独りよがり恋愛

私は、学生時代モテる方では無かったが、それなりに恋愛をしてきたと思う。

高校1年生から大学1年生まで、1度も別れることなく付き合い、その後付き合った人間とも2年近く一緒にいた。
しかし、長い恋愛である程良いのかと言われればそんなことは無い。

片方が我慢をすれば、ただ長く付き合うことは可能である。
私は、我慢をする人間だった。いや、我慢をしているつもりはなかったが、カッと怒れない人間が故に(1度怒らなかったものを今更ここで発散してもな)と妙に冷静になってしまう人間なのだ。

相手から、何かを怒られた際には(私に非がある無い関係なく、この人を不快にさせたことは事実である)と飲み込み、謝罪をする。
それをしていると、相手は(この子は怒らず、俺が怒っても何も文句を言わない)となるのだ。
そして、恋人を否定するなんてことは無い。私は亭主関白の男がとてもお似合いだと自分でも思う。

しかし、それをずっと続けていると(なんでこの人の為に私がこれをしなければいけないのか)となっていくのだ。「ありがとう」が無くなる時、人は悲しくなる。そして私に対する「思いやり」が無くなった時、その人に対して嫌悪感を抱くであろう。無駄な時間とはおさらばだと、一方的な別れを告げ、今までは恋愛を終わらせてきた。無論、私は亭主関白の男が好きでない。

いままでしてきた恋愛が、いい恋愛だったのかと言われれば、全然いい恋愛ではない。むしろ、私と相性がいい悪いなんて分からず終わっていくものだ。

私自身、恋愛は苦なのかもしれないと思い始めていた。誰とでも長く付き合えるけど、誰もが私自身を好きなのではない。

自分にとってなんでも肯定してくれる、やな事はしない、何か悪いことをしても怒らない、都合の良い彼女という存在が好きだったのだ。

これは、私でなくても良い。そういう存在なら、別にいいのだ。
そう思うと、恋愛がなんだか分からなくなる。
だからこそ、人と生活を共にするのは好きでは無いのだ。許容範囲を広くしなければいけないから。

恋愛は糞だと思っている時、私は男性を『人間』としか見ない。いや、そもそも恋愛感情で男性を見る事がなかなかないが、『人間』は人間でしかない。性別の違いなんて、血液型の違いや食の好みの違いと同じ様なものである。ただ、括りがあるだけで、その括りに対して云々思わない。

人間には、基本優しくする。興味がなければないほど、優しくできる。

興味のない人に何かを言われて、否定するほど興味が無い。しかし、興味を持つふりは得意である。
というか、興味を持った振りもせず、『それ興味無いよ』という態度をとったまま他人と接するなんて失礼なので、相応の返しをする。

恋愛観、倫理観を聞くのは好きだが、他人に真面目に語る事は無い。しかし、オープンに見せかけることは得意である。少し、自分のダメな部分や恥ずかしい部分、そのたった一欠片を見せるだけで、(この人は自分に対してオープンにしてくれている)という安心感を与え、己の部分を見せてこようとする。
その部分への興味は一切ないが、信頼してくれていると悪い気はしない。自分は信頼しないが。

それを周りにしていくと、不思議なことに『独占欲』を持つ人が生まれる。
私が、人にありがとうと言われることをする度に『そんなの、貴方がすることじゃないよ！優しすぎるよ!』と怒られる。しかし、その人に対して断ると言う行為をすると、前と違うと言いながら悲しむ。誠に遺憾である。

自分だけの優しさ、自分だけの肯定、自分だけの女性になってほしいのだろう。しかし、私はそういうつもりでやっている訳ではない。人と接するにあたって一番楽な方法をとっているだけなのだ。
（なぜこの人は、自分だけ特別優しくしてもらえると思っているのだろうか）と不思議になる。私が他の人にいい事をしなくなった時、あなたにもしなくなるだけなのだが。

思わせぶりな態度をとるな、と怒られる事がある。しかし、私は恋愛において『友達だと思ってる人から告げられる好意って、悲しいよね。縁切らなきゃいけなくなるから。』と言うし、ボディータッチもしない、自分から遊びにも誘わない。

「俺ばっか、話しかけてるね」
「俺ばっか、遊び誘ってるよね」　
と、言い出したら末期だなあ、と感じるように成長をした。このフレーズを言い出したら、距離をどんどん離していく。しかし、この末期の時間にどれだけ距離を置こうとしても、相手は離れようとしない。

話しかけられたら答えていて、遊びに誘われたら行く、と言う事をやっているだけで、なぜ同じ熱量で私があなたを好きだと思うのだろう。

自分の感覚を押し付けすぎる。独りで恋愛はできるものではないのだ。

この世には、なんでも肯定してあげられるような人間が少ないのだと思う。
私が、思わせぶりな事をしている訳では無い。世界が愛に飢えているだけなのだ。

ただ、笑って興味のあるふりをするだけで、自分にしか見せない部分だと信じて止まない人間がどれほど居るのだろうか。

このような恋愛を独りよがり恋愛、という名前をつけている。はやく相応な愛に満ちた世界になりますように。