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夜行バス

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文學界新人賞一次選考通過作品です。
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2022年5月の記事一覧

夜行バス③

 二時間ごとに十五分の休憩。  でもその夜は機内食の運搬カートがいつもより多く運びこまれ…

夜行バス⑨(最終回)

 妻が笑っている。携帯電話に耳を傾けて、可笑しそうに話をしている。話をしながら段ボール箱…

夜行バス⑧

 鍵は最初から開いていた。  部屋の中はいつもどおりごみ一つなく掃除されていて、彼女以外…

夜行バス⑦

 夜行バスに乗るのは何度目だろうか。  彼はリクライニングシートに身を埋めながら、頭の中…

夜行バス⑥

 突然降りだした大粒の雨。嘔吐物を流しこまれたように靴の中がぐしょぐしょに湿ってきても、…

夜行バス⑤

 駅の改札口から次々と溢れ出てくる人々。前後左右に通り過ぎていく雑踏を、彼はポケットに手…

夜行バス④

 朝からコンピューターにむかって求人情報を検索していると、妻が溜め息をついて部屋に入ってきた。いつもより大きな足音だったので、私は机の前に座ったまま振り向いて、妻が入ってくるのを待ち構えた。 「何、どうしたの」部屋に入った途端、私と目が合った妻は言った。 「いや、別に。何かあったのかなって思って」  妻は携帯電話を手にしていた。山陰へ旅行したときに買ったアクリル製の折り鶴のストラップがぶら下がっている。妻は頭の中で何かを懸命にまとめているみたいで、ゆっくりとフローリングの床に

夜行バス②

 いくら時間が過ぎ、いくらバスが東京に近づきつつあっても、眠りはいっこうに訪れてくれなか…

夜行バス①

 固いものや柔らかいもの。温かいものや冷たいもの。速いものや遅いもの、それから死んだよう…