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エキゾチックレザーの魅力をより多くの人に伝える「鮫革のパンプス」

株式会社 新宿屋(大阪市東成区)

婦人靴製造の「新宿屋」は“エキゾチックレザー”と呼ばれる爬虫類などの個性的な表情をもつ革で婦人靴を作るメーカーです。同社の代表でシューフィッターでもある丸吉肇さんにエキゾチックレザーにこだわった靴を作り続ける理由を尋ねました。

履き心地のよい靴を提案するためのフィッティング

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エキゾチックレザーとは、ワニ・ダチョウ・ヘビ・トカゲなどの革のことです。丸吉さんは大学卒業後、金融機関勤務を経てエキゾチックレザーの靴を作っていた「ニュー新宿屋靴店」に入社し、靴づくりやフィッティングの技術を学びました。

しかし、ニュー新宿屋靴店はその後数々の合併や買収を繰り返しブランド消滅の危機を迎えます。ニュー新宿屋靴店の靴に惚れ込んでいた丸吉さんは2015年にブランドのライセンスを取得し「株式会社 新宿屋」として再スタートさせました。

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店頭で販売するのではなく、国内各地の催事会場でお客様の足をフィッティングした後に、オーダーメイドで靴を完成させお届けするというスタイルで展開しています。

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新宿屋のオフィスでフィッティングを見せてもらいました。

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「合う靴を探す」というイメージの店頭での試し履きに対して、オーダーシューズのフィッティングではお客様の足の形を把握することに重点を置いています。

「親指と小指の付け根を結んだボールジョイントという足が一番曲がる箇所、土踏まずのアーチの大きさ、足長や足囲を計測し足の形で気になったところをチェックします。靴を履いて歩いてもらい痛いところはないか、脱げやすくなっていないのか、さらに座ってもらって履き口の隙間が大きすぎないかなどあらゆる箇所をチェックします」と丸吉さん。

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「フィッティングしていると、最近では外反母趾がひどくなっていたり、アーチが無くなっているお客様を多くみかけます。サイズの合わない靴をムリして履いておられるのかな、と思います」

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丸吉さんがフィッティングにかける時間は一人につき平均20~30分ほど。さらにお客様がデザインを選んだり、素材や色選びの時間も含めると、1日に接遇できるお客様はせいぜい10人くらいです。

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「足の形を見て判断し、一番履き心地がよい靴をご提案することがシューフィッターの役割です。場合によってはお客様がこのデザインの靴がいいとおっしゃっても、足の形と履き心地の観点からあえて別の靴をお勧めすることもあります」

新宿屋ではフィッティングを終え、お客様から注文をいただいてから靴づくりがはじまります。

手作業でしかできない、エキゾチックレザーの裁断

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エキゾチックレザー の靴づくりは、原料となる革の裁断から作業がスタートします。

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革職人の久保さんがエキゾチックレザーの裁断について教えてくれます。

革の裁断で最初にすることは傷探しです。くまなく探して傷の箇所には印を入れます。

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傷探しと同時に革の模様も確認しています。

左右の靴で違和感が出ないように革のきめの大きさや模様の流れを揃えられるかが、エキゾチックレザーの裁断工程における大きなポイントです。この作業を「柄合わせ」といいます。

大きな個体では一枚の原皮から両足分取れるので、柄合わせは比較的容易です。しかし、革が足りない場合はふたつの個体の原皮から一足分の革をとることになり、柄合わせの難易度が増します。

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「ブーツの場合は使用する面積が大きいので、同じ個体から左右両足分が取れることは稀です。そんな場合は2枚の異なる個体の革を使うことになりますが、たとえ同じ種類の動物でも個体が違えば模様の方向やきめの大きさがまったく違いますから、柄合わせも大変になります」

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革を裁断する場所が決まると、ハサミを入れるための線を書き入れます。

この時に使うのがビニール製の透明の型。型紙だと模様を見たり傷を探すことはできませんが、型に透明なビニールを使用することで線を書き入れながら、同時に模様の流れを確認したり傷を見つけられます。

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在庫の原皮の種類、きめの大きさや模様の流れなど、すべてを把握しているという久保さん。革を新たに受け入れる際に模様を確認し「あの革だったら柄が合うな」と在庫分の革とあらかじめ柄合わせをした上で、セットで保管する。天然物なので可能な限り無駄を減らすための工夫です。

「原皮の保管で最も気を使うのは湿気です。湿気が一番怖い。夏や冬は特に、気候のよい季節でも湿度管理だけはしっかりやります」

保管のため細心の注意を払います。

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クロコダイル(ワニ革)はきめが大きいので模様と流れは一目瞭然。
「クロコダイルの柄は一匹一匹、まったくバラバラなので柄を合わせではとくに苦労します」と久保さん。

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クロコダイルのもう一つの特徴は革の溝が深いことです。靴づくりでは強い力で革を引っ張る工程もあるため、溝に隠れていた傷が新たに出てくる場合があります。その場合は諦めて別の革を裁断するところからやり直します。

「楽しみに待ってもらっているお客様には、時間がかかったとしても最上の品質で届けたいですから。オーダーシューズは信頼が最も大切なんです」と久保さん。

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続いては「オーストリッチ」ダチョウの革です。
久保さんによると「一番、頭を使う」のだそう。革表面のきめの大きさ、模様の向きと左右の向きやバランスに加え、粒(毛穴)の大きさや向きも気にしなければならないからです。

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「粒同士の間隔が大きすぎても小さすぎてもダメ、バランスがとても大切です。やはり個体の差もあり、オーストリッチの柄合わせは本当にパズルみたいな感覚です。当社は履く人から見て粒の向きはつま先側もしくは下に向くようなデザインをポリシーとしています。その結果、革の取れ高が少なくなってしまうこともありますが、こだわりなので変えることはありません」

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新宿屋ではすべてハサミで裁断します。その後、大阪市西成区の協力工場で加工され靴になります。

熟練の靴職人が作る婦人靴の工場

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工場長である伊藤さんは丸吉さんのかつての先輩。丸吉さんが現在の新宿屋を立ち上げた際に、協力を買って出た仲間の一人です。

裁断されたエキゾチックレザーは縫製の工程へと進みます。

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「ミシン目のピッチの細かさや粗さはミリ単位で決められています。新宿屋さんはチェックが厳しいですよ」

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縫製の職人さんにとって一番苦労する革はクロコダイルです。革がとても固いせいでミシンの針が飛んでしまうことがあります。デザインによっては固いコブや、やわらかいお腹の部分のを使うオーダーもあり、縫製する箇所によってミシンや糸の調子を変えて調節します。

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続いては、縫製した甲の部分(アッパー)に、靴底をつけていく「底付け」という工程です。

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つま先の丸いものやとんがったものなどさまざまな形が用意されています。外反母趾の人向けの靴は、革を側面につけて少し幅を広げます。

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木型につけた靴の甲部分ぎゅっと引っ張り、靴底部分とつけていきます。引っ張る時に表面に傷が現れていないか、エキゾチックレザーでは特に注意が必要です。

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こちらでは、別の職人さんがヒールを打っています。

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トントントンと槌の音と「できたよ、お待たせ」という掛け声。
長年、息の合ったコンビネーションです。

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最後は仕上げ工程です。

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熱風を吹き付け、革の調子を整えてお化粧します。
温めることで革自身がもつ油がにじみ出ます。その油によってツヤが増すという効果があります。

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靴墨は手で塗ります。体温に近い温度が、固すぎず溶けすぎずクリームを塗るのに適しているからです。

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最後にやわらかい布で軽く拭き取ってあげるとピカピカになります。


これらはすべて仕上げのために使うものです。革の種類によっては、靴墨の代わりに洗剤やクリーニング剤を使います。お酒も並んでいますが、飲むためではありません。

「クリームを塗る前に、ワインやウイスキーを革に吸わせておくと、靴のクリームに含まれるロウが反応してクリームのノリが良くなります。化粧でいうと下地クリームのような役割です。鏡面仕上げで使うテクニックです」

お化粧を終えた靴たちは、新宿屋さんの検品を経てそれぞれのお客様のもとへと届けられます。

エキゾチックレザーの魅力をより多くの人に伝えたい

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エキゾチックレザーの靴づくりにこだわる理由は、丸吉さんのこれまでの歩みと関係があります。

「ニュー新宿屋靴店に入社し、責任者としてブランドを任されるまでになってしばらくすると、会社はその後別の商社の子会社になり、事業部に吸収され、さらに別の会社に買収されるなど翻弄されました。

いよいよニュー新宿屋靴店がなくなってしまうかもしれない、という時に、記念に母と祖母に靴をプレゼントしようと考えたんです。そして、どんな靴がいいの?と尋ねてみたところ、大正生まれの祖母が『これと同じような靴がいいねん。これ気に入っているねん』と見せてもらった靴が、なんとニュー新宿屋靴店で40年前に作られた靴だったんです。自分が惚れ込んでお届けしていた靴を履いてくれる人がこんなに身近にいたんだ、と気づかされました。

その後も、お客様から『新宿屋さん、なくなっちゃうの?』という声が多く寄せられ、ファンがこんなにいるのになくしてしまうのは惜しく申し訳ないと思い、新宿屋を継ごうと決めました」

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新宿屋では今日も、長い間大事に履いてくれたパンプスが修理中です。新宿屋の靴は10年20年履けることは珍しくありません。

「2週間以上かけてジワーッと徐々に伸ばしていきます。エキゾチックレザーは足に馴染めばそれだけ長い間保つ素材です。よほどの傷みでない限り、中敷きの交換、底の交換、ゴムの交換などできる限りは対応しています。エキゾチックレザーは足に馴染んで長く履けることが一番の魅力なんです。」

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「鮫革のパンプスをきっかけにエキゾチックレザーの魅力は、長く履ける靴だという価値を実感して欲しいと考えています」と丸吉さん。

丁寧な手仕事から生まれる鮫革のパンプスを丸吉さんのフィッティングで実際に履いて、その魅力を感じてください。

社名:株式会社 新宿屋
URL:https://shinjukuya.com/
住所:大阪府大阪市東成区中本5丁目19番11号
連絡先:06-6976-9850
大阪商品計画サイト:http://www.osaka-products.jp/

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大阪府内の中小企業の製造事業者、生産者の「発掘と育成」を目的として、 自ら新商品開発・改良から販路開拓(展示会出展や直販)にチャレンジする事業者を後押しする、 大阪府連携のプロジェクトの総称です。大阪商品計画は公益財団法人大阪産業局が実施しています。
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