[poetic story]雪・少年・水/僕ら幻と友人
飢えと渇き、少年は雪を炎で溶かす。水が飲みたい、水、水だ。しかしそれを喉に入れようとしても、水はこぼれてしまう。僕はまるで幻だ。
彼らは永遠に水を飲むことができない。そのような契約をしたからだ。忌々しくも契約書がここにある。雪を炎で溶かすことはできるが契約書を炎で燃やすことはできない。いや、“紙”は勿論燃えるし契約“書”を燃やしたければ燃えるだろう。ただそれは、“契約書を燃やした”ことになる。
だが水を飲みたい。少年は喉の渇きに耐えかねる。炎の力は森を焼き払う。可能性がある。まだそれをしていない。少年は森が好きだからだ。また水があることも好きだ。
「もし、もしかしたら…?」
彼らに仲間はいるだろうか?いや、いない。人間たちは川で水を飲んでいる。それをうらやましく眺めるのだ。渇き、少年は緑豊かな森の中で砂漠にいるような心地がしている。
契約には何種類かあった。空を飛ぶ契約…人気があるものだ。岩を作る契約…マニアックなものだ。やや選ぶ人が少ないがそれなりに人気もある、火を起こす契約だ。
幻に友人はいるか?いや、いない。僕たちは一人で漂っている。ただそれは、愉快な空中浮遊…言い換える、遊覧飛行だ。遊覧飛行に飽きると、幻は少しだけ友人を作る。
「あなたのその手に持っている人形は、なんですか?」
心は我々に聞いてくる。その人形は…?なんだろう?僕の友人だろうか?それとも、空を飛ぶための契約だろうか…?
「潤いの人形…。」
水を飲めない僕は、渇きを潤す方法が無い。僕の代わりに渇きを潤すのは、この手にある人形だ。哀しい程に、彼女は生気を帯びている。
「哀しい程に…!」
少年は雪をより強い炎で溶かし…、爆炎として散り散りにさせる。契約を破棄…?それは無い。潤いを失っても、この契約は魅力的だからだ。ただ友人は欲しい。
心は…その僕たちの貴重な友人の一人として、僕の人形から僕に声をかけてくる。彼女の髪の毛は僕の手にくしゃくしゃと絡まる。
何故僕は火を起こせるのか…?僕は記憶がわからない。人形に聞いてみることにする。何故、この人形は話が出来るのだろう…?
「あなたのその契約書に秘密があるのではないですか…?」
女の子のようなその人形は、僕にそっと声をかける。そうかもしれない。僕は何か貴重な契約をしたのではないか。
喉が…渇いた。僕は水が欲しい。そこにある雪を溶かして水にすることはできるが、喉からこぼれてしまう。僕は…
「まるで幻のようです。あなたは、友人がいないのではないですか…?」
友人はいる。目の前のこの人形は、僕の大切な友人だ。僕は彼女と長い事生きている。ような気がする。
ああ、それでもやはり別の契約をしたかったんじゃないか…?僕はそんな問題を前に観た気がしている。
つまりそれは、遊覧飛行だ。
近代文学こと文学先生は圧倒的な不人気に定評があります。本人は認めませんが、非常に嫌われています。あと、髪の毛がぼさぼさで見ていると嫌になります。何より骸骨と並ぶと見分けがつきません。貴方がコインを落とそうとするその箱はつまり、そういう方にお金を渡すことになります。後悔しませんか?