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OR逆転裁判 第一話「はじめての逆転」1日目法廷後編



某年 某月 某日 午前11時45分
地方裁判所 被告人第一控え室
【エンザイ】
「ゲホの法廷はとてもゲホ!!
弁護しゲホ!! ゲホ!! りがとゲホ!!」
【ヒツグリ】
(うう‥‥マスクをしててもなお、
ツバの“豪速球”が飛ばされてくる‥‥)
【エンザイ】
「面識はないが、おそらくあの《発見者》は
定期的にウチに通っていた《売人》だ」
【ショチョウ】
「定期的に‥‥。では、かばねさんは
ずっと、あのヤクブツを‥‥?」
【エンザイ】
「‥‥気づくのが遅すぎたのです。
私はずっと、家と会社を往復する毎日で‥‥」
【ヒツグリ】
「‥‥でも、同棲‥‥。
いっしょに住んでいたのですよね?」
【エンザイ】
「ジッシツ的には《別居状態》でした。
ここ最近は‥‥終電をのがして、朝帰りの朝出勤」
【エンザイ】
「帰ってきて、メールをチェックして。
仮眠をとって、カゼ薬を飲んで、またシゴトへ」
【エンザイ】
「《ケッコン資金をためるまでの辛抱だ》と。
‥‥辛抱している間に、かばねは死んだ」
【エンザイ】
「‥‥住民票を移すのも後回しにしていた。
先を見ようとしすぎた結果が、このザマだ」
【ヒツグリ】
「‥‥では、かばねさんの“異変”には、いつ‥‥?」
【エンザイ】
「‥‥最近ですな。1年前からずっと、
かばねとは‥‥ほとんど会わない生活が続いていた」
【ヒツグリ】
「だとすると、1年前にはもう‥‥?」
【エンザイ】
「‥‥クスリに手を出していた可能性がある。\
互いに、“今”をないがしろにしすぎたのだ」
【エンザイ】
「かばねは、私を遠ざけるようになった。
‥‥私が、ヤクブツに気づいたときのコトだ」
<BGMの保存>
【カバネ】
「‥‥ちがうの。あなたは‥‥関係ないの‥‥」
【エンザイ】
「関係ないコト、あるか!
‥‥もしかして‥‥コレが原因なのか‥‥?」
【カバネ】
「ちがう!! ‥‥ちがうの。
‥‥それは、インターネットでたまたま‥‥」
【エンザイ】
「きみがパソコンを使えないのはよく知っている。
‥‥いったい、ダレから買ったんだ‥‥?」
【カバネ】
「‥‥‥‥‥‥関わらないで‥‥‥‥‥‥」
【エンザイ】
「‥‥その《売人》の名前を言うんだ!!
かならず、ハナシをつけてやるッ!!」
【カバネ】
「ちがう!! 関係ないの!!
あなたとは‥‥ゼッタイに!!」
【カバネ】
「おねがい‥‥。
このコトは‥‥見なかったコトにして‥‥」
【エンザイ】
「‥‥私は‥‥。
‥‥そんなに‥‥‥‥たよりないのか‥‥?」
【カバネ】
「‥‥わるく思わないで。
こんなクスリ‥‥すぐにやめるから‥‥」
<BGMの再開>
【エンザイ】
「げほ。.‥‥それから、かばねは
私をテッテイ的にさけるようになった」
【エンザイ】
「そして、私も‥‥。
互いが互いを、とおざけていたのだ」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥‥‥ひとつだけ、うかがいます。
あの《遺書》を書いたのは、やはり‥‥」
【エンザイ】
「‥‥かばねは、コンピューターは使えない。
あとは‥‥ご想像の通りです」
【エンザイ】
「クスリを入れ替え、《遺書》をつくり、
《通報》までして‥‥ずいぶんと忙しいオトコだ」
【ヒツグリ】
「でも、それらはすべて‥‥。
あなたが家にいる間に、行われたコトになります」
【ヒツグリ】
「CE[88]その入れ替えたカゼ薬を、
出勤前のあなたが飲んでいるのですから‥‥」
【エンザイ】
「‥‥私は‥‥入れ替えも《遺書》も、かばねの死にも
気づかず出勤した。‥‥忙しさでは負けてませんな」
【ヒツグリ】
「‥‥《別居状態》だと、そこまで
気づかないモノなのですか」
【エンザイ】
「生活空間はほぼ分かれていた。
‥‥まあ、私の“生活”は寝ることだけだが」
【エンザイ】
「玄関のヨコの階段をのぼれば《寝室》に直行だ。
‥‥《カゼ薬》も、玄関のタナにある」
【エンザイ】
「私がかばねからとおざかったコトで、
事件のすべてが引き起こされたと言ってもいい」
【ヒツグリ】
「‥‥エンザイさん‥‥」
【ショチョウ】
「‥‥時間よ、ひつぐりちゃん。
悲しむだけなら、いつでもできる」
【ショチョウ】
「でも‥‥この事件の《真相》だけは。
今しか、アキラカにすることはできないのよ」
🔴🔴🔴🔴🔴
某年 某月 某日 午前11時55分
地方裁判所 第一法廷
ザワザワカン!
【サイバンチョ】
「それでは審理を再開します。
‥‥証人、名前と職業を‥‥」
【ワザト】
「あっしは、八田 業斗(やった わざと)‥‥。
セールスマンをしておりやす‥‥」
【ワザト】
「いひ‥‥いひ。
ぎゃひひひ‥‥ひひ‥‥ひ‥‥」
【ヒツグリ】
「‥‥これは‥‥やってますね。
間違いなく‥‥」
【ショチョウ】
「‥‥き、決めつけは良くないわ。
ヒトは案外、見かけによらないって言うし‥‥」
【サイバンチョ】
「こういうカタにかぎって、
慈善事業を営んでいたりするモノです」
【ヒツグリ】
(それはそれで、ヒトを外見で
決めつけているのでは‥‥?)
【サイバンチョ】
「それでは、サッソク《証言》を
おねがいしましょうか」
【ワザト】
「イーヒッヒッヒッヒッ‥‥。
かしこまりました‥‥」
🎵尋問モデラート
◆尋問3
【ワザト】
「あっしは、定期的にかばねサンのもとに
通っていた、一介のセールスマンでやすが‥‥」
【ワザト】
「あの事件の日は、エンザイさんが
ドアを開けっ放したまま出ていくのを見て‥‥」
【ワザト】
「インターホンを押しても反応がないので、
開けっぱなしのドアから中に入りやした」
【ワザト】
「家にはいったら、か、かばねサンが‥‥。
グッタリしてたんでやす!!」
【ワザト】
「これはタイヘンなことになったなぁと。
それで、ケーサツを呼ばせてもらいやした」
🔴🔴🔴🔴🔴
【サイバンチョ】
「なるほど。ドアが開けっぱなしでは、
《セキュリティ》も意味がありませんな」
【ヒツグリ】
「‥‥でも、電動ロックのドアですよね?
開けっ放してたら‥‥自動で閉まりませんか?」
【パウチ】
「ええ。長時間、開けっ放していたなら
トーゼン‥‥そうなります」
【ワザト】
「あっしは、エンザイさんとたまたま
ハチあわせて‥‥すぐ玄関にはいりやしたから」
【ヒツグリ】
(ハチあわせたなら、エンザイさんが
気づかないハズ、ないんだけどな‥‥)
【ショチョウ】
「たしか、あの家のインターホンには
カメラがあったハズですが。データは‥‥?」
【パウチ】
「ええ。この証人のカオは写っております。
あの日、インターホンを鳴らした“客”として」
          ──証拠品【セキュリティ】の内容を書き換えた──
【ワザト】
「とにかく、クスリなどトンでもない!
あっしが売るのは、エガオだけでやんす!」
【サイバンチョ】
「‥‥弁護人。こんなところで証人に
油を売らせるわけには行きませんぞ」
【ヒツグリ】
「わかってます。ゼヒとも
忘れられない法廷にしてあげましょう‥‥」
🔴🔴🔴🔴🔴
🎵尋問モデラート
◆尋問3
【ワザト】         【●◯◯◯◯】
「あっしは定期的にかばねサンのもとに
通っていた、一介のセールスマンでやすが‥‥」
【ヒツグリ】
「しかし、かばねさんは
いっさいの近所づきあいを絶っていたのでは?」
【ワザト】
「そう。だからこそ、なんでも売りに来てくれる
セールスマンが必要だったのでしょう」
【ワザト】
「エンザイさんに買い物なんて頼んだら、
わるいクスリを飲まされやすからな」
【ヒツグリ】
「‥‥では、“なんでも”売るというのは
具体的には、どのような‥‥?」
【ワザト】
「食品、衣服、家電‥‥。“なんでも”とは言え、
わるいクスリは取り扱っておりやせん」
【ヒツグリ】
「では、わるくないクスリは扱ってますか?
‥‥たとえば、こんな《カゼ薬》とか」
【ワザト】
「‥‥弁護士さんこそ、その《カゼ薬》が
必要なのではありやせんか?」
【ヒツグリ】
「‥‥え、わたし‥‥ですか?」
【ワザト】
「‥‥さっきから、ヒトをうたがってばかり。
きっと、わるいカゼにかかっているのです!」
【ワザト】
「カラダが弱っていると、ココロも弱る。
うたがいのココロは、弱ったカラダから!!」
【サイバンチョ】
「たしかに、目が血走ってカオはマッサオ。
さっきからヒトの発言にケチをつけてばかり‥‥」
【ヒツグリ】
(‥‥ケチをつけるのが
わたしのシゴトなんだけど‥‥)
【サイバンチョ】
「‥‥適切な食事とスイミン、そして運動。
まず、そこからです」
【ヒツグリ】
(ううう‥‥スイミン‥‥。
スイミン薬の量でもふやしてみるか‥‥?)

【ワザト】         【◯●◯◯◯】
「あの事件の日は、エンザイさんが
ドアを開けっ放したまま出ていくのを見て‥‥」
【ヒツグリ】
「つまり、玄関から出てきたエンザイさんと
ハチあわせた、と?」
【ワザト】
「‥‥カレは、なんだか異常な様子でした。
目は血走り、カオ色はマッサオでふらついてて‥‥」
【パウチ】
「《マイナスエス》の効用ですな。
‥‥なら、本人にはキオクがなくても仕方ない」
【ヒツグリ】
「!!」(‥‥しまった、エンザイさんが
“面識はない”と言ってたムジュンを、ふさがれた!)
【ワザト】
「目が血走り、カオ色はマッサオでふらつき、
冷や汗まみれで焦点のあわない目‥‥」
【ワザト】
「そんなアヤシイ人を見て、
あっしは‥‥この上なくムナさわぎがしたのです!」
【ヒツグリ】
(気のせいか‥‥? いま、
わたしの方を見つめて言いきったような‥‥)

【ワザト】         【◯◯●◯◯】
「インターホンを押しても反応がないので、
開けっぱなしのドアから中に入りやした」
【ヒツグリ】
「なぜ、ドアがあいてるのに
わざわざインターホンを‥‥?」
【ワザト】
「どうやら、目が血走った弁護士さんは
“常識”すらも迷走しているようでやんす」
【ワザト】
「ヒトのおうちにオジャマするときは、
ふつう、インターホンを押すのです!!」
【ヒツグリ】
「でも、そのときドアは
“開けっ放し”だったのですよね‥‥?」
【ワザト】
「どうやら、カオのマッサオな弁護士さんは
社会経験すらも青いようでやんす」
【ワザト】
「ドアが開けっ放しだから、呼び鈴はいいや‥‥?
まるで“空き巣”の思考じゃありやせんか!」
【ヒツグリ】
「でも、定期的にかばねサンの家に
通っていたんですよね‥‥?」
【ワザト】
「どうやら、足元のふらついた弁護士さんは
“礼節”までふらついているようでやんす!」
【ワザト】
「定期的に通ってようと、
無断でヒトさまのお宅に入るなど‥‥無礼のきわみ!」
【ヒツグリ】
「あの、“不健康”なキャラクターを
定着させるの、やめてもらえませんか‥‥?」
【ワザト】
「‥‥適切な食事とスイミン、そして運動。
まず、そこからです」
【ヒツグリ】
(ううう‥‥運動‥‥。
ここに立ってるだけで“重労働”なのに‥‥)

【ワザト】         【◯◯◯●◯】
「家にはいったら、か、かばねサンが‥‥
グッタリしてたんでやす!!」
【ヒツグリ】
「グ‥‥
【ワザト】
「今のアナタとおなじくらい、
グッタリしていやしたな」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥あの、まだなにも
聞いてませんケド‥‥」
【ワザト】
「どうせ、「グッタリとは、具体的には?」と
聞くつもりだったに決まってやす」
【ヒツグリ】
「し、質問がワンパターンで
モウシワケありません‥‥」
【パウチ】
「やはり、アタマに栄養がまわってないと
気もまわらなくなるのですねェ」
【ヒツグリ】
「え、栄養までワンパターンで
モウシワケありません‥‥」
【パウチ】
「‥‥適切な食事とスイミン、そして運動。
まず、そこからです」
【ヒツグリ】
(ううう‥‥食事‥‥。
メンドクサイよぉ‥‥)

【ワザト】         【◯◯◯◯●】
「これはタイヘンなことになったなぁと。
それで、ケーサツを呼ばせてもらいやした」
【ヒツグリ】
「‥‥ケーサツを呼んだ‥‥?」
【ワザト】
「いひひひ‥‥。それはもう、
市民のギムというヤツでしょうな‥‥」
【ヒツグリ】
「でも、カバネさんの遺体を発見したとき
救急車は‥‥呼ばなかったんですか?」
【ワザト】
「きき、きゅ、救急車ァ!!?」
【ヒツグリ】
「!!」
(なんだ‥‥? なにげなく聞いただけなのに‥‥)
【ショチョウ】
「‥‥ひつぐりちゃん。
今のは‥‥かなりイイ“ツッコミ”だったわ」
【ショチョウ】
「遺体を見ただけの証人が、なぜ‥‥。
それを“事件だ”と判断できたのか‥‥?」
【ヒツグリ】
「‥‥あ‥‥!!」
【ショチョウ】
「ふつう、反応のないヒトを見たら、
救急車のほうを呼ぶと思わない?」
【ワザト】
「ひッ!! いやその、それはですな‥‥!!」
カン!
【サイバンチョ】
「“救急車を呼ばなかった理由”‥‥。
証人、《証言》に加えてもらえますかな」
◆◆◆◆◆
【ヒツグリ】
「所長、コタエを教えてください!!」
【ショチョウ】
「‥‥いやだわ」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥‥‥」
【ショチョウ】
「‥‥‥‥‥‥」
【ヒツグリ】
「‥‥あの、所長。コタエを‥‥」
\>【ショチョウ】
「情報を得られるのは、なにも私だけじゃない。
‥‥ひつぐりちゃん、証人を《ゆさぶる》のよ」
【ヒツグリ】
「‥‥《ゆさぶる》‥‥? そしたら、
証人がコタエを教えてくれるんですか?」
【ショチョウ】
「あるいは、そうかも知れないわね。
《ゆさぶる》‥‥弁護士の、もうひとつの武器よ」
◆◆◆◆◆
◆尋問3
【ワザト】        【◯◯◯◯◯●】
「かばねサンは‥‥もう冷たくなってて‥‥。
救命の余地はない。そう判断しやした」
【ヒツグリ】
「‥‥もう助かりそうにないから、
救急車は呼ばなかった‥‥と?」
【ワザト】
「それよりも‥‥玄関ですれちがった
エンザイさんの様子が気になったんでやす」
【ワザト】
「もしかして、これは
アブないクスリがらみの事件なのでは‥‥? と」
【サイバンチョ】
「それで、ケーサツだけに《通報》をしたと。
‥‥ケンメイな判断に感謝します」
【ヒツグリ】
(‥‥少なくとも、いまの《証言》は
“ケンメイ”ではなかったようだけど、ね‥‥)
◆◆◆◆◆
【ヒツグリ】
「‥‥ううん、ううん‥‥」
【ショチョウ】
「‥‥‥‥‥‥」
【ヒツグリ】
「‥‥ううううん、ううううん‥‥」
【ショチョウ】
「‥‥‥‥‥‥」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥所長。さっきからカワイイ部下が
こんなにナヤんでるのに、冷たいですね」
【ショチョウ】
「きっと、あなたの脳ミソが
ぬるすぎるだけよ」
【ヒツグリ】
「脳ミソが生ぬるいぶん、低体温で
バランスをとってるので、モンダイありませんね」
【ショチョウ】
「‥‥そうね。念のため、
なまあたたかい視線で見守ってあげるわ」
【ヒツグリ】
「ちなみに、体温が低すぎて
こどものころのアダ名は“死体ちゃん”でした」
【ショチョウ】
「それはそれは‥‥。
どこかの《遺体》とは、大ちがいね‥‥」
◆◆◆◆◆
🔴🔴🔴🔴🔴
異議あり!【解剖記録】
【ヒツグリ】
「どうやら‥‥弁護側は、できたてホヤホヤの
あたたかい《ムジュン》を見つけたようです」
【ワザト】
「はんっ!! あっしはネコジタでね!
アツいのはニガテでやんす!」
【ヒツグリ】
「安心してください。
この《遺体》ほどは、アツくありませんよ」
【ワザト】
「‥‥え‥‥?」
【ヒツグリ】
「発見された遺体は、“高体温状態”。
‥‥すなわち、“熱”が残されていた」
【ヒツグリ】
「これで、どうして
《救命の余地がない》と判断できたのですか!」
【ワザト】
「あッ‥‥!!!!」
【ワザト】
「‥‥! い、《遺書》だ!!
あっしは、《遺書》を見たんでやす!!」
【サイバンチョ】
「‥‥《遺書》‥‥?」
【ワザト】
「かばねサンの《遺書》を見つけて!!
それで‥‥もう死んだのかと、早トチリを」
【ヒツグリ】
「‥‥ザンネンながら、今の証人のコトバは
ムジュンしています」
【パウチ】
「む、ムジュン‥‥ですと!!」
【ヒツグリ】
「事件のとき、あなたが《遺書》なんか
見つけたハズがないのです!!」
🔴🔴🔴🔴🔴
【ヒツグリ】
「さあ、どうなんですか!!
証人!!」
【ワザト】
「ひィィィィィッ!!
スミマセン、スミマセン!!!」
【ヒツグリ】
「あなたがやったんですね!!!!!」
【ワザト】
「ええもお!!
そのとおり、すべてあっしが悪いんです!!」
【ヒツグリ】
(よしよし‥‥イキオイとフンイキと目ヂカラで
なんとかごまかせ‥‥
\>【サイバンチョ】
\>「ごまかせませんぞ。
その血走った目をヒトに向けないように!」
ペナルティ
【ショチョウ】
「‥‥‥‥‥‥。
‥‥目薬、いる?」
【ヒツグリ】
「今朝、バケツいっぱい差してきたので
たぶん大丈夫です」
【ショチョウ】
「どう見ても大丈夫じゃないから
血走ってるんだと思うけど‥‥」
🔴🔴🔴🔴🔴
くらえ!【遺書】
【ヒツグリ】
「この《遺書》を見つけたのは、
ケーサツの人だったハズです」
【ヒツグリ】
「“《遺書》は、被害者の服の下に
かくされていた”‥‥」
【パウチ】
「隠されていても、この証人がそれを
“発見できなかった”とは、限りませんぞ!」
【ヒツグリ】
「‥‥もし発見したのなら、どうしてそれを
ケーサツに伝えてないのですか?」
【パウチ】
「あ‥‥ッ!!!」
【ヒツグリ】
「《遺書》を見つけたのは、
ケーサツだった」
【ヒツグリ】
「遺体は、死んでからもずっと
“ぬくもり”を失わなかった」
【ヒツグリ】
「なのに、《目撃者》のあなたは
なぜ、その“死”を判断できたのか?」
【ワザト】
「‥‥や、やめ‥‥ろ‥‥」
【ヒツグリ】
「‥‥まるで、あなたが被害者の“死”を
あらかじめ‥‥“知っていた”かのようです」
【ワザト】
「‥‥‥‥‥‥‥‥ぐ‥‥‥‥‥‥‥‥」
ワザト ノックアウト
【ヒツグリ】
(や、やった‥‥。
これで、エンザイさんは‥‥‥‥)
【ワザト】
「‥‥おい、そこの小ィちゃい
おじょうちゃんよォ‥‥」
【ヒツグリ】
「‥‥な、なんですか‥‥?」
【ワザト】
「‥‥オレが、救急車を呼ばなかった‥‥。
だから、なんだ?」
【ヒツグリ】
「‥‥!」
【ワザト】
「救急車を呼びわすれたヤツは、
みんな《殺人者》になるのか?」
【ワザト】
「事件現場で、《発見者》はみんな‥‥
冷静に“119”を押せるのか?」
【ヒツグリ】
「で、でも!
あの状況で、ケーサツだけを呼ぶのは不‥‥
【ワザト】
「ッああああン“‥‥!?」
【ヒツグリ】
「‥‥ひっ!!!」
ワザト豹変 ドーーン!!
【ヒツグリ】
(??????!?!????
?????????????)
【パウチ】
「こ、コラ! 証人‥‥
落ち着きなさい!!」
【ワザト】
「オ“オ“ン?
オレが落ち着くだとォ‥‥?」
【ワザト】
「ザケンじゃねェ“ェ“ェ“!!
落ち着くのはソコの弁護士だろうがァ“!!」
【ヒツグリ】
(‥‥わ、わたしじゃないもん!
わたしは‥‥知らないもん!!)
【ショチョウ】
「‥‥落ち着きなさい、ひつぐりちゃん」
【ヒツグリ】
「‥‥おお、おちおち、おちついてますよ、
しょちょう!」
【ショチョウ】
「‥‥‥‥‥‥」
【ワザト】
「さあ、根も葉もタネもシカケもない
アンタの主張を、摘みとってやろうか」
【ワザト】
「このワザトがハンニン‥‥?
そんなワケ‥‥ねェだろうがよォォオッ!!」
♪無音
🔴🔴🔴🔴🔴
──証言④ ワザトの“反論”──
【ワザト】
「オレは、あの《遺体》を見てパニックに。
‥‥勝手に死んだと決めつけてしまった」
【ワザト】
「だが‥‥救急車を呼びわすれたヤツは、
みんな《殺人者》になるのか?」
【ワザト】
「事件現場で、《発見者》はみんな
冷静に“119”を押せるのか?」
【ワザト】
「エンザイさんと、かばねサン。
あの夫婦に“モンダイ”があるのは、知っていた」
【ワザト】
「だから、救急車よりもケーサツのほうが、
先にアタマをよぎってしまったんだろうなァ‥‥」
🔴🔴🔴🔴🔴
【サイバンチョ】
「‥‥たしかに、ケーサツを呼んだだけで
ハンニンあつかいされたら、たまりませんな」
【ワザト】
「こんど弁護士さんの遺体を見つけたら、
ワザトは絶対に通報しませんぜ!!」
【ワザト】
「ただ、くさりゆく弁護士さんのスガタを
ジッとながめるだけにしておく予定だ!!」
【ヒツグリ】
(これは‥‥ウッカリ遺体には
なれないな‥‥)
【サイバンチョ】
「それでは、私も弁護士の《尋問》を
ジッとながめることにしましょうか」
【ヒツグリ】
(うう‥‥これで
ウッカリ殺されたりできないぞ‥‥)
🔴🔴🔴🔴🔴
──証言④ ワザトの“反論”──

【ワザト】          【●◯◯◯◯】
「オレは、あの《遺体》を見てパニックに。
‥‥勝手に死んだと決めつけてしまった」
【ヒツグリ】
「‥‥その、《
【ワザト】
「ア“ア“ア”ン!?」
【ヒツグリ】
「な、なんでもありません!!
なんでもありません!!」
【ショチョウ】
「ひつぐりちゃん、それじゃ
《尋問》にならないわよ」
【ヒツグリ】
「で、でも!! いつ、どうやって
殺されるか分からないじゃないですか!」
【ショチョウ】
「‥‥いつ、どうやって
殺されると思ってるのよ‥‥」
【ヒツグリ】
「‥‥法廷がおわったあとに、
ナイフを持って、まちぶせされて‥‥」
【ショチョウ】
「だいじょうぶよ。あのオトコを
刑務所に送れば、あなたに手は出せない」
【ヒツグリ】
「‥‥じゃあ、あのオトコを
刑務所に送れなかったら‥‥?」
【ショチョウ】
「‥‥‥‥‥‥‥‥。‥‥‥‥‥‥私は、
あなたの生きザマをジッと見届けるわ!」
【ヒツグリ】
「ううう‥‥所長も
通報してくれないだなんて‥‥」
【ショチョウ】
「さあ、ウッカリ《遺体》にならないよう
がんばるのよ!!」

【ワザト】          【◯●◯◯◯】
「だが‥‥救急車を呼びわすれたヤツは、
みんな《殺人者》になるのか?」
【ヒツグリ】
「さ、さすがにそれはな
【ワザト】
「イ“イ“イ”イ”!?」
【ヒツグリ】
「スミマセンスミマセン!!
ええもお、わたしがすべてワルいんです!」
【ワザト】
「ハッ! こんな理屈がとおるなら、
オレも今から急病人になってやる!!」
【ワザト】
「ウウッくるしい!!! 救急車を!!
呼べなかったやつは、今から《殺人者》だ!!」
【サイバンチョ】
「ひええええ、公衆デンワはどこでしたかな!」
【パウチ】
「ここから数キロはなれたトコロにしか
ありませんぞ!!」
【ヒツグリ】
「‥‥あの、わたしはケータイ電話を
もっていますけど‥‥」
【ショチョウ】
「‥‥第一法廷は、どうやらデンパが
届かないようね」
【ワザト】
「ハッ!! それ見たことか!!
おまえらみんな、《殺人者》じゃアアァい!」
【サイバンチョ】
「ひええええ、スミマセンスミマセン!」
【ヒツグリ】
(これはもう‥‥《ゆさぶる》どころの
さわぎじゃないな‥‥)

【ワザト】          【◯◯●◯◯】
「事件現場で、《発見者》はみんな‥‥
冷静に“119”を押せるのか?」
【ヒツグリ】
「す、スミマセ
【ワザト】
「ウ“ウ“ウ”ン!?」
【ヒツグリ】
「スミマセンスミマセン!!!
あやまろうとして、スミマセン!!」
【ワザト】
「ハッ! こんな理屈がとおるなら
オレも今から《遺体》になってやる!」
【ワザト】
「ウウッ死んでしまった!! さあ119だ!1文字でも打ち間違えたやつは《殺人者》だ!!」
【サイバンチョ】
「ひええええ、デンワなんてありませんぞ!」
【パウチ】
「ここから数キロ先にしか、公衆デンワは
置かれてませんぞ!!」
【ヒツグリ】
「‥‥あの、わたしはケータイ電話を
もっていますけど‥‥」
【ショチョウ】
「‥‥第一法廷は、デンワは
マナーモードにする決まりよ」
【ワザト】
「ハッ!! それ見たことか!!
おまえらみんな、《殺人者》じゃアアァい!」
【サイバンチョ】
「ひええええ、スミマセンスミマセン!」
【ヒツグリ】
(これはもう‥‥《ゆさぶる》どころの
さわぎじゃないな‥‥)

【ワザト】          【◯◯◯●◯】
「エンザイさんと、かばねサン。
あの夫婦に“モンダイ”があるのは、知っていた」
【ヒツグ
【ワザト】
「エ“エ“エ”エ”!?」
【ヒツグリ】
「スミマセンスミマセン!!
クチをひらいて、モウシワケありません!」
【ワザト】
「いいか! オレはあの家に通ってたから
かばねサンから‥‥“事情”は聞いている!」
【ワザト】
「ずいぶん冷え込んだ夫婦仲だったとか。
‥‥ケッコンしたくせに、なさけないのォ!!」
【ワザト】
「あろうことか、妻にヤクブツをわたすとは!
新秋津夫として、ありえない!!」
【サイバンチョ】
「あ、あの‥‥証人」
【ワザト】
「配偶者すらシアワセにできんとは、クズめ!
‥‥ジイさんも、そう思うだろう?」
【サイバンチョ】
「ええもお!! ワタシは、ツマのために
人生をささげるカクゴですとも!」
【ヒツグリ】
(‥‥‥‥‥‥これはもう‥‥。
《ゆさぶる》どころのさわぎじゃないな)

【ワザト】          【◯◯◯◯●】
「だから、救急車よりもケーサツのほうが、
先にアタマをよぎってしまったんだろうな」
【ヒ
【ワザト】
「オ“オ“オ”ン!?」
【ヒツグリ】
「スミマセンスミマセン!!
生まれてきてスミマセン!!」
【ワザト】
「動かなくなったかばねサンを見て、
小市民のワザトは、フルえながら通報をした!」
【サイバンチョ】
「すすスバラシイ心意気です!!
ワタシも感動でフルえております!!」
【ワザト】
「ちっぽけな小市民の、ちっぽけなあやまちを
それでも責めなさるか!」
【ヒツグリ】
「すすスバラシイ勇気です!!
わたしも武者ぶるいでフルえています!!」
【ワザト】
「そうとも! あの日のワザトのふるえは
ちょっとした“大地震”だったといえる!!」
【パウチ】
「すすスバラシイ行動力です!!
私も正義のココロにふるえております!!」
【ショチョウ】
「‥‥‥‥‥‥ひつぐりちゃん。カラダじゃなくて、
机をふるわせてほしいのだけど」
◆◆◆◆◆
【ヒツグリ】
「所長、コワイからゆさぶりたくないです‥‥」
【ショチョウ】
「‥‥それはともかく、ここまで強弁されると
《救急車》のムジュンは‥‥使い物にならないわね」
【ヒツグリ】
「ううう‥‥さっきからコワすぎて
わたしのアタマも使い物になりません‥‥」
【ショチョウ】
強制的に「とにかく、こういう時はしゃべらせるのよ。
ひたすら調子に乗らせて、“ミス”を待つの」
【ヒツグリ】
「‥‥“ミス”を‥‥?」
【ショチョウ】
「今ぐらいオーバーに怖がっていれば、
相手も気をよくして‥‥クチがスベるようになる」
【ショチョウ】
「ダレの目から見ても明らかな“ミス”が、
ああいう強弁家をダマらせるには必要なの」
【ヒツグリ】
(‥‥わたしは決して、
オーバーに怖がってるつもりはないんだけど‥‥)
◆◆◆◆◆
🔴🔴🔴🔴🔴
異議あり!(証言④に【白内 円斉】【志賀 かばね】)
【ヒツグリ】
「‥‥証
【ワザト】
「ア“ア“ア”ン!?」
【ヒツグリ】
「ひっ‥‥!!!!!!」
(いやいやいや! これはさすがに‥‥!)
【ワザト】
「ハッ! なさけないあのオトコに
お似合いの弁護士だのォ!!」
【ワザト】
「ジブンの妻すら守れないコシヌケにゃ、
アンタていどの弁護士がオニアイだ!!」
【ヒツグリ】
「‥‥い、いやあの、その!
ヤッパリ、志賀 円斉さんは‥‥なさけないですよね!」
【ワザト】
「ほう‥‥?」
【ヒツグリ】
「ホラ、ジブンの奥さんにクスリを盛るなんて!
志賀 円斉。‥‥“志賀”の姓が泣いてますよ!!」
【ワザト】
「ハッ!! 志賀 円斉も泣かせるねェ‥‥。
ついに、弁護士にウラ切られちまうとは」
【ワザト】
「奥さんをウラ切って、弁護士にウラ切られる。
‥‥ケッサクだな。志賀 円斉もここで終わりか」
【ヒツグリ】
「ホント、なさけないですよね!!
志賀さん‥‥《遺書》でコクハツまでされて!」
【ワザト】
「だが、もっとなさけないのはアンタだ。
‥‥オレが怖くて、自分の依頼人すら売るとはなァ」
【ヒツグリ】
「‥‥い、依頼人‥‥? なんのハナシですか?」
【ワザト】
「ついに自分の依頼人の名前すら忘れたか!
ハッハッハッハ!! こりゃあ面白い!!」
【ワザト】
「コシヌケの志賀 円斉にコシヌケの弁護士。
こんななさけないヤツ、はじめて見たぜ!!」
【ワザト】
「さっさとそのムネにぶら下げた
バッジを捨てたらどうだ!!」
【ワザト】
「いっそ、このワザトにたのんだほうが
まだマシなベンゴをするだろうぜ!!」
【ワザト】
「ハァーーーッハッハッハッハ!!
アッハッハッハッハハッハッハッハ!」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥ところで‥‥証人。
“白内 円斉”というカタは、ご存知でしょうか?」
【ワザト】
「‥‥‥‥‥‥白内‥‥‥‥? 知らないなァ‥‥?」
【ヒツグリ】
「では紹介しましょう。
わたしの依頼人の《白内 円斉》さんです」
【ヒツグリ】
「カレは決して、コイビトにクスリを盛ったり
自殺を強要したりは‥‥しません」
【ヒツグリ】
「《遺書》のなかでだけ登場する、なさけない
《志賀 円斉》とは‥‥まるで正反対の人物です」
【ワザト】
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥な、なんだって‥‥?」
【サイバンチョ】
「静粛に、静粛に、静粛にィィィッ!!
‥‥弁護人! これはいったい‥‥」
【パウチ】
「ち、ちょっと名字をまちがえたくらいで、
なんだと言うのだ!!」
【ヒツグリ】
「さすがに、検事さんもおわかりでしょう?
証人は、ふたりを《夫婦》とカンちがいしていた」
【ヒツグリ】
「そして‥‥この《遺書》も。
ふたりを《夫婦》とカンちがいして書かれている」
【パウチ】
「同棲中の男女ですぞ!
第三者なら、カンちがいするのがフツウです!」
【ヒツグリ】
「そのとおり。名字をカン違いできるのは
《第三者》しか、あり得ない!」
【ヒツグリ】
「そして‥‥この事件において、
《第三者》はヒトリしか存在しない!」
【パウチ】
「う、うおおおおおおッ!!」
【サイバンチョ】
「‥‥いかがですかな、証人!
弁護人の主張に、なにか言いたいコトは!」
【ワザト】
「は、ハッ!! 《遺書》は‥‥。
《遺書》は、かばねサンが書いたんだッ!」
【ヒツグリ】
「《志賀 円斉》なんて致命的なミスを、
なぜかばねさんが‥‥おかせるのですか!」
【ワザト】
「かばねサンは‥‥クスリをやっていた!
薬物中毒で、脳がイシュクして‥‥」
【ヒツグリ】
「ほかの文章は誤字ひとつないのに、
《中毒で文が書けなかった》はとおらない!」
【ワザト】
「ぐ、グウウウウッ‥‥!!!
な、なら‥‥よ、よよ《予測変換》だッ!!」
【ヒツグリ】
「‥‥よ、よそくへんかん‥‥?」
【ワザト】
「あの《遺書》は、コンピューターで書かれた!
なら‥‥ヒトツ、“可能性”があるんだよォ!!」
【ヒツグリ】
「い、いったい!!
その可能性とは‥‥」
【サイバンチョ】
「‥‥どうやら、まだまだ証人の主張は
おわらないようですな」
【ワザト】
「おうとも! 何度だって叫んでやる。
あの《遺書》は‥‥かばねサンが書いたんだよォッ!」
🔴🔴🔴🔴🔴
◆証言5 ──“予測変換”──
♪尋問モデラート
【ワザト】
「《白内》《志賀》‥‥。
どっちも、“シ”からはじまる名字だ」
【ワザト】
「《予測変換》で打ち込んだときに、ウッカリ
《白内》でなく《志賀》を選んでしまったのさ!」
【ワザト】
「エンザイさんはいつも朝帰りの朝出勤。
‥‥たしか、5時帰宅の8時出勤だったか?」
【ワザト】
「メールチェックはするようだから、
前もって《遺書》を保存しておくことはできない」
【ワザト】
「だからあの日、かばねサンは3時間で
《遺書》の文面を打ち込む必要があった」
【ワザト】
「ちょっと手元が狂ったとしても、
それに気づく時間は‥‥残されてなかったのさ」
🔴🔴🔴🔴🔴
【サイバンチョ】
「‥‥‥‥‥‥?
‥‥こん‥‥? よそく‥‥へんかん‥‥?」
【ショチョウ】
「‥‥コンピューターで《文字》を
うつときの“特徴”です」
【ヒツグリ】
「わたしは、《ご》と入力すれば、
《ごめんなさい》が“候補”にあがります‥‥」
【ワザト】
「オレなら、《ふ》と入力すれば
《フざけるな》が“候補”にあがる」
【パウチ】
「ワタシは、《か》と入力すれば
《かみのけ》が“候補”にきますな」
【サイバンチョ】
「‥‥つまり、よく使うコトバなら
途中まで打てば、出てくるのですか!」
【ワザト】
「‥‥そこで、さきほどの《証言》を
くり返させてもらおう」
【ワザト】
「《白内》《志賀》‥‥。
どっちも、“シ”からはじまる名字だ」
【ワザト】
「《予測変換》で打ち込んだときに、ウッカリ
《白内》でなく《志賀》を選んでしまったのさ!」
【サイバンチョ】
「‥‥な、なるほど‥‥!
トテモ“現代的”な主張でしたな‥‥」
【サイバンチョ】
「ところで、《こんぴゅうたあ》と
いうのは、いったい‥‥?」
【ヒツグリ】
「‥‥とにかく、《尋問》を
はじめさせていただきます!」
【ヒツグリ】
(ここで逃げられるワケには
いかない‥‥!)
🔴🔴🔴🔴🔴
◆証言5 ──“予測変換”──
♪尋問モデラート

【ワザト】          【●◯◯◯◯◯】
「《白内》《志賀》‥‥。
どっちも、“シ”からはじまる名字だ」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥‥‥さすがに、“シ”だけ打ち込んで、
あとは《予測変換》というのは、いささか」
【ワザト】
「ア“ア“ア”ア”ン!? どっちも自分の名字だぞ!
もっともヒンパンに使う単語だ!」
【パウチ】
「《遺書》でも何回か使われてます。
“シ”と打てば、予測コウホの1番上に来そうだ」
【サイバンチョ】
「いまだにすずりと半紙の私には、
想像もつかぬセカイの話です‥‥」
【ヒツグリ】
(あの裁判長も、セケンから
切りはなされてるよな‥‥)
【ワザト】
「とにかく、“シ”を打ったときに、
《白内》も《志賀》も、予感コウホの上に来る!」

【ワザト】          【◯●◯◯◯◯】
「《予測変換》で打ち込んだときに、ウッカリ
《白内》でなく《志賀》を選んでしまったのさ」
【ヒツグリ】
「でも‥‥そのミスは、“シ”の予測コウホで
《志賀》が《白内》より上にないと起こらない」
【ヒツグリ】
「つまり、《志賀》が《白内》より
よく使われる単語でないと成立しない!!」
【ワザト】
「‥‥シゴトでほぼ家にいない《白内 円斉》と
ずっと家にいる《志賀 かばね》‥‥」
【ワザト】
「家のコンピューターなら、《白内》より
《志賀》のほうが使われてるに決まってらァ!」
【ヒツグリ】
「でも、あの家のコンピューターは
エンザイさんがメールチェックにのみ使ってた!」
【ヒツグリ】
「かばねさんは、コンピューターには
ほぼ触れていなかったそうです!!」
【ワザト】
「ハァーーーハッハッハッハッハッ!!
‥‥アマいなァ、おじょうちゃん!」
【ワザト】
「《遺書》を見てみな!!!
そこに《予測変換》のコタエがある!!」
【ヒツグリ】
「い、《遺書》‥‥?」
(どういうコトだ‥‥?)
🔴遺書詳細
【パウチ】
「‥‥《志賀かばね 記す》
《‥‥私は》‥‥
【ワザト】
「‥‥そう。冒頭で《志賀》という文字が打たれてる」
【ヒツグリ】
「ああ‥‥‥‥ッ!!!
まさか‥‥直前に打ったから《予測変換》で‥‥」
【ワザト】
「いちばん上に来ちまったのさ。
‥‥だから、《志賀 円斉》のミスが生まれた!」
【ショチョウ】
「‥‥すばらしいデタラメね。
クスリの売人より、作家のほうが向いてるわ」
【ワザト】
「ハッ! “作家”はアンタのほうだろう?
‥‥とにかく、《予測変換》のミスは成立する!」
【ヒツグリ】
「でも、そんなミス‥‥
ちゃんと見直せば、すぐに気づくハズです!」
【ワザト】
「ところが、そうじゃないんだなァ‥‥」

【ワザト】          【◯◯●◯◯◯】
「エンザイさんはいつも朝帰りの朝出勤。
‥‥たしか、5時帰宅の8時出勤だったか?」
【ヒツグリ】
「たぶん、始発で帰ってるんでしょうけど‥‥。
‥‥エンザイさん、ケロリとしてましたよね‥‥」
【ショチョウ】
「あんがい、なんの前ぶれもなく
コロリとイっちゃったりして」
【ヒツグリ】
「サラリと不吉なコトを言わないでください!!」
【ワザト】
「まあ‥‥その3時間の“帰宅”で、あのオトコは
コンピューターをギロリとにらむワケだ」

【ワザト】          【◯◯◯●◯◯】
「メールチェックはするようだから、
前もって《遺書》を保存しておくことはできない」
【ヒツグリ】
「‥‥つまり、前もって《遺書》を
作っておくコトは、できなかった‥‥と?」
【ワザト】
「実物の《遺書》を、何日間も
かくしとおす自信がなかったんだろうな」
【ワザト】
「かばねサンが入れる部屋は、
あのオトコも入れるワケだからなぁ?」
【ヒツグリ】
「でも、パソコンに《遺書》の文面を
データだけ保存しておけば、モンダイは‥‥」
【ワザト】
「メールチェックのときにみられたら
どうするんだ?」
【ヒツグリ】
「あ‥‥っ!!
‥‥だから、あの《遺書》は‥‥」
【ワザト】
「自殺する当日に作るしかなかった。
‥‥それも、あのオトコの帰宅より“後”に」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥‥‥そ、それはそうと、なぜ‥‥。
“メールチェック”の話を知ってるのですか?」
【ワザト】
「‥‥かばねサンから聞いたのさ。
あのオトコついて、相談を受けててな」
【ヒツグリ】
「かばねさんは、エンザイさんの帰宅時間や
その後の行動までしゃべったのですか?」
【ワザト】
「そうだ、それほど追いつめられてたのさ。
ちょうど、今のアンタのようにな!」
【ヒツグリ】
「ぐ‥‥っ!!」
(ハンパに攻めても、強弁されるだけか‥‥!)
【ワザト】
「そして、《遺書》を打つ“時間制約”は
コレだけじゃないんだな」

【ワザト】          【◯◯◯◯●◯】
「だからあの日、かばねサンは3時間で
《遺書》の文面を打ち込む必要があった」
【ヒツグリ】
「‥‥あの、なぜ“3時間”なのですか?
エンザイさんが帰宅したアトなら、いつでも」
【ワザト】
「よくないぜ。このワザトに
自殺を“発見”させなきゃ、《遺書》はのこせない」
【ヒツグリ】
「‥‥発見‥‥?」
【ワザト】
「あのオトコが自殺の“第一発見者”になったら、
まず《遺書》は隠ぺいされる」
【ヒツグリ】
「あ‥‥ッ!!! まさか‥‥そのために!!」
【ワザト】
「わざわざ、このワザトが訪問する直前に
自殺して、《遺書》をのこしたのさ‥‥」
【ワザト】
「かばねサンはオレに言っていた。
“15日の朝8時に来てくれ”とな」
【サイバンチョ】
「なんと! 被害者から
日時の指定を受けていたのですか!」
【ワザト】
「そう。オレを《第一発見者》にするためには
エンザイが開けたトビラから入れるしかない」
【パウチ】
「あ‥‥ッ!!!
だから、“朝8時”なのですか!!」
【ワザト】
「かばねサンが死んだアトは、もう
それしか家に入る方法がないからなァ‥‥」
【ヒツグリ】
「いやいやいや! ちょっと
その、デッチ上げがすぎるでし
【ワザト】
「オ“オ”ン!? 開いたトビラから
家に侵入するまでは、かばねサンの指示だぜ?」
【ワザト】
「‥‥それが《自殺》とカンケーあるとは、
今まで思いもしなかったがなァ‥‥」
【ヒツグリ】
(‥‥だったらインターホンを押すハズがないし
エンザイさんが気づかないワケもないけど‥‥)
【ショチョウ】
「‥‥“さすがに不法侵入は気がひけたんだ”とか、
“あのオトコはクスリを飲んでたから”とか‥‥」
【ショチョウ】
「‥‥ここにツッコんでも、
あの証人がますますおしゃべりになるだけよ」
【ヒツグリ】
(ううう‥‥よくもまあ、あんな
テキトーなウソを無限にあみだせるな‥‥)

【ワザト】          【◯◯◯◯◯●】
「ちょっと手元が狂っても、あとから見返して
気づくことはできなかったのさ‥‥」
【ヒツグリ】
「‥‥でも、3時間あるんですよね?
《遺書》を打ち込むだけなら、わりと余裕が」
【ワザト】
「エ“ェ“ェ”エ”!!? 3時間?
そりゃあエンザイの“在宅時間”だ!!」
【ワザト】
「ジッサイは帰ってからメールチェック、
入浴、起きてから着がえ、食事もあるぜ」
【ヒツグリ】
(エンザイさんの睡眠時間、いったい
何時間までけずられるんだ!!)
【ワザト】
「‥‥文章の構成は、前もって考えておけばいい。
しかし、打ち込みは“本番勝負”だった」
【ワザト】
「重要とはいえ、ほんの一部分だぞ?
“志賀”と“白内”‥‥気づけなくてもおかしくない」
【ヒツグリ】
(‥‥たしかに、“ほんの一部分”のミスなら
気づけないかもしれない。‥‥‥‥だけど‥‥)
◆◆◆◆◆(全ゆさぶる前)
【ショチョウ】
「‥‥かなりフクザツな《証言》ね‥‥。
《ゆさぶる》で情報をあつめたほうがいいわ」
【ヒツグリ】
「《予測変換》のハナシはわかりますけど‥‥。
ちょっと、その他がピンときません」
【ショチョウ】
「この《証言》‥‥“補足説明”が多いのよね。
かなりメンドウな主張だわ」
【ショチョウ】
「とっさに考えたワリには、
ずいぶん細かいトコロまでイイワケしてるし」
【ヒツグリ】
(‥‥ゆさぶって、
まずは《証言》の内容をリカイしないと‥‥)
◆◆◆◆◆(全ゆさぶる後)
【ショチョウ】
「‥‥ひととおり、情報はあつまったかしら?」
【ヒツグリ】
「ええと、カギは《予測変換のミス》と
《ミスを見落とすほどの“時間制限”》という2点‥‥」
【ヒツグリ】
「直前に打った“志賀 かばね”のせいで、
“シ”の《予測変換》が“志賀”にひっぱられた」
【ヒツグリ】
「そうして生まれた《志賀 円斉》のミスは
キビしい“時間制限”の中で見落とされた」
【ヒツグリ】
「エンザイさんのメールチェック後から、
ワザトさんの“訪問”までという“時間制限”に‥‥」
【ショチョウ】
「エンザイさんには保存した《遺書》を見せずに、
ワザトさんに《遺書》を発見させたかった‥‥と」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥‥‥‥‥。
アタマがいたくなってきました」
【ショチョウ】
「こまかい“補足説明”を叩いても逃げられるわ。
主張の“本丸”を叩きなさい」
【ヒツグリ】
「ほんまる‥‥?」
【ショチョウ】
「《予測変換のミス》や《時間制限》は、
本当に実在したのか‥‥?」
【ヒツグリ】
「‥‥!! ‥‥その場合
それらが“実在しなかった”証拠を探せばいい‥‥!」
【ショチョウ】
「あるいは、《遺書のミス》は、本当に
《予測変換》や《時間制限》が原因なのか‥‥?」
【ヒツグリ】
「‥‥その場合、それらが原因では
起こりえない“ミス”を探せばいい‥‥!」
【ショチョウ】
「‥‥枝葉はねらわず、幹をねらいに行きなさい。
反論不能の“直球”をネジこむのよ」
◆◆◆◆◆(全ゆさぶる+つきつける失敗後)
【ショチョウ】
「‥‥“ウソなのはわかりきってるのに、
どう証明すればいいかがわからない”‥‥」
【ショチョウ】
「こういうときは、わかりきってる《ウソ》と
わかりきってる《真相》を並べてみるのよ」
【ヒツグリ】
「《ウソ》と、《真相》を‥‥?」
【ショチョウ】
「“あせって打ち間違えた”が《ウソ》。
“ふたりを夫婦とカン違いしてた”が《真相》」
【ショチョウ】
「証明したい《真相》から“逆算”をして、
必要なムジュンの“位置”をさぐるの」
【ヒツグリ】
「‥‥あせって打ち間違えただけなら。
気がつけば、直せますよね」
【ショチョウ】
「でも、カン違いしてたら‥‥?
‥‥そもそもミスに気づきようがない」
【ショチョウ】
「あの証人‥‥こまかいトコロばかり
気になるタイプのようね」
【ショチョウ】
「そのぶん‥‥こまかくないトコロには
気がまわってないハズよ」
【ショチョウ】
「もういちど、《遺書》を読んでみなさい。
‥‥そこに、コタエがあるかもしれないわ」
◆◆◆◆◆
🔴🔴🔴🔴🔴
異議あり!!(証言6に【遺書】)
【ヒツグリ】
「‥‥残
【ワザト】
「ア“ア“ァ“ア”ァ”ァ”ア“ン”!?!?!?」
【ヒツグリ】
「いえいえいえいえ!!
‥‥あの、その!! ム
【ワザト】
「オ“オ“オ”オ”ン!!??
ムジュンなんて、どこにもねェだろうがよォ!」
【ワザト】
「《遺書》を見直す時間がなかった以上、
あとからミスに気づくのはムリなんだよ!!」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥でも‥‥書いている“途中”なら、
ミスに気づくことは、じゅうぶんに可能です」
【ヒツグリ】
「とくに、《志賀 円斉》のような
4回もくりかえされているミスは‥‥ね」
【ワザト】
「4回‥‥‥‥?
‥‥‥‥あ‥‥‥‥あっ‥‥!!!!」
【サイバンチョ】
「静粛に! 静粛に!
‥‥いかがですかな、証人!!」
【ワザト】
「‥‥ぐ、ぐ‥‥‥‥。
いや‥‥その‥‥」
【ヒツグリ】
(コトバに詰まっている!
いまがチャンスだ!!)
【ヒツグリ】
「裁判長!! 《志賀 円斉》という誤字は
4回も、しつように繰り返されています!」
【ヒツグリ】
「コンヤク者のかばねさんには
もはや“不可能”な領域のミスです!!」
【サイバンチョ】
「‥‥たしかに、いくら私でも
ツマの名前はまちがえません」
【パウチ】
「し、しかし! この派内は
奥さんの名前をしりませんぞ!!」
【サイバンチョ】
「そりゃ、独身ですからな。
‥‥とにかく、証人の信頼性にはギモンがある!」
【サイバンチョ】
「この《遺書》とともに、検察には
厳正な《再調査》を要請するものとする!」
【パウチ】
「は、はは、ははァァァ!!!!
この派内、まだ見ぬツマに想いをはせて!」
【ヒツグリ】
「しょ、所長! もしかして、
わたしたち‥‥勝ったんでしょうか!?」
【ショチョウ】
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥そうね。あの《遺書》は、ニセモノよ」
【ヒツグリ】
(やった‥‥!!
ついに、エンザイさんのムジツを‥‥)
【ワザト】
「‥‥‥‥ハッ‥‥‥‥‥‥。
‥‥ハッ‥‥‥‥ハッ‥‥‥‥」
【ワザト】
「ハァーーーーーッハッハッハッハッ!
ハッハッハッハッハッハッハッハッハァ!!」
【ワザト】
「‥‥しなびたインキ臭い《遺書》に、
ヌレギヌでビショビショの陰気くさい裁判‥‥」
【ワザト】
「‥‥オレの売る《クスリ》を飲めば、
少しはその“インキ”もかわくだろうぜ!!」
【サイバンチョ】
「み、認めるのですか!!
あなたが、クスリの“売人”であると!」
【ワザト】
「‥‥“元”が抜けてるぜ。
オレは‥‥もう足は洗ったんだ」
【ワザト】
「‥‥まあ、あいからわずアンタたちの
《濡れ衣》で、ビショビショだがな」
【ヒツグリ】
「ど、どういうコトですか!」
【ワザト】
「‥‥《遺書》は、オレが書いたぜ」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。‥‥はい?」
【ワザト】
「《遺書》を書いたのはオレだ。
‥‥あの家のコンピューターを使ったんだ」
【サイバンチョ】
「静粛に! 静粛に! 静粛にィィィ!
証人!! ツミを認めるのですか!」
【ワザト】
「‥‥あァ? ダレがそんな
甘ったれたコトを抜かしたよ‥‥?」
【ワザト】
「オレはな、《遺書》を“代筆”したんだ。
そこの被告席のオトコを、告発するためになァ!」
【パウチ】
「な、」
【サイバンチョ】
「な、」
【ヒツグリ】
「なんだってェェェェェェェェッ!!」
【ヒツグリ】
(そんな、バカな‥‥)
【ヒツグリ】
(このヒト、この期におよんで、
どうやって逃げるつもりなの‥‥!?)
🔴🔴🔴🔴🔴
証言6 🎵尋問モデラート
【ワザト】
「《遺書》は、オレが書いた。
あのオトコを“告発”するために!」
【ワザト】
「あの家に《マイナスエス》があるのを見て
すべてに気づいたワケだ」
【ワザト】
「キケンそうなクスリ。動かないオンナ。
オンナを置いて出勤した異様なオトコ」
【ワザト】
「これは放っておけない。
オレは、あの《遺書》をその場で作りあげた!」
【ワザト】
「ヤツを告発する!!
すべての行動は、ただそのために!」
🔴🔴🔴🔴🔴
【サイバンチョ】
「証人!! つまりアナタが
《遺書》をねつ造したと言うのですか!」
【ワザト】
「‥‥逆に考えてみな。かばねサン本人が、
なぜ《遺書》をのこしてないんだろうなァ?」
【サイバンチョ】
「‥‥え、その‥‥。
それは‥‥クスリのせいで、頭が‥‥」
【ワザト】
「いいや、カノジョは文字は書けたハズだぜ。
‥‥オレはジッサイに、見せてもらったからなァ」
【ヒツグリ】
「ちょっと待ってください!!
‥‥カバネさんに、遺書を見せてもらった‥‥?」
【ワザト】
「カノジョは本物の《遺書》をのこしてた。
‥‥だが、それをエンザイが処分したんだ!」
【ワザト】
「だからオレはその内容を“再現”した!!
‥‥すべては、あのオトコを告発するために!」
【ヒツグリ】
「そんな主張、通るワケないでしょう!!
かばねさんが《遺書》を見せたなんて‥‥」
【ワザト】
「セイカクには、オレが“見ちまった”んだな。
前々から用意してた《遺書》を、コッソリと‥‥」
【ワザト】
「だから、様子のおかしいあのオトコと
玄関でスレちがったとき‥‥“予感”がしたのさ」
【サイバンチョ】
「‥‥“予感”‥‥?」
【ワザト】
「あのオトコはクスリを売人から買ってる。
‥‥薬の効用が出始めたら、わかるハズなんだ」
【パウチ】
「たしかに‥‥スイミン薬をのまされたコトが
わかったのに、出勤するのも‥‥ヘン、ですな」
【ワザト】
「だからな、オレはこう考えたんだ‥‥。
ヤツは、“出勤前”じゃなかったんだと」
【ヒツグリ】
「“出勤前”じゃなかった‥‥?
でも、それならなぜ‥‥エンザイさんは外に!」
【ワザト】
「事件の時、あのオトコは
いつもどおり《マイナスエス》をキメてたのさ」
【ワザト】
「たぶん、会社は休むつもりだったんだろう。
‥‥だが、そこで“異変”が起きた」
【ショチョウ】
「もしかして‥‥そこでカバネさんの
“自殺”を‥‥発見したと言うつもりかしら」
【ヒツグリ】
「あ!! ‥‥まさか‥‥!!」
【ワザト】
「そう!! かばねサンの《遺体》を見て、
あのオトコは“逃亡”しようとしたんだ!」
【ワザト】
「ホンモノの《遺書》さえ持ち去れば、
あとはかばねサンの“自殺”で事件は片付く!」
【ヒツグリ】
「しかし、あの家に住んでいたのなら
個人情報から、必ずエンザイさんに連絡がいく!」
【ワザト】
「ほう、“個人情報”‥‥?
いったい、なんのことだ?」
【ヒツグリ】
「戸籍を見れば、自殺したカバネさんの
“同居人”と、その“連絡先”はわかります!!」
【パウチ】
「うふふふ‥‥ふふ‥‥なるほど、ねぇ‥‥。
ここで“フィアンセ”が活きてくるワケですか」
【ヒツグリ】
「‥‥な、なんですか?
フィアンセ‥‥?」
【ワザト】
「悪いが、戸籍にあのオトコの情報はないぜ。
‥‥だって、あのふたりは結婚してないもんなァ?」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥あ、あああああああッ!!」
──回想──
【エンザイ】
「《ケッコン資金をためるまでの辛抱だ》と。
‥‥辛抱している間に、かばねは死んだ」
【エンザイ】
「‥‥住民票を移すのも後回しにしていた。
先を見ようとしすぎた結果が、このザマだ」
──回想──
【サイバンチョ】
「つまり、戸籍からでは‥‥エンザイさんという
“同居人”の存在は分からない‥‥!」
【ヒツグリ】
「そんな、バカな!! 戸籍になくとも、
近所のヒトに聞けばわかるでしょう!」
【ワザト】
「いいや、分からないぜ。
かばねサンは、近所づきあいを断っていたからな」
【ヒツグリ】
「き、近所づきあいがなくとも、エンザイさんの
存在くらいは知られているハズです!」
【ワザト】
「‥‥知られているから、なんだ?
どうせ、事件は“自殺”で片付けられるぜ」
【ワザト】
「薬物中毒のオンナが、一人で死んだ。
そんなの、よくあるハナシだからな」
【サイバンチョ】
「‥‥ただの自殺で、連絡の取れない“同居人”を
警察が探すコトは‥‥ないでしょうな」
【ワザト】
「ジッサイには“異常充血”のせいで、
司法解剖と、追跡調査は避けられなかったろう」
【ワザト】
「だが、あのオトコにそんな知識はない。
ゆえにヤツの頭の中では、この計画は成立する!」
【ヒツグリ】
「で、でも! それならエンザイさんが 
道ばたで寝込んでいたのは、オカシイ!!」
【サイバンチョ】
「なぜですか? たまたまクスリを飲んでいたら、
カバネさんの自殺遺体を見つけて‥‥」
【ヒツグリ】
「‥‥ふつう、“逃亡”するならば
クスリの効用が切れるのを待つべきでしょう!」
【ヒツグリ】
「《マイナスエス》のスイミン成分が切れてから、
家を出て逃げればいいハズです!」
【パウチ】
「そんなヒマがあるワケないでしょう!
一刻もはやく逃げるのを優先するハズですぞ!」
【ヒツグリ】
「しかし、スイミン成分を“抜く”ための時間は、
あったハズなのです!」
【パウチ】
「あ、《セキュリティ》‥‥!」
【ヒツグリ】
「そう! 仮にだれかがたずねて来たとき、
居留守を使っても‥‥不自然ではないのです!」
【ヒツグリ】
「だって、かばねサンは基本的に
ヒトとの接触を拒んでいたのですから!」
【ワザト】
「‥‥そう。‥‥だから居留守を使っても、
それを怪しむヒトは‥‥1人を除いて、いなかった」
【ヒツグリ】
「‥‥1人を、のぞいて‥‥?」
【ワザト】
「モチロン、このワザトだ。
‥‥オレは、かばねサンの家に通っていたからな」
【ヒツグリ】
「‥‥あ、あああああっ!!!
まさか‥‥‥‥」
【ワザト】
「エンザイは、このワザトが
朝の9時に訪問しにくると思っていた!!」
【サイバンチョ】
「では、そこでもし‥‥ダレも
あなたの訪問に応じなかったら‥‥」
【ワザト】
「かばねサンの携帯電話にかけていたろうな。
‥‥サイアク、警察に通報するコトも考えたろう」
【ワザト】
「つまり、自分が家にいる間に
このワザトに訪問されれば‥‥すべてが終わる!」
【ワザト】
「だから‥‥オレが訪問する前に、
あのオトコは‥‥“逃亡”しなければならなかった!」
【ヒツグリ】
「そんな‥‥バカなあああああああッ!!」
【サイバンチョ】
「静粛に! 静粛にィィ!!
‥‥トンでもないコトになってきましたな‥‥」
【ヒツグリ】
(あ、あんな主張‥‥ウソに決まってる!!
‥‥ウソに‥‥決まってるのに‥‥)
【ショチョウ】
「反論の余地がないわね。
‥‥少なくとも、今のところは」
【ヒツグリ】
「どうすればいいんですか!!
逆転されちゃいましたよ!!」
【ショチョウ】
「‥‥‥‥ひつぐりちゃん。
‥‥こんな時だからこそ‥‥笑いなさい」
【ヒツグリ】
「‥‥わ、わらう‥‥?」
【ショチョウ】
「とあるムカシ話よ。
‥‥罪人と、ムチ使いの女がいた」
【ショチョウ】
「囚人は、100発のムチを女に打たれる。
毎日、余裕のカオでそれを耐えていた」
【ヒツグリ】
「‥‥い、いきなりなんですか‥‥?
シュミの話なら、また別の機会に‥‥」
【ショチョウ】
「‥‥その囚人を、オンナは
たった10発のムチで殺してみせたの」
【ヒツグリ】
「‥‥たった‥‥20発‥‥?」
【ショチョウ】
「ええ。どうやったと思う?」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥。
‥‥いや、それドコロじゃないんですよ!!」
【ヒツグリ】
「今は、出せる《証拠品》を探さなきゃ‥‥」
【ショチョウ】
「‥‥《今から、1000発のムチを打つ》。
そう、耳もとで《宣言》してやればいい」
【ショチョウ】
「そうすれば、10発のムチだけでも
相手は‥‥《絶望》とともに死にいたる」
【ショチョウ】
「ねえ、ひつぐりちゃん。あなたは
あと‥‥何発の“ムチ”を残しているのかしら?」
【ヒツグリ】
「‥‥!!」
【ショチョウ】
「たとえ何発でもいい。
‥‥ダイジなのは、“底”を見せないコト」
【ショチョウ】
「底が見えないからこそ、囚人は
たった10発のムチに絶望して、命を手放した」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥」
【ショチョウ】
「あの証人も‥‥打てる“ムチ”は
ほとんど打ちきっているハズよ」
【ショチョウ】
「カレを見なさい。
それでもふてぶてしく、笑っているわ」
【ショチョウ】
「さ、笑顔を見せなさい。
‥‥“底の知れない弁護士”になって、戦うの」
【ヒツグリ】
「‥‥“底”を、見せない‥‥?」
【ショチョウ】
「強いニンゲンなんて、いない。
いるのは、弱さを隠した人だけよ」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
【サイバンチョ】
「‥‥証人の主張はわかりました。
それでは弁護人、《尋問》を‥‥」
【ワザト】
「‥‥悪いが、弁護士のスイリごっこに
これ以上つき合うつもりはないぜ」
【ワザト】
「続けたいなら《証拠》を出しな。
‥‥オレが犯人だという、《証拠》を」
【ヒツグリ】
「どういうコトですか!!
あなたには、犯人のウタガイが‥‥」
【ワザト】
「そう言いながら、アンタはいまだに
オレの“罪”を証明できてねえよなァ?」
【ヒツグリ】
「‥‥ぐ‥‥っ!!」
【ワザト】
「裁判ごっこを続けたいなら《証拠》を出せ。
‥‥オレが犯人だという、決定的な《証拠》を!」
【ヒツグリ】
「‥‥それを見つけるために、こうして
あなたの《証言》を聞いてるんです!」
【ワザト】
「知ったことか。これ以上《証拠》がないなら
オレは、一切の発言をキョヒするぜ」
【ヒツグリ】
「な、なんですって!!!」
(証言の‥‥拒否‥‥!?)
【サイバンチョ】
「‥‥たしかに、証人は《黙秘権》を
行使することができます」
【ショチョウ】
「‥‥自分を罪におとしいれる可能性が
あるなら、という“条件付き”だけどね」
【ショチョウ】
「さて‥‥ひつぐりちゃん。
この状況‥‥あなたは、どう動く?」
【ヒツグリ】
(‥‥‥‥そ、そんな‥‥。
証言をキョヒされたら、どうしようも‥‥)
【ショチョウ】
「‥‥“底”を見せたらダメ。笑いながら
必死に考えて、考えて、考えぬくの」
【ヒツグリ】
(‥‥そ、そんなこと言われても‥‥!!
‥‥‥‥どうすればいい!!)
・証言を要求する
・   要求しない
🔴🔴🔴🔴🔴
♪無音
【ヒツグリ】
「‥‥証人。あなたに
最後の《証言》を要求しま
🔴🔴🔴🔴🔴
・しない
【ヒツグリ】
「‥‥新たな《証言》をキョヒする‥‥。
わかりました。それは受け入れましょう」
【ワザト】
「キマリだな。
それじゃ、オレは元の場所にもどらせて‥‥
【ヒツグリ】
「待ってください。
‥‥帰っていいと言った覚えは、ありません」
【ワザト】
「ア“ア”ア”ン!!??
テメェ‥‥やる気かァ“ア”ァン!!??」
【ヒツグリ】
(‥‥気圧されるな‥‥行け‥‥!!)
「‥‥あなたは、“新たな証言”はキョヒしました」
【ヒツグリ】
「しかし‥‥“すでにした証言”は、
キロクに残っています」
【ワザト】
「‥‥‥‥‥‥ナニが言いたいんだ?」
【ヒツグリ】
「もういちど、先ほどの《証言》を
繰り返していただきます」
【ヒツグリ】
「そこに‥‥決定的な《証拠》が
眠っているのです!」
【パウチ】
「決定的な‥‥」
【サイバンチョ】
「証拠‥‥ですと!!」
【ワザト】
「‥‥‥‥おしゃべりが過ぎたようだな。
裁判長。この場合‥‥オレはどうなるんだ?」
【サイバンチョ】
「‥‥《尋問》というコトになりますな。
ただ‥‥余計な“ゆさぶり”は許されません」
【ヒツグリ】
「!!」
【サイバンチョ】
「証人は《黙秘権》を行使しています。
弁護人のチャンスは、一度きりです」
【サイバンチョ】
「証人はよけいな“ゆさぶり”には答えません。
‥‥《証拠品》で、すべてを立証してください!」
【ワザト】
「ハッハッハッハッハァ!!
アンタなんかにできるワケがねェさ!!」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥わかりました‥‥。
受けて‥‥立ちましょう!!」
【ヒツグリ】
(‥‥この席に立ってから、
どれだけの時間が経っただろう‥‥)
【ヒツグリ】
(緊張で足がフルえて、視界がカスんで‥‥。
“笑う”なんて、できるわけがない‥‥)
【ヒツグリ】
(だけど! あの“犯人”だって、
それは同じハズなんだ‥‥!!)
【ワザト】
「クックックッ‥‥。
オレを見つめてどうした。恋でもしたか?」
【ヒツグリ】
(戦うんだ! あのオトコと!!
逃げるな! それがわたしの“使命”なんだ!)
【ヒツグリ】
(この《尋問》で‥‥。
決定的な証拠を、見つけ出すんだ!!)
【サイバンチョ】
「‥‥それでは弁護人。
最後の《尋問》に移ってください」
【ワザト】
「ハァーーーーーーーーーーーーーーッ
ハッハッハッハッハッハッハッハァ!!」
【ワザト】
「このワザト、コムスメなんかに
負けるようなタマじゃねえ!」
【ワザト】
「やれるモンならやってみやがれ!!
これが‥‥最後の“大一番”だッッ!!」
🔴🔴🔴🔴🔴
尋問6 🎵尋問アレグロ──最後の“大一番”──

【ワザト】          【●○○○○】
「《遺書》は、オレが書いた。
あのオトコを“告発”するために!」
【ヒツグリ】
「それはオカシイ!
活字の《遺書》を作るには、パソコンがいる!」
【ワザト】
「ハッ!! 《黙秘権》を使ったからって、
こんなデタラメにもモクヒはしねェぞ!!」
【ワザト】
「あの家のコンピューターを借りて
書いたに決まってるだろうが!」
【ヒツグリ】
「なら、コンピューターの
《パスワード》を言ってみてください!」
【ワザト】
「《ksEs》だ」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥‥‥‥‥え、エエエエエッ!!!!
なんで知ってるんですかッ!」
【ワザト】
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
【ショチョウ】
「‥‥カレは、暴力団の一員のはず。
そういうのを調べる“手段”が、あるのかもね」
【ヒツグリ】
(“手段”か‥‥あるいは“人脈”か‥‥)
🔴
【サイバンチョ】
「さっきから、ほぼモクヒする気配のない
証人もどうかとは思いますが‥‥」
【サイバンチョ】
「弁護人!! よけいな《ゆさぶり》は
みとめないと言ったハズですぞ!!」
【ヒツグリ】
「しかし‥‥余計じゃない《ゆさぶり》は
禁止されていません」
【サイバンチョ】
「‥‥では、いまの《ゆさぶり》は
決定的な証拠につながる‥‥と?」
【ヒツグリ】
「‥‥お見せしましょう。ただいまの会話は‥‥
この《証拠品》とムジュンするのです!」

【ワザト】          【○●○○○】
「あの家に《マイナスエス》があるのを見て
すべてに気づいたワケだ」
【ヒツグリ】
「《マイナスエス》の錠剤は、フクロごと
かばねさんのイブクロに入ってたハズです!」
【ヒツグリ】
「あなたが訪問したとき、かばねさんが
すでに死んでいたなら、ハッケンできるハズがない!」
【ワザト】
「ハッ!! 《黙秘権》を使ったからって、
こんなデタラメにもモクヒはしねェぞ!!」
【ワザト】
「《カゼ薬》に決まってるだろ!!
アレを見て、《マイナスエス》に気づいたんだ!!」
【ヒツグリ】
「そ、そんなバカな!!
そんなの‥‥気づけるワケがない!」
【ワザト】
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
【ヒツグリ】
「あなたの発言は、すべてムジュンしています!」
【ワザト】
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
↓略

【ワザト】          【○○●○○】
「キケンそうなクスリ。動かないオンナ。
オンナを置いて出勤した異様なオトコ」
【ヒツグリ】
「《マイナスエス》は暴力団の“秘蔵っ子”です。
エンザイさんの“異常”は、売人にしか分からない!」
【ワザト】
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
【ヒツグリ】
「そもそも、なぜ《マイナスエス》を
“キケン”と判断できたのですか!!」
【ワザト】
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
【ヒツグリ】
「だいたい、《マイナスエス》は‥‥」
↓略

【ワザト】          【○○○●○】
「これは放っておけない。
オレは、あの《遺書》をその場で作りあげた!」
【ヒツグリ】
「それはオカシイ! まさかコンピューターを
“現地調達”したとでも言うのですか!!」
【ワザト】
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
【ヒツグリ】
「あの家のコンピューターなら‥‥。
さすがに、パスワードが設定されてるハズです!」
【ワザト】
「‥‥オレはパスワードを知っていた。
だから《遺書》を書けた。‥‥以上だ」
【ヒツグリ】
「《セキュリティ》と同じく、コンピューターも
《指紋》のロックがあるハズです!」
【ワザト】
「‥‥‥‥‥‥」
【ヒツグリ】
「それを解除するには、生きたかばねさんの
ユビが必要になったハズです!!」
【ヒツグリ】
「つまり、あなたが訪問した時点で
かばねさんはまだ、生きていたコトになる!」
【ワザト】
「ハッ!! 《黙秘権》を使ったからって、
こんなデタラメにもモクヒはしねェぞ!!」
【ワザト】
「指紋のロックは、《侵入者》対策だろ?
コンピューターにそんなモノはついてねえぞ!」
【ヒツグリ】
「かばねさんは《侵入者》におびえていた!
侵入されたときの“備え”をした可能性も」

【ワザト】          【○○○○●】
「ヤツを告発する!!
すべての行動は、ただそのために!」
【ヒツグリ】
「コクハツが目的なら、
こんなまわりくどい方法は取りません!」
【ワザト】
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
【ヒツグリ】
「《遺書》の“再現”などせず、ケーサツに
あなたの見た“原本”のことを伝えればいい!」
【ワザト】
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
【ヒツグリ】
「わざわざ《遺書》の“ねつ造”をした理由は、
“自分の犯行をかくすため”以外にない!」
【ワザト】
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
カン!!

◆◆◆◆◆
【ヒツグリ】
「‥‥ううう‥‥手も足も出にくいです。
余計な《ゆさぶる》ができないから‥‥」
【ショチョウ】
「‥‥でも、余計じゃない《ゆさぶる》は
できるのよね?」
【ヒツグリ】
「‥‥《余計じゃない》の“さじ加減”にも
よると思いますけど‥‥」
【ショチョウ】
「いいこと? カレが行使したのは、
《黙秘ギム》じゃなくて《黙秘権》なのよ」
【ショチョウ】
「《質問》というよりは、ケチをつけなさい。
‥‥思わず相手が反論したくなるような」
【ショチョウ】
「情報を増やすのよ。一度きりの
《ゆさぶる》と《つきつける》を、セットで使うの」
【ヒツグリ】
(‥‥まずは、ケチのつけられそうな《証言》に
“標的”をしぼってみるか‥‥)
◆◆◆◆◆
─つきつける失敗─
【ヒツグリ】
「これこそが、すべてを証明する
決定的な《証拠品》なのです!!」
【ワザト】
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
【ヒツグリ】
「この決定的な《証拠品》は、
すべてを証明しているのです!」
【ワザト】
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
【ヒツグリ】
「すべてを証明しているのは、
この決定的な《証拠品》です!!」
]【ワザト】
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
【ヒツグリ】
「‥‥フッ‥‥おどろきのあまり
声も出ませんか‥‥」
【パウチ】
「手も足も出てないアナタよりは、
数段マシです」
【サイバンチョ】
「せめて、この法廷から出て
もらいましょうか」
ペナルティ
◆◆◆◆◆
🔴🔴🔴🔴🔴
異議あり!【カゼ薬】
【ヒツグリ】
「‥‥あなたがクスリの“専門家”で、
助かりました」
【ワザト】
「なんだァ? このあやしいクスリで、
クスリと笑ってみるか?」
【ヒツグリ】
「‥‥少なくとも、今からあなたは
笑えなくなるでしょうね」
【ヒツグリ】
「このクスリを、見ただけで
《マイナスエス》と判断するのは‥‥不可能なのです」
【ワザト】
「ハァーーーーーッハッハッハッハッ!
ハッハッハッハッハッハッハッハッハァ!!」
【ワザト】
「アンタ‥‥このワザトが
《マイナスエス》の見分けもつかないと思うのか!」
【ヒツグリ】
「ど、どういうコトですか!!」
【パウチ】
「どうもこうもない! カプセルに
《マイナスエス》と刻印されてるではないか!」
【ワザト】
「そうとも!! 加えて、このワザトは
元・クスリの専門家だァ!!」
【ワザト】
「いくら足を洗ってても、
そのテイドのことは知ってるんだよォォ!!」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥逆に言えば、カプセルの刻印がなければ
《マイナスエス》は、判別ができません」
【ワザト】
「‥‥‥‥ア“ア“ン”?
このワザトを、ナメてるのかァ‥‥?」
【ヒツグリ】
「いいえ、逆です。
‥‥ココロの底から恐れ入ってますよ」
【ヒツグリ】
「なぜ、《カゼ薬》のカプセルを見ただけで、
その入れ替わった中身を判別できたのか‥‥?」
【ワザト】
「‥‥あっ‥‥‥‥」
【ヒツグリ】
「クスリの中身は入れ替えられていた。
“見た”だけでは、ゼッタイにその正体はわからない!」
【サイバンチョ】
「だとしたら、いったいなぜ!!
この証人は《カゼ薬》の中身を知ってるのですか!」
【ワザト】
「や、やめろ‥‥‥‥」
【ヒツグリ】
「“見た”だけでは、このクスリの正体は分からない。
‥‥だとしたら、コタエはひとつしかない」
【ワザト】
「ち、ちがう‥‥」
【ヒツグリ】
「証人は、このクスリに“触れた”のです。
‥‥もっと言えば、カプセルを“開けた”のです」
【ワザト】
「う、おお‥‥‥‥」
【ヒツグリ】
「中身をいれかえた“張本人”いがいに、
この《カゼ薬》の“正体は‥‥見抜けない」
【ワザト】
「ハァ‥‥ハァ‥‥」
【ヒツグリ】
「つまり、いれかえる《マイナスエス》の現物を
あなたは‥‥持っていたコトになる」
【ヒツグリ】
「この証人こそが、かばねさんに
《マイナスエス》を売った“売人”だったのです!」
【ワザト】
「ウ“オ“オ“オ“オ“オ“オ“オ“オ”オ”オ”オ”オ”オ”
オ“オ“オ“オ“オ“オ“オ“オ”オ”オ”オ”オ”オ”ッ!!」
【ヒツグリ】
「さあ、これであなたが《マイナスエス》の
売人であることは証明されました!」
【ワザト】
「は‥‥ハッ!! そんなの‥‥
《遺体》を見れば、イッパツでわかる!」
【ワザト】
「《遺体》は《異常充血》していた!
それで、《マイナスエス》中毒だと判断できる!」
【ヒツグリ】
「残念ながら、《異常充血》を見ただけでは
一般人に《マイナスエス》のコトはわからない!」
🔴🔴🔴🔴🔴
【ヒツグリ】
「わたしは一般人なので、
《異常充血》とか、よくわかりません!!」
【サイバンチョ】
「‥‥ウソおっしゃい。
《充血》はあなたの“専売特許”でしょう!」
【パウチ】
「異常に充血した目でいわれても、
セットク力に欠けますな」
【ワザト】
「ずっと気になってたが、その目の充血‥‥。
やはり、アンタも“同業者”だったんだな!!」
【サイバンチョ】
「その真っ赤な《チャーム・ポイント》に
マッサオなペナルティを与えます!」
【ヒツグリ】
(‥‥あしたから、マッサオな
カラー・コンタクトレンズでも入れようかな‥‥)
【ショチョウ】
「ムラサキ色の目がたん生するだけよ。
スナオに目薬をさしなさい」
【ヒツグリ】
「‥‥ううう!! どうせ《専門家》じゃないから
充血のコトなんてわからないですよ!」
【ショチョウ】
「‥‥まあ、この《異常充血》は
《専門家》でも、わからないと思うけれどね」
【サイバンチョ】
「証人は、遺体の《異常充血》から
《マイナスエス》と判断したと主張しています」

🔴🔴🔴🔴🔴
くらえ!
【ヒツグリ】
「《マイナスエス》は、暴力団の“秘蔵っ子”です。
‥‥ケーサツですら、今まで知らなかったのです!」
【ワザト】
「ぐ、グ‥‥ッ!!!」
【ヒツグリ】
「つまり、クスリを売った《売人》でない限り、
《異常充血》によるクスリの判別は、不可能なのです!」
【ワザト】
「ちがう!!!
オレは元・《売人》だから、知っていただけだ!」
【ヒツグリ】
「《マイナスエス》の売人は、
数が限られているハズでしょう!」
【ワザト】
「そう! 数は限られているが、ゼロじゃない!
《異常充血》を知る者は、他に何人かいるはずだ!」
【ヒツグリ】
「そんな‥‥ヘリクツですッ!!」
【ワザト】
「なァにねぼけたコト言ってやがる!!
いっそ、アンタもスイミン薬を飲んだらどうだ!」
【ワザト】
「よく眠れるぜ! 自分のコイビトが
捕まっても気づけないくらいにな!!」
【ヒツグリ】
「まだです! まだ、弁護側の立証は
終了していません!!」
【パウチ】
「しかし、この証人がクスリを入れ替えた
コンセキなど、どこにも残ってないのですぞ!」
【ヒツグリ】
「手持ちの《マイナスエス》と《カゼ薬》の
中身を入れ替えたのならば‥‥」
【ヒツグリ】
「《マイナスエス》のカプセルと、
《カゼ薬》のコナが、あまるコトになります」
【ヒツグリ】
「《カゼ薬》のビンに入らなかったほうの
“組み合わせ”は、どこかに“証拠”としてあるハズです!」
【パウチ】
「そんなモノ、すでにトイレにでも
捨ててられてる決まっているでしょう!」
【ヒツグリ】
「残念ながら! 犯人はあまったカプセルを
トイレに捨てるコトは、できなかった!」
🔴🔴🔴🔴🔴
くらえ!
【ヒツグリ】
「これのせいで、ワザトさんは
証拠品をトイレに捨てられなかった!!」
【ワザト】
「‥‥じゃあ、アンタをトイレに
捨ててきてやるよ」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥え」
【ワザト】
「もしアンタをトイレに流せなかったら、
アンタの主張は正しかったコトになる」
【ヒツグリ】
「‥‥じゃあ、もしわたしを
トイレに流せたら‥‥?」
【サイバンチョ】
「‥‥《無罪判決》も、あなた自身も。
すべてが、水の泡ですな」
【ヒツグリ】
「ううう!! ‥‥このたびのシッパイは、
どうか水に流していただきたく!」
↓「ユメのまたユメ~」
🔴🔴🔴🔴🔴
くらえ!【セキュリティ】
【ヒツグリ】
「どうやら、この《セキュリティ》は
リッパに《証拠品》をまもっていたようです」
【パウチ】
「あっ‥‥! 《指紋のロック》‥‥!」
【ヒツグリ】
「そう! トイレもフロも台所も!
どこにもクスリは捨てられなかった!」
【ワザト】
「ハッ! なら玄関からソトに出て
捨てればいいだけじゃねえか!!」
【ヒツグリ】
「ソトに捨てたら、“秘蔵っ子”のカプセルが
一般人に見つかるおそれがありますね!」
【ワザト】
「そんなのもう、どこか遠くで
地中深くに埋められているだろうよ!!」
【ヒツグリ】
「‥‥カプセルは、
捨てることができなかったのです」
【ワザト】
「‥‥?」
【ヒツグリ】
「あなたは、現場から逃げるワケには
いかなかったのです!!」
🔴🔴🔴🔴🔴
くらえ!
【ヒツグリ】
「あなたは、現場から逃げるワケには
いかなかったのです!!」
【サイバンチョ】
「いったい、なぜ!!」
【ヒツグリ】
「それは、現場から逃げるワケには
いかなかったからです!!」
【パウチ】
「‥‥弁護人。じぶんの主張の
《セツメイ責任》から、逃げないように!」
【ヒツグリ】
「スミマセンでした!!
では気をとりなおして、もう一度‥‥」
【サイバンチョ】
「そして、ペナルティからも
逃げないように!」
【ワザト】
「ハッ!! この法廷から逃げたら、
オレがつかまえて地中深くに埋めてやるぜ!!」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥まあ、事件当時のあなたに
そんなコトをする時間は、なかったのですが‥‥」
【ワザト】
「ハッ!!
いったい、どういうコトだッ!!」

🔴🔴🔴🔴🔴
くらえ!【セキュリティ】
【ヒツグリ】
「‥‥あなたは、こともあろうに
事件の日のカメラに、カオをのこしてしまった」
【ヒツグリ】
「そして、かばねさんは自殺してしまった。
これで逃げたら、《容疑者》まっしぐらです」
【ショチョウ】
「この時点で、《容疑者》か《発見者》か。
どちらかを演じなければならなくなった」
【ヒツグリ】
「あなたは、《発見者》を演じるために。
‥‥朝8時から、《空白の時間》は作れなかった」
【パウチ】
「あ、まさか‥‥インターホンを
押してしまったから‥‥!」
【ヒツグリ】
「カメラに写ってしまったのです。
それも《AM8:00》という情報つきで!!」
【ヒツグリ】
「この状況で、ダレの目にも触れないよう
遠くにカプセルを捨てに行けば‥‥どうなりますか?」
【サイバンチョ】
「遺体の《発見》から、《通報》まで‥‥。
《空白の時間》が生まれてしまう!!」
【ヒツグリ】
「つまり、クスリの入れ替えで不要になった
《マイナスエス》のカプセルは、捨てられなかった!」
【ヒツグリ】
「家の中にも、ソトにも、時間的にも。
カプセルを安全に捨てる方法は、なかったのです!」
【ワザト】
「さっきからなんだってんだ!
捨てられたカプセルを気にして、何になる!」
【ヒツグリ】
「いいえ、カプセルは捨てられなかったのです。
そのための場所も時間も、なかったのだから」
【ワザト】
「どっちにしても、消えたカプセルの
行方なんか、どうでもいいんだよォ!」
【ヒツグリ】
「‥‥いいですか。犯行に使ったカプセルは、
捨てることができなかったんですよ?」
【ショチョウ】
「なら、その捨てられなかったカプセルは、
いま‥‥どこにあるのか‥‥?」
【サイバンチョ】
「弁護人!! まさか‥‥その“場所”とは‥‥!!」
【ヒツグリ】
「‥‥そろそろ‥‥本題に入りましょうか」
【ヒツグリ】
「いま、《マイナスエス》のカプセルは‥‥
ここにあるのです!」
🔴🔴🔴🔴🔴
くらえ!
【ヒツグリ】
「ここを探せば、《マイナスエス》の
カプセルがざくざくと出てきます!」
【パウチ】
「では、弁護人は今すぐそこに行って
カプセルを掘り当ててきてください」
【サイバンチョ】
「カプセルがざくざく手にはいるまで、
帰ってこないようお願いします」
【ヒツグリ】
「ううう‥‥法廷のみんなが
わたしのココロをざくざく刺してきます‥‥」
【ショチョウ】
「どこにも捨てられなかったのよ。
‥‥コタエは《捨てなかった》しかないでしょ!」
【ヒツグリ】
「ううう‥‥
アナがあったら入りたい気分です‥‥」
【ショチョウ】
「私は、アナがあったら
あなたを捨ててインメツしたいキブンよ‥‥」
【ショチョウ】
「‥‥でも、この事件のハンニンだけは
インメツする時間も場所も、なかったハズよ」
↓「さっきからなんだってんだ!」
🔴🔴🔴🔴🔴
くらえ!【ワザト】
無音!
【ヒツグリ】
「‥‥ヒトツだけ。まったく時間をかけず、
ダレの目にも触れない“かくし場所”があります」
【ヒツグリ】
「もちろん、飲み込んだんですよ!
【ヒツグリ】
「もちろん、飲み込んだんですよ!
ワザトさんのイブクロに!!」
<BGMの演奏: 015ContPursuit_cornerd_corner, 80, 100, 0
【ワザト】
「ハッ!! オレがコナとカプセルを
オヤツにしたってのか!!?」
【パウチ】
「しかし、この証人は薬物検査には
引っかかっておりませんぞ!」
【サイバンチョ】
「‥‥さすがに、市販の《カゼ薬》のコナでも
この量を“消化”したら、アブないですぞ!」
【ヒツグリ】
「“消化した”とは言ってません。
‥‥“飲み込んだ”と言っているのです!」
【ワザト】
「ハッ! “消化”せずに“飲み込んだ”‥‥?
そんな方法が、どこにあるって言うんだ!」
【ヒツグリ】
(‥‥ヒトツだけあるんだ。
“彼女”が、その方法をのこしてくれている!)
【ヒツグリ】
「カゼ薬を“消化”せず“飲み込む”方法。
‥‥これが、最後の《証拠品》です!!」
🔴🔴🔴🔴🔴
くらえ!
【ヒツグリ】
「こうすれば、カゼ薬を
“吸収”させずに飲みこめます!!」
【サイバンチョ】
「では、まずあなたの弁護士バッジから
試してみてください」
【ヒツグリ】
「‥‥いや、わたしのイブクロに消えたら
身分を証明できないんですけど‥‥」
【サイバンチョ】
「“消化”されないのなら、
吐き出せば、モンダイはありません」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。‥‥すみません。
わたしは今、テキトーに証拠を投げつけました」
【サイバンチョ】
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
ついに、“ゲロ”しましたね」
【ヒツグリ】
(‥‥わたしの“ゲロ”はともかく、
“彼女”のゲロは‥‥重要な“手がかり”を守っていたハズ!)
↓「ハッ!!消化せずに飲み込んだ‥‥?」
🔴🔴🔴🔴🔴
くらえ!【マイナスエス】🔺【志賀 かばね】
【ワザト】
「かばねサンののみこんだ‥‥《マイナスエス》!」
【ヒツグリ】
「そう。カノジョが、
最後の手がかりをのこしてくれていた!」
【ヒツグリ】
「フクロごとイブクロに飲みこめば、
《カゼ薬》のコナは“吸収”されません!!」
【ワザト】
「ぐおおおおおッ!!!!」
【ヒツグリ】
「“消化”されないなら、このように。
‥‥クスリは、まだ体内で原型をとどめている」
【ヒツグリ】
「つまり、あなたの体内を調べれば
“入れ替え”の証拠が、そのまま出てくるのです!」
【ワザト】
「‥‥ち、ちがう!!!
そんなモノ‥‥のみこんでない!!」
【ヒツグリ】
「だとしたら、なおさら検査を受けるべきです!
‥‥それで、この事件は解決します!」
【ワザト】
「やめてくれッ!!
ちがう、オレは‥‥オレは‥‥!!!」
【ヒツグリ】
「‥‥かばねさんが用意した《セキュリティ》は、
あなたの逃げ場をふさいだ」
【ヒツグリ】
「‥‥かばねさんがのみこんだ《マイナスエス》は
クスリの存在を、ケーサツに知らしめた」
【ヒツグリ】
「‥‥かばねさんの用意した《カメラ》に
写ったその時点で、あなたの運命は決していた」
【ヒツグリ】
「‥‥あなたのたくらみは、すべて!
被害者によって、ミゴトふせがれたのです!!」
【ワザト】
「‥‥フゥ‥‥フゥ‥‥フゥ‥‥‥‥ッ!!」(ハレツ)
【ワザト】
「‥‥‥‥ア、ア“ア“ア”ア”ア“ア”ア“ア”ア“ア”
イ“イ“イ“イ“イ”イ”イ”“”ウ”ウ“ウ“ウ“ウ”ウ”ウ”」
【ワザト】
「エ“エ“エ“エ“エ“エ“エ”エ”エ”エ”エ”エ”
オ“オ“オ“オ“オ“オ“オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”」
【ワザト】
「オ“オ“オ“オ“オ“オ“オ”オ”オ”オ”オ”オ”
オ“オ“オ“オ“オ“オ“オ”オ”オ”オ”オ”ン!!??」
【サイバンチョ】
「‥‥派内検事。あの証人は‥‥?」
【パウチ】
「は‥‥はい。警察病院で、
クスリの入ったフクロを吐き出させました」
【サイバンチョ】
「‥‥そのクスリは、《カゼ薬》のコナと
《マイナスエス》のカプセルだった‥‥と?」
【パウチ】
「それだけでなく‥‥。
《マイナスエス》の錠剤も発見されました」
【ショチョウ】
「おそらく、“入れ替え”からあぶれた分ね。
《カゼ薬》の残量は、少なかったから」
【パウチ】
「加えて、フクロから、
かばねさんの指紋が検出されました」
【サイバンチョ】
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥まさに、決定的な《立証》となりましたな」
【パウチ】
「う、うぐおおおおおおおおおおッ!!!!」
【サイバンチョ】
「‥‥よろしい。
‥‥ところで、弁護人。ひとつだけ‥‥」
【ヒツグリ】
「は、はい‥‥」
【サイバンチョ】
「すばらしい弁護でした。
あなたはミゴト、被告人のムジツを証明した‥‥」
【ヒツグリ】
「‥‥あ、ありがとうございます‥‥」
【パウチ】
「う、ウソだッ!!!
“新人転がし”の異名を取った派内が‥‥!」
【ヒツグリ】
(さぞ転げ落ちたんだろうな‥‥。
ムカシの地位から‥‥)
【ショチョウ】
「まあ、異名までコロコロ変わってたしねぇ‥‥」
【サイバンチョ】
「‥‥“二転三転”のあわただしい法廷でしたが、
最後に転んだのは‥‥あなたでしたな」
【サイバンチョ】
「とにかく、被告人・白内 円斉に
《判決》を言いわたします」
《無罪》
【サイバンチョ】
「それでは、本日はこれにて閉廷!」
某年 某月 某日 午後3時15分
地方裁判所 被告人第一控え室
♪歓談
【エンザイ】
「げほ、げほ。。‥‥ありがとう、弁護士さん!
もう、コトバでは表現できない!」
【エンザイ】
「げほ、げほ! \>げほげほ!!
げほげほ!! げほげほげほ!!」
【ヒツグリ】
(ううう‥‥。カンシャを
セキで表現されてしまった‥‥)
【ショチョウ】
「‥‥おめでとうございます、エンザイさん。
あなたのムジツは、これで証明されました」
【エンザイ】
「げほ、げほ、げほ!!
‥‥センセイには、本当にカンシャしております」
【エンザイ】
「真犯人まで見つけ出して‥‥。
‥‥かばねも‥‥きっと、よろこんで‥‥‥‥」
【ヒツグリ】
「‥‥エンザイさん‥‥」
【エンザイ】
「‥‥‥‥‥‥お気になさらず。
かばねのコトは‥‥私個人のモンダイですから」
【エンザイ】
「私が、かばねを‥‥。
守ってやらねばならなかったのです‥‥」
【ショチョウ】
「‥‥どうやら‥‥まだ、
私たちの《立証》はおわってないようね」
【エンザイ】
「‥‥‥‥?」
【ショチョウ】
「あなたがキョリを置いた以上に、
かばねさんは‥‥あなたをとおざけていた」
【ショチョウ】
「ひつぐりちゃん。
‥‥《証拠品》をみせてあげなさい」
【ヒツグリ】
「え、えええ!!
‥‥いきなり、なんのハナシですか!」
【ショチョウ】
「かばねさんが、エンザイさんを
とおざけていたのは‥‥いったい、なぜか?」
【ヒツグリ】
「え‥‥それは、
中毒で、精神的に病んでいたから‥‥」
【ショチョウ】
「病んでいたとしても、カノジョは最期に
的確な判断をして‥‥《証拠》をまもったわ」
【ショチョウ】
「かばねさんは、最期までかばねさんだった。
‥‥私は、なんとなく‥‥そう思うわ」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
【ヒツグリ】
(‥‥かばねさんが、エンザイさんを遠ざけた
本当の《理由》は‥‥!)
🔴🔴🔴🔴🔴
くらえ!
【ヒツグリ】
(ち、ちがう!!
これじゃないハズだ!!)
【ショチョウ】
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
【ヒツグリ】
(所長がわたしを遠ざけないうちに、
考えなおそう‥‥)
🔴🔴🔴🔴🔴
くらえ!《ワザト》《エンザイ》《マイナスエス》
【ヒツグリ】
「ワザトさんは、暴力団の一員でした。
‥‥だまされて、クスリを買ってしまった」
【ヒツグリ】
「もし‥‥そんな相手に、
エンザイさんまで巻き込んでしまったら‥‥?」
【エンザイ】
「‥‥ま、まさか‥‥。
かばねが、私をとおざけたのは‥‥」
【ヒツグリ】
「暴力団‥‥ワザトさんから、
あなたを、とおざけるためです」
──回想──
<BGMの保存>
【エンザイ】
「きみがパソコンを使えないのはよく知っている。
‥‥いったい、ダレから買ったんだ‥‥?」
【カバネ】
「‥‥‥‥‥‥関わらないで‥‥‥‥‥‥」
【エンザイ】
「‥‥その《売人》の名前を言うんだ!!
かならず、ハナシをつけてやるッ!!」
【カバネ】
「ちがう!! 関係ないの!!
あなたとは‥‥ゼッタイに!!」
【カバネ】
「おねがい‥‥。
このコトは‥‥見なかったコトにして‥‥」
<BGMの再開>
【ヒツグリ】
「‥‥“その《売人》の名前を言うんだ!”
“かならず、ハナシをつけてやるッ!”」
【ヒツグリ】
「このヒトコトが、
《引き金》だったのかもしれません」
【エンザイ】
「‥‥私にたよれば、私が暴力団に
まきこまれてしまう‥‥と‥‥?」
【ヒツグリ】
「自分ひとりで《決着》をつけるために、
あなたを《別居》させた」
【ヒツグリ】
「インターホンのカメラと《セキュリティ》で、
ワザトさんの逃げ場をふさいで‥‥自殺した」
【ヒツグリ】
「ワザトさんが隠すであろう《マイナスエス》を
飲み込んでから‥‥自殺した」
【ヒツグリ】
「決め手となった《証拠品》は、
いずれも‥‥カノジョが守ったものばかりです」
【エンザイ】
「‥‥そこまでできるなら
なぜ、自殺などしたのだ!!」
【エンザイ】
「いまの話は、およそ心を病んだ人間の
死にザマとは、かけはなれている!!」
【ヒツグリ】
「‥‥もしかしたら、《自殺》は‥‥。
“取引”だったのかもしれません」
【エンザイ】
「‥‥《自殺》が‥‥トリヒキ‥‥?」
【ヒツグリ】
「‥‥かばねさんが自殺しなければ、
エンザイさんに危害をくわえるぞ‥‥とか‥‥」
【エンザイ】
「‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥そうだ‥‥。それしか‥‥考えられない」
【エンザイ】
「ずっと、フシギだった。
‥‥あのかばねが、本当に自殺なんてするのか?」
【ヒツグリ】
「‥‥“秘蔵っ子”のクスリを買った者は、
もれなく‥‥“消される”のかもしれません」
【ヒツグリ】
「だから‥‥自分のイノチを使って、
ワザトさんと‥‥戦ったのだと思います」
【エンザイ】
「‥‥‥‥‥‥私は‥‥ずっと。‥‥‥‥かばねを、
守らなければならないと‥‥思っていた」
【エンザイ】
「だが‥‥ジッサイは‥‥‥‥。
‥‥私が、かばねに守られていたのですね‥‥」
【ヒツグリ】
「‥‥あなたが事件を防げなかったのではなく、
あなたを遠ざけたから‥‥事件を起こせた」
【ヒツグリ】
「あくまで、自分でまいたタネですから。
自分で《決着》をつけようとしたのでしょう」
【エンザイ】
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥かばね‥‥弱っていただろうに‥‥‥‥」
【エンザイ】
「‥‥‥‥‥‥なぜ、きみは‥‥‥‥。
最期まで、“きみ”をつらぬいてしまったんだ‥‥」
【エンザイ】
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥げほ、げほ、げほ、げほ!」
【ショチョウ】
「‥‥‥‥‥‥どうやら、これで終わりみたいね」
【エンザイ】
「げほ! ‥‥ありがとうございました。
このご恩は‥‥一生、わすれません!」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥う、あ、あれ‥‥?」
(‥‥なんだか‥‥視界が‥‥)
【エンザイ】
「べ、弁護士さん!! 大丈夫ですかッ!!!」
【ヒツグリ】
「う、‥‥。‥‥そ、その、
グラっと‥‥‥‥来‥‥‥
【ショチョウ】
「‥‥おつかれさま、ひつぐりちゃん。
少し、ムリをしすぎたものね」
【ショチョウ】
「今はゆっくり休みなさい。
あなたの戦いは‥‥はじまったばかりなのだから」
【ヒツグリ】
「終わりをむかえる《物語》もあれば、
どこかで始まる《物語》もある」
【ヒツグリ】
「‥‥うすれゆく視界のなかで、
わたしの《物語》も‥‥ゆっくりと回りはじめた」
【ヒツグリ】
「‥‥これから、あの法廷で戦うんだ。
逃げることは‥‥許されない」
【ヒツグリ】
「‥‥それが、のこされたわたしにできる、
ゆいいつの‥‥“つぐない”なのだから‥‥」
──おわり──

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