OR逆転裁判 第二話「難攻逆転不落」２日目法廷後編

【ヒツグリ】
「‥‥てるくん！！
なんだったの、さいごのアレは！」
【アワテル】
「ああ、所長から聞いたんですよ。
なにかを隠されたら、テッテイ的に攻めろと」
【ヒツグリ】
「‥‥“ねつ造”‥‥“証拠のインメツ”‥‥。
水冬検事にとって、それは“禁句”なんだよ」
【アワテル】
「おや、ひつぐりさん。
あの“天才”とお知り合いでしたか？」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥さあ。ともかく、てるくんが
つないでくれた、次の証人だけど‥‥」
【ユーリ】
「《目撃証人》って、あのズブヌレの？」
【アワテル】
「そう。キミにぬれぎぬを着せて
ビチョビチョにしてくれた、あのレディだよ」
【ユーリ】
「ううん、ズブヌレなのはおたがいさまか‥‥」
【ヒツグリ】
(ズブヌレなユーリへの《有罪判決》‥‥。
なんとしても、水を差してみせる！)
【ユーリ】
「ヌレギヌなんて、アタマに火をつければ
かわいてくれるさ！！」


【サイバンチョ】
「それでは、審理を再開します。
検事、《証人》を呼んでください」
【サイバンチョ】
「‥‥おじょうさん。
よければお名前を‥‥教えてもらえますか？」
【ズブヌレ】
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
【サイバンチョ】
「証人！！
よければお名前を‥‥」
【ズブヌレ】
「“よければ”ってなんだ、コノヤロー！！
よくなかったら、なんて答えりゃいいんだ！」
【サイバンチョ】
「‥‥もしかして、どこか
具合でもわるいのですかな？」
【ズブヌレ】
「う、うる、うるさい！！！
アタシは‥‥“とじこみちゅう”なんだぞッ！！」
【サイバンチョ】
「‥‥カラにとじこもってしまいました。
検事、どうにかしてください」
【ミトウ】
「‥‥このセンサイなレディは、
“殺人事件”のキオクで‥‥心をいためている」
【ミトウ】
「レディの心には、美しいものだけを残したい。
本当は、こんなところに呼びたくなかった‥‥」
【ヒツグリ】
(‥‥うぐ。スッカリ“悪役”に
されてしまった‥‥)
【サイバンチョ】
「‥‥名前は《図部塗 長月》。
あの学校の生徒さん、ですな」
【ズブヌレ】
「９月に生まれたから“長月”だッ！
悪いかチクショウ！！」
【ミトウ】
「何月に生まれようと、そこの弁護士は
あなたのコトバにすがりつくのです」
【ミトウ】
「どうか、あのあわれな弁護士さんに
そのウツクシイ言葉をきかせていただけますか」
【ズブヌレ】
「う、ウツクシ‥‥ッ！！！
‥‥し、仕方ないな‥‥話してやってもいいぞ！！」
【サイバンチョ】
「それではおじょうさん。
ウツクシイ《証言》をおねがいします」
🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
【１回目法廷】
尋問３：
【ズブヌレ】
「あの日は、なんとなく
学校の近くを散歩してたんだけど‥‥」
【ズブヌレ】
「なんだか、学校の屋上にヒトがいて‥‥。
ヘンだなと思って、ウラ門からはいってみたんだ」
【ズブヌレ】
「そしたらさ！　いきなりこう、
ニンゲンが落ちてきたんだよ！！」
【ズブヌレ】
「屋上にいたのはユーリだった！
それでアタシ、通報したんだ！」
　　　　　　　→ゆさぶる「暗いのによく顔見えたね」
【ズブヌレ】
「ハンニンが死体を埋めてる時に、
近くでカオを見て‥‥ユーリだとわかったんだ」

🔴🔴🔴🔴🔴
【サイバンチョ】
「ははあ、イキナリ‥‥ニンゲンが。
それはタイヘンでしたな」
【ミトウ】
「ヒトが空から降ってきた。
‥‥どこか“詩”を感じる、ウツクシイ《証言》だ」
【ヒツグリ】
(“詩”というか、“死”なのでは‥‥？)
【アワテル】
「“ウツクシイ”というより、
“鬱”と“苦”と“死”ってカンジですけどね‥‥」
【サイバンチョ】
「では、このウツクシイ《証言》に
ウツクシイ《尋問》をおねがいしますぞ」
【ヒツグリ】
「‥‥ザンネンながら‥‥この《尋問》の結末は
“美談”には、ならないかも知れませんけどね」
🔴🔴🔴🔴🔴
尋問３：
【ズブヌレ】　　　　　　　　　【●◯◯◯◯】
「あの日は、なんとなく
学校の近くを散歩してたんだけど‥‥」
【ヒツグリ】
「なんとなく朝の５時にさんぽなんて、
ありえません！！」
【サイバンチョ】
「そうでしょうか？　ワタシなどはよく、
ムイシキに早朝にソトを歩いたりしますが‥‥」
【ヒツグリ】
(それは“さんぽ”というか、
“徘徊”なのでは‥‥？)
【アワテル】
「大丈夫なんですかね‥‥。
判決のゆくえまで“徘徊”しないといいですけど‥‥」
【ズブヌレ】
「とにかく、アタシはさんぽの
キブンだったんだよ！！　そして‥‥」
【ズブヌレ】　　　　　　　　　【◯●◯◯◯】
「なんだか、学校の屋上にヒトがいて‥‥。
ヘンだなと思って、ウラ門からはいってみたんだ」
【ヒツグリ】
「よく、屋上にヒトがいるのなんて
気がつきましたね」
【ズブヌレ】
「サクごしに、チラホラ動いてるのが見えて。
‥‥早朝だと目立つんだよ」
【サイバンチョ】
「たしかに、朝の５時なんて
ダレも起きてませんからな」
【ミトウ】
「屋上の人影に目がいくのは、自然なコトさ。
キミもはやく目を覚ますといい」
【ヒツグリ】
(シツレイな‥‥。今朝は１５分しか
ねてないというのに‥‥)
【ズブヌレ】
「ハッ！　あの光景をみたら、
目なんてイッシュンで覚めるけどな‥‥」
【ズブヌレ】　　　　　　　　　【◯◯●◯◯】
「そしたらさ！　いきなりこう、
ニンゲンが落ちてきたんだよ！！」
【ヒツグリ】
「ニンゲンが落ちてきた‥‥。
その、どんな音がしましたか？」
【ズブヌレ】
「オマエ、なんてことを聞くんだよ！！
音なんて‥‥、音なんて‥‥！！」
【ヒツグリ】
「いやその、“ゴキャッ”とか、
“グチャッ”とか、そういう‥‥」
【サイバンチョ】
「コラッ！！　なんてグロテスクなことを！！
“音”のことを聞くのはあきらめなさい！」
【ヒツグリ】
(サツジン事件の証人なのに‥‥)
【ズブヌレ】
「アタシは、“音”を聞くまでもなく“見た”んだよ！！
“音”なんて、どうでもいいだろ！！」
【ミトウ】
「そのとおり、音にこだわる理由はない。
ぐうの音も出ないだろう？　弁護人」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥‥‥ぐ、ぐう‥‥」
【アワテル】
「なんですか？　今のは‥‥」
【ヒツグリ】
「いや、“あきらめないぞ”という意思表示に、
せめて《ぐうの音》だけは出しておこうと‥‥」
【サイバンチョ】
「弁護人‥‥。
ついに、“音を上げた”ようですな」
【アワテル】
「どう転んでもダメじゃないですか！！」
【ヒツグリ】
(うう、どうあっても“音”については
聞けないみたい‥‥)
【ズブヌレ】
「音はその、アレだけど。
でもアタシ、ちゃんと見たんだからな！」
【ズブヌレ】　　　　　　　　　【◯◯◯●◯】
「屋上にいたのはユーリだった！
それでアタシ、通報したんだ！」
　　　　　　　→ゆさぶる「暗いのによく顔見えたね
【ヒツグリ】
「‥‥ヒトツ、ギモンなのですが。
暗いなかで、よく弟のカオが見えましたね」
【ズブヌレ】
「え！　それは‥‥その！！
‥‥アタシとユーリ、近かったんだ！！」
【ヒツグリ】
「“近かった”‥‥？」
【ズブヌレ】
「そう！！　屋上からおりてきて、
校庭でアイツ‥‥穴を堀りはじめたんだ！」
【サイバンチョ】
「なるほど、その時にカオを見たから、
犯人の名前を通報できた‥‥と」
【ズブヌレ】
「そう！！　それ！！
そーゆーコトでヨロシク！！」
【サイバンチョ】
「‥‥証人は被告人の近くで事件を見た、と。
弁護人、この《証言》は‥‥」
【ヒツグリ】
「モチロン、重要です。
《証言》につけ加えてください！！」
【サイバンチョ】
「‥‥証人、《証言》の追加をおねがいします。
目の血走った弁護人に、先走られてしまったので」
【ヒツグリ】
「たしかに、わたしの目は血走ってますが。
血迷ったワケではないので、ご安心を」
【ズブヌレ】　　　　　　　　　【◯◯◯◯●】
「ハンニンが死体を埋めてる時に、
近くでカオを見て‥‥ユーリだとわかったんだ」
　　　　　　　→ゆさぶる「近くで電話 ﾕｰﾘ気づくﾊｽﾞ」
　　　　　　　　「ﾕｰﾘの顔見れる＝ﾕｰﾘもｽﾞﾌﾞﾇﾚ見ｴﾙ」
　　　　　　　　「校門に身をかくしながら見るのは遠くてムリ」
【ヒツグリ】
「屋上からおりてきた犯人のカオを見て、
それがユーリだとわかった‥‥」
【ズブヌレ】
「暗いから、カオなんか
見えないって言うつもりか！？」
【ズブヌレ】
「アタシはこう見えて目がイイからな！
ユーリのカオなんて、見ればすぐ分かるんだよ！」
【ヒツグリ】
「‥‥ちなみに、証人。
ごじまんの視力のほうは、いくつですか？」
【ズブヌレ】
「両目とも１.２だ！！」
【アワテル】
「ジマンするほどでもないですね」
【サイバンチョ】
「ワタシからすれば、その若さが
なによりもうらやましいですな」
【ヒツグリ】
「‥‥残念ながら、あなたが見た
うちのユーリは、視力が両目とも１.５です」
【ズブヌレ】
「‥‥な、なんだよぉ‥‥。
たった０.３くらいで‥‥勝った気になるなよォ‥‥」
【ヒツグリ】
「‥‥勝ち負けのハナシではありません。
これは、あなたの“ウソ”に関するハナシなのです」
【ズブヌレ】
「ハァ！？　なんでユーリの視力がいいと
アタシがウソつきになるんだよ！！」
【ヒツグリ】
「あなたにユーリが見えたのなら。
‥‥ユーリにも、あなたが見えていたハズですね？」
【ズブヌレ】
「‥‥まあ、アタシより
目がいいんだもんな、そりゃ」
【ヒツグリ】
「つまり、あなたが近くに見えてながら、
ノンキに遺体を埋めていたコトになる」
【ズブヌレ】
「‥‥‥‥‥‥‥‥あ‥‥‥‥」
【ヒツグリ】
「殺人犯の目の前で《通報》なんかして、
よく遺体といっしょに埋められませんでしたね！」
【ズブヌレ】
「ウワァアアアアアアアア！！！！」
【サイバンチョ】
「静粛に！！　‥‥言い方は乱暴ですが、
弁護人の言うとおりです！」
【サイバンチョ】
「証人が近くにいるのが見えていながら、
逃げずに遺体を処理するなど、あり得ません！」
【アワテル】
「‥‥もしユーリくんが犯人なら、通報から
ケーサツの到着までに逃げるハズですぜ」
【ヒツグリ】
「‥‥そう。
もし、被告人が犯人なら、ね‥‥」
【ズブヌレ】
「その、アレ。‥‥隠れて見てたんだよ！！
校庭のどっかに！　隠れて！」
【ヒツグリ】
「‥‥校庭のどこかに、隠れて‥‥？」
【ズブヌレ】
「アタシ、目はともかくアタマはいいから！
ユーリに見えないトコから、コッソリ通報したの！」
【サイバンチョ】
「‥‥しかし、たとえ見えなくても
《通報》の声が被告人に聞こえてしまうのでは？ 」
【ズブヌレ】
「アタシは体が小さいから、
声も小さかったってコトで！」
【ヒツグリ】
(少なくとも、態度は大きいな‥‥)
【サイバンチョ】
「はぁ‥‥。
しかし、現場の校庭は‥“更地”だったのでは？」
【ズブヌレ】
「あ、あッ！！
それはその‥‥ウラ門から‥‥」
【サイバンチョ】
「ウラ門から目撃したなら
犯行現場から、かなりキョリがあったのでは？」
【ズブヌレ】
「ひッ！！」
【サイバンチョ】
「つまり、被告人のカオを見られるキョリに
身をかくせる“障害物”は、存在しなかった！」
【ズブヌレ】
「ひぃぃぃぃぃぃぃッ！！」
【サイバンチョ】
「‥‥‥‥はからずも、証人をおいつめる快感を
おぼえてしまいました」
【ヒツグリ】
(‥‥おぼえちゃダメだろ‥‥立場的に‥‥)
【アワテル】
「‥‥つまり、証人にハンニンのカオを見ることは、
できなかったのです」
【ズブヌレ】
「‥‥ええと、じゃあアレ。アタシ、
ユーリのカオなんか見てなかったのか‥‥？」
【ヒツグリ】
「シッカリしてください。どうせカオ以外で、
ユーリと判断できるものを見たんでしょう？」
【ズブヌレ】
「あ！！　それ！！
そーゆーコトでヨロシク！！」
【サイバンチョ】
「‥‥“そういうこと”ではなく、
キチンと《証言》しなおしなさい、証人」
【ズブヌレ】
「な、なんだよぉ‥‥。
分かったよ‥‥なおせばいいんだろ‥‥」
【アワテル】
「もはや何でもありっスね。
はやくトドメをさしてあげましょ」
【ヒツグリ】
(マズイな‥‥このコの証言が却下されると
もう打つ手がないんだけどな‥‥)
🔴🔴🔴🔴
証言４
【ズブヌレ】
「その‥‥ユーリのカオを見たってのは
たぶん‥‥カンちがいだった‥‥」
【ズブヌレ】
「ええと、着ている服から判断したんだ。
遠目で見て、ユーリがいつも着てる服だ‥‥って」
【ズブヌレ】
「だから、ユーリがハンニンだと思ったんだ。
‥‥それで、その‥‥」
【ズブヌレ】
「そのまま、ウラ門で通報した。
ユーリに聞かれないように、小声で‥‥」
🔴🔴🔴🔴🔴
【サイバンチョ】
「なるほど、服で判断したと。
服ならまぁ‥‥遠目でもわかりますな」
【アワテル】
「うまくさそい込みましたね、ムジュンを。
‥‥ただ‥‥追いつめすぎてもダメですよ」
【アワテル】
「もともと、あのレディの《証言》がなくても
判決は下せる状態だったんですから」
【ヒツグリ】
(‥‥カノジョの《証言》が却下されたら、
その時点で‥‥有罪判決がくだる)
【ヒツグリ】
(カノジョの《証言》をみとめても、
有罪判決がくだる‥‥)
【アワテル】
「あのレディから引き出せる情報はなにか？
それを考えながら、追いつめてください」
🔴🔴🔴🔴🔴
尋問４：
【ズブヌレ】　　　　　　　　　【●◯◯◯】
「その‥‥ユーリのカオを見たってのは
たぶん‥‥カンちがいだった‥‥」
【ヒツグリ】
「なぜ、そんなカンちがいをしたのですか！」
【ズブヌレ】
「うぐ！！　だって、カンちがいこそは
人間にのみユルされた高度な精神活動だし‥‥」
【ヒツグリ】
(メチャクチャなことを言いはじめたぞ)
「‥‥では、カオ以外のナニで判断をしたんですか？」
【ズブヌレ】
「モチロン、
人類文明が生み出した、高度な知的資産さ！」
【ヒツグリ】
(ようするに《服》か‥‥)
【ズブヌレ】　　　　　　　　　【◯●◯◯】
「ええと、着ている服から判断したんだ。
遠目で見て、ユーリがいつも着てる服だ‥‥って」
【ヒツグリ】
「服‥‥。たしかにそれなら、
遠目でも見えなくはないですね」
【ズブヌレ】
「そうだろ！！　アタシはかしこいから、
そのくらいのスイリはできるんだよ！！」
【ヒツグリ】
「でも、その結果
さっきは“カオを見た”とカンちがいしてましたが‥‥」
【ズブヌレ】
「そうだろ！！　アタシはかしこいから、
そのくらいのカンちがいもするんだよ！！」
【サイバンチョ】
「たしかに、カンちがいこそは
人間にのみユルされた、高度な精神活動ですからな」
【ヒツグリ】
(かしこさの象徴か‥‥？
カンちがい‥‥)
【ズブヌレ】　　　　　　　　　【◯◯●◯】
「だから、ユーリがハンニンだと思ったんだ。
‥‥それで、その‥‥」
【ヒツグリ】
「見まちがいをうたがったりは、
しなかったのでしょうか？」
【ズブヌレ】
「したさ！　だからこそ、
ちょっとボカした表現でツーホーしたんだ！」
【ヒツグリ】
(‥‥テキトーな保険のかけかただな‥‥)
【サイバンチョ】
「なるほど。たしかに“保険”こそは、
人類文明が生み出した、高度な精神防衛ですからな」
【ヒツグリ】
「もういいですよ、それは‥‥」
【ズブヌレ】　　　　　　　　　【◯◯◯●】
「そのまま、ウラ門で通報した。
ユーリに聞かれないように、小声で‥‥」
【ヒツグリ】
「つまり、遠目でユーリの服を見たあと、
その場で通報をした‥‥と？」
【ズブヌレ】
「だって、恐怖心は
人間にのみユルされた、高度な精神活動だし！」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥‥‥。‥‥はい？」
【ズブヌレ】
「オマエ、アタシが殺人を止めなかったコトを
攻めてるんだろ！！」
【ヒツグリ】
「いや、べつにそういうワケでは‥‥」
【ズブヌレ】
「いーや！　アタシの《証言》のあげ足をとって、
ボコボコにたたきのめすつもりなんだ！」
【アワテル】
「そのとおりですね」
【ズブヌレ】
「そして、アタシをウソつきに仕立てあげて
心証をワルくするつもりなんだ！」
【アワテル】
「それも、そのとおりですね」
【ヒツグリ】
「うう‥‥。　べつにイジメてるつもりは
ないんですけど‥‥」
【ズブヌレ】
「いじめるヤツはみんなそう言うんだよ！！
わかったか、コノヤロー！！」
【ヒツグリ】
(うう‥‥《尋問》だって
人間にのみユルされた、高度な精神活動なのに‥‥)
　　　　　　　→「学校」制服なので区別つきません
🔴🔴相談する
【アワテル】
「事件を“近くで見た”コトは否定できた。
‥‥つぎは、“ユーリくんを見た”ことの否定です」
【ヒツグリ】
「‥‥ユーリを服で判断した‥‥。
たしかに、服なら遠目でも“見えた”とは思う」
【アワテル】
「でも‥‥。“判断できた”かどうかは、
証拠品をみないと、わかりませんよ」
【ヒツグリ】
(なんとかして、あの《証言》を
くずしてやるんだ‥‥！)
🔴🔴🔴🔴🔴
【ヒツグリ】
「‥‥証人、あなたはたしか
目とアタマのよさがジマンなのでしたね」
【ズブヌレ】
「‥‥そうだったけど、
さっきのアレで自信なくした‥‥」
【ヒツグリ】
「‥‥とりあえず、そのジマンの目で
ユーリの着ている服を見ていただけますか」
【ズブヌレ】
「‥‥‥‥‥‥。
‥‥あ、あれ。それ、学校の‥‥」
【ヒツグリ】
「そして、そのジマンのアタマで
考えていただけますか」
【ヒツグリ】
「この制服のどこに、
ユーリを判別できる“個性”があるのか！」
【ズブヌレ】
「うぐっ！！！」
【ズブヌレ】
「いや待て！！　ヤッパリ制服じゃなくて
アイツのヘンな髪型を見て‥‥」
【ヒツグリ】
「いえ、うしろから見たらフツウですよ。
ヘンなのは、正面から見たときだけです！」
【ズブヌレ】
「ぐおおおッ！！」
【アワテル】
「ヘンなのはみとめるんですね‥‥」
【サイバンチョ】
「まあ、そもそも“髪型”は“服”とちがって
遠目ではそこまでわかりませんな」
【ズブヌレ】
「いわれてみればアタシ、ユーリを見たと
思いこんでただけな気がしてきた‥‥」
【ヒツグリ】
(ダレだ、こんなテキトーな証人を
法廷につれてきたのは‥‥)
【ヒツグリ】
(‥‥‥‥。
わたしだった‥‥)
【サイバンチョ】
「とにかく、これ以上《証言》を変えるなら
当法廷としても、考えがあります！」
【ズブヌレ】
「えええええッ！！
ナニも考えてないと思ってたのに！！」
【ヒツグリ】
(この法廷でナニも考えてないのは
キミだけなのでは‥‥)
【アワテル】
「‥‥ひつぐりさん、カノジョ‥‥。
どのくらい事件を見たんだと思いますか？」
【ヒツグリ】
「‥‥通報はしてるし、事件は見てるよね。
だけど、ユーリのカオは見てない‥‥」
【アワテル】
「次で、カノジョの“見たこと”にケリをつけ
カノジョの“役割”をハッキリさせたいですね‥‥」
【ヒツグリ】
(カノジョの“役”は、
本当に“発見者”だったのか‥‥？)
【サイバンチョ】
「テキトーな《証言》はユルされません。
証人、どうなのですか！」
【ズブヌレ】
「ううう‥‥！！　今度こそ、
マジメに証言します！！」
【ヒツグリ】
(今までの証言は
マジメじゃなかったのか‥‥？)
→校庭は更地、向こうから丸見え
→じゃあ校門から見たんだ！
→校庭はキョリが遠すぎます。しかも暗いからカオなんか見れない
　　　　　　　→「学校」制服なので区別つきません
🔴🔴🔴🔴🔴
尋問５
【ズブヌレ】
「その‥‥ユーリのすがたを見たってのは、
たぶん‥‥カンちがいだったんだ‥‥」
【ズブヌレ】
「ダレを見たかはわからないけど、
とにかく、ヒトが屋上から落ちてきたのは見た」
【ズブヌレ】
「そして、そいつを転落させたヒトが
屋上から降りてくるのも、見た」
【ズブヌレ】
「ユーリのすがたを見たと思い込んでたけど‥‥。
犯行のようすしか見てなかったんだ！」
🔴🔴🔴🔴🔴
【サイバンチョ】
「‥‥なんというか、
だいぶ“後退”した《証言》でしたな」
【ズブヌレ】
「アタシが後退したんじゃない！！
オマエらが勝手に進んだだけだ！！」
【サイバンチョ】
「進歩がないのは、後退とおなじコトです。
証人、今度こそマチガイないのですか？」
【ズブヌレ】
「ああ、マチガイないさ！！
この《証言》こそ、汗とナミダの結晶さ！！」
【ヒツグリ】
(‥‥塩分がすごそうだな‥‥)
【アワテル】
「“しょっぱい”証言になりそうですね‥‥」
【サイバンチョ】
「では弁護人。血もナミダもない
《尋問》をおねがいします」
🔴🔴🔴🔴🔴
【ズブヌレ】　　　　　　　　　【●◯◯◯】
「その‥‥ユーリのすがたを見たってのは、
たぶん‥‥カンちがいだったんだ‥‥」
【ヒツグリ】
「あの、またカンちがいですか‥‥？」
【ズブヌレ】
「カンちがいこそは、人間にのみユルされた
高度な精神活動だからな！！」
【ヒツグリ】
「何度カンちがいをすれば
気がすむんですか！！」
【ズブヌレ】
「なんだよ！！
まだ２回しかカンちがいしてないっての！」
【ヒツグリ】
「いやそんな《あと３回までまちがえていい！》
みたいに言われても‥‥」
【ミトウ】
「でも、弁護人。キミは１０回まで
まちがえるケンリをもらってるじゃないか」
ペナルティチカチカ
【サイバンチョ】
「そうですぞ！　それに比べれば、
２回のカンちがいくらい、どうってコトは‥‥」
【ヒツグリ】
「いやいやいや！！
裁判長がそれを言ってどうするんですか！！」
【ミトウ】
「じゃあ、なくすかい？　こんなペナルティ、
カンちがいをしないなら不要のハズだ」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥‥‥。‥‥カンちがいこそは‥‥。
人間にのみユルされた、高度な精神活動です！」
【サイバンチョ】
「では、弁護人がオチたところで、
被害者が落ちたハナシにもどりましょうか
【ヒツグリ】
(いいのか？　本当に‥‥)
チカチカ中止
【ズブヌレ】　　　　　　　　　【◯●◯◯】
「ダレを見たかはわからないけど、
とにかく、ヒトが屋上から落ちてきたのは見た」
【ヒツグリ】
「ちなみに、落ちてきたのがダレかは
カクニンしなかったんですか？」
【ズブヌレ】
「じゃあオマエ、逆に聞くけどさ‥‥。
ヒトが落ちてきて、カオをのぞきこむか？」
【サイバンチョ】
「ヒトのココロがない弁護人ならともかく、
フツウは、そんなことできません」
【ミトウ】
「マッタク‥‥。
親のカオをのぞきこんでみたいモノだね」
【ヒツグリ】
(“ひとでなし”みたいに言われてしまった‥‥)
【ズブヌレ】
「まあ、被害者を転落させたヤツなら、
できるのかもしれないけどな‥‥」
【ズブヌレ】　　　　　　　　　【◯◯●◯】
「そして、そいつを転落させたヒトが
屋上から降りてくるのも、見た」
【ヒツグリ】
「でも、その人物がユーリだったかは
断言できないんですよね！！」
【ズブヌレ】
「いや、その後ケーサツにつかまったのが
ユーリなんだから、断言できるんじゃないか？」
【ヒツグリ】
「！！」
【ミトウ】
「カメラだけで、すでに被告人の犯行は
立証されている。‥‥それを忘れないコトだね」
【ズブヌレ】
「え、なんだよそれ！！
アタシってイラナイのか！？」
【ヒツグリ】
(ついに気づいてしまったな‥‥。
カナシイ真実に‥‥)
【サイバンチョ】
「必要だったかどうかは、
あなた自身のコトバで決まるのです」
【サイバンチョ】
「どうか、自身のコトバに責任をもって。
自覚ある《証言》をおねがいますぞ」
【ズブヌレ】
「うおおおお！！　アタシの価値は、
アタシ自身が決める！！」
【ズブヌレ】
「見てろよ！！　サイバン史上にのこる
ショーゲキ的な《証言》で、めいよバンカイを！！」
【アワテル】
「このままだと、一生返上できない“汚名”が
手にはいりそうですね‥‥」
【ズブヌレ】
「アタシはもう、ショージキに言うからな！
いいか！？　アタシは‥‥」
【ズブヌレ】　　　　　　　　　【◯◯◯●】
「ユーリのすがたを見たと思い込んでたけど‥‥。
犯行のようすしか見てなかったんだ！」
【ヒツグリ】
「あの、ムネをはって言うコトでも
ないと思いますけど‥‥」
【ズブヌレ】
「もう自分をいつわるのはヤメたんだ！
ありのまま生きるんだ！！」
【サイバンチョ】
「それで、ケッキョク
事件は見てなかったのですか？」
【ズブヌレ】
「あ、それはええと‥‥。
ゼンブ見てたけど‥‥。ハンニンのカオ以外‥‥」
【ヒツグリ】
(まだ、“更正”し足りないようだな‥‥。
証拠品を叩きつけるしかないか‥‥)
🔴🔴🔴
【アワテル】
「そろそろ、あのレディをどうするか
考えないといけませんね」
【ヒツグリ】
「え。丸焼きにでもするの？」
【アワテル】
「‥‥カノジョの証言を焼きつくしたら、
あとにのこるのは、《有罪判決》だけですよ」
【ヒツグリ】
(‥‥目撃証言がなくても、
ユーリの犯行は立証されている‥‥か)
【アワテル】
「カノジョから引き出せるモノはなにか？
それを考えて、煮るなり焼くなりしましょうか」
🔴🔴🔴🔴🔴
【ヒツグリ】
「‥‥証人。あなたが《尋問》で
ウソを指摘されるのは、これで３度目ですね」
【ズブヌレ】
「アタシ、もうウソつけないよ！！
“三度目の正直”って言うし！」
【ヒツグリ】
「でも、“二度あることは三度ある”とも
いいますよ」
【サイバンチョ】
「‥‥《通報記録》ですか。
どれどれ‥‥“クラスメイトがヒトを殺した！”と」
【ヒツグリ】
「なぜ‥‥被告人のスガタを見てなかったのに、
“クラスメイト”が殺したとわかったのですか？」
【ズブヌレ】
「あっ！！　ああ‥‥」
【ヒツグリ】
「まるで、ダレが現場にいるのか
知っていたみたいですね！！」
【サイバンチョ】
「もう、いいでしょう。
この証人のいうことはメチャクチャです」
【ミトウ】
「証人が見るべきモノは、いずれも
カメラがそのヒトミにおさめている」
【ミトウ】
「証人がいくら冷や汗にまみれようと、
少年のツミは、流れ落ちたりしないのさ」
【ヒツグリ】
「待ってください！！
この証人には、まだ聞くべきことがあります！」
【サイバンチョ】
「‥‥あなた自身が立証したではないですか。
この目撃者は、信用できないと」
【ヒツグリ】
「‥‥そのとおり。カノジョは
“目撃者としては”信用できません」
【ミトウ】
「まさか、“カノジョは目撃者ではない”とでも
言うつもりかい？」
【ヒツグリ】
「‥‥もちろん、そのとおりです」
【サイバンチョ】
「静粛に！　静粛に！
‥‥さすがに、《目撃者でない》は言いすぎでしょう」
【ヒツグリ】
「‥‥屋上にいたのが“クラスメイト”だった。
この情報は、“見る”だけでは手に入らなかった」
【アワテル】
「暗くて、近くに障害物もない
あの現場では‥‥ね」
ループ
【ミトウ】
「つまり、“カノジョは最初からハンニンを
知っていた”。‥‥そう言いたいのかな？」
【ヒツグリ】
「ハンニンではありません。
“被告人”がダレかを、最初から知っていたのです」
【ミトウ】
「そこまで言うなら、見せてもらおうか」
【ヒツグリ】
「！！」
【ミトウ】
「なぜ証人は、屋上にいるのが
“クラスメイト”だと知ることができたのか！」
【ミトウ】
「なぜ証人は、屋上にいるのが
“クラスメイト”だと、知ることができたのか！」
🔴🔴🔴🔴🔴
【ヒツグリ】
「この証拠品は、屋上にいる
クラスメイトを察知できる、スグレモノです！」
【ミトウ】
「いくらなのかな？」
【ヒツグリ】
「‥‥え」
【ミトウ】
「キミのそのくだらない証拠品。
いくらで売っているのかと聞いている」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥‥‥‥‥。
ペナルティ１回ぶんで、おねがいします」
【ミトウ】
「‥‥‥‥‥‥フッ‥‥。
安い証拠品だ‥‥」
バーン
【サイバンチョ】
「弁護人！　アブラを売ってるバアイじゃ
ありませんぞ！」
【ヒツグリ】
「‥‥アブラを売ったのではありません。
タマシイを売ったのです！」
【アワテル】
「よけいダメじゃないですか！！」
🔴🔴🔴🔴🔴
【ヒツグリ】
「コタエはシンプルです。
“自分が呼び出したから”‥‥」
【ミトウ】
「そのメールの送り手は不明だ！
なんの証拠にもなりはしない！！」
【ヒツグリ】
「ここでヒトツ、奇妙なコトに。
被告人もまた、デンワで呼び出されてるのです」
【ミトウ】
「何度も言わせないでほしいな。
送り手もわからないメールに、なんのイミが」
【ヒツグリ】
「メールではありません。デンワです」
【ミトウ】
「！！」
【サイバンチョ】
「電子メールとデンワ‥‥。
いったいナニがちがうと言うのですか！」
【ヒツグリ】
「メールアドレスは、いくらでも作れます。
そしてどんなパソコンからでも、送れます」
【ヒツグリ】
「しかし、デンワ番号は自由に作れません。
発信すれば、かならず“アシ”がつくのです」
【サイバンチョ】
「さっきから“ぱそこん”とか、“メール”とか。
むずかしくて、ワケがわかりません！」
【ヒツグリ】
「では、わかりやすく言いましょうか。
証人、あなたのデンワを見せてください！！」
【ズブヌレ】
「！！！！！！！！！！
‥‥‥‥‥‥。」
【ヒツグリ】
「‥‥調べる手段はいくらでもある。
そのチンモクは、“肯定”ととりますよ！」
【ズブヌレ】
「‥‥‥‥‥‥う、うう‥‥」
【ズブヌレ】
「ウワァァァァァァァァァァン！！！！！」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥ありましたね‥‥ユーリの番号」
【サイバンチョ】
「ええと、事件の日の“発信リレキ”に
被告人のデンワ番号が‥‥？」
【ヒツグリ】
「午前０時。日付をまたいだころに、
ユーリにデンワをしているのです」
【アワテル】
「日付をまたいだ直後‥‥。
つまり、パスワードが変わった直後です」
【ミトウ】
「！」
【ヒツグリ】
「《目撃者》の証言はこれで終わりです。
今から、犯人の尋問がはじまりますからね！」
【ミトウ】
「苦しまぎれのコクハツ。
じつに美しくない“散りギワ”だ」
【ヒツグリ】
「最初に言ったハズですよ。この尋問の結末は
“美談”にはならないかもしれない‥‥と」
【サイバンチョ】
「しかし検事。いくら美しくなくとも、
デンワしたジジツは残ってるのですぞ」
【ミトウ】
「だが、デンワの内容はのこっていない」
【ヒツグリ】
「‥‥内容‥‥？　デンワ会社にきけば、
そのくらい‥‥」
【ミトウ】
「のこってるワケないだろう。
どれだけのデータ量になると思ってるんだ」
【ヒツグリ】
「‥‥え、うそ‥‥」
【ミトウ】
「つまり、そのデンワは証拠にならない。
話した内容は、永遠にヤミの中なのだから！」
【ヒツグリ】
「うわああああああッ！！」
【サイバンチョ】
「たしかに、デンワをかけただけで
うたがわれたら、恋愛もできません！」
【ヒツグリ】
(裁判長、遠キョリ恋愛派なんだ‥‥)
【ミトウ】
「ヤミに消えた会話は、なんの“光”も
もたらさない。さあ、《判決》を！！」
【アワテル】
「しかし、“クラスメイト”の存在は、
ただの目撃者にはわからない！！」
【ミトウ】
「そんなもの、いくらでもセツメイできる！！
たとえば‥‥」
【アワテル】
「その“セツメイ”は、証人にしてもらいます。
あなたの出る幕ではありませんよ、検事」
【ミトウ】
「！！　‥‥いいだろう。
どちらにせよ、同じコトだ」
【ミトウ】
「屋上には被告人しかいなかった。
それをヒテイできない限り、判決は動かない！」
【サイバンチョ】
「このカメラに、被告人のスガタしかない以上
証人が《ハンニン》というのは‥‥あり得ません」
【ズブヌレ】
「う、ううう‥‥。
アタシ、うたがわれてるのか‥‥？」
【サイバンチョ】
「“クラスメイト”の件をあなたがセツメイできれば
本法廷は‥‥それで結審します」
【ヒツグリ】
(終わり‥‥。この《尋問》をのがしたら、
ユーリの人生が、終わる‥‥！)
【アワテル】
「‥‥《目撃者》としてのレディの価値は、
すでに地の底に落ちました」
【アワテル】
「だが依然として、ユーリくんしか
犯人がいないという主張は‥‥くずせていない‥‥」
【ヒツグリ】
「いくら考えても、わからないよ！！
どうやれば、あの監視カメラを‥‥」
【アワテル】
「‥‥ムジュンをさがすしかないでしょうね。
レディの《証言》のムジュンを‥‥」
【ヒツグリ】
「それはもう散々つきつけたよ！！
あのコの《目撃証言》からは、もう何も‥‥」
【アワテル】
「カノジョが“見たこと”は、なんの価値もない。
‥‥“やったこと”に注目してください」
【ヒツグリ】
「‥‥やったこと‥‥？」
【アワテル】
「《通報》。レディの証言で、
これだけは‥‥証拠品のウラづけが取れている」
【アワテル】
「レディの“主観”が入った《証言》はいらない。
“やったこと”を、テッテイ的に深堀りしましょう」
【ヒツグリ】
(被害者が屋上から転落して、
つぎにあのコが通報、ケーサツが来た)
【ヒツグリ】
(この中に、《有罪判決》をひっくり返す
最後の手がかりを見つけないと‥‥！)
【サイバンチョ】
「‥‥これが最後の《証言》です。
証人、セツメイはできますかな？」
【ズブヌレ】
「わ、わかったよ‥‥。
屋上にいるのが、ダレか知ってた理由だろ‥‥？」
【サイバンチョ】
「‥‥この《証言》にモンダイがなければ、
本法廷は結審します。それを忘れないように」
🔴🔴🔴🔴🔴
尋問６
【ズブヌレ】
「とにかく、犯行を見たのはホントなんだ！
だれかが、ダレかを屋上から転落させたんだ！」
【ズブヌレ】
「通報はその‥‥。クラスメイトが
殺したってのは、ただの思い込みだ」
【ズブヌレ】
「きのうユーリと被害者はケンカしたって。
ああ、クラスメイト同士で殺しあったんだなと」
【ズブヌレ】
「被害者が屋上から落ちたのを見て、
いそいでケーサツに通報した」
【ズブヌレ】
「通報してからケーサツが来るまで、
５分もたたなかったよ‥‥」
🔴🔴🔴🔴🔴
【サイバンチョ】
「前日のケンカを知っていたから、
屋上にいる人物を、早ガテンしてしまった‥‥」
【ミトウ】
「脳みそは気まぐれにマボロシを見せ、
いたずらに真実をつきつける。そんなものさ」
【ヒツグリ】
「少なくとも、わたしの《尋問》は
いたずらでは済みませんよ」
【ミトウ】
「‥‥《遊びゴコロ》のない弁護士は、
いたずらな真実にも、気づけないさ」
【サイバンチョ】
「これ以上気まぐれに証言されたら困ります。
弁護人、サイゴの《尋問》を」
【ズブヌレ】
「さ、サイゴ‥‥」
【ヒツグリ】
「‥‥それでは‥‥ナツキちゃん。
今からわたしと、遊びましょうか‥‥」
🔴🔴🔴🔴🔴
尋問６
【ズブヌレ】　　　　　　　　　【●◯◯◯◯】
「とにかく、犯行を見たのはホントなんだよ！
だれかが、ダレかを屋上から転落させたんだ！」
【ヒツグリ】
「ダレかが、ダレかを‥‥。
だいぶ“解像度”がぼやけましたね‥‥」
【ズブヌレ】
「アタシはいつもそうなんだ。
ボヤけた人生に、ボヤけた生きる意味‥‥」
【サイバンチョ】
「ワタシも最近、視界がボヤけますな。
メガネが手放せないのですよ」
【ミトウ】
「眼球の乱れは思考の乱れ。
目の見えない者に、真実は見えないのさ」
【ヒツグリ】
(うう‥‥ものスゴいイキオイで
話題がボヤけていったな‥‥)
【ズブヌレ】
「ボヤけたアタシの目玉じゃ、
真実なんてつかめないんだ‥‥」
【ヒツグリ】
(目の焦点までボヤけてきてるぞ‥‥。
キケンだな、これは‥‥)
【ズブヌレ】　　　　　　　　　【◯●◯◯◯】
「通報はその‥‥。クラスメイトが
殺したってのは、ただの思い込みだ」
【ヒツグリ】
「モンダイは、《なぜクラスメイトだと
思い込んだのか？》なのですが‥‥」
【ズブヌレ】
「なんだよオマエ、アタシ自身には
モンダイがないとでも言うつもりか！！」
【ヒツグリ】
「え」
【ズブヌレ】
「アタシの存在がモンダイなんだ！　それに
比べれば、ほかの問題なんてササイなものさ！」
【ヒツグリ】
「いやいやいや！！　ここは法廷ですから！
《尋問》をザンゲの場にしないで下さい！」
【ズブヌレ】
「そうだよな‥‥。アタシの人生なんて、
大したモンダイじゃないよな‥‥」
【ヒツグリ】
(メンドウなことに、
なにを言っても、勝手にキズついてしまう‥‥)
【アワテル】
「キズつくのはホラ、人間にのみユルされた
高度な精神活動ですから‥‥」
【ヒツグリ】
「できれば、もう一段高度な
精神活動をキタイしたいんだけど‥‥」
【ズブヌレ】
「アタシのテイドの低い精神活動の内容なんて、
言ってもなんのイミもないと思うけどな‥‥」
【ズブヌレ】　　　　　　　　　【◯◯●◯◯】
「きのうユーリと被害者はケンカしたって。
クラスメイト同士で殺しあったんだなと」
【ヒツグリ】
「屋上でのケンカを、
なぜあなたが知っているのですか？」
【ズブヌレ】
「知ってちゃワルいかよ！！
楽しそうなコトしやがって！」
【ヒツグリ】
「‥‥え」
【ズブヌレ】
「いっそアタシもユーリになぐられて
半日くらいキゼツしたかった！！」
【ヒツグリ】
「‥‥あの、キケンなシュミに
目覚めないでください‥‥」
【ズブヌレ】
「シュミなんかじゃない！！
アタシはホンキなんだ！！」
【ヒツグリ】
「‥‥え」
【ズブヌレ】
「このテイドのひくいアタマもいっそ、
この事件でたたき割られればよかったんだ！」
【ヒツグリ】
「‥‥これ以上このジケンを、
難事件にしないでもらえますか‥‥」
【ズブヌレ】
「ハッ！　ジッサイは難事件にするどころか、
解決にみちびいてるさ！　事件の時なんか‥‥」
【ズブヌレ】　　　　　　　　　【◯◯◯●◯】
「被害者が屋上から落ちたのを見て、
いそいでケーサツに通報した」
【ヒツグリ】
「‥‥いそいで、ケーサツに‥‥？」
【ズブヌレ】
「エラいだろ！！　ツーホーだなんて
高度な知的活動を、アタシがやったんだ！！」
【サイバンチョ】
「はいはい。エラいですな」
【ヒツグリ】
(裁判長、苦笑いしてるぞ‥‥)
「‥‥それで証人、時間はどのくらいでしたか？」
【ズブヌレ】
「朝の５時かな！」
【ヒツグリ】
「いやあの、聞きたいのは
《時刻》じゃなくて、《経過時間》です‥‥」
【ズブヌレ】
「ハッ！　通報からケーサツの到着までに、
アフリカでは５分の時がすぎたハズさ！」
【ヒツグリ】
(じゃあ、日本でも
５分の時がすぎたんだろうな‥‥)
【ヒツグリ】
(‥‥被害妄想も、人間にのみユルされた、
高度な精神活動だしな‥‥)
【ズブヌレ】　　　　　　　　　【◯◯◯◯●】
「通報してからケーサツが来るまで、
５分もたたなかったよ」
【ヒツグリ】
「５分‥‥？　かなりはやい到着でしたね」
【ズブヌレ】
「このクニのケーサツは優秀だからな。
アタシも安心して、ゲンバを任せたってワケよ」
【ヒツグリ】
(ナニサマなんだ、このコ‥‥)
【アワテル】
「ケーサツの到着が、通報から５分。
検事、この情報はマチガイないですか？」
【ミトウ】
「‥‥“急がば飛べ！”‥‥。
それが、今月の刑事課の“合いコトバ”さ」
【アワテル】
「つまり、５分でついたワケですね。
ひつぐりさんはダメですよ、飛んじゃ」
【ヒツグリ】
(わたしのことを“トリ”だとでも
思ってるのか‥‥？)
【アワテル】
「すくなくとも、“トリ頭”だとは思ってますよ。
ダイジな“忠告”をわすれてるようなので」
【ヒツグリ】
「“忠告”‥‥。あのコの“やったこと”に
目を向けろっていう、アレ？」
【アワテル】
「‥‥《通報》、そして《経過時間》。
このふたつの《証言》は、ウラづけがある」
【アワテル】
「今までのような“言いのがれ”がきかない、
決定的なムジュンを‥‥つきつける必要がありますぜ」
【ヒツグリ】
(考えるんだ‥‥。水冬検事の主張に
風穴をあける、逆転の一手を！)
🔴🔴
【アワテル】
「カノジョが“見たこと”は、なんの価値もない。
‥‥“やったこと”に注目してください」
【ヒツグリ】
「被害者が屋上から転落して、
つぎにあのコが通報、ケーサツが来た」
【アワテル】
「カノジョの“主観”が入る余地のある
《証言》は、すべてムシしてかまわない」
【アワテル】
「証拠品でウラづけられた《証言》のなかに、
ユーリくんを救う“道”がかくれてるハズです」
【ヒツグリ】
(《監視カメラ》、《転落》、《通報》。
検事の主張を“転落”させるのは、なんだ‥‥？)
🔴🔴
【ヒツグリ】
「‥‥事件を見てすぐに通報。
５分後にケーサツが来た。‥‥マチガイないですか？」
【ズブヌレ】
「これ以上まちがえてたまるか！！
アタシの証言に、もうアナはないハズだ！」
【ヒツグリ】
「ところが、大きなアナが開いてるのです。
それも、深さ１メートルちょっとの」
【ズブヌレ】
「おほぉッ！！」
【サイバンチョ】
「証人！！　またカンちがいですか！
５分でそんな穴、掘れるワケないでしょう！」
【ズブヌレ】
「いやいやいや！！
事件を見てから、すぐ通報したワケじゃないし！」
【ヒツグリ】
「‥‥被害者の転落を見て、数分間。
“方針状態”にあったというコトですか」
【ズブヌレ】
「そう！！　５分くらい放心してて、
ハッと我に帰って‥‥急いで通報したんだ！」
【ミトウ】
「５分放心しようと、到着に５分かかろうと、
《空白の時間》にはなんのイミもない」
【ミトウ】
「このカメラがある限り、
ゲンバに行けたのは被告人しかいないのさ！」
【ヒツグリ】
「だとしても、５分や１０分で
この穴を掘ることは、できません！！」
【ミトウ】
「！！」
【アワテル】
「‥‥見つけたっスね。
こればっかりは‥‥“ウソ”ではありえない」
【アワテル】
「なぜケーサツが到着するまでに、
遺体を埋める作業は、完成していたのか‥‥？」
【サイバンチョ】
「‥‥おかしいですな‥‥。検事、
　ケーサツの"到着時刻"は、たしか‥‥」
【ミトウ】
「《通報》があってから、"５分"。
《死亡推定時刻》から、最大でも４５分‥‥」
【ミトウ】
「被害者を転落させて、穴を掘りはじめたのでは‥‥
とても、ケーサツの到着までに間に合わない‥‥」
【ヒツグリ】
(‥‥‥‥。‥‥どういう‥‥コトなんだ‥‥？
カノジョは、マチガイなく通報してるワケだし‥‥)
【サイバンチョ】
「弁護人、ムジュンを指摘したのはあなたです。
なにか、考えはありますかな‥‥？」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥遺体を１人であの深さに埋めるには、
土を掘るだけで‥‥どのくらいかかるんですか？」
【ミトウ】
「土質によるが、あの校庭なら
およそ２時間はかかるだろう‥‥」
【ヒツグリ】
(‥‥２時間かかるということは‥‥。
あの土が掘られたのは‥‥いつなんだ？)
時刻表指摘
🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
【ヒツグリ】
「事件が起こったアトに、
チカラづくで穴を掘りきったのでしょう」
【ミトウ】
「おやおや、ブルドーザーを使ったとでも
言い出すつもりかな？」
【サイバンチョ】
「あるいは、“１０人態勢”で
アナをほったとか‥‥」
【ズブヌレ】
「そんな大人数で掘っても、
せまいから、ジャマになるだけだろ‥‥」
【ヒツグリ】
(“３人態勢”で墓穴をほられてしまった‥‥)
【アワテル】
「１０分であの穴を掘るには、大がかりな
道具や人手がいる。つまり‥‥」
【ヒツグリ】
(それらしきコンセキが必ずのこる。
‥‥逆にいうと、コンセキがないならば‥‥)
🔴🔴🔴🔴🔴
【ヒツグリ】
「‥‥フツーに考えれば、土を掘ったのは
事件の起こるかなり"前"‥‥でしょうか？」
【ミトウ】
「‥‥"前"‥‥？」
【ヒツグリ】
「それこそ、事件の２時間前から
　掘りはじめないと、あの"穴"は完成しない」
【サイバンチョ】
「なら、呼び出された被害者が
校舎の前にやって来た、その時には‥‥」
【ヒツグリ】
「すでに、《穴》は
掘られていたことになります」
【ヒツグリ】
(‥‥‥‥あ、あああああああああ‥‥ッ！！)
【ヒツグリ】
(‥‥まさか‥‥まさか‥‥！！！)
🎵トリロジクライ
【アワテル】
「ひつぐりさん‥‥？」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥わかったんだ‥‥。
犯人の‥‥信じられないような“ワナ”が‥‥」
【サイバンチョ】
「弁護人！！　なにか気づいたのですか！！」
【ヒツグリ】
「‥‥むしろ、こんなカンタンな“ワナ”に
気づかなかったほうが、どうかしていた‥‥」
【ミトウ】
「‥‥‥‥いちおう‥‥聞いておこうか。
その犯人の“ワナ”とは‥‥いったい、なんだ！」
【ミトウ】
「‥‥‥‥いちおう‥‥聞いておこうか。
その犯人の“ワナ”とは‥‥いったい、なんだ！」
🔴🔴🔴🔴🔴🔴
【ヒツグリ】
「むしろ、こんなカンタンなワナに
気づかなかったほうが、どうかしていた！」
【サイバンチョ】
「だから、その“ワナ”の内容を
おしえてください！！」
【ヒツグリ】
「‥‥。‥‥その、こんなカンタンなワナに
気づかないほうが、どうかしている！」
【ミトウ】
「‥‥ようするに、弁護人は
どうかしてしまった‥‥そういうコトだね？」
【サイバンチョ】
「カワイソウに‥‥。ちょっと、
コレで目を覚まさせてみましょうか」
ペナルティ
【アワテル】
「ひつぐりさん‥‥？」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥わかったんだ‥‥。
犯人の‥‥信じられないような“ワナ”が‥‥」
【アワテル】
「いやあの、ナニゴトもなかったように
“再放送”をはじめないでください‥‥」
【ヒツグリ】
(‥‥バレたか‥‥)
🔴🔴🔴🔴🔴🔴BGM継続
【サイバンチョ】
「‥‥遺体を‥‥埋めた《穴》‥‥？」
【ヒツグリ】
「被害者は《屋上》から
　落ちたんじゃなかったんですよ」
【ミトウ】
「‥‥‥‥な、なんだと‥‥？」
【ヒツグリ】
「わたしたちは、この大きな《落とし穴》に
ずっと‥‥ハメられていたのです！」
【ミトウ】
「‥‥ま、待て‥‥ッ！！！
なんだ、その《落とし穴》というのは！！」
【ヒツグリ】
「カンタンなコトです。犯人は屋上に行かず、
《落とし穴》で被害者を転落させたのです！」
【ミトウ】
「ば、バカな！！
そんな穴に、都合よく落ちるハズが‥‥」
【ヒツグリ】
「‥‥《落とし穴》は、校舎の入口にありました。
学校に入るとき、必ず通る位置にね！」
【ミトウ】
「しかし、あんな大きな穴があいてたら
被害者が気づかないワケがない！」
【ヒツグリ】
「だからこそ、“朝の５時”なんですよ！
暗くて、足元の《穴》が見えなかった！」
【ミトウ】
「そもそも、被害者が
校舎に入ろうとするとは限らない！」
【ヒツグリ】
「そのとおりです」
【ミトウ】
「！！！」
【ヒツグリ】
「ハンニンは、被害者がカクジツに
校舎に入ろうとするよう、仕向けたのです！」
【ヒツグリ】
「ハンニンは、被害者がカクジツに
校舎に入ろうとするよう、仕向けたのです！」
🔴🔴🔴🔴🔴
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
たぶん、コレだと思います！！」
【サイバンチョ】
「なんですかな？　いまの“間”は‥‥」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥‥‥‥‥。
ちょっと、読み込みが遅延してまして‥‥」
【サイバンチョ】
「カワイソウに‥‥。ちょっと、
コレで叩いて、ようすを見てみましょうか‥‥」
【ヒツグリ】
(わたしはコワれかけのテレビじゃないぞ‥‥)
【サイバンチョ】
「弁護人ならともかく、暗い早朝なら、
穴に落ちる可能性はあったかと思われますが‥‥」
🔴🔴🔴🔴🔴
【ミトウ】
「屋上への呼び出し‥‥！！」
【ヒツグリ】
「屋上にいくには、ウラ口を通らないといけない。
ウラ口‥‥すなわち、《落とし穴》の上をね！」
【ミトウ】
「まだだ！！　‥‥仮にふたりが
犯人の《呼び出し》を受けていたとしよう」
【ミトウ】
「だがもし、《落とし穴》があったなら
被告人も、そこに落ちてなければオカシイ！」
【ヒツグリ】
「つまり、被害者が穴に落ちたあと、
被告人が来るまでに、穴を埋めたのです」
🔴🔴
【サイバンチョ】
「でも、被害者がメールで呼び出されたのは
“５時１５分前”‥‥。５時より後ですぞ！」
【ヒツグリ】
「“５時１５分より前”ではありません。
“５時の、１５分前”です」
【サイバンチョ】
「あっ！！　被告人がカメラにうつった
時刻より、１５分も前ではないですか！」
🔴🔴
【ヒツグリ】
「被害者が、４時４５分に《落とし穴》に落ちる。
約１０分で穴を埋め、５時に被告人をとおらせた」
【ヒツグリ】
「穴を掘るには、足りない時間ですが。
穴を“埋める”には、じゅうぶんな時間です」
【ミトウ】
「いずれにせよ、
《落とし穴》ではこの事件は起こせない！！」
【ヒツグリ】
「どういうコトですか！！
わたしの主張にまだ、なにかムジュンが‥‥」
【ミトウ】
「‥‥“４～６メートルの高さからの転落”」
【ヒツグリ】
「！！！！」
【ミトウ】
「被害者を転落死させるには、
キミの主張は、浅すぎるのさ！！」
【ヒツグリ】
「そんな“深さ”なんて、
大したモンダイじゃない！！」
【サイバンチョ】
「いやいやいや！　そもそも死因とちがうなら、
《落とし穴》は成立しないではないですか！！」
【ヒツグリ】
(ぐっ‥‥！　イキオイではごまかせないか‥‥！)
【ミトウ】
「とにかく、《落とし穴》では深さが足りない以上
屋上からの転落以外に、殺す方法はないのさ！」
【ヒツグリ】
「うわあああああああああッ！！」
【アワテル】
「この穴は、《落とし穴》にしては浅すぎますが。
遺体を埋めるには、深すぎるハズです」
【ミトウ】
「‥‥ナニが言いたい？」
【アワテル】
「逆に聞きますが。殺害前に入口に穴を掘ったら、
被告人が学校に入ることも、できませんよね？」
【ヒツグリ】
(あ！！　そうか‥‥！！)
【ヒツグリ】
「お聞きのとおりです、水冬検事。
殺害からタイホまで、最大４５分しかない以上‥‥」
【ヒツグリ】
「被害者を転落させる“前”に穴を掘って、
転落させた“後”に、遺体を埋めないといけない」
【ヒツグリ】
「その間に屋上にいき、被害者を転落させるには
入口の《落とし穴》を越えなければならない！」
【ミトウ】
「ぐ‥‥‥‥‥‥！！」
【ヒツグリ】
「少なくとも、現時点で判決はくだせない！
屋上に行くのは、不可能だったのですから！」
【ミトウ】
「ぐ、ぐ、‥‥‥‥」
【ミトウ】
「ぐあああああああああああああああああ
あああああああああああああああああッ！！」
【サイバンチョ】
「‥‥‥‥‥‥。　こうなってしまっては、
審理を明日に持ち越すほか、ありませんな」
【ヒツグリ】
「！！」(やった‥‥！　なんとか‥‥
ユーリのイノチをつないだぞ！)
【アワテル】
「ただ、“延命”はできましたが。
‥‥まだ、《落とし穴》の主張にはムジュンがある」
【サイバンチョ】
「検察側、弁護側。どちらの主張にも
ムジュンがあるのが現状です」
【サイバンチョ】
「双方とも、そのムジュンのセツメイを、
明日の法廷でキタイします」
【ヒツグリ】
「モチロンです。《落とし穴》の深いナゾに、
かならずや、コタエを出してみせます」
【ミトウ】
「‥‥《落とし穴》など存在しない‥‥。
ハマっているのは、そこの弁護人だけなのです」
【サイバンチョ】
「そして‥‥証人」
【ズブヌレ】
「！！！！」
【サイバンチョ】
「あなたのそのビショビショのフードは、
けっして‥‥“ぬれぎぬ”ではなかったようです」
【ズブヌレ】
「‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥」
【サイバンチョ】
「証人！！　聞こえてますかな！！」
【ズブヌレ】
「い、言わない！！！！
ゼッタイに‥‥なにも‥‥」
【アワテル】
「ようすがオカシイですね。
‥‥いや、あのレディはいつもオカシイですけど」
【ヒツグリ】
(ひどいな‥‥)
【ヒツグリ】
(でも、本当にカノジョがハンニンなのか‥‥？
それにしては、目撃証言がザツすぎた‥‥)
【ヒツグリ】
(ハンニンなら、真相を知ってるハズだから。
もう少しうまく《証言》できるハズなのに‥‥)
【ヒツグリ】
(カノジョにもまだ、
深い“ナゾ”がかくされている‥‥)
【サイバンチョ】
「よろしい！　それでは、
本日の審理はここで中断したいと思います」