「事前確率が低いと偽陽性だらけになるから無闇に検査してはいけない」は誤り。ベイズ推定を根拠に「事前確率が低いと特異度99%でも偽陽性だらけになる」と専門家が解説したが、後に前提の99%が間違いだと検査実績から判明。理論上は感度・特異度とも100%である。
【解説】
厚労省がPCR検査の特異度を99%と低く見積り過ぎたのが間違い。原理上は100%で実績値99.997%。仮に感度80%、特異度99.99%、事前確率(有病率)0.5%としても陽性的中率は97.6%(日本医師会COVID-19有識者会議の試算より)。
そもそもベイズの定理は推定をする為のものだが、クロス表で特異度を100%にすると偽陽性は0と一意に定まり、推定する余地がない。このことからもPCR検査にベイズの定理を当てはめることは間違いだとわかる。
実際の特異度は、その後の大量検査実績のデータから明らかにされている。中国青島1089万人検査の事例では、12名の陽性者全員が真陽性。事前確率が殆ど0%でも特異度は限りなく100%と証明された。武漢、ニュージーランドの検査実績も同様である。
「現実には100%の検査はあり得ない。臨床の現場では人的ミスによる偽陽性が発生する」という意見があるが、実際の影響は微々たるレベルである。そもそもミスだらけの検査など検査とは言えない。厚労省委託事業(東海大)が臨床の現場での実態を調査したが、96.4%〜99.8%の正答率で、一部の仕様を除けば100%であった。このことからも実際の人的ミスの影響は一般の品質管理と同じppmレベルと考えて良い。
人的ミスには、コンタミや検体取り間違えや記入ミス等が考えられるが、それらは通常は特異度に含めない。含めたとしてもベイズ推定に当てはまらない矛盾が生じる。つまり、事前確率と特異度が相関してしまい、ベイズ推定の事前確率が一意に決めれないことになる。また、事前確率(有病率)が低いほどコンタミが発生する確率も減るので、コンタミを理由に「事前確率が低いと偽陽性が増える」とは言えない。
因みに感度については、感度の高低よりも定期的な頻回検査回数の方が重要であるとするシミュレーションがある。感度70%で10日間おきの検査より、感度40%で5日間おきの検査の方が、感染防止対策として効果があるという結果が出ている。
コンタミ等の要因による偽陽性は、こちらでも詳しく解説されている。