サイバンチョ】
「どうしましたか、弁護人。
急に奇声をあげたかと思えば、ダマりこんで」
【アワテル】
「‥‥ええと、被告人。
タイホされるなんて、タイヘンでしたね‥‥」
【ユーリ】
「ええ、現在進行形でタイヘンです‥‥」
【アワテル】
「奇遇ですね、自分もです‥‥」
【サイバンチョ】
「‥‥あの、弁護人。
ここはセケン話の場ではありませんよ‥‥?」
【アワテル】
(ここは《自白》の場でもありませんけどね‥‥)
【サイバンチョ】
「さあ、セケン話はオシマイです。
はやく《証言》にもどりなさい」
🔴🔴🔴🔴🔴
【アワテル】
(これ以上《自白》をガタガタにしても、
得られるものはなにもない)
【アワテル】
(ムジュンを見つけて、真犯人にたどり着く。
このメールを送ったのが、犯人のハズだ!)
🔴🔴🔴🔴🔴
【アワテル】
「被害者なら、呼び出しに応じると思った。
それはいったい、なぜでしょう?」
【ユーリ】
「そりゃあもう、ケンカの“リベンジ”だよ。
正々堂々、オトコらしく勝負して‥‥」
【アワテル】
「オトコらしい勝負で、後頭部はケガしません。
被害者はきみに、一方的に殴られている」
【ユーリ】
「うぐぐぐぐッ!!」
【サイバンチョ】
「静粛に! 被告人!
ヒトを背後からなぐるなど、ヒキョウですぞ!」
【ユーリ】
「だってアイツ!!!
ミレイちゃんを追い回してたんだぞ!!」
【サイバンチョ】
「? ミレイちゃん‥‥?」
【ユーリ】
「アイツは、学園イチの天使ちゃんを
地獄の底まで追いかけまわした‥‥悪魔なのさ!」
【アワテル】
「とにかく、被害者はユーリくんの
呼び出しにだけは、応じるハズがないのです!」
【サイバンチョ】
「前日に背後からなぐられたのに、
わざわざ応じるほうがオカシイですな」
【ユーリ】
「でも! スコップで殴られた《借り》を、
返そうとした可能性だって‥‥」
【アワテル】
「スコップで殴られた分の“仕返し”に、
丸腰で屋上へ向かったワケですか」
【ユーリ】
「あッ!!!」
【アワテル】
「“仕返し”なら、武器を持っていたハズです。
つまり、被害者にケンカの意思はなかった‥‥」
【ミトウ】
「呼び出しのメールは、送信元が不明だ。
被告人の呼び出しだと気づけるハズがない!」
【アワテル】
「そう、ここでモンダイなのはひとつ。
《被害者は、ダレの呼び出しに応じたのか‥‥?》」
【サイバンチョ】
「さすがの私でも、送信元がわからないままの
呼び出しには、応じませんからな」
【アワテル】
「コレをユーリくんの呼び出しだと
判断したのなら、まず応じるハズがない」
【アワテル】
「そして送信元が判断できないのなら、
これもまた‥‥呼び出しに応じるハズがない」
【ユーリ】
「じゃあ、アイツはメールの送り主が
ダレなのか、判断できたってコト‥‥?」
【アワテル】
「そう。被害者はこのメールを見て、
ダレが送信したのかを読み取ったんだ」
【ミトウ】
「被害者に交遊関係はなかった。
ダレに呼び出されようが、応じるハズがない!」
【アワテル】
「‥‥ひとりだけ、可能性のある人物がいます」
【ミトウ】
「!! な、なんだって‥‥?」
【サイバンチョ】
「どうやら‥‥弁護人に
コタエを聞くときが来たようです」
【ユーリ】
「あわてるさん、おねがいします‥‥!」
【アワテル】
(さあ、ここからが《本番》だ‥‥!)
【サイバンチョ】
「このメールの文面から読み取れる
“送信者”の正体とは!」
【サイバンチョ】
「このメールの文面から読み取れる
“送信者”の正体とは!」
🔴🔴🔴🔴
【サイバンチョ】
「‥‥そのヒトに《呼び出し状》を送られても、
私はマチガイなく応じませんな」
【アワテル】
「そうでしょうか?
ジブンはむしろ、よろこんで行く気がします!」
【ミトウ】
「じゃあ明日、キミを学校の屋上に
呼び出すとしようか」
【アワテル】
「‥‥え。ケンカの呼び出しですか?
それともアイのコクハクですか?」
【サイバンチョ】
「おかしなコトばかり言う弁護人の後頭部を、
みんなで叩いて直すのです」
【アワテル】
(それはケンカというか、“リンチ”じゃないか‥‥)
【ミトウ】
「メールも読み取れない弁護人なら、
サギで訴えられても、訴状文を読み取れないさ」
【アワテル】
(それはコクハクというか、コクハツじゃないか‥‥)
🔴🔴🔴🔴🔴
【アワテル】
「メールの文面の最後に、《301》。
ナゾの暗号があります」
【サイバンチョ】
「たん生日でしょうか?
私はちょうど、3月1日生まれですが‥‥」
【アワテル】
「あるいは、《名前》かもしれません」
【ユーリ】
「《301》が、名前‥‥?
‥‥あっ、《ミレイ》‥‥?」
【アワテル】
「ひとりぼっちだった被害者には、
ゆいいつ、追いかけているモノがありました」
【サイバンチョ】
「追いかけている“モノ”‥‥?」
【アワテル】
「“モノ”というより、“ヒト”ですが。
千間 美鈴‥‥被害者が恋したそのヒトです」
【ユーリ】
「“ヒト”というより、“天使”ですからッ!」
【ミトウ】
「そのレディが、被害者を呼び出しただと‥‥?
そして自分に好意を寄せる男を、殺害した‥‥?」
【アワテル】
「‥‥水冬検事。学校の屋上へ呼び出されたら、
フツウ‥‥どんな《用件》を想像しますか?」
【ミトウ】
「‥‥ケンカか、あるいは‥‥コクハク‥‥?」
【アワテル】
「そう。好意を寄せる女性からの、
屋上への呼び出しですからね」
【サイバンチョ】
「では‥‥被害者はコクハクされる気で、
呼び出しに応じたワケですか!」
【アワテル】
「被害者の好意を利用し、殺害したワケです。
“天使”というより、“悪魔”ですね」
【ミトウ】
「《301》が《ミレイ》‥‥?
そんな“言葉あそび”、なんの証拠にもならないさ」
【アワテル】
「‥‥しかし、この暗号は
《ミレイ》としか読めない!」
【ミトウ】
「たん生日でも好きな数字でも、
いくらでもコジツケられるだろう!!」
【サイバンチョ】
「そうですぞ! 弁護人の主張なら、
3月1日生まれの私だってハンニンです!」
【アワテル】
「うぐッ!!!」
(‥‥どうする、他に証拠はないのに‥‥!)
【サイバンチョ】
「弁護側の主張はわかりましたが‥‥。
暗号だけでヒトはコクハツできません」
🔴日記ではなく事件キロクをうばった方向に話を変える/もう少し流れをスムーズに
【ミトウ】
「せめて、《証拠》を示すコトだ。
あるいは‥‥《証言》か‥‥」
【アワテル】
「‥‥‥‥。
《証言》なら‥‥モチロンありますけど‥‥」
【サイバンチョ】
「ええええええッ!!!
なぜ早く言わないのですか、弁護人!」
【アワテル】
(‥‥今ここで、ユーカイの話はできない‥‥!)
「‥‥被害者の家の日記。それがキーワードです」
【サイバンチョ】
「‥‥被害者が、日記でもつけていたのですか?」
【アワテル】
「日記をつけていたのは、レディの方です。
レディの日記を、被害者の自宅で見つけました」
【ユーリ】
「そうだよ! アイツ、
ミレイちゃんをストーカーしてたんだ!」
【サイバンチョ】
「ええええええッ! ストーカーだなんて
それはその‥‥犯罪ではありませんか!」
【ミトウ】
「そんな日記があるなら、最初に提出するはず。
つまりキミの手元に今、その日記はない‥‥」
【アワテル】
「‥‥そのとおりです。
うばわれてしまいましたからね」
【ミトウ】
「手元にないなら、《証拠》にはならない。
ましてやキミは、被告人の弁護士なのだから」
【アワテル】
「‥‥《証拠》ではありません。
《証言》を提示すると言ったハズです」
【サイバンチョ】
「ちょっと待ってください!
うばわれた、というのは‥‥?」
【アワテル】
「レディは、ワレワレの目の前で
悪魔のようなホホエミを見せたのです」
【サイバンチョ】
「では、そのカノジョが日記を‥‥?」
【アワテル】
「ええ。カノジョではなく、
カノジョ“たち”ですがね」
【ミトウ】
「どちらにせよ、弁護人のキミのコトバは
《証言》にならない!」
【アワテル】
「ジブンのコトバは《証言》になりませんが。
あの現場には、捜査官もいたハズですよ」
【アワテル】
「!!! まさかその捜査官も、
カノジョたちにおそわれたと‥‥?」
🔴回想
【???】
「あのヨォ‥‥。天使ちゃんのテキは、
オレたちのテキなの。わかるかァ?」
【ヒツグリ】
「‥‥表には、捜査官が‥‥。
いたはず、ですが‥‥」
【???】
「寝てるぜ。きっとシゴトのしすぎだ。
オマエらも眠ってみるかァ‥‥?」
🔴回想
【アワテル】
「‥‥さらにその捜査官なら、被害者の家の日記が
消えたことも、《証言》できるハズです」
【サイバンチョ】
「水冬検事。被害者の家にいた捜査官は
その件について‥‥なにか話してましたか?」
【ミトウ】
「‥‥通行人になぐられて、眠っていたと‥‥。
ダレも信じてませんでしたが‥‥」
【アワテル】
(サボりだと判断されたか‥‥。
カワイソウに‥‥)
【サイバンチョ】
「‥‥捜査官のハナシしだいでは‥‥
そのレディを、呼ぶことになりますな」
【ミトウ】
「‥‥わかりました。捜査官と
例のレディを呼び、検証をおこないます‥‥」
【アワテル】
(‥‥ようやく、“天使”を《証言台》にまで
引きずりおろせたな‥‥)
【アワテル】
(だけど‥‥《証言台》じゃあ
まだ、物足りない‥‥)
【アワテル】
(次は、地獄の底まで
引きずりおろしてやる‥‥!)
【サイバンチョ】
「それでは、本法廷は
30分間の休憩に入ります!」

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