![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/51025565/rectangle_large_type_2_9112d912dbb808eae60470d61c75b012.jpeg?width=800)
『臨月2』
この世に生を受ける前、震える子犬の格好で悶々としていた。
淡い月の光が行く手を照らしたけれど、星屑の砕けた破片が吸い込まれるだけだった。
ブラックホールほどの強大な暗闇に魂が押し潰されて、僕は一人ぼっちで震えていた。
この世に生を受けた後、鉛みたいに重い疲れに苛まれ、身動きする事をやめて、深海の奥底へ、奥底へと沈んでいった。
淡い月の光が行く手を照らしたけれど、闇夜の彼方へ星屑の砕けた破片が押し出されて行くだけだった。
昼も夜も定まらず。春も夏も秋も冬も定まらず。
瞼を閉じたり開いたり。
手を閉じたり開いたり。
死に場所を探すために生きるのか。
生きるために死に場所を探すのか。
すり鉢の奥から綴れ織りの道が伸びて行く。
淡い月の光が僕の行く手を照らす。
綴れ織りの道が、上へ上へと伸びて行く。
淡い月の光が、雪野原を照らし出す。
月夜の光と影の境界線。
それは母が作ったものだと教わった。
写真 小幡マキ 文 大崎航
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?