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西宮ストークス観戦記#21 @福島1

今節の対戦相手、福島ファイヤーボンズは非常に特徴的なチームです。FG%は低く、3P%はB2で最下位。シューティングに難を抱えています。それを補うのが、オフェンスリバウンド(リーグ2位)とファウルドローン(リーグ1位)。いわゆる「ハッスルスタッツ」と呼ばれる部分です。シュートは入らない代わりに、アグレシッブにアタックしてファウルをもらい、外れたシュートのリバウンドを拾ってセカンドチャンスに繋げる。つまり、シュートの確率を高めるのではなく、シュートの回数を増やすというアプローチ。これはこれで合理的ではあります。そうした明確な特徴を示すチームを相手に、西宮ストークスはどのような戦いを見せるのでしょうか。

◉速い福島、遅い西宮

試合が始まってまず驚いたのが、福島のネパウエがいないこと。あれ? と思ったら西宮はバーンズがいない。情報をシャットダウンして書いているので、何があったのか知らないけれど、とにかく互いに影響は大きそう。

さて、始まってみると試合は予想通りというか、余りにわかりやすくて笑ってしまうくらい。とにかくガンガン攻めてくる福島は、やっぱりシュートを打つタイミングが早くて、ショットクロックの存在を知らないかのようにシュートを狙ってきます。で、ミドルレンジ以遠はやっぱりそんなに入らないんだけど、「それがどうしたの?」という感じでオフェンスリバウンド(OR)を狙ってくる。完全にもうそれがスタイルになっていて清々しい。

一方の西宮は、ネパウエがいないインサイドを中心に、ブラッドさんの強さを活かして楽に得点していきます。道原選手も今日は調子が良さそう。こちらはいつも通りじっくり形をつくっていく立ち上がり。それはもう対照的で、福島の攻撃2回分の時間で西宮が1回攻撃するといった感じで、だからあまり点差が離れません。

福島はネパウエがいないことで、いつもに増して速い。そして、どの選手も意識してインサイドを攻めてきます。そう、ミドルが入らないなら打たなければいいんだ。西宮はちょっとオーバーに守り過ぎてるような。引いて守って打たせておいて、リバウンドをしっかり抑えればいい、くらいの余裕がほしい。抜かれているわけではないけれど、ゴール下をしっかり決めるし、外れても拾う選手がいる福島。なかなかここまで徹底してくるチームはないから、動きの激しさと量に西宮の選手が受け身になっているように思えます。

◉ベールを脱いだ秘密兵器

そんな中、谷口選手がファウルトラブルでついに新加入の劉選手が登場します。バーンズ先生がベンチにもいないし、これはあるぞ…と思っていたらとうとうデビュー。で、プレーはと言うと、ほぼスクリーン専門だけど、ブラッドさんにダブルチームが寄った時には上手く合わせてダイブしてました。これが決まるようになればツインタワーで面白い。ボールがなかなか手に付かない様子だけど、最初はそうだよね。噂にだけは聞いていた高いアーチのショットをゴール下で決めて、「ああやっぱりそうなんだ」と、妙に嬉しくなってしまった。

◉「いつも通り」のせめぎ合い

1Q終盤からブラッドに代わって土屋選手が登場。岸田&浜高選手も出てきて西宮も控えメンバーが中心に。ただでさえアップテンポな福島に対して、西宮もあまり組まないメンバーでやってるもんだから、試合が落ち着かないったらありゃしない。なにせ今シーズン初めて試合に出る選手がいるから当たり前なんだけどね。ファウルが嵩み、パスミスが増え、ピリッとしないプレーが続きます。福島もHCのテクニカルとかで付き合ってくれるのが、またそれに拍車をかけている。

だから走り合いのようになるのも当然なんだけど、そんな時に活きるのが岸田選手。ボールをきっちりコントロールして、局地戦で勝てる場所を見極めてパスを回していきます。その「確実性」によって、2Q中盤から少しずつリードをしていく西宮。ブラッドが戻ったから、というだけのことかもしれないが。

しかし、6点差まで開くものの、福島のテンポは止まらず。得意ではないはずのアウトサイドを連続で沈め、主導権を渡しません。なんとなく「そこで打つの?」みたいな雰囲気の漂う西宮のディフェンス。「いつも通り」ちゃんとやりたいんだけど、それを許してくれない福島のセオリーのないようなオフェンス。でも、それはまた福島にとっては「いつも通り」なわけで。ハイペースで慌てさせたい福島と、じっくりセットして押し切りたい西宮。両チームの「いつも通り」の思惑が、噛み合わないまませめぎ合い、西宮の2点リードで前半が終わります。

◉お互いのバスケットを繰り返す

試合のペースを掴むのはどっちだろう? インバウンドパスをスティールした松崎師匠のレイアップが外れて始まった3Q。なんというか今日の試合を象徴するようなプレー。ブラッドさんのインサイドで西宮が少しリードしますが、それだけ続ければ誰でもわかるだろうという感じで、インサイドを封じられるとあっさり福島が逆転。うーん、このへんはバーンズ先生のいない影響かな。個人技でこじ開けてくれる存在のありがたさ。道原選手にやってほしいんだけど。

一方の福島はまさかのスリー3連発。データでは読めないバスケットボールの面白さ。一気に福島がリードする展開になります。今日は終始、審判の笛の基準と合わない西宮のディフェンス。守備からリズムをつくれないのも、いい攻撃がつくれない理由でしょうか。とはいえ、中に入れさえすればブラッドさんが点を取ってくれるんだ。だったらそこを使うのも当然だけど、それしか打つ手がないのなら、また違う問題が発生するわけで。3Qはほぼブラッドしか点を取ってないんじゃないか。

結局、西宮はひたすらブラッドさんを使い続けることで、いつものバスケットを繰り返している。で、福島もまたフローないつものオフェンスを繰り返していて、それが決まるためにリードしたものの、フローゆえに試合を支配するまでには至らない。福島が3点リードで終えた3Qは、やっぱりお互いがお互いのバスケットを繰り返していたのでした。いや、なんかほんとオフェンスとディフェンスで違うルールの競技を観てるみたいだ。

◉「フロー」を信じた福島

4Q、福島のオフェンスがペースダウン。急に時間を使ってセットプレーを組んできたりして。すると、途端にシュートが落ち始める不思議。特に西宮のディフェンスが良くなったわけではない。なんだろう、「動的平衡」(@福岡伸一)とでも言うのだろうか。フローな状況にないとシュートが安定しないというのは何なのか。となると、「安定」を指向し続けている西宮がリードをするのは道理。ブラッドのインサイドに速攻や道原選手のジャンプシュートを織り混ぜながら、トキオのダンクでダメ押し。岸田選手がクラッチのスリーを決めて、7点リードでオフィシャルタイムアウトを迎えます。

ただ、この後も福島はシュートを外してくれていたのですが、さらに突き放すことができず、これが最後に西宮の首を締めることになりました。ゲームクローズの拙さが露呈してしまい、土壇場で逆転負け。うーん、やっぱり1点差に追い付かれた時のあのトランジションからのスリーだよね。今日の福島なら入ると思った。だって「フロー」だから。最後の4点プレーも、決して褒められた選択ではないと思う。だからこそ入ったとすら言えるかも。最後の最後でフローを取り戻した福島は、それを信じ続けたからこその勝利と言えるのかもしれません。

インサイドを支配し続けたブラッドさんのフリースローミスで失ったというのは余りに残酷な試合。バーンズ先生の存在の大きさと、ずっとそれに頼ってきたチームの脆さが如実に出た敗戦でした。


※このnoteは単なるファンの個人的な感想であり、
西宮ストークスとは一切関係のない非公式なものです。





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