Dead Cells @ 2019-02-21

【優】メトロイドヴァニア好きは即購入すべき。ローグライトジャンルが好き、ハックアンドスラッシュが好き、アクションゲームが好きな人にも強く推奨。死にゲーが嫌いな人には非推奨。

長所
・アクション感と操作感は最高クラスに良い。2018年最高のアクションゲームと推奨されたのも納得できる完成度。
・ドット絵グラフィックの完成度も高く、敵が弾け飛んで肉塊になっていくのが純粋に楽しい。ハックアンドスラッシュの快感が得られる。
・ビルド要素が非常によくできている。一般的なハックアンドスラッシュゲームに勝るとも劣らないレベルのれっきとしたビルドが可能。各武器の独特の操作感と相まって、ダメージの出し方がビルドごとに非常にユニークで楽しい。
・1ゲームのスピード感が非常に良い。1ランに要する時間はどんなに長くても1時間、短ければ30分前後でクリアでき、ちょっとした空き時間で繰り返しプレイ可能。死亡後すぐに次ゲームが始まるスピード感も相まって、ついつい何度も走ってしまう中毒性がある。
・世界観がなかなか良い。最初は何もわからず牢屋からスタートさせられるのだが、そこら中にゲーム内世界のヒントとなる要素がダンジョン内に落ちていて、探索して読むと世界観が垣間見られるような設計になっている。

短所
・難易度が本当に容赦ない。1.1パッチ後は低難易度設定(ラスボスを初めて倒すまでの難易度)が大きく緩和されて比較的簡単になったらしいが、私に言わせればそれでもひたすら死ぬ。私は最初にラスボスをクリアするまでに15回は死んだ。そしてクリア後の難易度は経験者いわく「5倍は難しい」。
・ローグライトであること。死んでも運のせいにしない、自分の実力と思ってすっぱり笑い飛ばせる精神がないとやってて怒りが無限に湧いてくるためおすすめできない。
・ローグライトのお決まりということでパーマネントアンロック要素が多数あるが、これのアンロックにかかる時間が比較的長く、グラインド感がある。具体的には100時間程度は必要になると思われる。一部の要素についてはプレイヤーが能動的に調べて探索しない限りアンロックが不可能。
・ストーリー要素については薄い。ローグライトにストーリー要素を求めるのが間違っているとも思わなくはないが、薄いものは薄い。一応

開発元はローグヴァニアなどと名乗っているがすっぱり忘れて、ローグライト・ハックアンドスラッシュ・アクションゲームと思ってプレイすると素晴らしい名作。低難易度設定であれば比較的短い時間で何度でも走れてスカッと楽しい。もちろんDark Soul的なマゾ難易度が好きな人にもオススメ。


以下蛇足

私はメトロイドヴァニアというゲームジャンルが大嫌いだ。

私がメトロイドヴァニアというゲームジャンルに初めて出会ったのはおそらくゲームボーイのメトロイド2だったと記憶している。正直に言おう、なぜあのようなゲームを親から買ってもらったのかその経緯すらもはや不明だが、あのゲームは18歳未満の未成年に与えてはならない。そう断言させていただきたい。メトロイドヴァニアというジャンルに対してトラウマを与えてしまい、青少年の健全育成と将来の任天堂のゲームの売上に影響が出てしまうこと間違い無しで、世界にとって何一つ良いことがないからだ。かくして私はメトロイドが大嫌いになった。いまだにスマブラをプレイするときもサムスだけは絶対に選ばない。

時は流れて2000年台後半、ニコ動でドゥエリストが大暴れしているのを見て今度はキャッスルヴァニアに手を出したのだが、これまた探索が無駄に面倒な上、別に爽快感があるわけでもなく、育成要素も別に特段楽しくはなく、そして何よりアクションゲームが大の苦手の私は辛酸を舐めることになった。なんで手を出してしまったのか当時の私を激しく問い詰めたい気持ちだ。これによりメトロイドヴァニアというジャンル名すらまだ確立していなかった時代に、私はメトロイドとキャッスルヴァニアだけは今後死ぬまでプレイすまいと固く誓いを立てることになってしまったのだ。

2019年の2月までは。そう、Apex Legendsである。

私はこのゲームを「タイタン抜きのTitanfall、バトルロワイヤル、F2P」というラベルだけを見てガン無視し、プレイしなかったことに激しく後悔の念を抱いていた。この罪を贖わなければならないと感じていたのだ。そこで、これまで食わず嫌いにより絶対に手を出していなかったジャンルに一つ手を出すという贖罪を行うことに決めた。それがメトロイドヴァニアだ。

一方ちょうどそのころ私はハックアンドスラッシュ欠乏症に罹患していた。ハックアンドスラッシュ欠乏症とはハックアンドスラッシュを長期間摂取しないことによりレジェンダリアイテムのドロップ成分が不足し、道端のゴミ箱を破壊するとレジェンダリアイテムが湧くのではという妄想に囚われ始め、うわごと、ひきつけ、そして死を招くという恐ろしい病気だ。解決法はハックアンドスラッシュを摂取するしかない。

ところが近年ゲーム業界では純粋なハックアンドスラッシュゲームが極端に不足しているという事態が発生している。というか具体的にはPath of Exileぐらいしか元気に運営しているゲームがない。しかしながらPath of Exileは異常とも言えるビルドの複雑さのため全く食指が動かず、Diablo3は爽快感とビルドの簡単さはあるものの底が浅く1月も持たずにやることがなくなってしまい、さんざん遊び倒して飽きてしまったし、Grim Dawnは今ひとつ爽快感が足りずこれも投げてしまった。

そんな元気のないハックアンドスラッシュ界隈を尻目に近年急成長を遂げているのがローグライトジャンルだ。ローグライトとハックアンドスラッシュに何の関係が?と思われるかもしれない。しかしながらこの2つのゲームジャンルをよく観察すると、どちらも同じ快楽成分を摂取することができる作りになっているのがよく分かる。

・ゼロからスタートしてビルドを育成していく育成の楽しみ
・ランダムにドロップする強レジェンダリアイテムを拾うガチャとしての射幸性
・完成したビルドを強敵にぶつけて、そのビルドが効率よく機能して異次元の戦闘力を発揮して強敵がゴミキレのように消し飛んでいくのを見て優越感の極致に浸る快楽

どうだろうか?どちらも同じ快楽成分を得られることがわかってもらえたかと思う。しかしながらハックアンドスラッシュは一度ビルドが完成してしまったら基本的にはそこで快楽成分の摂取が終わってしまうという致命的な欠点を持っている。ドロップしたアイテムを永久に保有「できてしまう」からだ。そこで一般的なハックアンドスラッシュはレジェンダリアイテムのドロップ率を絞って問題を先送りするしか無いのだが、そのため同じ敵を何度も何度も倒しては何も落とさずがっかりするという賽の河原そのもののグラインドを永遠に繰り返さなければならないという原罪を背負うことになってしまった。さらに問題点を無理やり解決するためにPath of Exileはビルドを異常なほど複雑化して最適解の算出と到達を著しく遠くするという苦肉の策にでて、これが成功したためなんとか生き残ることに成功した。が、その代償として新人一見さんお断りの修羅の世界となってしまったのだ。

ところがローグライトはこれらハックアンドスラッシュが抱える問題点をいともあっさりすべて解決してしまった。なぜなら「1ランごとに0からビルドしなければならず」「1ランのプレイ時間が比較的短いためレジェンダリアイテムのドロップ率を非常に高く設定でき」「死んだらすべて消えてなくなってしまうのでまたビルドを作ることができる」からだ。つまりたった1時間の1ランでゼロからビルドを作ってジャラジャラレジェンダリアイテムが落ちるのを見て狂喜乱舞し、最後のボスにそれまでの集大成をぶつけてありえない桁数のダメージが飛び交うのを見て快楽成分を麻薬のようにドバドバ効率よく摂取してしまうことが可能になったのだ。

前置きが滅茶苦茶長くなってしまったが、私はこのような悟りに達したため、ハックアンドスラッシュ欠乏症を治癒するためにローグライトをプレイすることを思い立ったのだ。

メトロイドヴァニアでローグライト、ここまで決まればもはやプレイするゲームは一つしか無い。もちろんDead Cellsだ。そしてそれは大正解であった。私のハックアンドスラッシュ欠乏症はたったの1日で完治し、ひたすら敵モンスターを効率よく肉塊へと轢き潰すために私は連日デジタル世界の牢屋の中を駆け回ることとなった。

Dead Cellsをプレイしてまず驚くのはそのアクション要素の完成度の高さだ。動きは信じられないぐらいなめらかで、コントローラとキャラクタが完全に一体化したかのように自然に動き、イラッとさせられるような不備は相当少ない。操作ミスして被弾したらそれはゲームが悪いのではなくプレイヤーの操作が間違っているのだと納得できる操作感だ。そしてスピード感。適切に自キャラを強化しており、装備している武器に適した戦い方をしている限り、目の前に登場する敵モンスターは3秒以内に確実に肉片になる。しかしながら、回避に失敗したり、相手の強攻撃の兆候を無視したり、パリィのタイミングをしくじったりすると、こちらも一瞬でライフゲージの半分を持っていかれるようなときも存在する。この一方的に蹂躙するか、操作ミスを咎められるか、というゲームバランスの設定が大変絶妙で、最初は回避不可能に見えたり防御不可能に見える攻撃も、ギミックを理解し相手の動きをきちんと見て学ぶと一つ一つはすべて余裕でさばけるように設定されていることがわかる。プレイヤー自身の上達も自ずから促されているというわけだ。

ハックアンドスラッシュには欠かせないビルド要素も大変良くできている。大雑把にまとめるとこのゲームには赤・紫・緑の3属性があり、すべての装備はこの3属性のいずれか、または複合属性になっている。例えば短剣は赤、大剣は赤/緑、弓矢や罠は紫といった具合だ。そしてダンジョン内で拾えるステータス増強の巻物を使用すると赤・紫・緑のいずれかの属性を選んで上げることができ、関連する属性の装備の攻撃力が15%ずつ増えていくというシンプルなシステムになっている。これはシンプルでとっつきやすいが実際に試すと驚くほど奥が深い。さらにこのビルドシステムを彩るのが装備に付与されるAttributeの数々で、例えば「相手を燃やす」「毒の霧を残す」「弾が相手を貫通する」「毒状態の敵にボーナスダメージ」「スタンしている敵に確定クリティカル」「クリティカルダメージボーナス」「パリィ成功時次の一撃が300%増強」などなど、見ているだけで楽しいビルドを組むのには事欠かないAttributeが盛りだくさんになっている。シンプルだが十分に奥が深く、1ランごとに「今回は赤メインの緑サブで行こう」「今回は紫出血ビルドでいこう」などと落ちている装備に合わせて調整しつつビルドを作り上げていく楽しみが十分に味わえる。うまくハマったときの快感は言うまでもない。

懸念されていたメトロイドヴァニア的つまらなさ、すなわち無駄に複雑でWikiを見なければどうしようもないような探索要素についても必要十分に簡素化されており、1エリアが広すぎないように生成されているものの、その中でもきちんと探索すると隠し要素が3つ4つ見つかるようなバランスに設定されていて好感が持てる。いくつかのエリアは明らかに広すぎてストレスが溜まるが、そういうエリアを回避して進めることも可能だ。

本作の最大の問題点はなんと言っても難易度であろう。このゲームは死ぬ。ただ死ぬ。無残に死ぬ。どれほどビルドが完成していても運と一瞬の油断次第でHPほぼ満タンから回復ポーションを残したまま平然と理不尽に死ぬ。正しくローグライトである所以であるが、しかしながらローグライトであることを差し置いても普通に難易度が高い。そんなこんなで何度も死んで悲しみを背負いながらラスボスを撃破したときの快感も相当なものだが、真の絶望はその後からだ。このゲームはラスボスを撃破するたびに新たな難易度が開放される仕組みがあるが、その難易度の上昇の仕方がいよいよもって死ぬがよいというレベルである。どんなに理不尽に思える死に方をしても心が折れないか、自分を律して己のミスを責めるストイックさを持つか、成功時の快楽で失敗時の苦痛を打ち消せるか、単に天性のゲーミングセンスを持ち一切死なないでラスボスを切り刻めるか、そんな人でない限りはこのゲームに嫌悪感を持つかもしれない。

また結局はハックアンドスラッシュやローグライトの宿命通り、ラスボスを切り刻むだけのゲームであるので、最後の最後には同じことを繰り返し続ける作業的感覚が始まる可能性もある。そういうのが嫌いな人にもオススメは難しい。だがそのような欠点を持っていたとしても、Dead Cellsがここ1~2年の間に登場したローグライトゲームの中でも最高クラスの一品なのは間違いないだろう。ラピス・リ・アビスとこっちで悩んでDead Cellsにしたのは大正解であった。なにせ2500円だし。