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西宮ストークス観戦記#61 魚心あれば水心

今シーズンの西宮ストークスのHCを務めたマティアス・フィッシャー氏が、来シーズンも指揮をとることを発表しました。

シーズンが中断されたとはいえ、4月のこの時期に来季のHCが決まるなんて予想もしていませんでした。ここ2シーズンはHCの発表が夏になっていたことを考えても、極めてスピーディーに決まったと言えるでしょう。

◉ポジティブでありシビア

HCが早い段階で決まるのはチーム編成にとってポジティブなことです。

まずはやはりHCの思い描く戦略・戦術に合致した選手でチームを構成できる点が挙げられます。メンツがあらかた決まった状態で指揮を任されると、どうしても戦術に対して選手を当てはめる感じになってしまいます。選手は当然、出場時間を得るためにアジャストしようとしますが、プレースキルがシーズン中に大きく変わることは稀で、やはり限界があります。要は「やりたいバスケット」ができないということ。

その点、来シーズンは編成の段階からHCの考えを元にチームづくりに着手でき、100%思い通りに行くわけではないにせよ、フィッシャーHCの思い描くバスケットボールを追究することができるわけです。フィッシャーさんがどの程度、ストークスのフロント(社長やGM)に対してものが言えるのかなんて知る由もないけれど、在籍選手のうち誰を残すのかや、FAでどんなタイプの選手を獲得するのか、HCからある程度注文が入るはず。そう考えるのが自然でしょう。

となると、ポジティブな反面、ファンや選手にとってはシビアな現実も待っているわけで、HCが使いたいと思う選手は来シーズンも継続のオファーをする可能性が高く、そうでない選手は契約をしないかもしれない。その「優先順位」となるのは、普通に考えれば、今シーズン(特に後半)のプレータイムです。

また、選手側の視点で考えれば、HCが決まっていることで自らの去就の判断をしやすくなるというメリットがあります。FA選手と交渉を行う際にも、どのようなチームづくりをするのかを明確にした上で話し合いができ、チームにフィットすると思われる選手に対して具体的な提案を伴ったオファーをすることが可能になります。

事実、フィッシャーHCは契約延長に際して、「成熟したチームを作り上げることを追求したい」とコメントしています。ここから読み取れるのは、昨シーズンから大きくスタイルを変えることはないというメッセージ。これが正しければ、すでに主力選手とはある程度、来シーズンの話がついているのでしょう(知らんけど)。コアは変えずに、そこに何枚かアクセントとなるピースを加えたい、そんな風にHCとストークスのフロントは考えているのでないでしょうか(知らんけど)。

一方で、HCが変わらないということは、これまで試合に出られていない(or出場時間の少ない)選手はたとえ来シーズン在籍したとしても、その状況が続く可能性が高いということを意味します。そうであれば、ボーダーライン上にいる選手は、自分の可能性を信じ、FA市場に打って出て自らの価値を試すという選択肢もあり得ます。その決断を促す意味でも、HCが早めに決まるのはポジティブだと考えています。

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◉フィッシャー流を考える

ブースターの間ではおおむね好評価を得ているように見える今回の契約延長ですが、フィッシャーHC自身について考えてみましょう。

今シーズンの成績は29勝17敗(勝率.617)でB2全体では5位、西地区では2位。勝率5割以上のチームに対して11勝9敗と勝ち越してはいるものの、B1昇格を果たした同地区の信州との対戦は4戦全敗でゲーム差は実に11。広島、仙台、群馬といった強豪にアウェーで1勝1敗に持ち込む勝負強さを見せることもありましたが、下位相手に取りこぼす脆さも見え隠れしました。要するに、強いっちゃ強いし、弱いっちゃ弱い。要してないじゃないか。

これらのすべてをHCの責任に帰するのは酷だし、選手のキャラクターに依存する部分も大きいわけですが、個人的には上々だと感じています。外国人監督にとって決してやりやすい環境ではないBリーグで、しかも来日初年度での成績と考えれば、充分なのではないでしょうか。そのあたりの困難さは、池野マネージャーのnoteでも窺い知ることができます。

フィッシャーHCのバスケットボールの特徴を挙げてみました。

■オフェンス
・セットプレー中心。というか至上主義。しっかり「構築する」。
・ただし、バリエーションは多い。対戦相手によってスペシャルなセットを要してくることも。
・その分、トランジションで優位に立つ意識は薄い。よほど有利でない限り、速攻でもシュートへは行かせない。
・戦術ではピック&ロールを多用。そのハンドラーとシューターを両立できる選手を好む。
・そこにブラッド選手のポストアタックを組み込み、インサイドでもアウトサイドでも「確実性」の高いシュートを追及する。
■ディフェンス
・基本的な考え方は「オープンの選手をつくらない」。
・特にウィング近辺ではマークマンの受け渡しが頻繁に起こる。
・ミスマッチも厭わないが、ビッグマンは可能な限りスイッチバック。
・高度なコミュニケーションが必要なため、選手によってルールの習得にバラつきが生まれる。
・出場時間によって差が出やすい。
・トランジションの守備は、そもそも想定していないので脆い。

あくまで個人の見解です。ブースターのみなさんのご意見はいかがでしょうか。確実性や堅実さを好むコーチであり、その点はストークスにフィットしている気はします。チーム側だけでなく、フィッシャーHC本人にも手応えがあったのではないでしょうか。だからこそ契約延長に至ったのでしょう。

ところで、テクニカルファウルの多さを懸念するブースターの声が散見されますが、私は全然気になりません。勝てていないならともかく、ある程度の成績を残しているんだし。現地観戦は少なく、基本がバスケットLIVEでの観戦だからというのは大きいと思うけれど。

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日本の審判の基準に合わせられないのが問題という理由が成り立つのなら、日本の審判が外国人HCの感情表現に慣れていないという理由も成り立つはず。「日本ではこうなんだからアジャストすべき」という指摘に対しては、現時点では審判のレベルが高いとは言い難いBリーグの現状では、それは低きに流れろと言っているのと同じであり、発展的ではありません。「必要悪」かもしれないけれど、いつまでもそれを求めていたら日本のバスケットボールの国際的な地位向上は望めないんじゃないかな。

とはいえ、2年目なんだから来シーズンはアジャストしていこうぜ、フィッシュ。表現の仕方にもいろいろある。あなたならもっとたくさんの引き出しがあるはずだ。寛容と共感。魚心あれば水心ありだ。

予想だにしなかった早い時期のHC決定のニュースに、個人的にはストークスの「本気」を感じています。端的に言い換えれば、「勝ちに行っている」ということ。来シーズンのレギュレーションや同地区の顔ぶれを考えると、なんとなくそれが透けて見えるのですが、それはまた別の話(王様のレストラン・CV森本レオ)。


※このnoteは単なるファンの個人的な感想であり、
西宮ストークスとは一切関係のない非公式なものです。



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