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西宮ストークス観戦記#20 vs山形2

延長戦の末になんとか山形ワイヴァンズを振り切り、ホームで2連勝を飾った西宮ストークス。とはいえ、リードを2桁に乗せたものの、追い付かれて危うく敗れるところだったことを思えば、手放しには喜べません。というわけで、なぜ延長戦を戦う羽目になったのかを独断と偏見によって振り返ってみたいと思います。

◉試合運びの拙さ

3Qまでの点の取り合いからようやく抜け出し、リードを9点差にまで広げた4Q序盤。中・外とボールを動かしながら、山形のディフェンスが広がったところでタイミングよくブラッドさんのポストプレーを使うなど、テンポがいい。そして、浜高選手のスティールからのリバースレイアップ。ファウルを受けながらも、難しい体勢のシュートをねじ込みました。

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余談だけど、山形のグラム選手の膝はちょっと危ない。でも別に真空飛び膝蹴りをカマそうとしたわけではないと思うし、後ろから思い切り追いかけて踏み切ったからね。この写真もそれを言いたいわけではない。むしろ浜高くんの空中姿勢の美しさに惚れ惚れ。

で、ボーナススローを決めて12点差。正直、勝ったと思った。ところが、ここから急に西宮のオフェンスが大ブレーキ。なんだけど、シュートが入るかどうかよりも謎だったのが、シュートのセレクションや時間の使い方。

①ブラッドのハンドオフからバーンズがペイント侵入→ターンオーバー
②浜高ドライブ→パスアウトから谷ドリブルジャンパー×(残り12秒)、ファウルをもらうもFT1本失敗
③谷コーナースリー×(残り13秒)
④浜高コーナースリー×(残り11秒)


この約3分の間に6点もリードを縮められます。シュートの結果は仕方ないとして(仕方なくないけど)、現地で観ていて気になったのはショットクロックの残り時間。そんなに焦ってシュート打ってどうするんだ? 

12点差が付いたタイミングで残り時間は7分ちょっと。それも一時的に差が開いただけで、試合全体では拮抗した流れだった。こういう時のリードは意外と不気味で、リードの時間帯が続けば相手にも焦りが出てくる一方で、差が詰まってくると逆に相手の方が乗ってきてしまう。しっかりと時間を使い、すなわち相手にとっての時間を殺しながら、自分たちのシュートを決め切ることが求められます。

仮に②〜④が24秒いっぱいまで使えていれば、相手のポゼッションを1〜2回減らせていたかもしれません。追いつきたい相手にとって、一番嫌なのは時間を使われること。もちろん突き放すことは大事だし、守りに入る時間帯ではまだないけど、ここはパスを回しながら、ブラッドさんのポストアップを使ってじっくり攻めるべきだったと思います。要するに試合運びが拙い。

観返すと、③のシュート直後、バーンズ先生があからさまにブラッドさんの方を指さしていたりして、なんとなく意思の統一がなされていない感じも。この時間帯は岸田・浜高を引っ張っていて、結果論ではあるけれど、若さが影響した可能性はある。

◉ボール回しのためのパス

オフィシャルタイムアウトが明けて6点差。ここから岸田・浜高に代わって松崎・道原が入り、現状のストークスにおける一番強いラインアップになります。ところが、その最初のオフェンスがこれ。

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今度は逆にしっかり形をつくろうとし過ぎて、シュートセレクションを見失ったのか。最初の写真でわかるように、道原選手がグラム選手をフェイクで引っ掛けて、完璧にズレができているのにわざわざ外でパスを回して守りやすくしてしまった。確かにボールはテンポよく回るんだけど、それは単なるボール回しのためだけのパスになっていて、土壇場で「俺が試合を決めてやろう」という選手がいないのが西宮の悪いところ。

道原選手にはパスフェイクから中へドライブしてほしかった。そうすればスティーブン・ハートを釣り出せて、シュートをミスしてもブラッドさんが拾ってくれたはず。交代してすぐだからためらったのかな。ここのところやや精彩を欠く道原選手ですが、調子が悪いと気配が消える時が結構あるんだよね。こういう展開の時こそ、負けず嫌いを発揮してほしいのですが。

これで怖気づいたということはないにせよ、その後はブラッドさんのインサイドの強さを使って押し切ろうとします。ただ、あんまり形が良くない。山形にもバレバレの状態でポストアップさせるもんだから、いかにも苦しい。

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これはブラッドさんが囲まれてスティールされたオフェンスですが、これだけ相手が整ってる状態で、かつゴールから離れたところでポジション取らせてもね。もう必死のパッチ。

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それでも2本に1本は決めてくれるブラッドさんのありがたさ。これなんて速攻に近い形で、先頭を走ってポストアップしてくれてるんだ(そしてシュートを入れる)。むしろ、岸田・浜高が出ていた時間帯にこのパターンで時間を使えていれば、もっと山形は焦れていたはず。せっかくシュートの上手い選手がたくさん出てきたのに、センターに頼りきりでどうすんの。

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◉疲れと焦りがミスを生む

2連戦の終盤の疲労、しかも2桁リードを失った焦りから、西宮はミスを連発します。まあ疲れてるのは相手も同じだけど、「追い付かれると途端に感じじるようになる」って、陵南の田岡茂一監督もスラムダンクで言ってたし。

・残り1:56、山形の選手のフリースローミスに反応できず、シューターにリバウンドを拾われてそのままレイアップ
・残り1:31、エンドラインからのインバウンドパスを、フリーの選手に通されて3Pを献上(これで逆転)

他にもあるかもしれない。で、極め付きがこれ。

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同点から、残り7秒でグラムに逆転シュートを決められたてすぐに、タイムアウト(TO)を取ってくれとベンチに要求する松崎&道原。いやいやいやいやいや。

もう、な・い・か・ら。

ゲームに出ている選手がTOを請求できるNBAなら、うっかりするとテクニカルファウルを吹かれるかもしれないシーン(残っていないのにTOを請求したた場合テクニカルファウルとなる。今年のNBAファイナルの最後を観てみよう)。で、ブラッドはちゃんとわかってて、「早く攻めないと!」と言ってるというのはどういうことなんだ…。谷さんもベンチに帰ろうとしてるし。

最後の最後もシュートミスをブラッドさんがなんとか押し込んでくれて延長戦へ。いやほんとによく勝てたよ。ところで、グラムはなんで7秒も残してシュートしたんだろう。延長戦は嫌だったのかな。

◉山形の事情

とまあ、ここまでは西宮側からの話で、これで終わると単なる愚痴。まあ、終わってもいいけどさ。ところが、現地で観戦しながらも思っていたのですが、山形の事情も合わせて考えてみると、話はもう少し複雑です。

ビハインドが9点となり、タイムアウトをコールした山形は、4ファウルでベンチに下がっていたエースPGの河野選手をコートに戻します。これ以上離されるわけにはいかないため、勝負に出たわけです。基本的に山形の攻撃はこの河野選手が起点で、トップでボールを持つ河野にハートがスクリーンをセットするところから始まります。3Qもほとんどがその形で、西宮はかなり手を焼いていました。そして、西宮がリードを広げたのは河野選手がいない時間帯でもありました。

なぜ手を焼くのかといえば、山形のオフェンスはほぼストロングサイドで完結することと関係しています。ストロングサイドとは、ボールがある方のサイドのことを指します(ちなみに、反対側はウィークサイドね)。

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例えばこのシーンでは河野選手からグラム選手にボールが渡り、ハート選手がインサイドで待ち構えています。

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すると、コーナーにいた選手は逆サイドへと流れて、ボールを持ったハート選手が1on1を任されます。よく見るとグラムも「よろしく」みたいな感じになってるし(笑)ここまでわかりやすいパターンばかりではありませんが、基本的にはボールの周辺で攻撃が行われるのが山形のオフェンスの特徴。それはつまり、攻撃に参加する選手の数が少ないということでもあります。

今シーズンの西宮の守備は、オフボールでの相手の動きに対して、スムーズにマークを受け渡して、フリーをつくらせないことを徹底しようとしています。それが上手くいったのが茨城戦や広島戦かな。ところが、山形のように限られた人数でオフェンスを組み立て、個人技を前面に押し出してくる場合、西宮の得意なディフェンスを発揮する余地がありません。だってボール回らないんだから。個人対個人の勝負にならざるを得ない。

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これは中央を突破されたケースですが、攻撃に参加してるのは河野とハートの2人だけ。さんざんシュートを決められているハートをフリーにはできないから、ブラッドさんは無闇に下がれない。そこを突かれました。両サイドの谷・バーンズがもうちょっと絞るべきだけれど、グラムをフリーにするのは勇気がいるし、そもそもスピードが速いし。4Qの山形はとにかくこの2メンゲームを繰り返していました。

何が言いたいかというと、もちろん西宮の拙攻はあったにせよ、山形は上手く攻めた、よくシュートを決めた。グラムの得点力も含めて、個人の強みをガンガン押し出してくる山形は、組織的に守りたい西宮にとってはやりづらい相手だったわけです。個人の長所に頼るオフェンスには波があり、上位チームはあまり採用しない戦術です。その意味では、選手層では劣るチームが一矢報いようと練った策がハマったとも言えるのかもしれません。

ただ、河野選手のようなスピードのあるPGと、ハート選手のようなシュートレンジの広いセンターのコンビにはかなり苦労するということがわかったのは収穫。西宮の守備のマークの受け渡しというのは、ボールのないところの方が威力を発揮するから、こんな風にどシンプルに2メンゲームを決められると、マークの受け渡しもへったくれもない、ということなんだな。

まあ、スクリーンの対処については、無理にファイトオーバー(スクリーナーの前を通ること)する必要はなかったのかもしれない。そのせいで全部遅れてたからね。

というわけで、苦戦にもやっぱり理由があって、それは自分たちが原因のことも多いけれど、相性だって当然ある。いろいろな理由が積み重なって、危うくホームで大逆転負けを喫するところだった。勝って兜の緒を締めよう、いやマジで。


※このnoteは単なるファンの個人的な感想であり、
西宮ストークスとは一切関係のない非公式なものです。

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