PCR検査の陽性的中率の感染率への依存性について

新型コロナウイルス感染症の検査に用いられるPCR検査については、原理的には偽陽性は発生せず特異度が100%であるとされていますが、実際上はコンタミ等の要因により偽陽性が発生する可能性は残ります。

しかし、通常の数値的臨床検査のように、PCR検査の測定値であるサイクル数(CT値)が、特定の値を中心とした一定の分布曲線を示すことを前提にするのではなく、偽陽性を引き起こす事象が偶然的・確率的に発生するということを前提に分析を始めるべきだと考えました。

そこで、まず、偽陽性の発生件数には、①感染率には依存せず非感染率に比例する項からの寄与に加えて、②感染率と非感染率の積に比例する項からの寄与が考えられるので、それらを考慮し、陽性的中率の感染率(事前確率)への依存性を数式化しました。

その上で、感染率には依存せず非感染率に比例する項が無視できないときは、感染率が0に近づくと陽性的中率、陽性尤度比ともに0に近づき、陽性結果のうちほとんどを偽陽性が占めるという結果が導かれましたが、他方で、感染検体からのコンタミ等が該当すると思われる、感染率と非感染率の積に比例する項からの寄与が主要であると考えられるときは、陽性的中率が0ではなく1に近い値に収束するという結果が導かれました。

結論として、感染率には依存せず非感染率に比例する項を低い値に抑えることができるのであれば、感染率(事前確率)が低い場合においてもPCR検査の陽性尤度比を高い値に維持できることが示されました。

最後に、人口当たり感染率が0.001%である場合(1日当たり感染者数では東京都が約140人、大阪府が約88人)において、適切な陽性的中率を達成するための条件を見積もりました。

詳細については添付のPDFファイルをご覧いただけましたら幸いです。

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