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鉄道車両工場の撮影は、今後プチ炎上を繰り返して合意形成がなされていくと思う

定期的に撮影する人が出ては、「撮影禁止だろ」と謎の炎上をする鉄道車両工場の撮影。

これ、今後何度も同じことで炎上して、段々とファンの中で合意形成が取られていくんだろうなぁと静観していますが、正直なところ「撮影禁止というのは無理筋だな」と感じています。

「撮影禁止」の根拠

私が大阪在住なので関西圏の話をしますが、こちらには「近畿車輛(東大阪市)」と「川崎車両(神戸市)」の2メーカーがあります。

近畿車輛はJR学研都市線沿いに、川崎車両は公道上を横切る場所に位置しています。

特に、近畿車輛の工場外周には大きなフェンスが立てられると共に

警 告
当社の施設・構内を撮影する迷惑行為はやめて下さい。不審者発見時は警察にすぐに通報します

近畿車輛の壁より

という、物々しい札が掲げられています。

おそらく、撮影禁止と(脳死で)リプするのはこれが根拠になっています。



「人の目線」かどうか

以前、東京都がGoogleストリートビューで出した提言関係に興味深い資料が掲載されています。

撮影の態様については、後述の肖像権が問題となった事案における裁判例を 参考 にする限り、公道からの撮影は不当な態様での撮影とはならないことが 多いと考えられる。(中略)また、我が国の住宅事情にかんがみれば、人の目線を大きく超えるような高さにカメラ位置を設定して撮影すると、結果として塀越しに家屋をのぞき見て撮影しているのと同様となり、やはり不当な撮影態様とみられる可能性があることから、サービスに支障がない限度で、可能な限り人間 の目線に近い位置にカメラ位置を設定して撮影するなどの配慮も必要である

https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/bunyabetsu/machizukuri/pdf/digital03_5.pdf


また、福岡高裁で審理された「ストリートビュー洗濯物撮影事件」によると、

公道において写真・画像を撮影する際には,周囲の様々な物が写ってしまう ため,私的事項が写真・画像に写り込むことも十分あり得るところであるが,そのことも 一定程度は社会的に容認されていると解される。

https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/bunyabetsu/machizukuri/pdf/digital03_5.pdf

という判例が出されています。

これら事例を見ると、人の目線の高さ(140~190cm程度)から見ることが出来るものは、撮影しても受忍限度の対象になる(=不法行為ではない)ので、メーカー側がどう言おうが

・公道からで
・人の目線の高さの場合に
撮影禁止というのは、やや無理筋があると解釈できそうです。

「受忍限度」とは、社会生活を営む上で我慢するべき限度のことを指します。法律的な話でよく出てくるワードです。

逆に言えば、これらをクリアすべく、近畿車輛は外周に大きな塀を掲げているものと思われます。

壁面は200cmぐらいの高さがあるので、「撮影しようと無理に塀をよじ登らない限り」は撮影できません。

線路からは?

さて、よく炎上するのは学研都市線の車内から近畿車輛を撮影する場合です。

ただ、この場合も先程書いた

・公道から
・人の目線の高さ

からの撮影に対し「撮影禁止というのは無理がある」と同じ考え方が出来そうです。

鉄道施設は公道ではありませんが、切符を買えばあらゆる人が乗車することが出来る公共交通機関ですから、実質的に公道に準じた存在であると言えます。
したがって、電車の車内から近畿車輛を撮影するのは、基本的に問題に出来ないと言えます。

近畿車輛側が撮影禁止といえるのは、JRとの敷地仕切り部分に大きな塀を作って初めてそれが言えるでしょう。
これだと「(準)公道から人の目線の高さで」撮影が出来なくなりますから。


撮影とアップは違う概念

ここまでは撮影禁止についての是非を話しましたが、ここからは「ネットにアップする」の是非。

「撮影禁止」に関しては無理筋だと考えますが、一方でネットにアップ(公表する)という点を禁止にするのは一定の筋が通ります。

勘違いしがちですが、撮影=公表ではなく、「撮影する」と「公表する」のは全く異なる概念です。

鉄道車両メーカーが、機密情報を公表されることによって損害を被る場合、民事訴訟に発展するリスクもあるでしょう(機密情報ならメーカー側が隠そうとする姿勢も必要になりますが)

つまり近畿車輛が出すメッセージは、「撮影禁止」ではなく「公表禁止」「インターネットにアップしないで下さい」が、まぁ妥当な点ではないでしょうか。


「撮影禁止」は過去の価値観へ

以上のことから、度々炎上している鉄道車両工場の撮影案件。

ただ、2021年頃は「撮影禁止だろ」と脳死で言う人が多かったですが、2023年頃から無理のある主張だと気づいたのか、半々程度になった印象もあります。

この流れを見ると、将来的には撮影禁止だと言う人もかなり少なくなるのかなぁ…と感じました。

私自身は、普段お世話になっている方から「出来れば撮影しないで~」とゆるくお願いされているので、近畿車輛の撮影をしていません。
…が、この人物がいらっしゃらないなら上記理由から普通に撮影していたと思います…。

2024年時点では体感的に半々ですが、この先別の看板が出されたり、看板が取っ払われたり、訴訟が起こされたり…なんて事例が出てくるかも知れませんね。

ファンの間で、どのようなコンセンサス(合意形成)がなされていくでしょうか。


こちらに来た意見

モラル

こういった意見は「全体主義ぽくて私は嫌だな。」と感じました。

そもそも倫理観(モラル)やら「人としてどうか」やらは、突き詰めると「個人の価値観」という正解がない、抽象的な話になって終わるだけです。

「その価値観にはそぐわないので従いませーん」いう選択肢を取る人もいるでしょうし、何より強い言葉で相手をコントロールしようという意図が見え透けます。

鉄道撮影に限らずですが、行動は自由であるべきと考える私にとっては「非国民」「贅沢は敵だ」みたいな、戦中日本の軍国主義・全体主義っぽさを感じるこれらは一番同意できない意見です。


プライバシー

「プライバシーを侵害している」という意見も見ましたが、「プライバシーや肖像権」は、人に適用されるものであって、モノは対象外です。

つまり、電車を隠す必要はありませんが、車両工場の人の顔は隠すべきでしょう。


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