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―ボクがMy助産師を勧める理由―

二年前の春、僕たち夫婦は妊娠しました。
最初は友人に薦めてもらったクリニックに健診に行っていましたが、そこでは先生と話す時間は10分ほどで「大丈夫、順調ですよ」と確認作業が行われて終了。エコーを見ることが唯一楽しみで通っていました。
(高橋伸吾)


信じられると感じる助産師さんとの出会い

 しかし、ある助産師さんと出会って世界が変わりました。開業助産師であるその方の助産院に行くと、おばあちゃん家に来たようなあたたかくてホッとする空間。僕は思わず座布団を並べて横になってしまうほど落ち着く場所でした。助産院での健診はお話から始まり、面と向かって2~3時間ほど。そこには、妻のことをじっくり見て、話して、理解してくれようとする助産師さんの姿があり、決して他人事だと思っていないということが伝わってきました。

 何かわからないことがあればインターネットで調べる現代人ですが、僕たちも例外ではなく、出てくる情報のどれを信じたら良いのか混乱してしまうことがよくありました。しかし、「この人は信じられる」と心から思わせてくれた助産師さんがくれるアドバイスは、どれも説得力がありました。「お母さんがしんどくない程度でやれば大丈夫ですよー」と、優しく包み込むように伝えてくれました。

僕たちはお腹の子に名前をつけて呼んでいたのですが、助産師さんはいつも初めにその名前を呼んで挨拶をしてから健診をしてくれました。助産師さんと話していて感じる、自分たちが親になる自覚と、お腹の子の存在感。そして、僕にとって嬉しかったのが「お父さん」を仲間外れにしないことでした。「お父さんにもできることはあるんですよ」と、妻と一緒にできるようにストレッチやマッサージのやり方を教えてくれたのが印象的でした。僕たち夫婦は完全に健診に行くのが楽しみになっていました。


お産で起きることはお腹の子からのメッセージ

 陣痛がきたのは、予定日の夜22時過ぎでした。すぐさま助産師さんに連絡をとりアドバイスを受けました。早朝に助産師さんが来てくれたときは、安心感から僕が泣いてしまいました。5分置きにくる陣痛に、ずーっと後ろからマッサージをして付いてくれていた助産師さん。僕も助産師さんから教えてもらったマッサージをしましたが、妻に突っぱねられてしまいました。妻にとっては、身体のことをわかってくれている助産師さんにやってもらうのが一番安心だったのだと思います。結局、僕は妻の身体を支えるための台代わりにしかなれず、陣痛が始まって約24時間、ほぼ妻の背中をさすってくれたのは助産師さんでした。

 やがて、陣痛のたびに子どもの心拍数が下がり、提携先の病院へ行くことを余儀なくされたときも、妻は「助産師さんはここまでやってくれた」と後悔せずに頷いていました。

 「お産は何が起きるかわからない。だけど、起きることは全てお腹の子からのメッセージだと思って。」と以前からいつも言ってくれていたこともあり、納得できたのだと思います。救急車に乗っている間も笑顔で声をかけ続けてくれた助産師さん。僕はなんて声をかけたらいいのかわからず、ただ手を握っていました。


妻の強さ、「これが私とこの子のお産」

 助産師さんと一緒に自分の身体に向き合っていく中で、妻には「こんなお産がしたい」というビジョンができあがっていました。それを「バースプラン」として私たちのお産計画を立てていました。念のため事前に病院に渡していたこともあり、病院に着いた瞬間、病院の看護師さんもお腹の子の名前を呼んでくれました。そしてできるだけ希望通りに赤ちゃんを産めるよう尽力してくれました。

 最終的にあと少しというところで赤ちゃんは出て来ず、一番したくなかった帝王切開という形で産むことになったときも、妻は「これが私とこの子のお産」と言って笑顔を見せました。僕はその妻の強さに泣きじゃくりました。やっぱり男はこういうとき本当に何もできないのです。

 妻はきっと、助産師さんと一緒に、他人事で他人任せじゃなく、自分事として子どもと向き合いお産をできたから、どんな形であれ後悔せずにいられたのだと思います。


僕たちの人生に寄り添う、僕たちの助産師さん

 その後、妻は、何万人に1人という稀な異常が見つかり、入院生活を送りました。助産師さんが言うとおり、治療ができる総合病院で産むことになったのはお腹の子からのメッセージだったのだと思います。入院中、助産師さんが会いに来てくれたとき、こどもを抱いて涙を溜める助産師さんに僕たちも涙しました。助産師さんが僕たちの人生にさらに寄り添ってくれた瞬間でした。

 退院後は、母乳のことや小児科選びなど、たくさん相談にのってもらっています。産後一年経った今でも、不安なことはつきまといます。夫である僕は、妻の一番の味方でありたいと思っていますが、健診に全部付き添い、一緒に向き合ってきたつもりの僕でさえ、妻がいま何に不安を抱いていて、それを和らげる言葉を見つけることはとても難しいです。そこに、いつでも連絡がとれて、自分の身体のこと、子どものこと、家族のことを全部知ってくれている上でアドバイスをくれる助産師さんがいてくれることが、妻にとってどれほどの安心感を生むか。

妊娠中いろいろ頑張らなきゃと思うとき、
妊婦から母親になる覚悟が必要なとき、
子育てで不安なとき、
また、人生の分岐点において、
そしてときに、夫婦関係において、
すべてに「ゆとり」をくれたのが、
僕たちの助産師さん、My助産師でした。


母親に心強い味方をつける、My助産師制度

 世の男性に僕は問いたいです。
 妻の一番近くにいるはずの夫のあなたは、妻の一番の味方だと自信を持って言えますか?産後たったの一週間で、いきなり家で子育てしなさいと言われた妻がどれだけ不安かわかりますか?

 男性が育休をとりたくても世間はなかなか認めてくれません。だからきっと「いい旦那さん」はせめて家族のために、より一層仕事を頑張ろうとします。でもそうすると「家族と仕事どっちが大事なのよ!」などと言われ、夫婦間に摩擦が起き始めるんです。

 妻が夫に望むこと、それは、子どもを見てほしいが自分にも目を向けてほしい。なぜなら、子育てを頑張っても誰も褒めてくれないからです。一方、夫は何もできない自分の不甲斐なさを感じているからこそ、自分のできることを探して家族のために頑張りたいと思っている。でも仕事以外何をしたらいいかわからない。そういう男性は少なくないと思います。

 僕たちの助産師さんはどちらも見てくれていました。妻と一緒になって子どものことを考え、頑張りを認めて、褒めて心配してくれました。妻の大きな支えになったと思います。そして父親である僕にできることを教えてくれ、僕の体調まで常に気遣ってくれていました。

 こうして僕たちは助産師さんがいてくれたおかげで幸せな出産体験をしたわけですが、この体験は今後子育てをしていく上での原動力になるでしょう。

 子どもは未来そのものです。母親が笑うと子どもが笑います。子どもには母親という存在が必要です。ということは、未来のことを考えるのならば、母親を守る必要があります。母親に心強い味方をつける制度、それがMy助産師制度なのです。


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