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「マスクで酸素不足になる」は誤り

[2023/7/21更新]
「マスクで酸素不足になる」は誤り。拡散したYouTubeは削除済。ReutersがファクトチェックでFALSEと判定。CA大の実験では運動時SpO2が97%。複数論文が安静時や軽度の運動で問題ないと結論。マスクの有無で優位にSpO2の差があった研究結果はない。また、「息苦しさ」は感覚であり「酸素不足」ではない。そもそもウイルスはμm、酸素分子はnm。ウイルスを通すと主張するなら酸素は間違いなく通る。

◾️Reutersファクトチェック
David Icke氏がYouTube で拡散したもの。マスクが酸素欠乏を引き起こし、脳にダメージを与えたり、発育を制限したりするという証拠は無い。マスクは感染拡大の抑制効果が無いというのも不正確で、研究によればマスクは社会的距離等と組み合わせて感染防止の効果的な方法となり得るとReutersは解説している。
https://www.reuters.com/article/idUSKBN2761ZW

◾️米CA大学の実験
マスクは息苦しさの感覚を増加させるかもしれないが、呼吸作業、血液ガス、および他の生理学的パラメータへの影響は小さい。マスク着用時の運動に対する生理学的反応に性差や年齢差を裏付ける証拠はない。外科用マスクまたはN95呼吸器を装着し、中程度の強度で60分間運動してもSpO2は97%以上を維持した。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/labs/pmc/articles/PMC7919154/


◾️二次研究論文(ナラティブ・レビュー)
小児研究1件、成人研究8件のナラティブ・レビュー。安静時や軽度の運動時にガス交換を損なわないと結論を纏めている。異なる年齢層に対するエビデンスは今後の更なる検証が必要。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8014099/

過去によく引用された論文として、子供のマスク装着でCO2増加の悪影響があると発表したドイツの大規模実験の論文があるが、これは後に撤回されている。

◾️健康な小児におけるフェイスマスクの有無による吸入空気中の二酸化炭素含有量の実験的評価(無作為化臨床試験) JAMA Pediatr 2021/6/30
https://jamanetwork.com/journals/jamapediatrics/fullarticle/2781743
◾️撤回通知
https://jamanetwork.com/journals/jamapediatrics/fullarticle/2782288

以下の論文を根拠にマスクで低酸素になると主張する意見があるが、この論文は手術中の医師の状態把握を目的としたもの。低酸素になった原因はマスクかストレスかは不明と結論付けている。

■ Science direct (2008/4)
Preliminary report on surgical mask induced deoxygenation during major surgery
本研究は手術中に外科医のヘモグロビン酸素飽和度がマスクの影響を受けるか否かを評価した。低酸素の原因はマスクかストレスかのどちらかと思われる。https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1130147308702355?via%3Dihub