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OR逆転裁判 第二話「難航逆転不落」2日目探偵前編


【???】
「‥‥さすがね、ふたりとも。
あたしが見込んだだけはあるわ」
【ヒツグリ】
「‥‥所長! 今日の法廷、見てたんですか?」
【ショチョウ】
「ええ。最高にスリリングで、
これ以上ないくらいの恐怖感だったわ!」
【ヒツグリ】
(‥‥ホメられてる気がしない‥‥)
「今日の法廷」
「これからの方針」
(つきつける)の重要性をセツメイ(ここからは人間関係も必要)
「今日の法廷」
【ショチョウ】
「手に汗にぎる極限のスリル!!
息もつかせぬ極上のサスペンス!」
【ショチョウ】
「‥‥ヒトコトで言うと、そんな感じだったわ」
【アワテル】
「とても裁判の感想には聞こえませんね‥‥」
【ヒツグリ】
「‥‥その、最後に“可能性”をしめした、
《落とし穴》の件ですけど‥‥」
【ショチョウ】
「ええ、ひつぐりちゃんが証人を追いつめる
最後のシーン、サイコーだったわ!」
【ヒツグリ】
(カンゼンに映画観賞のキブンだな‥‥)
【ショチョウ】
「まあ、冗談はともかく。
‥‥“深さ”のモンダイがヤッカイよね」
【アワテル】
「所長はどう見ますか?
‥‥《落とし穴》か、《屋上からの転落》か‥‥」
【ショチョウ】
「‥‥正直、《屋上からの転落》のほうが
セツメイはたやすいと思うわ」
【ショチョウ】
「入口の《落とし穴》も、穴の底に下りてから
はい上がれば‥‥通れなくはないし」
【アワテル】
「たしかに“不可能”ではない。ただ、
“不自然”ではありますよね。それも致命的に‥‥」
【ショチョウ】
「そう。《屋上からの転落》だと、
事前にわざわざ、通り道にアナを掘ったことになる」
【ショチョウ】
「安全にアナを通れる方法でも示さない限り、
検察の主張のアナは、ふさがらないわ」
【アワテル】
「‥‥まあ‥‥向こうは“不自然”で済んでますけど。
こっちの主張は“不可能”ですからね‥‥」
【ショチョウ】
「“不可能”よりは、“不自然”のほうが
立証はたやすい。‥‥そんなトコロね」
【ヒツグリ】
「‥‥ピンチは切り抜けられてない。
明日の法廷も、キビシイ戦いになりそうですね」
【ショチョウ】
「ピンチだからこそ、笑う。
追いつめられた時こそ、楽しむ」
【ショチョウ】
「“底”を見せちゃダメよ。ピンチは
ウラを返せば‥‥“勝負どころ”なのだから」
【ヒツグリ】
(‥‥ウラ返さないと、ピンチをチャンスには
できないよなぁ‥‥)
──《検察の主張》のデータを
  証拠品ファイルに記録した──
「これからの調査」
【アワテル】
「これからの調査ですけど‥‥。
“調べる”だけだと、足りないかも知れませんね」
【ヒツグリ】
「“調べる”以外の方法が必要‥‥?」
【アワテル】
「そう。きのうは事件のガイヨウを追うので
せいいっぱいでしたが‥‥今日はちがう」
【ショチョウ】
「そうね。“話す”だけでは得られない
意外な関係性を、引き出す必要がある」
【ヒツグリ】
「“関係性”‥‥。調査でも、
証拠品を“つきつける”ワケですか?」
【ショチョウ】
「あるいは、人物をつきつけてもいい。
‥‥受け身では得られない情報が、今は必要よ」
【アワテル】
「おもわずヒト前で“異議ありィ!”とか
叫ばないでくださいね‥‥」
【ヒツグリ】
(なんのシンパイをされてるんだ‥‥)
@1ウラ門(ミレイ)
【ヒツグリ】
(‥‥あれ、このコはたしか‥‥)
「あの、スミマセン!」
【チマミレ】
「あら、弁護士さん。
‥‥センパイのお姉さまですね、はじめまして」
【ヒツグリ】
「ええと、あなたはたしか
“マドンナ”の‥‥」
【チマミレ】
「この千間 美玲(みま みれい)。
弟さんのムジツをムネいっぱいに‥‥」
「“マドンナ”」→成績優秀 学校中から告白→ケンカ困る
【チマミレ】
「“マドンナ”なんて、とんでもない。
ただの中学生で、ただの女子ですよ」
【ヒツグリ】
(少なくとも、“中学生”には見えない‥‥)
【アワテル】
「“ただの女子”にも見えませんね。
‥‥あなたをめぐって、こんなケンカが‥‥」
【チマミレ】
「たしかに私、わるい女です。
‥‥学園じゅうの男子から、愛のコクハクを‥‥」
【ヒツグリ】
(まさに、“マドンナ”というワケか‥‥)
🔴🔴🔴🔴🔴
【ヒツグリ】
(これでユーリやナツキちゃんより年下なのか‥‥。)
「ケンカについて」→よくあること 殺人はこわい
【チマミレ】
「なにかのマチガイだと思いたいです。
私をめぐってケンカだなんて、おとぎ話のよう‥‥」
【ヒツグリ】
(‥‥そのおとぎ話には、
血まみれの“決着”がついたワケだけど‥‥)
【アワテル】
「引き出してみましょうか。マドンナは
おとぎ話の中でナニを思うのか‥‥?」
(つ)ズブヌレ幼馴染カワイイ 親がビンボー 私は金持ち カワイイ

(つ)ケイ→「!!」→なにもありませんわ
【チマミレ】
「‥‥カワイソウに。
殺されちゃったら、コクハクもできません」
【ヒツグリ】
「でも、カレはコクハクしたようですよ。
それも“マドンナ”に‥‥」
【チマミレ】
「コクハクは毎日されますから。
ううん、いつされたかなぁ‥‥」
【ヒツグリ】
「すくなくとも、事件の日より前ですね。
カレはそれを期に、ケンカや嫌がらせを‥‥」
【チマミレ】
「みんな私のコトが好きなんですから、
仲良くすればいいのに‥‥」
【ヒツグリ】
(そういうモンダイじゃない‥‥)
【チマミレ】
「じゃあカレは、そのコクハクが
キッカケで殺されたと‥‥?」
【ヒツグリ】
「‥‥そうかもしれませんね。
カレの“恋敵”に、ココロあたりは‥‥?」
【チマミレ】
「たぶん“男子”ですね‥‥。
女子からは、たまにしかコクハクされないので‥‥」
【ヒツグリ】
(‥‥容疑者が全人類にまで絞られたな‥‥)
【アワテル】
「‥‥よろしければ、ふだんの学園生活について
くわしくお聞かせ願えますか?」
【チマミレ】
「いいですよ。 私の“ふだん”は、
“ふつう”ではないと思いますけど‥‥」
「(つ)ズブヌレ」
【チマミレ】
「ナツキちゃん。いつもビショビショで
カワイイでしょ?」
【ヒツグリ】
「‥‥まあ、カワイイ《証言》でしたね。
あからさまにムジュンしてましたし」
【チマミレ】
「おやつをあげると、言うこと聞きますよ。
いつもおなかをすかせてるので‥‥」
【ヒツグリ】
(そんな、ペットじゃないんだから‥‥)
「‥‥カノジョ、デンワをしてたんですよ」
【チマミレ】
「デンワ‥‥? いくらナツキちゃんでも、
デンワくらいはできると思いますけど‥‥」
【ヒツグリ】
「デンワの相手は、被告人です」
【チマミレ】
「クドいてたんじゃないですか?
“オマエの頭の火、アタシが消火してやる!”とか」
【ヒツグリ】
「デンワの時刻は、事件当日の0時です」
【チマミレ】
「ホント、カワイイですよねー。
デンワのひとつかくし通せないなんて‥‥」
【ヒツグリ】
(‥‥なんなんだ、この
見ていて不安になるエガオは‥‥)
【ヒツグリ】
「‥‥そのカワイイ彼女のデンワが、ダレかの
“命令”だったとしたら。‥‥心当たりはありますか?」
【チマミレ】
「ありませんよ、あのコの“飼い主”なんて。
‥‥野に放てば、勝手に家にもどるんじゃない?」
【ヒツグリ】
(‥‥そんな、ペットじゃないんだから‥‥)
「+学園生活」
【チマミレ】
「学年のちがう方にまで、よくコクハクを。
センパイがたにも、知り合いが多くて‥‥」
【ヒツグリ】
「センパイ‥‥?」
【チマミレ】
「2つ下です。ユーリセンパイや、
ナツキちゃんには、お世話になってます」
【ヒツグリ】
(‥‥どっちかというと、“お世話されてる”のは
ナツキちゃんのほうなのでは‥‥)
【アワテル】
「なんというか、最近の“マドンナ”は
おませさんですね‥‥」
【チマミレ】
「ナツキちゃんはホラ、“トクベツ”ですから。
あのコはゼッタイ、私をウラ切らないの」
【ヒツグリ】
(そうとうな“忠犬”みたいだな‥‥。
なんとなく、ふたりの関係はつかめてきた‥‥)
「↑おわってから」
【チマミレ】
「それでは、よい捜査を。
ミレイは、いい結果をねがっております」
【ヒツグリ】
「ひとつだけ‥‥。カノジョに命令したのは、
あなたじゃないんですか?」
【チマミレ】
「‥‥‥‥? ‥‥命令ならよくしますけど、
たとえば、どのような?」
【ヒツグリ】
「火継利 優里を、屋上に呼び出せ‥‥とか」
【チマミレ】
「‥‥‥‥。それでは、よい捜査を。
ミレイは、“いい結果”をねがっております」
【アワテル】
「‥‥“いい結果”‥‥か。少なくとも、
“かわいい結果”にはならなさそうですね」
【ヒツグリ】
(‥‥かわいい“忠犬”と、
かわいくない“飼い主”‥‥か)
@1留置所(ズブヌレ 怯え (つ)マドンナは成績優秀 事件に深入りするな)
法廷のことを忘れかけている→キオク障害が出ている?
【ズブヌレ】
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
【アワテル】
「とじこもってしまいましたね。
自分のオリの中に‥‥」
【ヒツグリ】
(ぬれぎぬでズブヌレなのはこっちなんだ。
なんとしても、話してもらう‥‥!)
「今日の法廷」
【アワテル】
「どうだったかな?
今日の法廷は」
【ズブヌレ】
「手に汗にぎる極限のスリル!!
息もつかせぬ極上のサスペンス!」
【ズブヌレ】
「‥‥ヒトコトで言うと、そんな感じだったな‥‥」
【アワテル】
「さっきとは、
まるでイミあいがちがいますね‥‥」
【ヒツグリ】
「《証言》もコロコロ変わってたよね。
ユーリを見たとか、見ないとか‥‥」
【ズブヌレ】
「ムカシ、ダレを見たか‥‥?
そんなギロンにイミはないのさ」
【ズブヌレ】
「目は、前を見るためについている!
アタシの目は、きのうなんか向いてないのさ!」
【ヒツグリ】
(たしかに、あさっての方向を
向いてるみたいだ‥‥)
【ズブヌレ】
「アタシ、もうよく覚えてないんだよね。
‥‥目が前についてるから」
【ヒツグリ】
(‥‥“前向き”な性格、というコトなのかな‥‥)
【アワテル】
「“前向き”どころか、
“前のめり”な気もしますけどね‥‥」
【ヒツグリ】
(まあたしかに、今日の法廷では
ハデにつんのめって転んでたな‥‥)
“デンワ”
【ヒツグリ】
「とにかく、なぜユーリにデンワしたのか。
‥‥話してもらおうかな」
【ズブヌレ】
「‥‥どうして? アタシがオマエに協力する
“めりっと”なんて、ないと思うけど‥‥」
【アワテル】
「あ、ホラ。
話してくれたら、アメとかあげるよ」
【ズブヌレ】
「アタシをナメるな!!
おうちに帰って、そのアメをなめてな!」
【ヒツグリ】
(‥‥アメが通じないなら、ムチしかないな。
‥‥カノジョの“沈黙”の理由を示す、“ムチ”を‥‥)
今日の法廷
“デンワ”
「(つ)チマミレ」
【ズブヌレ】
「!!!!!!!」
【アワテル】
「ひつぐりさん、この反応‥‥」
【ヒツグリ】
(‥‥やはり、ビンゴか‥‥)
【ズブヌレ】
「なななななんだよ、そのミレイちゃんは!!
そんな千間 美玲ちゃん、知らないモン!」
【ヒツグリ】
(どの千間 美玲ちゃんなら
知ってるっていうんだ‥‥)
「千間 美玲」
【ズブヌレ】
「‥‥アタシとちがって、アタマがいいし。
頭脳メイセキで、かしこいんだ」
【アワテル】
「アタマの話しかしてませんね‥‥」
【ヒツグリ】
「で、カノジョがきみの“アタマ”ってワケ?」
【ズブヌレ】
「そそ、そんなワケないだろ! すうがくの
宿題を教えてもらったコトなんて、一度も‥‥」
【ヒツグリ】
(この事件をヒモ解く“方程式”を知るには、
カノジョの“動き”を知る必要があるな‥‥)
「デンワ」
【ヒツグリ】
「‥‥それで、ナツキちゃん。
デンワの件は話す気になった?」
【ズブヌレ】
「デンワって、ユーリにしたヤツ?
なんでおまえらが、そんなこと知ってるんだ?」
【ヒツグリ】
「いやいやいや!!
今日の法廷で問いつめたじゃない!!」
【ズブヌレ】
「‥‥? よくおぼえてないな‥‥。
まあアタシの目は、前向きについてるから!」
【ヒツグリ】
(‥‥前向き以外についてるヒトがいるのか‥‥?)
【ズブヌレ】
「アタシ、どうでもいいコトはすぐ忘れるから。
今日の法廷なんて、もうほとんど忘れたぜ!」
【ヒツグリ】
(‥‥‥‥‥‥。
いくらなんでも、不自然じゃないか‥‥?)
上4つの会話を終えたら
【ヒツグリ】
「‥‥なんとなく、方針は見えてきたかな。
ねらうべき“標的”も‥‥」
【ズブヌレ】
「やめといたほうがいいぞ。
‥‥アイツに深入りすると、ロクなことにならない」
【ヒツグリ】
「‥‥アイツというのは‥‥。
この千間 美玲ちゃんのコトかな?」
【ズブヌレ】
「いや、それとはべつの千間 美玲ちゃんだけど‥‥」
【ヒツグリ】
(何人いるんだ、千間 美玲ちゃん‥‥)
【アワテル】
「ケッキョク、情報はもらえませんでしたけど。
“手がかり”は見つかりましたね」
【ヒツグリ】
(‥‥いくらでも深入りするさ。
あの《落とし穴》よりも、ずっと深く‥‥)
@2ウラ門(センセイ)(ズブヌレ2年前の事件/ハッキンク/(つ)ケイ家)
【センセイ】
「‥‥おや、弁護士さん。
探しものをしてる目ですね」
【ヒツグリ】
「‥‥単刀直入に言います。わたしは‥‥」
【センセイ】
「あなたの学園の生徒をうたがっている。
だから情報がほしい‥‥と」
【ヒツグリ】
(察しがよすぎて、単刀直入にすら
言わせてもらえない‥‥)
「今日の法廷について」
【センセイ】
「私も今朝のサイバンは見てました。
カノジョが、被告人を屋上に呼び出した‥‥」
【ヒツグリ】
「でも、殺したのはカノジョじゃない。
現場の状況を知っているハンニンなら‥‥」
【センセイ】
「あんなザツな《目撃証言》はデッチ上げない。
‥‥穴を掘った“だれか”は、別に存在する‥‥と」
【ヒツグリ】
「そして標的を屋上に呼び出すには、
パスワードを教える必要があります」
【センセイ】
「‥‥“端末”を拾えば、ダレでもパスは知れる。
きのう‥‥そう言ったハズですが」
【ヒツグリ】
「だが、あなたはこうも言ったハズです。
ジッサイには“ハッキング”があった‥‥と」
【センセイ】
「‥‥ハッキングはナツキちゃんにはムリ。
だから私に、それができる生徒を聞きに来た‥‥」
【ヒツグリ】
「教えていただけませんか。
今はひとつでも、情報がほしいのです」
「+ハッキング」
【センセイ】
「“ハッキング”された確証はありません。
私が勝手に、確信しているだけです」
【ヒツグリ】
「わたしも同じです。確証はないけど、
確信しているハンニンが‥‥ひとり、います」
【センセイ】
「美鈴ちゃんは、“幼馴染み”なんです。
けさ《目撃証言》をした、ナツキちゃんと」
【ヒツグリ】
「ナツキちゃんは、逆らえないんですよね?
だから命令されて、デンワをかけた」
【ヒツグリ】
「メールだと、呼び出された形跡がのこる。
公衆電話は、ユーリが着信をキョヒしていた」
【アワテル】
「そこで“変声機”をもたせて、デンワをさせた。
‥‥使い捨ての“忠犬”に、ね」
【センセイ】
「‥‥あの二人は‥‥。‥‥弁護士さんが思うほど
タンジュンな関係ではありませんよ」
【ヒツグリ】
(タンジュンじゃない関係‥‥?
‥‥どういうことだ‥‥?)
「ズブヌレ」
【アワテル】
「思えばカノジョ、ずいぶん“幼い”ですよね。
ユーリくんと同い年とは思えないほどに‥‥」
【センセイ】
「‥‥カノジョは‥‥。“ある事件”をキッカケに、
フードの中にとじこもるようになった」
【ヒツグリ】
「“ある事件”‥‥?」
【センセイ】
「“殺人事件”です。
ナツキちゃんは、その事件で親を失っている」
【ヒツグリ】
「‥‥じゃあ、そのときのショックで‥‥?」
【センセイ】
「キオクに少し、モンダイがあるのです。
それが原因か、ヒトづきあいもニガテに‥‥」
回想
【ヒツグリ】
「‥‥それで、ナツキちゃん。
デンワの件は話す気になった?」
【ズブヌレ】
「デンワって、ユーリにしたヤツ?
なんでおまえらが、そんなこと知ってるんだ?」
【ヒツグリ】
「いやいやいや!!
今日の法廷で問いつめたじゃない!!」
【ズブヌレ】
「‥‥? よくおぼえてないな‥‥。
まあアタシの目は、前向きについてるから!」
回想
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥。まさか‥‥」
【センセイ】
「ココロあたりがあるようですね。
‥‥けさの法廷の《目撃証言》‥‥」
【アワテル】
「‥‥カノジョは、目撃した内容を
わすれて、あんな証言を‥‥?」
【センセイ】
「いえ、ダイジなことは忘れません。
だからあの証言は‥‥そもそもウソでしょうね」
【ヒツグリ】
「ダイジじゃないことを、忘れる‥‥。
具体的にはどのような‥‥?」
【センセイ】
「直前まで言ってたコトを忘れたり。
ツラいことがあると、すぐキオクから消えてしまう」
【センセイ】
「検察もカノジョと話していて、
キオクに問題があるのを‥‥感じ取ったようですね」
【ヒツグリ】
(だから検察側はナツキちゃんの
《目撃証言》を、出そうとしなかったんだ‥‥)
【アワテル】
「ちょっと待ってください。センセイは
検察に伝えてないんですか? キオクのこと‥‥」
【センセイ】
「‥‥‥‥。‥‥あの事件にまつわる情報は、
出せないのですよ‥‥」
【ヒツグリ】
「出せない‥‥?」
【センセイ】
「ここから先は、自分で調べてください。
‥‥ケーサツにすら、公式記録はのこってません」
【ヒツグリ】
(‥‥どういうコトだ‥‥?
殺人事件だったのに、キロクがない‥‥?)
【センセイ】
「‥‥一介の教師の私にできるのは
生徒の話だけです。‥‥“次”に行きましょうか」
「チマミレ」
【センセイ】
「この学園で、ハッキングができるとしたら
カノジョだけ‥‥でしょうね」
【ヒツグリ】
「なぜ、わざわざハッキングを?
“端末”を拾えれば、パスは受信できるのでは‥‥」
【センセイ】
「“端末”を拾えなければ、パスは受信できませんよ。
‥‥カノジョは、頭は良くても運は悪かった‥‥」
【ヒツグリ】
「ハッキングとなると、アタマのよさは
そうとうなモノですよね。中学生ですし‥‥」
【センセイ】
「“天才”ですね。 頭脳にめぐまれ、才能に恵まれ。
しかし‥‥家庭にはめぐまれなかった」
【ヒツグリ】
「‥‥家庭‥‥?」
【センセイ】
「カノジョの母親は、病院のスタッフだった。
母娘の関係は、あまり良くなかったようです」
【ヒツグリ】
「“スタッフだった”ということは‥‥。
今はもう、スタッフではないのですか?」
【センセイ】
「ええ。殺されてしまいましたから」
【アワテル】
「殺された‥‥? 
ナツキちゃんの親とおなじですね‥‥」
【センセイ】
「‥‥ふたりは“幼馴染み”なのです。
同じ町で生まれて、同じ町で育って‥‥」
【センセイ】
「そして、同じ事件で親を失った‥‥。
家庭が荒れていた所まで“おそろい”なのです」
【ヒツグリ】
「同じ事件で、親を‥‥。
それで、《家庭が荒れていた》というのは?」
【センセイ】
「ふたりとも父親がいなかったのです。
どうやら、小学校にも通ってなかったとか」
【ヒツグリ】
「‥‥荒んだ環境のなかで‥‥いつも一緒にいて
生まれた、“タンジュンじゃない関係”‥‥」
【センセイ】
「‥‥私は一介の教師に過ぎませんから。
彼女から聞いた情報は、これがすべてです」
【ヒツグリ】
(‥‥一介の教師、ねえ‥‥)
【アワテル】
「‥‥それで、どうするんですか?
ケーサツにない事件のキロクなんて‥‥」
【ヒツグリ】
「‥‥ケーサツが持ってないなら、
そのキロクはいま、だれが持ってるんだろう?」
【アワテル】
「‥‥だれも持ってないんじゃ?
捨てられてると思いますけど」
【ヒツグリ】
「なら、どうしてセンセイは
“調べてみろ”なんて言ったのかな‥‥?」
【アワテル】
「‥‥。もしかしたら、その“持ち主”に
ココロあたりがあるのでは?」
【ヒツグリ】
(‥‥消えた事件キロクのありか‥‥。
証拠品の中に、何かなかったかな‥‥)
「(つ)日記」
【センセイ】
「! その日記は‥‥」
【ヒツグリ】
「‥‥ひょっとして、見たことありますか?
被害者からの“恋愛相談”とかで‥‥」
【センセイ】
「‥‥そう、そのとおり。
‥‥たどり着いてしまったのですね‥‥」
【ヒツグリ】
(‥‥ワケのわからないまま、
勝手にナットクされてしまった‥‥)
「↑フラグ回収したら」
【センセイ】
「‥‥。‥‥弁護士さん。
被害者のお宅に行ってみませんか?」
【ヒツグリ】
「え! 急にどうしたんですか‥‥?」
【センセイ】
「刑事さんに聞いてみてください。
カレなら、許可をくれるでしょう」
【アワテル】
「ワケのわからないまま、
ユカイ刑事にアタマを下げるコトになりましたね‥‥」
【ヒツグリ】
(被害者の自宅‥‥?
いったい、なんのつもりだろう‥‥)
@2ウラ口(ユカイ)(パス紙 穴1.1m 段差)
最初穴を掘ってる
「穴堀実験の結果→2時間かかる&段堀りが必要&1.1メートル」
「パス紙」パソコン印刷 手がかりがあれば‥‥(ダメもとで誰かに聞く?)
【???】
「ソォーレ!! あソォーレ!!
そら、キロク更新まであと少し!!」
【アワテル】
「‥‥あれ、ユカイ刑事がなにかやってますね」
【???】
「ソォーレ! やったぞ、ベストタイムだ!
‥‥‥‥‥‥」
【ヒツグリ】
「‥‥ナニしてたんですか?
なんだか、スコップを片手に‥‥」
【ユカイ】
「穴をほっていたのです。
坊っちゃんのために‥‥」
【アワテル】
「あ! 今日の法廷がハズカシくて、
”穴があったら入りたかった”とか?」
【ユカイ】
「そんなワケないでしょう!
深さ1.1メートルの穴ですぞ、コレ」
【ヒツグリ】
(なるほど‥‥。ジッサイに何時間で掘れるか、
“実験”してたワケか‥‥)
ユカイのテーマ
実験
【ヒツグリ】
「どうでしたか?
10分で掘れそうですか?」
【ユカイ】
「今のところ、“2時間2分3秒”が
ユカイの“自己ベスト”です!」
【ヒツグリ】
「水冬検事の主張は
成立しそうにないですね‥‥」
【ユカイ】
「だからトレーニングを重ねてるのです!
10分を切るため、適切なフォームと筋力を!」
【ヒツグリ】
(努力の方向をまちがえすぎでは‥‥)
「穴を掘る技術」
【アワテル】
「それにしても、2時間ちょっとまで
キロクを縮めたなんて、スゴいですね」
【ユカイ】
「‥‥苦しい道のりでした」
【ヒツグリ】
「‥‥はい?」
【ユカイ】
「最初は順調でしたが、スランプにおちいり、
キロクが伸びなくなってしまったのです‥‥」
【ヒツグリ】
(何時間あるんだ? ユカイ刑事の1日‥‥)
【ユカイ】
「しかし、ある“気づき”がキッカケで、
ユカイはスランプを脱したのです」
【アワテル】
「“気づき”‥‥。フォームでも変えたんですか?」
【ユカイ】
「もっとスゴい“ヒラメキ”ですぞ。
なんと‥‥“足場”をつくったのです!」
「足場」
【アワテル】
「足場‥‥。
ようするに段々堀にしたんですか?」
【ユカイ】
「そう。穴の中に“段”をつくって、
スコップをとどきやすくしたのです」
図でセツメイ
【ユカイ】
「地上から掘るだけだと、だんだん
スコップが届きにくくなる」
【ユカイ】
「浅いところは広く、深いところはせまく。
穴の中に“段”をつくれば、コシもいたくない!」
ユカイのテーマ
【ヒツグリ】
「ははぁ、
穴堀りのセカイも、深いんですね‥‥」
【ユカイ】
「ユカイが大幅なキロク更新をなしとげたのは、
この“段々堀”を取り入れたためなのです」
【ユカイ】
「調子がよければ、
今季の2時間切りもユメではない!」
【ヒツグリ】
「ヤッパリ、水冬検事の主張は
成立しそうにないですね‥‥」

──《遺体遺棄現場》のデータを
  証拠品ファイル上で更新した──
穴堀りの結果
【ヒツグリ】
「ずっと、アナ掘りをしてたようですが。
なにか新しい証拠でも発掘しました?」
【ユカイ】
「‥‥コレ。遺体が埋まっていた近くに、
埋もれていたのを発掘しましたな」
【アワテル】
「これは‥‥パスワードが書いてありますね」
【ユカイ】
「ちょうどそこ、校舎のカベにアトがあります。
おそらく、そこに貼られてたモノかと」
背景をスポットライトor拡大
【ヒツグリ】
「きのうの調査では見つけてないですよね。
今月の給与査定、だいじょうぶですか?」
【ユカイ】
「うぐ! ‥‥だってそれ言い出すと、
校庭じゅうの土を掘りかえすハメになるし‥‥」
【ヒツグリ】
「それで遺体の近くを見落としてたら、
なんのイミもないじゃないですか!」
【ユカイ】
「うぐ! ‥‥とにかく、今はもう
テッテイ的に再調査をしたアトなので‥‥」
──《パスワードの紙》のデータを
  証拠品ファイルに記録した──
【ヒツグリ】
(‥‥これ、メールの本文にあるヤツだな。
“パスワードがどこかに書いてあります”‥‥)
「テッテイ的な再調査」
【ユカイ】
「ハンニンが《落とし穴》を掘ったなら、
穴の中に《髪》が落ちるのでは‥‥?」
【ヒツグリ】
「あ、それで“テッテイ的な再調査”をして、
ハンニンのDNAが検出されたとか‥‥?」
【ユカイ】
「‥‥いえ、ダメでした。おそらく、
‥‥かみのけが落ちないよう、対策してますな」
【アワテル】
「ううむ、そんなにアマくないか‥‥。
《体液》とかは落ちてないんですか?」
【ユカイ】
「なんというか、ビミョーみたいですな。
少なくとも、DNAを決め手にはできぬ‥‥と」
【ヒツグリ】
(たぶん、穴を掘ったスコップも
処分してるだろうしなぁ‥‥)
【アワテル】
「なにかないんですか?
この紙に指紋とかは‥‥?」
【ユカイ】
「素材の関係で、指紋がつかないのです。
活字だから筆跡も見れませんし‥‥」
【アワテル】
「個人を示す手がかりはゼロ。
カンペキな用意ですね‥‥」
「被害者の自宅」(センセイとユカイの会話すべて聞くと出現)
【ヒツグリ】
「ところでユカイ刑事。
被害者の自宅に、行ってもいいですか?」
【ユカイ】
「ダメですぞ」
【ヒツグリ】
「え」
【ユカイ】
「ダレもいないお宅に侵入するなど、
“空き巣”そのものではありませんか!!」
【ヒツグリ】
(どう見ても、“空き巣”はそっちでは‥‥?)
【アワテル】
「あの、調査の許可がほしいんです。
けっしてお宅をあさるつもりは‥‥」
【ユカイ】
「ほんとうに調査ですかな?
ううむ、アヤシイ‥‥」
【ヒツグリ】
(この人以上に“アヤシイ”人なんて、
ほぼいないと思うけど‥‥)
【ユカイ】
「‥‥。‥‥まあ、いいでしょう!
捜査官に、許可をもらった旨を伝えるように」
──《被害者の自宅》の場所を
  なんとか聞き出した──
【ヒツグリ】
(‥‥センセイの意図はわからないけど。
行ってみるしかないな‥‥)
❌【ヒツグリ】
(のこる希望はこの紙だけ‥‥。
ダメもとで、ダレかに意見を聞けないか‥‥?)
❌【アワテル】
「‥‥髪の毛はボウシで防げますけど、
汗は‥‥どういうコトですか?」
❌【ユカイ】
「そのへんの土をもって来たのでは?
校庭だから、生徒の数だけ《汗》もあるワケで‥‥」
❌【ヒツグリ】
「‥‥そこらじゅうの土をまぜかえして、
穴の深いトコロにも、複数人の《汗》を検出させたと?」
@2留置所(ユーリ )
公衆電話&今日の法廷
【ユーリ】
「あ、ねえちゃん!!
スゴかったよ! 今日の法廷!」
【ヒツグリ】
「‥‥どうスゴかったの?」
【ユーリ】
「手に汗にぎる極限のスリル!!
息もつかせぬ極上のサスペンス!」
【ユーリ】
「‥‥ヒトコトで言うと、そんな感じだったね」
【アワテル】
「ヤッパリ、裁判の感想には聞こえませんね‥‥」
【ヒツグリ】
(そんなに心臓にワルいのか‥‥。
わたしのベンゴ‥‥)
(つ)ケイ「告白したからではなく、写真を持ってたから」(日記一部get)
「今日の法廷」
【ユーリ】
「アイツ、本当にデンワを‥‥?
たしかにしらない番号だったけど‥‥」
【ヒツグリ】
「声を聞いて分からなかった?」
【ユーリ】
「うん、なんかヘンな声だったから‥‥。
“ぼいすちぇんじゃー”ってヤツ?」
【アワテル】
「変声機なんか使っても、自分のデンワで
かけたら、正体がバレバレだけどね‥‥」
【ユーリ】
「ああ、公衆電話からの着信はホラ、
設定でキョヒされてたみたいだし‥‥」
【ヒツグリ】
(公衆電話でかけても、つながらなかった。
‥‥だから自分のデンワを使った‥‥と)
【ユーリ】
「デンワの主がアイツってことは、
まさかアイツが殺人を‥‥?」
【ヒツグリ】
「いやいや、“共犯”とかもあり得るから。
どうかな、カノジョの人間関係」
【ユーリ】
「共犯するような関係って、ふつう
人目には見せないんじゃないか‥‥?」
【ヒツグリ】
(そりゃわからないか‥‥。
ただ、ヒントはなにかあるハズだ‥‥)
「(つ)ミレイ」
【ヒツグリ】
「カノジョって、学園じゅうの男子から
コクハクされてたんだよね?」
【ユーリ】
「男子はモチロン、女子からも
いっぱいコクハクされてたよ」
【ヒツグリ】
「どうしてそんな状況で
カレだけが、スコップで殴られたのかな」
↓に続く
「(つ)ケイ」
【ユーリ】
「‥‥さすがに、ちょっとやりすぎたけど‥‥。
半日もキゼツはムリだよ!」
【ヒツグリ】
「‥‥ひとつ気になるんだけど。
‥‥被害者の、“後頭部”のキズ‥‥」
【ユーリ】
「ボクが背後からやったアレか‥‥。
死ぬほど反省してるよ‥‥」
【ヒツグリ】
「死んだのはカレだったワケだけど。
‥‥あらためて、殴った理由が気になってね」
【ユーリ】
「きのう言ったとおりだよ。
アイツ、コクハクまでしたんだぞ?」
【ヒツグリ】
「でも、例の彼女は
学園じゅうの男子からコクハクされてるよね?」
【アワテル】
「“恋敵”があらわれるたびに殴ってたら、
学校が死体の山になりますね」
【ユーリ】
「ナニ言ってんの!!
アイツがしたのは、コクハクだけじゃない!」
【ヒツグリ】
「コクハクだけじゃない‥‥?
じゃあいっそ、“マドンナ”とケンカしたとか?」
【ユーリ】
「もっとタチがわるいよ!
カノジョのことを、追い回してたんだから」
【ヒツグリ】
「なになに‥‥。
タイトルは‥‥“観察日記”‥‥?」
【ユーリ】
「‥‥“観察”してたんだよ、カノジョを。
追い回して、苦しめてたんだ」
無音
「+“観察日記”」
【ユーリ】
「アイツが席をハズしてるときに、
コッソリ写真をとって、キロクしておいたんだ」
【ヒツグリ】
(それはそれでマズイのでは‥‥?)
【ユーリ】
「アイツなんかもっとマズイよ!!
“盗撮”に“尾行”、“盗み”までやってる」
【ヒツグリ】
「‥‥じゃあカノジョは、
ストーカー被害にあっていたってコト?」
【ユーリ】
「そのうえ、コクハクまでしたんだぞ。
アタマに来ちゃってさ、もう!」
【ヒツグリ】
(‥‥そういうコトだったのか‥‥。でも‥‥)
「‥‥ユーリ、ちょっといい?」
【ユーリ】
「‥‥なに?」
【ヒツグリ】
「最初からそう言ってよ! いくらなんでも、
コトバが足りなさすぎるよ!!」
【ユーリ】
「いやいやいや! 今のが事件と
なんのカンケーがあるの! それじゃあまるで‥‥」
【ヒツグリ】
(‥‥まるで、カノジョが
犯人みたいじゃないか‥‥か‥‥)
【ユーリ】
「‥‥ねえちゃん‥‥?」
──《観察日記》のデータを
  証拠品ファイルに記録した──
【ヒツグリ】
(この日記、どこかで“原本”を
入手できたりしないかな‥‥)
BGMもとにもどす
@3ケイ家(ストーカー 日記 写真 ヤクザ 2年前の事件は隠ぺいされた)
写真
日記
化粧箱(クスリ)
2年前の事件 ズブヌレとミレイ
院内規則
事件記録
【ヒツグリ】
(‥‥‥‥。なんというか、
オソロシイほどに殺風景な家だな‥‥)
【アワテル】
「事務所みたいな“カラフル”は目にしみますけど。
ここまで殺風景だと、心にしみますね‥‥」
「窓(青空)」
【ヒツグリ】
「この家でもっとも“カラフル”な家具だ」
【アワテル】
「家具というか、青空なんですけど‥‥」
【ヒツグリ】
「‥‥大自然の“青”を際立たせるために、
よけいな色はすべて削る。“引き算”の美学だよ」
【アワテル】
「‥‥たしかにこんな部屋で生活してたら、
“無”になるしかないですもんね‥‥」
「カベ」
【ヒツグリ】
「この家で2番目に“カラフル”な家具だ」
【アワテル】
「家具というか、カベなんですけど‥‥」
【ヒツグリ】
「コンクリートのカベは話し相手に最適だよ。
話しかけても怒らないし、バカにされないし」
【アワテル】
「ひつぐりさん。今度あそんであげるので
道をふみハズさないで下さい‥‥」
「コンピューター」
【ヒツグリ】
「この家で3番目に“カラフル”な家具だ」
【アワテル】
「カラフルというか、マックロなんですけど‥‥」
【ヒツグリ】
「すべての色をあわせると黒になるから。
ある種、いちばん“カラフル”と言えなくもない」
【アワテル】
「‥‥これで“カラフル”だなんて、
目の前がマックロになりますね‥‥」
「本棚」
【ヒツグリ】
「もはや本の“保護色”と化している、
サイアクの配色の本棚だ」
【アワテル】
「配色というか、茶一色じゃないですか‥‥」
【ヒツグリ】
「中身は、推理小説のようだ。
表紙はどれどれ‥‥“消えた凶器のナゾにせまる!”‥‥」
【アワテル】
「被害者のヨコに水たまりがありますね」
【ヒツグリ】
「‥‥時間が溶けないように、最初に“ネタバレ”を
置いてくれる。良心的な本だね」
【アワテル】
「そのかわり、ダレも買わないので
作者のフトコロは氷より冷たいワケですね‥‥」
「机」
【ヒツグリ】
「この家では、あまり“カラフル”でない机だ」
【アワテル】
「どの家でも“カラフル”には
なれないと思いますけど‥‥」
【ヒツグリ】
「引き出しには、‥‥‥。
この家でもっともカラフルな“日記”が入っていた」
【アワテル】
「カラフル‥‥?」
【ヒツグリ】
「この日記には、バラ色のあまずっぱい思い出が
色とりどりに詰まってるワケだし」
【ヒツグリ】
「‥‥どれどれ、日記の内容は‥‥。
“事件キロク”‥‥“美鈴の日記”‥‥“観察日記”‥‥」
【アワテル】
「バラ色というか、死肉色でしたね‥‥」
【ヒツグリ】
「あまずっぱいというか、ひたすらすっぱいね‥‥」
【ヒツグリ】
(とりあえず、日記の内容を見てみよう‥‥)
【ヒツグリ】
(とりあえず、日記の内容を見てみよう‥‥)
「事件キロク」
【ヒツグリ】
「ええと、被害者は“4名”。
それぞれの名前は‥‥」
【ヒツグリ】
「“千間 奈子”、“千間 美鈴”、
“図部塗 やよい”、“図部塗 長月”‥‥」
【アワテル】
「‥‥ちょっと待ってください。
まさか、その殺人事件って‥‥」
【ヒツグリ】
「センセイが言ってた、“過去の事件”‥‥。
ケーサツにもない事件キロクが、なぜここに‥‥?」
【アワテル】
「‥‥“精神病棟の患者が、メスを手に持って、
4人組の親子連れにおそいかかった”」
【アワテル】
「“患者は千間 美鈴の腹部を切り裂き、
次に、残りの3人を次々と切りつけた”」
【ヒツグリ】
「‥‥うわぁ、クチのなかが
あまずっぱくなってきたよ‥‥」
【アワテル】
「“患者は現場を去り、すい弱した4人は
救急室に運ばれ、ユ血を受けることになった”」
【アワテル】
「“結果、“千間 奈子”と“図部塗 やよい”が
死亡し、
ふたりの娘たちが生き延びた‥‥”」
【ヒツグリ】
(‥‥ふたりは、おなじ事件で親をなくした。
こういうコトだったのか‥‥)
【アワテル】
「”“図部塗 長月”はショックにより、
この事件のキオクを失っている”」
【アワテル】
「‥‥“この事件の一切の情報流出を禁ず。”
思いっきり流出してますけどね‥‥」
【ヒツグリ】
(なぜ、カレがこんなものを‥‥?
ケーサツにすら、知られてない事件なのに‥‥)
──《事件キロク》のデータを
  証拠品ファイルにキロクした──
──《院内規則》のデータを
  証拠品ファイルにキロクした──
──《凶器》のデータを
  証拠品ファイルにキロクした──
「美鈴の日記」
【ヒツグリ】
「‥‥これは‥‥好きなコの日記帳をぬすむという
青クサい青春のアレかな?」
【アワテル】
「“シゲルに取‥‥入って、組のPCを発見。
ここから情報をうばい返す‥‥”」
【アワテル】
「“組のPCに入って事件キロクを入手、
原本の保‥‥場所も探り当てた”」
【アワテル】
「“他にもいろんな情報‥‥弱みをにぎった。
あとはクスリが‥‥さえ‥‥れば”」
【アワテル】
「“シゲルはそろそろ用済み、しきりに手術を
勧めて‥‥てうざったい。上手く消せないか?”」
【ヒツグリ】
「‥‥‥‥。シゲルさん、かわいそうに‥‥」
【アワテル】
「ええと、それから。
“私は、ソシキをコクハツして死にます”」
【ヒツグリ】
「なにそれ、“遺書”‥‥?」
【アワテル】
「“この遺書を、ヤツへのはなむけにでも
してやろうかしら”」
【ヒツグリ】
「‥‥勝手に遺書をつくられて、勝手に
ウラ切ったことにされてるよ‥‥」
【アワテル】
「青クサいどころか、キナ臭かったですね‥‥。
ちっともイミはわかりませんでしたが‥‥」
【ヒツグリ】
「とりあえず、シゲルさんがもう用済みで、
うざったくて、弱みをにぎられたのはわかったよ」
【アワテル】
「‥‥ほかにもページはありますが、
だいたいシゲルさんの悪口ですね‥‥」
【ヒツグリ】
(シゲルさん、強く生きてほしいな‥‥)
──《美鈴の日記》のデータを
  証拠品ファイルにキロクした──
◆日記は一週間前から千切られている
「観察日記」
【ヒツグリ】
「“観察日記”。ストーカーな少年の、
ストーカーじゃない少女への恋のキロク‥‥」
【アワテル】
「ええと‥‥。
“化粧箱をぬすみだした”」
【ヒツグリ】
「ダメだよ、そんなコトしちゃ。
女の子にきらわれちゃうよ」
【アワテル】
「被害者に言ってください。
‥‥“カノジョには“持病”があるようだ”」
【アワテル】
「“手術をすすめられてるが、カノジョは断った。
代わりに“プロ”からクスリをもらっている”」
【アワテル】
「“カノジョはなんでも化粧箱に入れている。
おかげで、色んな情報が手にはいった”」

【アワテル】
「“彼女の病気について、くわしく知りたい。
美しい横顔を見つめて、そう思ったのである”」
【ヒツグリ】
「‥‥。‥‥なんか、アッサリしてるね‥‥」
【アワテル】
「今のは“燃えろ化粧箱編”ですね。
ほかにも“愛の尾行編”や、“執念の告白編”が‥‥」
【ヒツグリ】
(このぶんだと、どれもアッサリしてて
つまんなさそうだな‥‥)


【アワテル】
「情報が断片的すぎて、ワケがわかりません。
日記も事件キロクも、一部分だけですよね‥‥コレ」
【ヒツグリ】
「ダレかが切り取ったのかな‥‥?
たとえば、被害者のコとか‥‥」
【アワテル】
「もしかして、ストーカーをしてて
ぬすみだしちゃった‥‥ってコトですか?」
【ヒツグリ】
「でも、それだとカノジョが
事件キロクを持っていたコトになるよね‥‥」
【アワテル】
「それに、“持病”がどうとか
書いてましたね。“手術”とか“クスリ”とか」
【ヒツグリ】
「‥‥うう、わるいユメでも見てるのかな。
学園のマドンナが、こんなキナ臭いハナシを‥‥」
【???】
「そこまでだ。これ以上調べると‥‥
アンタが覚めないユメを見ることになるぜェ?」
【ヒツグリ】
「え‥‥。どちらさまですか‥‥?」
フラッシュ
【ヒツグリ】
「!!!!!!」
【アワテル】
「ひつぐりさん!!!!」
【ヒツグリ】
(な、なにが‥‥起き‥‥た‥‥?)
【???】
「あのヨォ‥‥。天使ちゃんのテキは、
オレたちのテキなの。わかるかァ?」
【ヒツグリ】
「‥‥表には、捜査官が‥‥。
いたはず、ですが‥‥」
【???】
「寝てるぜ。きっとシゴトのしすぎだ。
オマエらも眠ってみるかァ‥‥?」
黒フラッシュ→倒れる
【ヒツグリ】
(なん‥‥だ‥‥?
なにが‥‥起きて‥‥る‥‥?)
【   】
事件のキロクを調べたとたん、
ナゾの黒服の男たちが、目の前にあらわれた。
【   】
トツゼンあらわれた黒服たちに、
なすすべもなく‥‥意識をうばわれた。
【   】
うすれゆく意識の中で、ひとつ。
“彼女”のコトバが、脳裏をよぎった‥‥。
【ズブヌレ】
「やめといたほうがいいぞ。
‥‥アイツに深入りすると、ロクなことにならない」

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