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「エブリシング・バブルの崩壊」を読んでみた!

日本を代表するエコノミストであるエミン・ユルマズさんの著書である「エブリシング・バブルの崩壊」が気になっていたので一気読みしました。

著者の経歴は華麗です。トルコの出身ながら、日本に留学して東大を卒業。その後に野村証券に入社。また、16歳のときに国際生物学オリンピックで優勝したり、ポーカーの腕前がプロ級、といった異色のバック・グラウンド。

これまでも分析には定評がありましたが、本書を読んでみて、自分の頭の中で世界の流れが可視化される、私はそんな感覚を持ちました。

FRBの金融政策、岸田内閣、半導体、ウクライナや中国情勢、そして暗号資産に至るまで、エミンさんらしい多様な論点についての分析があります。

それが、単に経済的な切り口でなく、政治的、地政学的、歴史的といった多面的な視点でのテイストが加わることで、より深みのある説得力を生み出しているのです。

日本による居る、経済学だけを勉強して、実態経済に大きな影響を与えているであろうグローバル政治や歴史的な要因を考慮しない(というよりは考慮できない)エコノミスト達とは大違い。

著者の主張の中で私が特に納得したのは「米国株はこれまでにない歴史的な資産バブルであり、早晩それは弾ける」という点と、「日本株も影響を受けるがアメリカほどの痛手はなく、インフレ時代に向けてバリュー株への投資が有効」というというところ。

現在の米国株バブルの特殊性


著者は、今の米国株バブルは歴代のバブルとは違っていると指摘します。

「今回のバブルはありとあらゆる資産において起きています。株式、債券、不動産、暗号資産(仮想通貨)、コモディティ(商品)など多様な資産は、金融緩和をやりすぎたためにバブルになってしまいました。」

「エブリシング・バブルの崩壊」より

これが本のタイトルにもなっている「エブリシング・バブル」であり、しかもこのバブルが必ず弾けると言うのですから、どれほどのダメージなのか恐ろしくなってしまいます。

このため2022年は相場が大きく荒れると予想していた著者ですが、事実その通りの動きとなってきました。問題の背景として、マイナス要因が重なっていることも述べられています。中国の不動産バブル、新型コロナウィルスで悪化したロジスティクスの機能、FRBの誤った政策など。

著者は、「壮絶なバブル」が崩壊し、すでに「グレート・クラッシュ」を迎えつつある、と分析。「グレート・クラッシュ」という言葉もインパクトありますね。一般によく使われる「ハード・ランディング」よりも強烈な印象で、著者の考えるクラッシュの大きさが想像しやすいです。

このグレート・クラッシュを予言する皮肉な話も書かれています。

ここ最近日本では米国株投資が流行っていますよね。書店でも関連書籍を多く見かけます。著者曰く、

「日本企業や日本人が流行りの米国投資に手を出すのはたいてい天井付近であるということだ。2008年に日本企業がちょうど不動産担保証券に手を出し始めたところでリーマン・ショックが起き、すべてが崩壊したのは典型例だろう。」

「エブリシング・バブルの崩壊」より

とても示唆に富んだ見方だと思いました。S&Pをはじめ長期でみれば米国株がパフォーマンスが良かったのでこれまで良かったからそれが続くだろうという考えは見直した方が良いのかもしれません。

日本経済のゆくえ

日本についても多くのページが割かれていて非常に興味深い話題が取り上げられています。

「日本人は前回のバブルのトラウマで現金を大事にしすぎるが故になかなかデフレ・マインドから脱却できない」

「アメリカが真剣に台湾有事を見据え、日本との関係を強化している。対中強硬派の駐日米大使を任命。熊本県に台湾の半導体会社であるTSMCとソニーの合弁会社ができるのは、台湾が備えている重要な頭脳、ノウハウ、マシーンなどを日本に迂回させようとしている可能性」

「岸田政権はキャピタル・ゲインの課税強化を目論んで、アベノミクスとは一線を画して、マーケットに嫌われしまっている」

「日本でもインフレが進み、消費者に負担が転嫁される状況では減税が必要」

これらを見ていると必ずしも先行きは明るいとはいえませんが、これからのインフレ時代を生きる私たちへのヒントもふんだんに書かれています。

  • インフレになってくれば株の運用が必要(米国株が大きく下落した場合に日本株も連れ安になるが、下げ幅は限定的)

  • リスクの低い投資先としては防衛関連株などのバリュー株(個別の会社名は本書の中に書かれています)

  • 食料・飲料関連株も良さそう。有事になっても需要が落ちない

詳細は是非本を手に取ってご確認ください。

暗号資産に対する考察


エミンさんが天才的なエコノミストであることは間違いないですが、残念ならが暗号資産に対する考え方は私とは違っています。

批判しているわけではありません。多様な意見があってこそ、自由な社会が成立するのですから。ただ、ここまで著者が暗号資産の価値を否定してしまうとビットコイナーである私は正直ショックでした。

まさに暗号資産を全否定。そうなんだー、う~ん・・つらい・・あぁ

ブロックチェーンの技術としての評価はあるものの、暗号資産の通貨としての価値や実物商品としての価値がゼロだというお考え。そういう意味で本源的な価値がないという主張は見方によってはそうなのかもしれません。

ただ、著者も当初はビットコインに期待もあったそうなので、今後、ビットコインのアプリケーションが広がり、技術が進化してユーティリティとしての価値が出てくれば、エミンさんのビットコインに対する評価も将来変わる可能性もあるのではないか、という僅かな希望を個人的には持っています。

本書は非常に読み応えがありました。2022年も残り少なくなってきましたが、FRBによる金利引き上げの継続、インフレの進行、円安、ウクライナ情勢など不安要素は残ったままです。

そんな中で多くの投資家に指針を示す興味深い内容であることは間違いありません!





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