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地域の特産品を目指す河原の植物。天野川の「よしのディップソース」

株式会社火間土(大阪府大東市)

友成直大(ともなり なおひろ)さんは、ランチも夜も常連さんたちで賑わう居酒屋「火間土(かまど)」の社長です。20年続くお店の人気の秘密は季節を感じるお野菜中心の創作料理や気持ちの行きとどいた接客だけではありません。
「お客様から生産者、そしてスタッフまでお店に関わるすべての人がにっこりと笑顔になることができる」という多彩な取り組みで、お店を地域の繁盛店へと成長させました。そんな友成さんが新たに挑戦するのは、地元のとある食材を使った調味料です。

焼肉屋はやめた。お野菜がおいしい店にしよう!

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「火間土(かまど)」はJR学研都市線住道駅から徒歩3分の賑やかな通りにある居酒屋です。訪れたのは平日のランチタイム、終了間近の時間帯にも関わらず、おしゃれなお店の中ではまだまだ賑やかな声が聞こえてきます。「明太ソースの幅広うどん」や「おかわり自由の十六穀米ご飯」、新鮮な季節のサラダには固定ファンもつくほどです。しかし、人気なのはお料理だけではありません。ご飯を食べながらゆっくり会話と楽しめる雰囲気や全室個室といった店づくり、スタッフとも気軽におしゃべりできる接客サービスが、たくさんのお客様を笑顔にしています。

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二代目の社長である友成直大さんは現在41歳、大学時代からアルバイトをしていたこのお店を継ぎました。

元は焼肉屋さんとしてスタートしたお店ですが、もっとお客さんを笑顔にしたい!と当時の社長と店長だった友成さんとスタッフも交えみんなで話し合い、安心・安全・健康をテーマとした野菜中心のメニューに見直しました。

「今でこそ安全や安心という言葉は定着しましたが、まだ当時はそこを打ち出している居酒屋は珍しく、地域では先駆けとなるお店になりました。
また、海外から輸入した食材ではなく国内の生産者から買って、どこそこの誰々さんがこういう思いで作ったお野菜です、という思いをお客様にも伝えていこう、と考えるようになりました」

野菜をもっと味わってもらおう!

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国内産食材を50%以上採用している店舗が掲げることができる「緑提灯」がお店の入り口に吊るされています。火間土の食材の国内産食材使用率は、現在60%以上です。

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友成さん野菜への思い入れは、社会全体の流れや店舗の経営といった理由のほか、自身の子どもの頃の経験も関係しています。

「僕はアレルギー体質で小さい頃はすべてにアレルギー反応があったんです。今でこそ何でも食べられるようになりましたが、卵・小麦・そばなど何にも食べるものがなくて、親は苦労したと思います。アトピーやぜんそくもあったので、もしも自分の子供だったら、何を食べさせたらいいんだろう?ときっと悩むと思います。飲食店に勤めて野菜や健康的なメニューの開発を通して、メニューを考えたり自分たちの日々の食べ物を考えたり、体質改善などの勉強してみることで、自分を育てた両親は本当に大変だったんだな、と実感しました」

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国内産食材で最初に仕入れたのは丹波黒豆の枝豆でした。やがて大東市の専業農家からはトマト、奈良県ではレタスなど。食品展示会やインターネットを通して知り合ったり、契約農家を通じてまた別の農家を紹介してもらったりと、各地の生産者とのネットワークが拡大。無農薬や減農薬など栽培にこだわった農家とのつながりもできました。

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丹波黒豆の農家さんのところへは、枝豆の収穫のお手伝いに行くこともあります。いずれは、お店のお客様と一緒に見学ツアーや収穫体験などにも挑戦してみたい、と友成さん。

「もうすぐ佐賀県のアイスプラントで育ったプチプチとはじける食感の『プッチーナ』という野菜の時期になります。それから和歌山県の高野山の麓で作られているクレソン、栄養価が高くアメリカでスーパーフードで認定されています」と野菜に関することとなると、友成さんの話は止まらなくなります。

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メニューに「甘野菜」書いてある新鮮な野菜を使用したサラダは、とくに女性の皆さんに大人気のメニュー。「初めて食べた野菜があって楽しかった」「こんなに大根が甘いなんて知らなかった」といった反応が寄せられ「作り方を教えて欲しい」など野菜を通してお客様とのコミュニケーションの機会も増えました。
夜もメニューにも野菜ピザやレンコン揚げ、野菜ハンバーグなどの創作料理が豊富で「野菜をいっぱい食べにきたでー」という若いサラリーマンも多いそうです。

お客さんにも店づくりに参加してもらおう!

「お店で食べた野菜が甘くておいしいから買いたい、というお客様の要望に応える店頭での生野菜の販売もスタートしました。今後、野菜の店頭販売が軌道にのれば、マルシェイベントや生産者との交流会に発展させていく予定です。

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火間土では、お客様からの投票による新作料理の定番メニュー化や試食会など参加型イベントを定期的に開催。年4回ほどメニューが入れ替わる中で、多くの料理がお客様からの意見によって採用されています。
「このお店はお客さんと一緒に育ってきたんです。メニューを一緒に決めるアンケートはもう2年続けています。試食のご招待ハガキをお持ちのお客様には料理をご試食いただくことができます。毎回160人くらいほどが参加してくれるイベントに成長しました」

お客様も参加できる店づくりと野菜をメインに打ち出したお料理で、火間土を地元の人気店に育て上げた友成さん。次なる挑戦は、大阪の食材を使った新たな商品づくりです。

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その商品とは、枚方市や交野市を流れる天野川(あまのがわ)の河原に生えている「セイタカヨシ」を使ったディップソースです。

河原に生えている草を味わってもらおう!

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友成さんにセイタカヨシの生息地である天野川に連れて行ってもらいました。

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セイタカヨシは本州の西、近畿や中国・四国地方から九州、沖縄にかけて河原などお水辺などに生息するイネ科の植物です。葉がちまきを包むために使われていたり、粉末を練りこんだうどんが開発されていますが、食用として使えることはあまり知られていません。

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「セイタカヨシが持つ浄化作用によって土壌を改良してくれたり、川もきれいにしてくれるんです」

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(写真提供:北大阪商工会議所)

セイタカヨシは「天の川を美しくする会」の有志によって毎年夏の盛りに採取されます。葉の部分を切り取り、その後洗浄したものを工場に送ってフリーズドライ製法で粉末状の「ヨシパウダー」にします。

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(写真提供:北大阪商工会議所)

この「ヨシパウダー」と、お付き合いのある酒蔵さんの酒粕を混ぜたものが、友成さんが開発した新商品の「よしのディップソース」です。

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ヨシパウダーと酒粕を混ぜるという発案者は友成さん。野菜はもちろん、白身魚、ステーキにかけて食べてもらえるように、と当初は店内での手づくりも検討しましたが、メーカーに委託しきちんと作ってみよう、と大阪府高槻市の加工メーカーにお願いして品質管理を徹底しています。

「枚方市で行なった催事販売は想像以上に良かったです。その場では味わってもらうことができない中、30本を売り上げました。若い方が多く、栄養士だという学生さんも興味を持ってくれました。
まだ味の反応はお客さんに聞くことができていないのですが、商品開発の現場では少し酸味が気になるという意見もあり、今後の調査によっては味も改良する可能性はまだ残っています」

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この商品づくりを通して、同じ料理でも物販とメニューでの提供では全然違うということに直面します。

「お店でできたてを提供するのとお店に置いて手にとってもらうということは全然違いました。お店だと『この食べ物はどんな味です』と説明できますが店頭だとパッケージが語らなければならない。飲食店の場合は作った食材が原価になるんですけど、物販だと作る時間まで製造原価として計算しています。また、食品成分や菌など検査の費用も原価になる、ということを知ることができました」

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北大阪商工会議所によるセイタカヨシのイメージ調査では、新しい特産品への期待や協力したいという声とともに「食べることに関しては余りに抵抗が大きい」「セイタカヨシの加工食品が特産物となった場合、購入する気持ちは低く購入しても反復購入はできない」といった課題が挙げられています。

「セイタカヨシを知らない人がほとんどなので。まずは少しでも手に取ってもらうこと、食べてもらうことが必要ですね」とセイタカヨシへの愛情いっぱいの友成さん。

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「僕は交野市の星田出身で、子どもの頃に河川敷で野球をしながら、草がたくさん生えているな、あれがスダレの原材料なんだなという認識でした。しかし、川の保全団体の方に『実は、その草は食べられるんだよ』という話を聞いて、とてもびっくりしました。
そこから、セイタカヨシを使ったメニューを店で出したいなという思いを持ち続け、会合やイベントに参加しセイタカヨシの利用を盛り上げる活動をしています。セイタカヨシを使ったメニュー開発そして商品化へと発展して今、試作がようやくできた段階です。生まれた地元であり、商売でもお世話になっている北河内の地域を、僕は食で盛り上げたいと思います」と最後に友成さんが語ってくれました。

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よしのディップソースが地域の特産品となる日を目指して。お客様と生産者と店をつなげ火間土を繁盛店に育てた、野菜大好きの社長の腕の見せどころ。
完成した商品にご期待ください。

食卓を美味しく彩るオリジナルソース
よしディップソース

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社名:株式会社火間土(かまど)
住所:大阪府大東市赤井1-1-5
連絡先:072-891-4777

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