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#6 築古マンションの今後

築後30年以上経過しているが、リノベーションされていて、室内はとても綺麗な中古マンションが売りに出ていたりと、現在、不動産の市場には多くの築古マンションが売りに出されています。

今後も築古マンションは増えていき、分譲マンションの総数はどんどん増え続けていくでしょう。(そもそもどこからを築古と言うのかという話なのですが、築後何年経過したものを築古と呼びましょうという規定はありません。一般的な話になってしまいますが、築30年を過ぎたあたりから、築古と呼ばれていることが多いようです。)

まずは、中古マンションの現状を見ていき、その上で築古マンションやマンション自体は今後どうなっていくのかについて考えていこうと思います。

中古マンションの現状

2021年末時点のデータにはなりますが、築40年以上のマンションは115.6万戸(マンションストック総数約685.9万戸の約17%にあたる数値)となり、10年後には約249万戸、20年後には約425万戸となるとされています。この数字ではピンとこないかもしれませんが、要するに築40年以上となるマンションが今後どんどん増えていきます。

※マンションストック総数とは、日本全国に既に建築済みのマンションの戸数の総数のことです。以下の表は国土交通省の「築後30、40、50年以上の分譲マンション戸数」から引用しています。

「築後30、40、50年以上の分譲マンション戸数」

このように築古マンションは現在でも相当数あり、今後も増え続けていくということがわかります。では次にそういったマンションに住み続けると将来的にどうなっていくのか?ということを見ていきたいと思います。

マンションは住み続けたら、どうなっていくのか?

「今住んでいるマンションに住み続けたら、どうなるのか?」一般的なケースではありますが、下記のようなケースが考えられるので、ご紹介していきます。建替え案が出る前に売却するという選択肢は除外しています。

①建替え

日本に初めてマンションが誕生したのは今から約60年前となり、国土交通省によると、国内で実際に建替えられたマンションの実績数は、2020年までで254件とされています。
2021年4月1日時点においては、累計で263件となり、2021年に建て替えられたマンションは全国でたった9件ということになります。
この少ない事例の中でも、これまで実現した建替えは小規模な場合が多く、過去事例全体の約8割が100戸以下となっています。ではなぜ、これほど建替えが少ないのか?以下に考えられる理由を説明していきます。

マンション建替えのためには、そのマンションに住む区分所有者の5分の4以上の決議が必要となり、これを「建替え決議」と呼びますが、まず、この建替え決議を取ることが極めて困難な作業になるようです。
また、建替えをするには、建替え期間中、所有者は他の家に引っ越す必要がありますし、他にも修繕積立金を多く徴収されるケースなど、区分所有者の経済的な負担やその他の負担は大きいようです。

マンションごとの事情や状況で変わってきますが、建替えをするための区分所有者の実質的な負担額は、一般的に1戸あたり1,000〜2,000万円程度と言われています。築古マンションには年金生活を行っている高齢者の方も多いため、区分所有者に一定の経済的負担を負わせる建替えは、合意が得られないことが多々あります。

その他にも理由はあるでしょうが、上記のようなことからも建替えを実現することは決して簡単ではないと想像できます。(※敷地が広い、容積率に余裕があるなどのマンションは負担金を少なくできる可能性があります。簡単に言うと、建替えによって現状よりも戸数を増やし、その増床した部屋を売却し、その売却益を建替え費用に充てることが出来る。)

また、建替えの案が出てから建替えが完了するまでには、相当の期間を要します。過去の事例でも10年以上かかっているものもあります。

②建替えは決まったが、再入居せずに立ち退く

仮に建替え決議が5分の4以上の賛成で可決され、建替えが決まった場合であっても、その時点で反対者0ということは考えにくく、最大で5分の1の反対者が存在することになります。その反対者に対しては、建替え組合による売渡請求という手続きが存在し、売渡請求を受ければ、そのマンションを時価で売却するということが可能です。ただし、建替えが必要なマンションの時価はかなり安いと考えられますので、反対して立ち退くという場合は一度冷静になり、慎重に考えて選ぶことをおすすめします。

③大規模修繕

建替えをしない(できない)マンションでは、定期的な大規模修繕を継続していくことが最も現実的な選択だと考えられます。大規模修繕であれば、今まで積み立ててきた修繕積立金の中で実行できる可能性もありますし、バリアフリー工事や防犯カメラの設置などという工事は区分所有者及び議決権の2分の1以上の普通決議で実行できるため、住民の賛同というハードルも建替えに比べれば低くなっています。

ただ、大規模修繕で延命していくことにも限界は必ずあるので、長いスパンで見ると最終的には、建替えが必要になるでしょう。

④マンションの敷地売却

マンション敷地売却制度というものがあり、この制度は資金不足で建替えができないマンションを都道府県知事の認定を受けた買受人(マンションのディベロッパーなど)が買い受けてくれる制度のことです。建替えではなく、全体を売却することから資金がなくても実行することが可能です。ただ、敷地を売却するには区分所有者の頭数、議決権および敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上の賛成が必要となり、建替え決議と同等の数が必要となり、こちらも簡単に決定できるものではありません。

⑤外部不経済を生じるマンションになってしまう

適切な維持管理が行われずに居住者や近隣住民等の生命・身体に危険を生じるマンションになってしまう。実際に外壁が剥落したなどの事例は発生し始めていますし、老朽化、空室が増えていくと、管理費や修繕積立金の確保ができなくなり、維持管理が難しくなってきます。もうどうすることもできないと管理会社が逃げてしまうケースもあるようで、こうなってくると状況が好転することは非常に難しくなります。また、建替えや大規模修繕が必要な時期に入ったが、何かしらの理由でどうしてもできないとなると、このような状況に陥ってしまう可能性も十分にあります。

以上のようなケースが考えられますが、上記のようなケースが全てではなく、当然、上記以外のケースも考えられます。また、あくまで一般的な話になりますので、参考程度にお考えください。

最後に

戸建ての場合だと、自宅を解体する、建替える、敷地の売却などほとんどの場合、自身の意思(又は少数の所有者の意思)で自由にできますが、分譲マンションの場合、そのマンションに住む住民の同意が必要となります。
新築で購入する場合、これらのことをナイーブにそれ程考えなくても良いのかもしれませんが、中古マンションの場合だと、築年数や大規模修繕の予定、購入時の自身の年齢や住宅ローンを組むのかなど、本当に様々なこと、買った後のこと、出口のことまで考えて購入する必要があります。

また、マンションの購入を検討する場合は、区分所有などに関する法律の影響を理解しておく必要がありますし、マンションの劣化具合、マンションの居住者の減少があるかどうか、管理組織が機能しているかどうか、大規模修繕などの予定はあるか、容積率の確認やマンション敷地が広いかどうかなども検討するうえでのポイントにしていただきたいと思います。

今回は築古マンションが増えてきている状況の中、マンションは今後どうなっていくのか?ということを記事にしました。下記URLは、今回、参考にした「マンション政策の現状」という国土交通省の資料となりますので、ご興味をお持ちの方はご覧ください。
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001315032.pdf